デビルサマナー 葛葉ライドウ 対 霧幻ノ影【ライドウ×P4】   作:ライ・ライホー

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ライドウ新作、何時までもお待ちしております


第3話 邂逅の刻・裏

『さまなー!人間ノ臭イガスルゾ!!』

「…何?」

 

オルトロスの言葉はライドウとゴウトにある種の衝撃を与えた

 

『それは確かか?オルトロス』

『間違イナイ!霧デ鼻ガキキニクイガ、可愛イ娘チャンノ匂イモスル!』

『……此奴がそう言うなら本当なのだろう。女子に対する反応は一等強いからな』

 

このオルトロスは人間の可愛い娘に目がないらしく、己の背中に最優先で乗せるのは女子だと豪語する程だ。だからこそ彼が人間の…女子の匂いを捉えたのはまあまあ信用出来る報告だったのだ。

 

『場所は何処だ?』

『アオーン!サッキさまなーガ居タ場所ダ!』

『つまり先程の広場だな?丁度良い、戻るぞライドウ』

『待ってー!ボクらの弟も忘れないでよー!』

『ひどうだー!』

『ええい、わかっておるわ!彼処には熊とやらもいる。どの道戻る予定だったことには変わりない。とにかく急ぐぞ!』

 

騒ぐポルターガイスト達をゴウトが一喝した後、ライドウはあの広場へと引き返した。

 

 

 

先程と同じ時間をかけて広場に辿り着いたは良いものの、悪い予感が的中したのか、そこは既にもぬけの殻であった。

 

『くっ、遅かったか…』

『うわーん!!』

『どうしよう!!』

「落ち着け。…オルトロス、此処から臭いは辿れるか?」

『チョット待テ……』

 

オルトロスは地面に鼻を近付けると付近を暫く歩いた後にライドウへ顔を向ける

 

『マダ臭イガ新シイ!追エルゾ!』

『よし、なれば此処で留まっている理由はない。足取りを追うぞ!』

 

ゴウトの言葉にライドウも同意であり、オルトロスに臭いの追跡を命令すれば一行は休みを入れずに霧の中へと駆け出した。

 

 

 

***

 

『何だ、この異様な場所は…?』

 

霧を仲魔の先導で進んで行ったライドウ達はやがて先程見た赤い空の下、巨大な西洋風の城が立つ空間まで辿り着く。霧のせいか頂上まで見ることは出来ず、何よりもその風貌と奇妙さにゴウトさえも驚きの声を漏らした。

 

『此処、可愛イ娘の匂イガスル!』

『…ん?お前、あの熊の臭いを辿ったのではなかったのか?』

『何言ッテンダ。オレハ男ノ臭イナンテカガナイゾ』

『……』

『ドッチミチ、色ンナ臭イガ同ジ方ヘ行ッテタケド』

『結果おーらいだね!』

 

ライドウの仲魔達は無口な主と比較すれば良くも悪くも個性が強い

そもそも悪魔というものがかなり気紛れなことも考えれば仕方のないことかもしれないが

 

「この建物にいると言うことか。しかし何でこんな所に…?」

『オルトロスが辿ったという人間の臭い…先の熊の言葉を考慮するとしたら【この世界に落とされた人間】か【能動的にこの世界へ入れる者】の何方かの物だろう』

「…前者の場合なら助ける必要がある」

『ああ。そして後者だった場合は…相手によるな。この世界について情報を知ってるのなら問う必要もある。あの熊よりは役に立つと信じよう』

 

次に取るべき指針を決めライドウ達は城へと足を踏み入れた

 

 

 

***

 

城内は非常に広いものの、既に誰かが侵入した後なのか扉が開け放たれ伽藍堂の様子を見せていた。

 

『悪魔の姿は無し…か』

『臭イハ上カラダ!』

 

オルトロスの言葉を信じるならこの城の最上階にこの世界へ足を踏み入れた何者かとクマがいる筈だ

 

『何を目的として行動してるかは知らぬが、彼らとは何としてでも接触を…』

 

 

 

『だ、だれか〜〜…!』

 

 

 

『ぬ?』

『あ!』

『あの声は!!』

 

微かにだが耳に入った声に真っ先に反応したのはポルターガイスト達だった。ライドウの指示を待たずに突撃して行ったポルターガイストを追ってライドウ達もその奥を目指す

 

 

