ここから、少しづつ登場人物が増えます。
私の小説(?)の癖というか文体で、作中で一人称と三人称が入り混じりますが、
ご了承くださいまし。今回は、基本は怜視点。途中の竜華かセーラの会話が三人称です。
三巡先もよろしくお願いします。
三巡先 欺きの折り紙①
「怜、どの辺止めたらええんや?」
「どこでもええよ。ここでは駐車した場所が、駐車場や」
「アバウトでええな。オーライ、竜華、後ろ頼むわ」
「はーい、任せとき!」
ギアがコトンと音を立て、車はゆっくり下がり始める。
といっても、ウチらに何も障害物はない。
生い茂った雑草が障害と言えば障害やけど、トラックが無残に押しつぶしていく。
「よっしゃ、ツイタデー」
「すまんな、ホンマに助かったわ」
「運転の上手さは折り紙付きやな」
「「さっすがセーラ」」
「おう、こういう仕事は任せとけや!」
短髪・茶髪・筋肉アホ。その名は江口セーラ。竜華に続く、ウチの第二の幼馴染。
職業はトラックの運チャンで、めちゃくちゃ運転が上手い。
三人の中で、唯一車を持っとったりもする。
今日は、この間の報酬で買い物をして、その荷物運びにセーラが召喚されたっちゃうわけや。
「ひっさしぶりやなあ、このボロい家。全然変わってないやん。こんなんで客来るんか?」
「やから今日必要なもの少し買ったんやんか」
「あぁ、それでオレが今日呼ばれたんか」
「ちなみにこれはウチの進言やねん」
「ぷぷっ、ドヤ顔やめーや、わろてまうやろ」
「ど、ドヤ顔なんてしてへんもん!これが私のふつーの顔です!」
「普通からドヤ顔とか、フラワーガールは流石やなぁ」
「フ、フラワーガール?!セーラ、ウチの仕事ちょっと馬鹿にしとらん?」
「してま千円ー」
「……ぶちっ。セーラ、今日という今日は許さんで!!」
「おーおー、喧嘩か?売られた喧嘩は買うで?」
まーた始まった。セーラと竜華の二人漫才。
バカの二つ覚えみたく、この二人が顔を合わせるといっつもこうや。
あまりに会話のテンポが速いから、ウチは毎回置いてけぼりにされる。
「やるか?ん?」
「やるん?」
「西の人間として、ここは引けんなぁ」
「アホか、引くんやったら今が最後のチャンスやで竜華」
「こっちのセリフや、どついたろか、おぉ?」
「……ぷっ」
「怜、どうした?」
「いや、二人共楽しそうやなって」
「あ、分かる?」
「そりゃあ楽しいに決まっとるやろ」
セーラは、白い歯をのぞかせてニカっと笑って言った。
「オレは、この三人で集まれるだけで満足や」
「ふふっ」
「……三人揃うと、やっぱり楽しいんやな」
なんやろか…時間が、ゆっくり流れてるみたいや。
「あれ、怜?その言い方やと、ウチだけじゃもの足りんいうこと?」
「やっぱりオレがおらんと締まらんちゅうことやな……」
「ううっ、怜、ひどい、ひどいで!」
「ふふん、竜華の存在なんて所詮そんなもんや!!」
竜華は両手を顔で覆いながら、泣く真似をする。
これ以上はないやろってくらい下手な鳴きまねに、自然と笑みがこぼれてしまう。
久しぶりの三人での再会に、しばらく話のタネが尽きんかった。
*
「さてさて、休憩したし、部屋の確認も済んだし、そろそろ運び込むか」
「そうやね」
「あ、怜は休んどってええよ。ウチとセーラでやるからね」
「いや、それは…ウチが使うもんやし」
二人は腕まくりをして、作業に移る準備をする。
セーラは、いつの間にか普段の仕事着に着替えとるし、竜華はエプロンを着け始めた。
「ええってええって。力仕事はオレの専売特許やしな」
「そうそう、セーラには他にできることがないんやし、気にせんとって」
「せやせや……ってオイ、竜華それはひどすぎへんか?!」
「ふふんさっきのお返しや♪」
頼りきりなるのは申し訳けど、正直なところ買ってきたものを考えると、ウチにできることは少なそう。
足手まといになるだけやと判断したウチは、二人の申し出に甘えることにした。
「…ありがとう、二人とも」
「ええってことや。怜はのんびりテレビでも……はないんか」
「怜は休みよったらええで」
