名探偵 怜-Toki-   作:Iwako

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第三章、入ります。
ここから、少しづつ登場人物が増えます。


私の小説(?)の癖というか文体で、作中で一人称と三人称が入り混じりますが、
ご了承くださいまし。今回は、基本は怜視点。途中の竜華かセーラの会話が三人称です。




三巡先もよろしくお願いします。


◆―◇―名探偵VSペテン師―◇―◆
三巡先 欺きの折り紙①


 

「怜、どの辺止めたらええんや?」

「どこでもええよ。ここでは駐車した場所が、駐車場や」

「アバウトでええな。オーライ、竜華、後ろ頼むわ」

「はーい、任せとき!」

 

ギアがコトンと音を立て、車はゆっくり下がり始める。

といっても、ウチらに何も障害物はない。

生い茂った雑草が障害と言えば障害やけど、トラックが無残に押しつぶしていく。

 

「よっしゃ、ツイタデー」

「すまんな、ホンマに助かったわ」

「運転の上手さは折り紙付きやな」

 

「「さっすがセーラ」」

 

「おう、こういう仕事は任せとけや!」

 

 

短髪・茶髪・筋肉アホ。その名は江口セーラ。竜華に続く、ウチの第二の幼馴染。

職業はトラックの運チャンで、めちゃくちゃ運転が上手い。

三人の中で、唯一車を持っとったりもする。

今日は、この間の報酬で買い物をして、その荷物運びにセーラが召喚されたっちゃうわけや。

 

「ひっさしぶりやなあ、このボロい家。全然変わってないやん。こんなんで客来るんか?」

「やから今日必要なもの少し買ったんやんか」

「あぁ、それでオレが今日呼ばれたんか」

「ちなみにこれはウチの進言やねん」

「ぷぷっ、ドヤ顔やめーや、わろてまうやろ」

「ど、ドヤ顔なんてしてへんもん!これが私のふつーの顔です!」

「普通からドヤ顔とか、フラワーガールは流石やなぁ」

「フ、フラワーガール?!セーラ、ウチの仕事ちょっと馬鹿にしとらん?」

「してま千円ー」

「……ぶちっ。セーラ、今日という今日は許さんで!!」

「おーおー、喧嘩か?売られた喧嘩は買うで?」

 

まーた始まった。セーラと竜華の二人漫才。

バカの二つ覚えみたく、この二人が顔を合わせるといっつもこうや。

あまりに会話のテンポが速いから、ウチは毎回置いてけぼりにされる。

 

「やるか?ん?」

「やるん?」

「西の人間として、ここは引けんなぁ」

「アホか、引くんやったら今が最後のチャンスやで竜華」

「こっちのセリフや、どついたろか、おぉ?」

「……ぷっ」

 

「怜、どうした?」

「いや、二人共楽しそうやなって」

「あ、分かる?」

「そりゃあ楽しいに決まっとるやろ」

 

セーラは、白い歯をのぞかせてニカっと笑って言った。

 

「オレは、この三人で集まれるだけで満足や」

「ふふっ」

「……三人揃うと、やっぱり楽しいんやな」

 

なんやろか…時間が、ゆっくり流れてるみたいや。

 

「あれ、怜?その言い方やと、ウチだけじゃもの足りんいうこと?」

「やっぱりオレがおらんと締まらんちゅうことやな……」

「ううっ、怜、ひどい、ひどいで!」

「ふふん、竜華の存在なんて所詮そんなもんや!!」

 

竜華は両手を顔で覆いながら、泣く真似をする。

これ以上はないやろってくらい下手な鳴きまねに、自然と笑みがこぼれてしまう。

久しぶりの三人での再会に、しばらく話のタネが尽きんかった。

 

 

 * 

 

 

「さてさて、休憩したし、部屋の確認も済んだし、そろそろ運び込むか」

「そうやね」

「あ、怜は休んどってええよ。ウチとセーラでやるからね」

「いや、それは…ウチが使うもんやし」

 

二人は腕まくりをして、作業に移る準備をする。

セーラは、いつの間にか普段の仕事着に着替えとるし、竜華はエプロンを着け始めた。

 

「ええってええって。力仕事はオレの専売特許やしな」

「そうそう、セーラには他にできることがないんやし、気にせんとって」

「せやせや……ってオイ、竜華それはひどすぎへんか?!」

「ふふんさっきのお返しや♪」

 

頼りきりなるのは申し訳けど、正直なところ買ってきたものを考えると、ウチにできることは少なそう。

足手まといになるだけやと判断したウチは、二人の申し出に甘えることにした。

 

