HELL紅魔郷SING   作:跡瀬 音々

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いつの間にか書き始めてから一年以上過ぎていたということに気付く今日この頃。

途中で焦燥感に駆られて推敲ちょっとサボってしまったのでミスや矛盾等あったら教えて頂きたいと思います。

という珍しく読者に丸投げスタイル。


※後半が続きとの整合性を損なっていたため推敲しました。


Prière(7)

「クッ……ははははは! どうした! 来い! もっと! もっとだ!」

 

「舐めきったマネを……!」

 

アーカードは、何やら意味ありげにその姿形を変えたものの、逆転した形勢は揺るがなかった。

 

絶え間なく続く、咲夜の一方的な蹂躙。

しかし、その中でもどこか余裕を含んだ、小馬鹿にするような笑みを浮かべるアーカードに、咲夜は苛立ちと不安を募らせる。

 

そして、徐々に彼女を蝕み始めた身体の軋みと焦燥感。

 

(身体が、もたない……? もうなの!? せめて、あともう少しだけ……!)

 

「舐めてなどいない。舐めているのは()()だ。私は、お前の余興に付き合っているだけだ。こんなもの、まるで子供の遊びだ。ガキの喧嘩だ。だから()()になってやっただけさ。しかし、老いた姿のお前は、その(ザマ)の何兆倍も何京倍も美しかったというのに……なんて醜い(ザマ)だ」

 

「……黙れッ!」

 

アーカードの言葉を遮るように、湧き上がる消極的な感情を振り払うように、咲夜の猛攻は続く。

それでも、アーカードは一層激しさを増すその攻撃に少なからずダメージを受けながらも、それに構わず舌戦を繰り広げる。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()に頼った時点で、()()としてのお前は()()()()……本当に、醜悪な(ザマ)だな。お前がいかに人間を自称しようと、お前はもはや()()()人の形をした()()と成り果てたのだ! 私と同じく、な……」

 

「……勘違いも甚だしいわね。やっぱり、アナタは()()()()()よ、吸血鬼。たとえ、()()()がどうあろうと、()()()……言ったでしょう? ()()()()()()、アナタを斃す、と。この身を()()()()()()()にやつそうとも、それで()()()のなら、本望よ」

 

互いに死線を超えるに紙一重の、物理的な攻防の最中、間断無く交わされる言葉により、真っ向から衝突を繰り返す両者の信念。

 

そして、その()()()()()()という事実によって、咲夜が()()()した勝利への陰り。

 

即ち、制限時間(タイムリミット)が迫りつつあるという実情。

 

「勘違いしているのは()()()だ? 化物を打倒するのは、いつだって()()だ。()()()()()()()()()()()のだ!」

 

「戯言を……ッ!」

 

()()に城主ひとりになったとしても、(アーカード)は彼ひとりでも恐ろしい吸血鬼であった。

たとえ全ての()()()を解き放ったといえども、地面に広がる『影』は紛れも無く彼()()()()であり、少女の姿をした()を斬り刻むだけではきっと、致命の一撃に成り得ないであろうことは、ここに至るまでの状況が証明している。

とはいえ、最後の切り札(ジョーカー)を切った咲夜に、何か他の策があるはずもなく、彼女はただひたすらに少女の虚像とその身代わりになる『影』の亡者達を滅し、アーカードの生命力を削り続ける。

 

(まだ……まだよ! まだ()()()を斃していない! まだ、なのに……ッ!)

 

だが、次第に、露呈し始める瑕疵。

振るう度、精彩さを欠くナイフの連撃。

加えて、能力の行使も杜撰となりつつあるのか、未だ予備動作の段階で抑えてはいるものの、度々反撃を許し始めている現状。

攻めるほど、反撃を捌くほど、悲鳴をあげる体。

咲夜に()()()()時間は、もう()()長くはないようだった。

 

いつしか、咲夜の一方的な攻撃は鳴りを潜め、二人の闘争は一進一退、泥仕合の様相を呈し始めていた。

 

「これ以上の問答は無用ね……悪夢も、そろそろ終わりにしましょう!」

 

だが、状況は咲夜に戦闘の長期化を許さない。

そこで、彼女は考える。

このまま攻撃を継続することが不可能なら。

今までの方法では、一瞬にして致命傷を与えられないのなら。

変幻自在の『影』により、その急所(しんぞう)を捉えられないのなら。

 

一体如何なる手段を用いれば、目の前の敵を屠れるのか。

 

苦悩の末、彼女が導き出した答えは皮肉にも、相対する敵が今まさに仕掛けている攻撃に酷似した攻撃を行うことーー即ち、持てる全てを攻撃に振っての、無差別広域攻撃であった。

飛び上がった自身を中心に、上下左右前後全てを隙間なく覆い尽くす、いわば()()()()()()を築き上げ、その全てを同時に叩き込む。

それは、味方を巻き込んでしまうリスクがあまりに大きいため、この土壇場まで無意識の内に想い描くことさえ避けていた、乾坤一擲の、最後の一手。

もっとも、彼女に仲間を傷付ける気など毛頭なく、最後の攻撃の()()()が終わり次第、主人達を出来る限り避難させる、或いは自身の身を盾としてでも護り抜く算段を整えてはいた。

 

(こんな時に、アナタをアテにするのは癪だけど……さっきの言葉、信じてるわよ、紫)

 

しかし、肝心の()()()能力行使がどれだけ()()のか、()()が、自分のこととはいえある程度しか把握できず、彼女は()()()()()と睨んだ一人の女を脳裏に描き、自嘲気味に微笑みを浮かべた。

 

(最低でも、美鈴とこあの無事は確保できるように……さぁ、行くわよ()()死の舞踏(ラストダンス)と洒落込みましょう)

 

咲夜はアーカードとの肉薄の距離から小さく飛び退くと、追撃を振り払いながら、最後の時間操作の持続時間をより長いものとするべく、集中を高め始める。

 

「フン。あいにく、その悪夢とやらを()()()()()()()気はない。()()お前では私を倒せない、と言っているんだ。それに、腹が減った」

 

その時、最後の攻撃に打って出ようとする咲夜の前に、アーカードは右手を突き出し、その甲を見せ付けるように翳す。

そこに浮かぶ、不気味に脈動する術式。

 

「お前は他愛も無く死ぬ」

 

そのアーカードの言葉を皮切りに、術式が妖艶な輝きを放ち、徐々にその禍々しさが増していく。

 

(もう少し……あと少しだけ、集中……集中!)

 

「もはや、全盛の姿を保つので精一杯なんだろう? さぁ、食事としよ……う?」

 

瞬間、前触れなく()()()()()()()

地下室に存在する全ての『影』の亡者が、一斉にアーカードに向き直り、その輪郭を崩しながら、()()()の濁流となって、彼の空腹を満たすために押し寄せた。

()()()()()()()

しかし、その『影』の波から、突如として溢れ出た、『影』より深い黒を纏った『()』。

そして、()()の向かう先、一城の()は、揺らめく『闇』が形成する陽炎じみた()()へと変貌していく。

 

そして。

 

「お、おおッ……!?」

 

()に溢れていた敵意が、殺意が、城主(ロード)の存在感が、否、アーカードの()()が闇に包まれ、()()した。

 

「なッ……! これ、は……ぐぅっ!?」

 

突然の出来事に集中を乱し、また、状況の整理が追いつかず、その不可解な現象に気を取られていた咲夜の胸を、不意に背後から貫く『闇』の()

 

その衝撃で懐から飛び出した懐中時計が、持ち主の体とともに抉られた事を主張するかのように、上端の一部を失った状態で地面に落ち、無機質な金属音を響かせた。

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