「とりあえず、のんびり横になっとくわ。ありがとう」
「ほななー」
キーーーと、長く甲高い音がする。
今にも外れそうな戸は、昔取った杵柄と言わんばかりに、しぶとくその役割を果たし続ける。
横になる前に、今日の目的を思い出してみる。
福路さんからの報酬で、必要なものを揃えることや。
部屋の中には机と椅子(両方拾ってきたクソボロ)、商談用のちっこいソファオンリー、せやからいるもんを補充。
ウチは別に贅沢せんでも生活できるけど…竜華は許してくれへんかった。
でも――――よくよく考えてみたら5万円で買える家具は知れてるんよな。
竜華は何を買うか楽しみに考えてくれとったみたいやけど、ほとんど買えんかった。仕方ないな。
足りん分はウチがお金出す言うけど、丁重にお断りしといた。だって本当にいらへんし…必要なもんは、最低限あればええ。
結局ちっこいタンスとあとはティーセットだけになった。これで来た人に、ちゃんとお茶は出せるし…
*
「……竜華」
「ん?」
「調子はどうや」
「まずまずやで。風越の取引なくなったからしんどいけど、こんくらいでへこたれられへんし」
「あの事件は…ホンマ凄かったな。オレの仕事場でもえらい話題に上がったで。あ、そっち持ってや」
「了解。さすが名門、ちゅうとこか」
二人は外で荷物の運び出しを始めた。
仕事で使う2tトラックとまではいかないものの、タンスくらいのモノなら十分に収納できる乗用車を、セーラは持っていた。
作業を続けながら、セーラは竜華に話しかける。
「なぁ…あの事件、本当に怜が解決したん?」
「そうやで。あれ、まさか信じてないん?」
「いやいや、そんなことない。怜ならやりそうやしな」
「少ない情報やのに、あっさり事件解決するもんやから…びっくりするわ。で、そっちは?」
「オレは変わらずや。ま、自分に向いた仕事やと思うで。頭より体使う仕事がしっくりくるわ」
まさにこんな感じでな、と言いつつスムーズにタンスの下に腰を入れる。
竜華が花の扱いに慣れているように、セーラは荷物の扱いに関してはプロだった。
引っ越しや大型の荷物の購入の時、普通業者に頼むところを、
この幼馴染の間柄では、江口セーラという人間が一人いるだけで、全て賄いきれる。
「そっか」
「お、竜華そこちょっと傾いとるで。真っ直ぐ運ぼうや」
「ごめんごめん」
「それで…最近様子はどんな感じや?」
「変わっとらんよ。でも、あれから仕事はないみたいや。やっぱり知名度がないのは痛いな」
「場所も場所やし、そりゃそうなるか」
「風越の事件を解決したのが怜って、世間には知られてないし…」
全ての荷物を運び出し、セーラは軽くジャンプしたかと思うと、バックドアに体重を乗せそのまま着地した。
人っ気も車っ気もない場所だけに、開閉音は気持ちいいほどに響き渡る。
「そうか…もっと高い報酬の仕事とかあったらアイツも助かるんやろうなぁ」
「一回で百万ってかなりええ方やと思うけどな…」
「確かに。ちなみに残りの95万は?」
「そっちは、その…渡すらしいで」
「そうか」
「うん…」
「………」
「………」
「それじゃ、そろそろ戻るか」
「せやね」
セーラは、鍵をせずに事務所に戻ろうとしたため、竜華は注意しようとしたが
無意味なことに気が付いて、そのまま二人で事務所に戻った。
*
「お。二人ともおかえり」
「おっす。タンス持ってきたデーこれどこに置く?」
「そうやなあ…」
これだけ物の置く場所があると、どこに置くかどうか迷ってまう。
今事務所の中にあるものを大まかに言うと
事務作業の机と椅子のセット、商談用のソファー、布団、後は小物が適当にその辺に転がってる。
他はスペースが余っとる状態で、空間に対して中にあるモノの比率が不自然。
%で表すなら、空間に対してモノの比率は15%くらいな気がする。
「こんだけ広かったら、どこに置いても一緒ちゃう?」
「布団の近くでええんやない?めんどくさがりの怜やし、起きてすぐ着替えられる方がええやろ」
「よし、決定や」
「ってはやっ!」