『に、兄ちゃーん』

『いた!いたよライドウ!』

『これはひどい!ひどすぎる!』

 

行方不明になっていた末っ子ポルターガイストの姿はすぐに見つかった……何故かロープで全身ぐるぐる巻にされた状態で

 

『…何を遊んでおるのだ、うぬは』

『ち、違うよぉ!イジワルな人間がボクをビリビリさせて縛り上げたんだい!!』

『ビリビリ!?』

『ビリビリこわい…』

 

末っ子ポルターガイストの主張に兄達は揃って震えている。ビリビリ、というのは恐らく電撃だろうかとライドウは推測する。と言うのも、疾風属のポルターガイストにとって電撃は何よりも恐ろしい弱点なのだ。

 

『ライドウ〜!ビリビリキノコに気をつけて〜!!アイツビリビリしてきたり頭を揺さぶってくるんだ!』

「…………ビリビリキノコ?」

 

若干トラウマになっているのか、ガタガタ震える末っ子の謎の発言に首を傾げつつ、ライドウは縛っていた縄を解いてやった。

 

『兄ちゃ〜ん!』

『だいじょうぶ?』

『よく頑張った!』

『感動の再会は充分構わないのだが、どうやってそのビリビリキノコとやらの魔の手から逃げ出したのだ?』

『あ、それはね〜。何か暗い所にずっと入れられてたんだけど、すっごい音がしたと思って、気がついたらゴロゴロ転がって外に出てた!』

『……わからん』

 

末っ子の言動に頭を悩ますゴウト。とてもではないが参考にするには難しいだろう

 

「そう言えば監視していた熊はどうした?」

『えっとね…ボクを捕まえたビリビリキノコ達と一緒にいた!だからアイツも危ない奴だ!』

「何?」

 

ライドウはその証言に内心引っかかるものを感じた

 

『おい、そのキノコとやらは悪魔か?』

『違うよー!ゴクアクヒドウの人間だ!』

『人間なのにお主を捕まえられたと言うのか?』

『ん〜…そう言えば変な奴を出してボクに攻撃してきたような…』

「…まさか」

 

此処まで聞いて思い至った結論にライドウはゴウトを見た

 

『ああ。我も同じ考えよ。――――恐らく、其奴は”同胞”の可能性がある」

 

ポルターガイストを攻撃出来、あまつさえ縛り上げるなんて芸当ができる人間なんてそれしか考えられなかった。

 

『同じデビルサマナーならば話は早い。事情を説明し、此処から脱出させて貰おう』

 

この深い霧の中でやっと見つけた糸口にこの場の全員が安堵したのも確かだった。

 

「ポルターガイスト、その人間は何処にいる?」

『え?ゴロゴロ転がってたからよくわかんないけど、上から此処まで必死でせんりゃくてきてったいをしたよ!』

「上…やはりこの建物の上階か」

 

末っ子の情報に目的地を定めればライドウは階段を探して先を急いだ

 

 

 

****

 

 

ズガン!という激しい音をライドウが聴いたのは最上階へ向かう階段の途中であった

 

『…!この先に何かいるぞ!』

「ああ、それにこの気配は…」

 

頭をよぎる予感に階段を登る足を速める。

やがて最上階へと辿り着いたライドウ達が見たのは、侵入を拒むように燃え盛った火炎とその奥で展開される壮絶な戦場であった。

 

『見えるか?ライドウ』

「…ぼんやりとだが、何が起こっているのかはわかる」

 

城内でも濃く広がる霧は最上階まで来るとより一層視界を奪うように辺りを漂っていた。しかし、ライドウとて視界不良の戦いを経験したことは一度や二度ではない。

オマケに派手に起こる風、騒々しい声がライドウに充分すぎる情報を与えていた。

 

『あ!あのキノコがいる!』

『熊っぽいのもいるぞ〜』

『あれ?でも何かおそわれてる?』

 

ポルターガイスト達にはライドウより見えているのか、炎の先にいる人影の姿をしっかり捉えているようだった。

勿論、彼ら(人間とクマ)だけなら今この場は此処まで緊迫していない。中から聞こえる獣の唸り声と悍ましい気配がその存在を物語っていた。

 

『あれは…!急げライドウ!』

 

 

「――――――――凍てつかせ、アルラウネ」

 

 

火炎を前にライドウが管から出したのは茨で身体を包んだ妖艶な美女の悪魔だった

 