「…ありがとう、二人とも」

「ええってことや。怜はのんびりテレビでも……はないんか」

「怜は休みよったらええで」

「とりあえず、のんびり横になっとくわ。ありがとう」

「ほななー」

 

キーーーと、長く甲高い音がする。

今にも外れそうな戸は、昔取った杵柄と言わんばかりに、しぶとくその役割を果たし続ける。

横になる前に、今日の目的を思い出してみる。

福路さんからの報酬で、必要なものを揃えることや。

部屋の中には机と椅子(両方拾ってきたクソボロ)、商談用のちっこいソファオンリー、せやからいるもんを補充。

ウチは別に贅沢せんでも生活できるけど…竜華は許してくれへんかった。

 

でも――――よくよく考えてみたら5万円で買える家具は知れてるんよな。

竜華は何を買うか楽しみに考えてくれとったみたいやけど、ほとんど買えんかった。仕方ないな。

足りん分はウチがお金出す言うけど、丁重にお断りしといた。だって本当にいらへんし…必要なもんは、最低限あればええ。

結局ちっこいタンスとあとはティーセットだけになった。これで来た人に、ちゃんとお茶は出せるし…

 

 

  *

 

 

「……竜華」

「ん?」

「調子はどうや」

「まずまずやで。風越の取引なくなったからしんどいけど、こんくらいでへこたれられへんし」

「あの事件は…ホンマ凄かったな。オレの仕事場でもえらい話題に上がったで。あ、そっち持ってや」

「了解。さすが名門、ちゅうとこか」

 

二人は外で荷物の運び出しを始めた。

仕事で使う2tトラックとまではいかないものの、タンスくらいのモノなら十分に収納できる乗用車を、セーラは持っていた。

作業を続けながら、セーラは竜華に話しかける。

 

「なぁ…あの事件、本当に怜が解決したん?」

「そうやで。あれ、まさか信じてないん?」

「いやいや、そんなことない。怜ならやりそうやしな」

「少ない情報やのに、あっさり事件解決するもんやから…びっくりするわ。で、そっちは?」

「オレは変わらずや。ま、自分に向いた仕事やと思うで。頭より体使う仕事がしっくりくるわ」

 

まさにこんな感じでな、と言いつつスムーズにタンスの下に腰を入れる。

竜華が花の扱いに慣れているように、セーラは荷物の扱いに関してはプロだった。

引っ越しや大型の荷物の購入の時、普通業者に頼むところを、

この幼馴染の間柄では、江口セーラという人間が一人いるだけで、全て賄いきれる。

 

「そっか」

「お、竜華そこちょっと傾いとるで。真っ直ぐ運ぼうや」

「ごめんごめん」

「それで…最近様子はどんな感じや?」

「変わっとらんよ。でも、あれから仕事はないみたいや。やっぱり知名度がないのは痛いな」

「場所も場所やし、そりゃそうなるか」

「風越の事件を解決したのが怜って、世間には知られてないし…」

 

全ての荷物を運び出し、セーラは軽くジャンプしたかと思うと、バックドアに体重を乗せそのまま着地した。

人っ気も車っ気もない場所だけに、開閉音は気持ちいいほどに響き渡る。

 

「そうか…もっと高い報酬の仕事とかあったらアイツも助かるんやろうなぁ」

「一回で百万ってかなりええ方やと思うけどな…」

「確かに。ちなみに残りの95万は?」

「そっちは、その…渡すらしいで」

「そうか」

「うん…」

 

「………」

「………」

 

「それじゃ、そろそろ戻るか」

「せやね」

 

 

セーラは、鍵をせずに事務所に戻ろうとしたため、竜華は注意しようとしたが

無意味なことに気が付いて、そのまま二人で事務所に戻った。

 

 

   *

 

 

「お。二人ともおかえり」

「おっす。タンス持ってきたデーこれどこに置く?」

「そうやなあ…」

 

これだけ物の置く場所があると、どこに置くかどうか迷ってまう。

今事務所の中にあるものを大まかに言うと

事務作業の机と椅子のセット、商談用のソファー、布団、後は小物が適当にその辺に転がってる。

他はスペースが余っとる状態で、空間に対して中にあるモノの比率が不自然。

%で表すなら、空間に対してモノの比率は15%くらいな気がする。

 

「こんだけ広かったら、どこに置いても一緒ちゃう?」

「布団の近くでええんやない?めんどくさがりの怜やし、起きてすぐ着替えられる方がええやろ」

「よし、決定や」

「ってはやっ!」

「んでティーセットは……タンスの上において埃かぶらんように布でもかけとけばオッケーや」

 

