咲でテンプレ神様転生 作:ローレルサクラ
「そこのボク!やめるのです!」
大きく手を広げ、姉をかばうように僕と松実さんの間に割って入ってきたおもち天使松実玄。
あーなんかよけいに話が拗れそうだなーと思っていると、彼女は僕が姉のものとおぼしきマフラーを手にしていることに目ざとく気付いた。
「そ、それはお姉ちゃんのマフラー!な、なんてひどいことを…!
早くそれを返すのです!」
私、怒ってます!と言わんばかりにがなる松実妹さん。
これはもう強引に押し付けて帰っちゃおっかなー説明しようにも会話にならなそうだし。
できればクールに颯爽と去りたいところではあったんだけど…。
「く、玄ちゃん…。ち、違うの…」
おや?まさかの援護射撃が。
「えっと…、マフラー、風に飛ばされちゃって、困って探してたんだけど、彼が、届けてくれたの。でも、私、男の子苦手で…。なんて言えばいいか分からなくて黙っちゃってただけなの…。だから…、えと…その…」
もじもじぷるぷると震えながらではあるがちゃんと僕をかばってくれた松実さん。
うん、もうそれだけで許すよね男なら。むしろ癒されたわ。
「そ、そうだったの!?はわわ…。ご、ごめんなさい!私てっきり…!」
気にするなよおもち天使。今の僕の心はまさしく聖人の如く清らかなんだ。
そんな些細な事、むしろ美しき姉妹愛だと笑って流せるさ。
「ああいや、こちらこそいきなり押しかけちゃった感があったから気にしないでよ。
それじゃあ、僕はこの辺で」
さて、今度こそクールに去るぜ!
とか思ってたのにあれー?
「ゆっくりしていってね!」
「お、お菓子食べる?」
松実間の客間に、今僕はいるのだった…。
走り去ろうとした僕の手を肩が外れんばかりの勢いでつかんだ玄ちゃん(呼べと言われた)に、ぜひお礼を!と手を引かれ。
控えめについてきた松実さんと共にお父さんに紹介され。
男の子を連れてきた姉妹に訝しげな顔をしていたお父さんも、お姉ちゃんのマフラーを届けてくれたの!と玄ちゃんが紹介すると恐縮してしまうくらいの歓迎を受けた。
おいしい夕飯をご馳走するよ!とのお父さんの声を丁重にお断りして、(夕飯時にいないとなればお母様がどんな顔することやら)客間に通されたわけなんだれど。
率先してしゃべっているのはやっぱり玄ちゃんだった。
何度も何度もお礼を言いつつ、松実さんとの話をする彼女。
こちらまで明るくなるような笑顔に、なんだか初めて、転生してよかったなと思えた。
松実さんはこちらをチラチラと窺いつつ、目が合うとサッとそらされる。
でも、僕を気遣ってくれる気持ちがほんわりと伝わってきて、また彼女に癒された。
そんなこんなで和やかに話していると、部屋の隅に置かれた雀卓マットが目に入った。
「これ、麻雀…だよね?」
僕の言葉に、玄ちゃんは目を輝かせた。
「うん!君も麻雀するの?」
「いや、興味はあったんだけど男子ってどうしてもサッカーとかに行っちゃうから機会がなくて」
「なら!私たちが教えて上げる!ね?お姉ちゃん!」
「う、うん…。私で、いいなら…」
これは予想外の展開!しかし渡りに船とはこのことか。
近頃教本でも買おうかと悩んでいたところだったので素晴らしいタイミングである。
「じゃあ基本的なことから教えるね!まずは牌の種類から…」
「こ、こっちはワンズ、これがピンズでもういっこがソウズ。あとはこの字が書いてあるもが字牌。わ、わかった?」
「麻雀は役っていうのを作るゲームなんだけど、一役から、最強の役満っていうのがあって…。詳しく説明すると…」
「き、基本的には、三枚の組み合わせと、同じ牌二枚を作るゲーム…かな?」
「他の人が捨てた牌も、状況によって使うことができるのです!左隣の人の捨て牌が自分の順子だったらチー!トイツが手牌にあってその牌を他の人が捨てたらポン!手配に暗刻があってもう一枚同じのを引いたら暗槓!誰かがその牌を捨てたら明槓!ができるのです!」
松実姉妹による指導によって、大まかだった麻雀の知識が大分修正されたようだ。
ツモ!とロン!の違いも分かったし。以前の勘違いは恥ずかしすぎることも分かった。
じゃあとりあえず打ってみよう!って事になったので三麻をすることになった。
三麻とは、三人用の麻雀のルールである。
基本的には二萬~八萬を抜いて行い、チー禁止、北牌を共通ドラにするなどの特殊ルールが設けられるものである。
初めての麻雀が三麻かと思いつつ、いい試金石になればいいなと思い対局をスタートした。
うん、なるほど。
「ポン!」
ふむふむなるほど。
「つ、ツモ。4000、8000です」
なんとなく、わかった。
これを打てば安全牌でここで鳴けば有効牌。
これを積もれれば上がれるってのが感覚的に理解できた。
お試し的な三麻でこれなのだから本当の麻雀ではどうなんだろと疑問を抱きつつ、玄ちゃんのトップで終局を迎えた。
「やったー!勝ったのです!」
「あ、あう…。負けちゃった…。お姉ちゃんなのに…」
「麻雀!面白いな!」
玄ちゃんは純粋に勝利を喜び、松実さんはお姉さんとして敗戦に嘆き、僕は麻雀の面白さに震えた。
「麻雀って!面白いな!」
「うん!そのとおりなのです!」
「えと…、うん…!」
ここに確かに、阿知賀麻雀教室より先の、麻雀同好会が誕生したのでした。