『会いたかったわ、私の可愛いサマナー!』

「急ぎ火炎を冷却してくれ。突入する」

『フフ、せっかちね。貴方のそういう所が好きだけど』

 

ライドウの頼みを快諾すればアルラウネは炎の壁に手を向ける

 

 

『それに――――――――――ウフフ。悪い子には御仕置きが必要ね』

 

 

その途端、凄まじい冷気の塊が炎の壁に向かって飛ばされる。

それは炎を完全に消すだけでなく、その先で人間を踏み潰していた虎の悪魔に直撃し弾き飛ばしたのだ

 

「よくやった、アルラウネ」

『お安い御用よ』

「ポルターガイスト。あの悪魔の群れを…」

『言われなくとも!』

『まかせろ!』

『ひゃっはー!サツリクだー!!』

 

炎が途絶えた扉の中にポルターガイストが飛び込めば忽ち部屋の中を暴風が蹂躙し始める。内部にいる悪魔だけを狙い、上手く人間を外して攻撃をしている所に彼ら兄弟の連携プレーを感じられるだろう。

 

「…餓鬼道に堕ちた亡者、ガキと火炎を纏う悪魔、ドゥンだな」

『ガキはともかく、あのドゥンは相当な実力を感じる。用心せよ』

 

ゴウトの忠告に頷いたライドウの視界に立ち上がるドゥンの姿が映った。

 

「…!」

 

怒り狂ったそれが次に何をしようとしているか気付いた瞬間、ライドウは走り出していた。

 

慌てる者、呆然とする者、意識を失ってる者の側を駆け抜け跳躍すれば刀がひらりと煌く

 

 

「――――――――――魔を祓え、赤口葛葉!!」

 

 

それは数分狂うことなく飛び掛かろうとしていたドゥンを斬り裂いた

今まさにドゥンに襲われそうになっていた青年の前に立てば、倒れたドゥンに警戒を解くことなく、後ろの様子を伺う

 

此方を驚愕の表情で見つめる灰色の髪の青年。その後ろでは突然の出来事に頭がついていけてないのかへたり込んでいる二人の女性。特に和服姿の女性はかなり顔色が悪い

先程出会ったクマが一番早く立ち直ったのか、壁際で倒れている明るい髪色の青年に慌てて駆け寄っていた。そう見回している内に再び己の背後にいる灰髪の彼と目が合う

 

「……」

「……」

 

互いに無言だがその実、内情は正反対であった。

 

言葉を探してるだろう灰髪の青年から目線を離せばアルラウネの方へと移す

 

「アルラウネ。彼らの回復を頼む」

 

簡潔に指示だけを飛ばせば彼女は二つ返事で近くにいる灰髪の彼から回復魔法をかける。

アルラウネや段々と癒えていく傷を見て驚く彼らの様子を見ていると、再び視線が眼下の青年とかち合った。

 

「あ……」

『グオォ!』

 

青年が何か口に出そうとした瞬間、前方から呻くような唸り声が聞こえてきた。ライドウは即座に前方へと向きドゥンを警戒する。

 

『オノレ…!許サンゾ!!』

 

本格的に怒り狂ったドゥンが耳を塞ぎたくなるような雄叫びを上げると、その背後の穴から更にガキが湧き上がりライドウ達へと襲いかかってきた。

ドゥンが真っ先にライドウへ爪を振り下ろすが、直撃する寸前に横跳びで躱し、完全に隙が出来たドゥンに向け左手に素早く装備した銃―――コルトライトニング―――を全弾余すことなく発砲した。全て的中すればその衝撃からドゥンの動きが一瞬止まっただろう

 

『ライドウよ!あの穴から悪魔が湧き出している!早急に塞げ!』

『あら?そういうことなら私に任せて』

 

ゴウトの指示に応えたのは全員の治療を終えたアルラウネであった。

台座に広がる漆黒の穴へ辿り着けばガキが出現し続けるそこに向かってあろうことか冷気を飛ばし始める。

 

『ケッ!効かねーよ!』

 

当然、銀氷属のガキにアルラウネの冷気は通じず次々と穴から出てこようとする。

 

 

『……ウフフ。勘違いしないで。最初からアナタ達は眼中に無いの』

 

 

アルラウネが妖艶に微笑んだ次の瞬間には漆黒の穴に氷の山が築き上げられていた

 