竜華の鶴の一声で決まった。

家具の配置とか、模様替えとかそういうのよく分からんから助かるわ。

 

「あっさり決まったな。これで少しは普通の部屋らしく…」

「どこがや!!まだ全然なってへんよ!普通の部屋の完成度10としたら、これ0.1くらいやで!」

「えーそんなに?」

「そもそも生活インフラない時点で0点上げてもいいくらいなんやけど…」

 

ちなみに生活インフラは水道、電気、ガスのことを指す。

竜華曰く、+インターネットらしいんやけど、そこまでウチは求めてないで。

 

「やからそれはなんとかなるって」

「…セーラはどう思う?」

「うーん、オレとしてはテレビがないのは辛いな。やっぱり生活には楽しみがないと…

 家から帰った後、頭を空っぽにして楽しめる何かが必要やん?」

「それもいらんって。だいたいテレビなら頭の中で流せばええやん」

「は?」

「え?」

 

「ええか、こうして目をつぶって…頭の中で楽しいことを考えるんやで…」

「デコレーションで見た目華やか、味も言うことなしのショートケーキ…を特集しとる料理番組」

「アトラクションいっぱいの遊園地……締めは、もちろん夕焼けをバックに観覧車、これはドラマかな」

「スリル満点、先の見えない展開!2時間サスペンスドラマ……いやいや、そこでその犯人は予想してなかった!」

「ワクワク、ドキドキ、ハラハラ……頭の中やったら、なんだって作れるんや。人間って天才やと思うわ……ん?」

 

あれ、二人とも目頭を押さえてどうしたんやろか。

 

「怜……お金、貯めて、、、、テレビ、買おうな。いや、オレが、買ったる」

「うっ、ひっく……うん……ぐすっ……ぜ、ぜったいや……ぜったいこうたる……」

「………」

 

さすがに今のは冗談やったんやけど。

でも、こんな空気にしといて、今更「冗談やで」はさすがにまずい気がする。

よ、よし。火の粉が降りかかる前に、話題変えよ。

 

「ふ、二人とも、お茶でも飲まん?せっかくティーセット買ってきたし」

「…そうやな。竜華、オレたちがこんなんやったらあかんで!早速お茶の準備や!」

「分かった!任せて!美穂ちゃんが来た時は不発に終わったけど…今度は最高のお茶を入れてみせる!」

「う、うん。ありがとうな、二人とも」

 

  *

 

コポコポと音を立てて、お湯の準備をやかんが告げる。

今日はセーラがカセットコンロを持ってきてくれたから、部屋の中でお湯が沸かせる。

こうしたちょっとしたことが、この事務所ではレボリューションになる。

竜華は、手際よくお茶を淹れた。ホンマに、福路さん向けに練習しとったんやなぁ。

 

「よっし、でけた!」

「おーええ香りやなぁ」

「これがこのティーセットの初体験っちゅうことか」

「……怜、なんでそんな言い方するん?」

「あれ、竜華さん何考えたん??ねえねえ、竜華さん?」

「セーラ!怒るで!!」

「じょ、冗談やさかい…冷めんうちに飲もで。な」

「もぅ…」

 

「「「いただきます」」」

 

「……うまい」

「ふふ、せやろ?」

「やるやん、竜華」

「褒められると照れるで」

「水がええんやろなぁ」

「怜、それは褒めとるん?」

「そらもう」

 

竜華はほっぺを膨らませて拗ねるフリをして、ウチのほっぺを突いてきた。

負けじとウチは、竜華の胸を突いた。右と左と頭、計三回、引っぱたかれた。

 

「それ以上に…こういう休みの昼下がりって最高やなぁ」

「そうやね、なーんにも考えんでええ」

「ほんまやな…」

 

「……そうや、オレお茶菓子持って来とったんや」

「それは甘い?」

「怜、その反応はどうなんや…」

「うまいお茶もあることやし、分けて食べようで。饅頭やし、お茶にも合うやろ」

「饅頭!!」

「気が利いとるね、セーラ。じゃあ早速―――――」

「あーあーストップ」

 

セーラは、そうは問屋が卸さない、といったばかりに待ったをかける。

 

「え?」

「ただ食べるだけじゃ面白くないやん…ちょっとゲームしようや」

「ゲーム?」

「そう。名づけて――――――饅頭ロシアンルーレット!」

 





次回、セーラが勝負をしかける!
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