アクセル・ワールド Philosopher's Stone   作:Trude

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Act.1 ジェット・ソリューション

 夕暮れの空に、灰色の梟が飛んでいる。

 わたしは膝を抱えて、わずかにそれを見た。そして、視線を地面に戻す。

 

 

 彼が死んだ。

 死んでしまった。

 わたしのせいだと梟が言う。

 わたしのせいだとわたしも言う。

 

 

 梟が羽ばたいた。

 その灰色の羽が降り積もって、わたしの視界を埋めていく。

 

 

 梟が言う。

 まだやり直せる。

 

 

 梟が言う。

 この世界を壊しに行こう。

 

 

 梟が言う。

 君を苦しめる物を、その存在を【分解】して、そして求める物を奪い返そう。

 

 

 梟が言う。

 

 

 梟が言う。

 

 

 梟が言う。

 

 

 そしてわたしの世界(リアル)は、ガラスの様にくだけ散る。

 

 

◆◇◆◇

 

《ニューロリンカー》

首回りに装着する量子接続通信端末。グローバルネットや学内ローカルネットに接続して脳細胞と量子レベルでの無線通信を行うことで、仮想現実(VR)拡張現実(AR)といった技術が容易に実現でき、仮想の五感情報を送り込んだり現実の五感をキャンセルしたりすることができる。この端末は携帯電話やパソコンといった従来の一般的な電子機器、財布(電子マネー)、さらには眼鏡などの視力矯正器具の代用にもなり、第一世代の登場から16年が経過した現在では、国民ひとりに一台と言われるまでに普及した。また、ニューロリンカー用家庭ローカルネット、ホームサーバーもある程度普及しているほか、学校の授業でも黒板への板書や教科書・ノートをARに置き換えるなど、教育の場にも導入されている。端末の変更は可能だが、その際のコアチップ移植は区役所か政府公認ショップでしかできないため、一人が複数のニューロリンカーを使用することは基本的に不可能である。ただし、乳児期は脳波が未成熟なことから、他人のニューロリンカーを付けると端末が乳児を利用者と認識し、当人の成長後も引き続き使用できる場合がある。

肉声(ボイスコマンド)で「ダイレクト・リンク」と発声することで、現実の五感をキャンセルし仮想空間に。現実空間に戻る際は手動でのコマンド操作か「リンクアウト」コマンドを用いるが、肉体に何らかの衝撃が加わるとセーフティが発動し強制的にリンクアウトされる。

基本的に無線通信を行う機器でありその場合は十分なレベルのセキュリティが施されているが、有線で直接通信を行うことも可能でありその場合には防壁の9割が無効になる。ある程度のリンカー操作スキルを持つ者ならこの状態で接続している相手のプライベートメモリを覗くことなどもできるため、このような行為は「直結」と呼ばれ家族や恋人関係の相手に限られる。世間一般では公共の場で直結する男女は99%までが付き合っているということと見なされ、ケーブルの長さが親密度を表すという俗信まであるほど。

 

 

《ブレイン・バースト》

ニューロリンカー用アプリケーションで、正式名称「Brain Burst 2039」。通称はBB。正式名称にもあるように、2039年4月に正体不明の製作者によって東京都心在住の小学一年生100名に配布され、時折アップデートも行われている。

 

インストールするとソーシャルカメラの映像から再構成された加速世界で現実を舞台にした対戦格闘ゲームが出来るようになる。インストールするには適合条件が2つあり、生誕後まもなくからニューロリンカーを使用していること、大脳応答に適性を持っていることである。バーストポイントを全損するなどして、一度システムから強制アンインストールされると二度とインストールできなくなり、自らがこのゲームに参加していた記憶さえも完全に消去される。

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