『成る程。穴を氷で塞いだか

アルラウネのレベルならガキ程度に破壊される心配もない。銀氷属だからこそ、絶対的な氷を溶かす手段もないしな』

「よくやった、アルラウネ

ポルターガイスト、残りを全て殲滅しろ」

『あいあい!』

『がってんだ!』

 

これ以上増えなければ後はどうとでもなる。増え続けるガキはこれで片付いたが、問題は目の前の虎であった。

 

『グルル…!オノレ!今ニ噛ミ殺シテヤル!』

『此奴、かなりしぶといな…』

 

ドゥンがライドウに再び襲いかかる。驚くことにダメージを受けてなおスピードが全く衰えていない様子のそれは猛烈な勢いでライドウに攻撃を加えてきたのだ。

その全てを躱し刀を振るうものの決定的な一打にはならない

 

『グオオオオ!!!』

「アルラウネ!」

 

ドゥンが豪炎を吐き出すと同時にライドウも叫べばアルラウネが飛ばした冷気が豪炎を相殺する

 

「…余り長引かせるべきではないか」

 

これ以上の長期化は自分よりも寧ろ他の人間に良くないと判断したライドウは刀を構え直した。

 

 

「カーシー!!」

 

 

「!」

『グォ!?』

 

ライドウの真横から突如として魔法が放たれたのはその時であった

奇妙な波動はライドウに気を取られていたドゥンに直撃し、苦悶の声を上げたかと思えば急に足元が覚束なくなったのだ。

 

ライドウが咄嗟に向いた先には先程の灰髪の青年が若干フラつきながらも緑色の”悪魔”を召喚している姿があったのだ

 

「……悪魔か?」

 

悪魔を召喚すること自体は不思議ではなかったが、彼が召喚した悪魔自身の気配に少しの違和感を感じ、ライドウは疑念の表情を浮かべる

しかしそこに気を取られてる暇はなかった

 

「っ、今のうちに!!」

「…!ああ、感謝する」

 

どうやら先程の波動で混乱しているのか全く検討外れな場所に炎を放つドゥンの正面まで駆ければ素早く刀を振るった

 

『グ、ギャアアアアァァァァ!!?!』

 

その断末魔は今度こそドゥンに致命傷を与えたことを示しており、その巨体は遂に地へと倒れ伏した

 

 

「終わった、のか…?」

 

灰髪の青年が不安そうな声を上げるが、その心配とは裏腹に物言わなくなった骸は自ら持つ緑色の光――生体エネルギ――を放ち溶けるように消えて行った。…その際、ドゥンの中から微かに黒色の煙が上がり、同じように空へ消えていっただろうか

 

 

と、ドゥンの消失を確認したのも束の間、ズドンという地響きと共に台座の上の氷が砕け散る。

その様子に身構えたライドウだったが、開いていた漆黒の穴が徐々に消えて行き、玉座が元に戻った以外の変化は訪れなかった。

 

 

『ライドウ〜』

『サツリクおわったよー!』

『ほめて〜』

 

ふよふよと漂うポルターガイスト達がガキの掃討を終わったことを伝えればようやくライドウは警戒態勢を解き、刀を鞘へと戻した。

 

 

「えっ、と…」

 

そこに先程援護してくれたであろう灰髪の青年がライドウに近づいて来た。眼鏡を掛けた青年に害意は見られず、寧ろ此方の様子を伺うように見つめてくる

 

「先程の援護、助かった。感謝する」

「え?…いや、寧ろ助けてもらったのはこっちの方だ。ありがとう」

 

助けられた礼を述べる相手にライドウは相変わらずの鉄仮面で青年を見つめ返す

 

「礼には及ばない。同じ立場として、有事の際には協力し合うまでだ」

「そうか…そう言われるとありがたいな」

 

青年は安堵したのかそれまで強張っていた表情を柔らかくさせ少し笑った。

 

「けど、驚いたな。まさか俺達以外にも……」

 

 

「クマー!?」

 

何かを話しかけた灰髪の青年の言葉が突然聞こえた誰かの悲鳴によって掻き消される

 

『やい!あの時閉じ込められたうらみだ!』

 

見れば「宙に浮かんだクマとポルターガイスト」という若干理解し難い光景がそこにあっただろう。ポルターガイストの事を知っているライドウとしては内心溜息をつくのみだったのだが、他の人間が皆同じかと言われればそうではなく

