この章は、比較的投稿ペースはやめで行けると思います。
《初日 夕方 松実館・玄関》
「ようこそ、松実旅館へ」
「ようこそなのです!!」
バスから降りるとすぐ、女将さんと従業員の子のお出迎えや。
どっちもロングヘアで清楚な感じ、美少女と言っても差し支えないな。
「ほえ~でっかい建物やね」
「こんにちはー予約していた清水谷です」
「私、女将の松実と申します…ようこそ、お越しくださいました」
「玄ちゃん、お客様のお荷物をお部屋に運んでくれる?それとご案内もお願い」
「おまかせあれ!!お荷物、お預かりしますねっ!」
黒髪ロングの方の子が、ウチらの荷物を預かってくれる。
なんや、この子、りゅーかに似てるな。髪とか、胸とか、なんというか見た目もそれっぽいし。
最初にあいさつしたほうの子は、雰囲気ちょっと違っとったけど。
しかし、この二人、ずいぶん若いなあ……
「怜、この旅館広いなぁ」
「築何年かな?」
「どうやろ、怜の家くらい年季入っとるんやない?」
「ウチの家と比べたら失礼やろ」
「そうやね」
「ウチの家に」
「そっち?!」
りゅーかとの会話もそこそこに、案内されるがままに廊下を歩いていって
ちょっとしたら、雰囲気のある襖が目に飛び込んできた。
襖を開けると――――――――
「おー」
「綺麗なお部屋!」
「はい、こちらが当館自慢のお部屋です!」
建物自体はけっこう古かったけど、中は掃除が行き届いとる。
ウチの事務所とは大違いやなあ。ウチはそういうの気にならん質やから、
掃除しようなんてモチベーションは全く湧いてこん。
あのオンボロを掃除しようとしたら、 逆に汚くなるまである。
「ふふっ、怜。ええやろ、綺麗なお部屋って」
「せやね」
「ということで、これを機に怜も頑張ってみよ?」
「う~ん……」
ウチはこう思うんや。もし自分で掃除がきちんとできるんなら、
こういう場所に来る価値がなくなると――――――。
そんな下らん屁理屈が頭に浮かんだ。
「お二人共、本日は松実館にようこそなのです!」
「あと2時間くらいでお夕飯ができますので!その間に温泉に入っていただければと思います!」
「もちろん、夕食後に入ってくださっても構いません!」
はえ~お湯にのんびりつかとったらご飯が出てくるって、ここは天国かなんか?
もう一生ここで暮らそうかな。
「怜、どうする?」
「ん、どっちでもええよ。竜華に合わせるわ」
「え?そう?じゃあ…」
「夕食後のお風呂はつらない?」
「どっちでもええんやないんかい!」
軽く叩かれる。
竜華のはたきは加減が分かっとるさかいな、音ほど痛くなかったりする。
ホンマに怒っとるときは痛いけど…
「ごめんごめん、じゃあこうしよや」
「今からお風呂に行く→夕飯→セーラのお土産を買う」
「これでええやろ?」
「ふんふん、怜にしてはちゃんと考えとるな、そうしよか」
「というわけで、そうします!」
「かしこまりました!」
「ちなみに、お二人は食べ物の好みとか、好き嫌いはありますか?
リクエストがあればその通りにお作りいたします!」
「うーん、ウチは食べ物ならなんでも食べるで。たとえ草の根でも」
「戦時中やないんやから…あ、ウチも構いません。お任せします」
「承知しました!」
「それじゃあ、おふとんはお二人がお土産をご覧になってる間、
敷かせていただくのです…いただきます!」
「はい、お願いしますー」
「おおきにー」
「それでは、失礼します!」
元気の良さとは裏腹に、丁寧に襖が閉じられる。
かと思ったら、ちょっとだけ間残して、そこから顔だけ出した女中さん。
「あ、言い忘れてました!」
「浴場にタオルはないので、お部屋のを持って行ってください!」
*
「よし怜、それじゃあさっそくお風呂行こっ!」
「せやな。それにしても……この女将さんと女中さんめっちゃ若ない?」
「それ思ったわ。ウチらと同じか…さっきの子なんか年下な気がする」
「同じくらいの子に敬語使われるんはなんかむず痒いな…」
ま、客商売やから丁寧な言葉遣いになるんはしゃーないけどな。
ウチだって、依頼人には最低限の言葉遣いは……しとるよな?
「確かに…よし、後であったら話に行こ!仲良くなれるかもしれんへん」
「せやな」
「もしかしたら、ウチのお花買ってもらえるかもしれんしな!旅館にだってお花は必要やし!」
「………竜華、抜け目ないな」
「お客様を増やすためには、こういう営業努力が大事なんやで!」
「なるほど…参考になります」
《大浴場 脱衣所》
暖簾を潜ってすぐ、でっかい看板が目に飛び込んでくる。
ほうほう…地下○○メートルから湧き出る天然温泉がどうのこうの…
そういうの詳しくないからよく分からへん。
「露天風呂もあるな」
「温泉の醍醐味やね!それにしても、お客さん少ない気がせん?」
「まるで貸切みたいやなぁ」
脱衣所だけじゃなくて、旅館全体にお客さんは…というより、館内から人気を感じんかった。
もちろん平日いうんはあるんやろうけど、それにしても旅館の規模に対して、
お客さんが少なすぎるような、印象をウチは受けた。
さ、服も脱いだしそろそ…お、体重計やん。乗るん久しぶりや。
「どれどれ……」
あぁ、ロクな食生活してないから…やっぱり。
たったの○○キロや…体脂肪率は……うわっ、ウチの体脂肪率低すぎへん?