「んでティーセットは……タンスの上において埃かぶらんように布でもかけとけばオッケーや」
竜華の鶴の一声で決まった。
家具の配置とか、模様替えとかそういうのよく分からんから助かるわ。
「あっさり決まったな。これで少しは普通の部屋らしく…」
「どこがや!!まだ全然なってへんよ!普通の部屋の完成度10としたら、これ0.1くらいやで!」
「えーそんなに?」
「そもそも生活インフラない時点で0点上げてもいいくらいなんやけど…」
ちなみに生活インフラは水道、電気、ガスのことを指す。
竜華曰く、+インターネットらしいんやけど、そこまでウチは求めてないで。
「やからそれはなんとかなるって」
「…セーラはどう思う?」
「うーん、オレとしてはテレビがないのは辛いな。やっぱり生活には楽しみがないと…
家から帰った後、頭を空っぽにして楽しめる何かが必要やん?」
「それもいらんって。だいたいテレビなら頭の中で流せばええやん」
「は?」
「え?」
「ええか、こうして目をつぶって…頭の中で楽しいことを考えるんやで…」
「デコレーションで見た目華やか、味も言うことなしのショートケーキ…を特集しとる料理番組」
「アトラクションいっぱいの遊園地……締めは、もちろん夕焼けをバックに観覧車、これはドラマかな」
「スリル満点、先の見えない展開!2時間サスペンスドラマ……いやいや、そこでその犯人は予想してなかった!」
「ワクワク、ドキドキ、ハラハラ……頭の中やったら、なんだって作れるんや。人間って天才やと思うわ……ん?」
あれ、二人とも目頭を押さえてどうしたんやろか。
「怜……お金、貯めて、、、、テレビ、買おうな。いや、オレが、買ったる」
「うっ、ひっく……うん……ぐすっ……ぜ、ぜったいや……ぜったいこうたる……」
「………」
さすがに今のは冗談やったんやけど。
でも、こんな空気にしといて、今更「冗談やで」はさすがにまずい気がする。
よ、よし。火の粉が降りかかる前に、話題変えよ。
「ふ、二人とも、お茶でも飲まん?せっかくティーセット買ってきたし」
「…そうやな。竜華、オレたちがこんなんやったらあかんで!早速お茶の準備や!」
「分かった!任せて!美穂ちゃんが来た時は不発に終わったけど…今度は最高のお茶を入れてみせる!」
「う、うん。ありがとうな、二人とも」
*
コポコポと音を立てて、お湯の準備をやかんが告げる。
今日はセーラがカセットコンロを持ってきてくれたから、部屋の中でお湯が沸かせる。
こうしたちょっとしたことが、この事務所ではレボリューションになる。
竜華は、手際よくお茶を淹れた。ホンマに、福路さん向けに練習しとったんやなぁ。
「よっし、でけた!」
「おーええ香りやなぁ」
「これがこのティーセットの初体験っちゅうことか」
「……怜、なんでそんな言い方するん?」
「あれ、竜華さん何考えたん??ねえねえ、竜華さん?」
「セーラ!怒るで!!」
「じょ、冗談やさかい…冷めんうちに飲もで。な」
「もぅ…」
「「「いただきます」」」
「……うまい」
「ふふ、せやろ?」
「やるやん、竜華」
「褒められると照れるで」
「水がええんやろなぁ」
「怜、それは褒めとるん?」
「そらもう」
竜華はほっぺを膨らませて拗ねるフリをして、ウチのほっぺを突いてきた。
負けじとウチは、竜華の胸を突いた。右と左と頭、計三回、引っぱたかれた。
「それ以上に…こういう休みの昼下がりって最高やなぁ」
「そうやね、なーんにも考えんでええ」
「ほんまやな…」
「……そうや、オレお茶菓子持って来とったんや」
「それは甘い?」
「怜、その反応はどうなんや…」
「うまいお茶もあることやし、分けて食べようで。饅頭やし、お茶にも合うやろ」
「饅頭!!」
「気が利いとるね、セーラ。じゃあ早速―――――」
「あーあーストップ」
セーラは、そうは問屋が卸さない、といったばかりに待ったをかける。
「え?」
「ただ食べるだけじゃ面白くないやん…ちょっとゲームしようや」
「ゲーム?」
「そう。名づけて――――――饅頭ロシアンルーレット!」
次回、セーラが勝負をしかける!