 

「クマ!?大丈夫か!」

「たすけれ〜!」

 

身動きが取れず空中でバタバタしてるクマに明るい髪の青年(先程まで気絶してたようだが目覚めたようだ)が慌てて声をかける

どうやら彼の様子を見るにポルターガイスト達を害意ある存在に見てるらしく

 

「ちっ、待ってろ!ペルソ…」

「待て、花村!」

 

今にも攻撃せんとする彼を止めたのは意外にも灰髪の青年であった

 

「戻ってこい、ポルターガイスト」

『わかった!』

 

その隙にライドウが声を掛ければポルターガイスト達はすんなりとクマを浮かばせるのをやめてライドウの元に戻ってくる。その際、空中で浮かせるのをやめたせいか落下したクマが「ぐぇ!?」と悲鳴を上げていたのだが

 

花村と呼ばれた青年は状況が全く把握出来てないらしく灰髪の彼とライドウを交互に見返している

 

「え、アレってシャドウじゃ…?つか、その黒づくめの奴ってクマが言ってた真犯人じゃないねぇの!?」

「…真犯人?」

 

ライドウが花村の背後に隠れるクマへ疑いの視線を向けると、案の定クマはビクッとしながら更に身体を縮こませていた

 

「違う。花村が気絶してる間に助けてくれたんだ」

「……え、マジで?本当に?」

「ああ、マジだ。回復までしてくれたし心配無いと思うよ。もし敵で、殺すつもりならそこまでする必要とかないだろうし」

「あー…まあ、そうだけどよ…」

 

灰髪の青年はそれなりの説得スキルを持っているのか、未だに疑惑の眼差しを向けてくるものの一応は花村を納得させたようだった

 

「って、そうだ!天城!」

 

花村が慌てたように扉の前で座り込んでいる二人の女性の元に駆け寄って行く

 

「里中!天城は大丈夫か?」

「ど、どうしよう…雪子が…!」

 

気が動転しているらしい「里中」と呼ばれた彼女の傍らには真っ青な顔色の和服の女性がいた

 

「ごめん、なさい……本当に大丈夫なんだって思ったら…急に力が…」

「雪子っ!」

『あら、そこまで心配しなくても大丈夫よ。MAGを消費しすぎて疲労してるだけ』

「うぇ!?誰だ!?」

 

二人の傍らに突然現れた茨を巻いた女性に初対面の花村は大いに動揺する

 

「本当か?」

『本当よ。暫く安静が必要だけど、命の方は問題ないわ』

「よ、良かったぁ…」

 

天城に命の危機はないと知った里中は涙ながらにへたり込んでしまった。

 

「ごめんね、千枝。私も何か出来たら良かったのに…」

「仕方ないよ!あたしだって最初は雪子と同じでマトモに動けなかったし…それより早く此処から出よう!詳しい説明は後で花村達がしてくれるから」

「俺らに押し付けかよ!?…取り敢えず、此処を出るのには同意だな。つか色々ありすぎて正直へとへとだぜ…」

「とにかく、急いで此処を出よう。一緒に来てくれるか?」

「…元よりそのつもりだ」

 

また何時敵が襲ってくるかもわからないこの状況

様々な疑問はあったもののそれに気を向けるのは後回しにするべきだと全員の考えが一致し、彼らは速やかに玉座の間から立ち去ったのだった

 

 

****

 

 

 

西洋風の城を抜け出し、クマの案内の元広場へと戻ってきたライドウ達。

その道中、傷が回復しても精神的に磨耗したのか立つこともやっとだった和服の彼女(「天城」と彼らからは呼ばれていた)に、ライドウはオルトロスを召喚し彼女を背中に乗せるように頼んでいた

 

「ありがとう、オルトロスさん」

『気ニスルナ。マタ何カアッタラ頼レ』

 

当初は先のドゥンのせいかかなり警戒心を持たれていたオルトロスも道中の天城への紳士的な気遣いのお陰か、此処に来るまでにある程度打ち解けられていたようだった。

 

「…此処まで来れば一先ず安全だな」

 

先の広場に戻り、ようやく全員が一息ついた所で真っ先に声を上げたのは明るい髪の青年…花村だった

 

「取り敢えず、そこの黒いの!お前には色々聞きたいことがあんだけど…」

『ふん。聞きたいのは我らとて同じことよ』

 