「………」
「あ、竜華。どしたんぼ――と突っ立って」
「え、な、なんでも?」
「竜華も乗る?」
「う、ウチはええよ」
「え?なんで?」
らしくなく身をよじる竜華。なにその乙女らしいポーズ。可愛いやん。
「え、だって…自分の体重とか見たくないし…身体測定でもあるまいし」
「別にええやん。ほら、ドカッーっと、のりーや」
「『ドカっ』て?! ウチのことどういう目で見とるん?!」
「この体重計は100キロまで大丈夫みたいやし、なんとかなるやろ」
「とーーーーーーーきーーーーーーーー??」
あ、ちょっと苛めすぎた。
涙目になりながらこっちを睨みつけてくる。
「う、うそうそ。竜華スタイルええし、なんも恥ずかしがることないやん」
「そ、そうかな…?」
「そうそう。胸もおっきいし、腰くびれとるし、
ふともも柔らかくて、まるで霜降り肉みたいやし」
「最後!最後ぉ!!」
「ええか、竜華。ウチが食べ物の比喩で褒めるんやで?これは最高の評価や」
「えぇ……でもなぜか納得してしまうウチがいる…」
どこか腑に落ちへんとブツブツ言ってたら、流石にマッパのままいるのは寒なってきたね
とかお茶を濁しつつ、いよいよ浴場に入ることになった。
「それじゃあウチは先にはいっとくでー」
おおー広い広い。かけ湯、かけ湯……
「それにしても、やっぱり竜華胸でかいなあ…久しぶりに見たけど、あれは兵器や」
あんなんあったら、肩こるやろうなあ。
胸が小さいの気にしとる人多いけど…全然ウチは気にならん。
あっても邪魔やろうし、ウチやったら間違いなく持て余すしな。
「………」
「………」
「怜?何しとるん、胸になんか付いた?」
「な、なんも」
「じゃあ、入ろ!」
「りょうかいー」
―――――――――――――――――――――――――――――
それから、竜華と温泉を楽しんだ。
普段行く銭湯は混んでるし、お風呂も一種類しかないから疲れを癒すっていうよりは、
ただ体を清潔にするために行くって感じやったけど
今日は時間いっぱい、のんびりつかることができた。
途中途中サウナに行ったり(怜には危ないいうて、途中で止められた)
水風呂に入ったりして、バリエーションも楽しめた。
そして最後の仕上げに、露天風呂に行くことした。
「うわ~~いい眺めやなぁ…」
「ホンマ……夕日が沈みかけとる」
「あっちが怜の事務所がある方やない?」
「そうやな。あ、海。遠くに見えるんが南地区や」
「あーーーー仕事の疲れが癒されるーーーーーーーーーーー」
「せやな~~~最近ウチはニートやけど、癒されるわーーーー」
「いずみにかんしゃやな~~今度お礼せなアカンな~~~~~」
「ホンマやで~~」
あまりの気持ちよさに、露天風呂で20分近く過ごしてしまった。
だって、しゃーない。体はぽかぽか、頭から上はひんやりした空気、
このコンビネーションがたまらんのや。
この組み合わせ、言うなれば…こたつに入っとると、アイス食べたくなる、アレや。
とにかく、逆相性のものを組み合わせると、ロクなことにならん、いい意味で。
「セーラも来れたら良かったなあ……ふにゅ……」
「残念やけど……ちゃんとお土産買っていこ……そうすれば、だいじょぶだいじょぶ………」
それから部屋に戻ると夕食が用意されていて、案内の子が給仕してくれた。
早速それをウチは、ものすごい勢いで平らげ―――ようとしたら竜華に止められた。
はしたないから止めなさいって。それで、竜華と品の良い食べ方をやらを練習した。
途中で耐え切れんなって、投げ出して普通に食べた。やっぱ好きなように食べたほうが美味い。
*
《玄関前 おみやげコーナー》
「もう、もう入らへん…」
「美味しかったなー海の幸、山の幸盛りだくさんの懐石料理やったな」
「竜華の食べ方はお嬢様みたいやな…ウチには受け付けん」
「そんなことないで?あくまで女らしい食べ方しとるだけや。
綺麗に盛り付けられた懐石を、牛丼みたいに掻き込むんはちょっと見てられへん」
「そんなん言われても、美味しいんやし、どんどん食べたいやん」
「いや、でもな…」
「それに竜華だって、最後の方はがっつり食べよったやん」
「うっ、だって…怜があんまり美味しそうに食べるから、ウチもいいかなって…」
「ほれみぃ」
「美穂ちゃんみたいにはいかへんなぁ。でも、近づけるように頑張ろ!」
「ふふっ、気に入っていただけましたか?」
おみやげコーナー前のベンチで駄弁ってたら、
クリーム色の艶のある髪をした、綺麗なお姉さんが話しかけてきた。
よぅみたら―――――始めに迎えてくれた女将さんやった。
くろちゃーと宥姉二人の可愛さを
文字に起こすの難しかりけり。 字余り。
次回もお楽しみに。