ライドウの足元からゴウトが出てくれば、この場にいるライドウを除く人間全員が驚愕の表情を浮かべる

 

「え、嘘!?」

「猫が喋ってる!?」

「ほ、本当なの…?」

「…驚いた」

「ねー!だからクマ言ったでしょ!喋る猫がいたって!」

 

ゴウト自身は先程の戦闘時から喋っていたのだが、あの極限状態で気付けた者は流石にいなかったようだ。

 

物言う猫を見た人間の反応としては当然なのだが、対するゴウトはふむと何か考えるような表情を浮かべる

 

『やはり、我の声を聞き届けられる所を見るに、お主達は【悪魔召喚師(デビルサマナー)】という事になるな。

しかし、一体何処に配属された者達なのだ?我もこの様なデビルサマナーには初めて会うが…』

 

「……でびるさまなー?」

 

ゴウトの言葉に灰髪の青年が困惑した表情を浮かべる。それは他の者も同じだったようで、全員が明らかに聞いたことのないと言いたげな視線をゴウトに向けた

 

『何だと…?お主達はよもやデビルサマナーでは無いと言うのか!?』

「いや、デビルサマナー?だっけ?俺ら全然そんなんじゃねーし…」

「どちらかと言うと……”ペルソナ使い”?」

『…ペルソナ?』

 

今この場にいる全員が認識のすれ違いを感じ掛けていたその時、それまで傍観するしかなかった和服の彼女が辛そうに呻いた

 

「雪子っ!そうだ!あたし先に雪子を送っていくね!」

「あ、ああ!それが良い!俺も一緒に行く!」

「あわわ…大丈夫クマ?」

「…心配かけてごめんね」

 

クマが床をとんとんと足で叩くと忽ちそこに三つ積まれた箱の山が現れる。

女性二人が先に箱の山に近づいて触れると驚くことにその姿は吸い込まれるように消えてしまった。

 

「で、そいつらどうすんだ?」

 

明るい髪の彼も続こうとするが、その前にライドウ達を指差して灰髪の青年に尋ねる

 

「そうだな……。うん、此処でもう少し話を聞いておきたい」

「はあ!?鳴上一人で大丈夫かよ!?そいつらが誰なのかすらよくわかってねぇんだぞ!」

「クマを忘れんじゃないクマよ〜!」

「それに、万が一危なくなったらすぐ戻る。色々聞きたいことがあるのは花村も一緒だろ?」

「……わかった。天城送ったらすぐ戻るからな」

 

花村と呼ばれた彼は複雑な表情を浮かべるものの、鳴上を信頼しているのか、そのまま彼女たちの後を追って箱の中へと消えて行った。

 

後に残ったのはクマと「鳴上」と呼ばれた灰髪の青年。そしてライドウ、ゴウトと―――――――

 

「ところで、その白い奴は……」

『ヒィ!』

『こっち向くなビリビリキノコ!』

『ボクらをビリビリさせるつもりだろ!ビリビリキノコ!!』

 

 

 

「ビリビリキノコ…………」

 

それまで冷静に判断を下していた彼が激しいショックを受けていたのは彼らの仲間から見れば珍しい光景だったのかもしれない。




―仲魔図鑑―

◆モー・ショボー
モンゴルの伝承に伝わる悪魔。名は「悪しき鳥」を意味しており、恋を知らずに死んだ少女の化身と言われている

以前はライドウの緊急用の仲魔として存在しており、力量自体は余り高い部類では無かった。しかし"コドクノマレビト"事件を経て彼女もそれなりの成長をした為、今では戦闘も調査もどちらでも対応出来るようになっている

◆ジャックランタン
イングランドに伝わる鬼火の姿をした精霊
生前、堕落した魂が死後の世界に立ち入るのを拒まれ彷徨っている姿とも言われている

範囲系の火炎攻撃や敵を眠らせる技を所持しているトリッキーな存在。特にドルミナーはその時々で使われている

◆ポルターガイスト
怪奇現象として非常に知名度の高い悪魔
家具を動かしたり物を浮かばせたりしてイタズラをする。

ライドウの仲魔であるポルターガイストは三兄弟構成であり、具体的な判別方法は口の形のみ(長男が「□」、次男が「△」、三男が「○」)
三体で一体構成なのか離れ離れになると攻撃力が大幅に低下する。離れた互いの位置が何となく分かる為ライドウは調査時に重宝している。
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