名探偵 怜-Toki-   作:Iwako

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四巡先、その②

この章は、比較的投稿ペースはやめで行けると思います。


四巡先 残してくれたモノ②

《初日 夕方 松実館・玄関》

「ようこそ、松実旅館へ」

「ようこそなのです!!」

 

バスから降りるとすぐ、女将さんと従業員の子のお出迎えや。

どっちもロングヘアで清楚な感じ、美少女と言っても差し支えないな。

 

「ほえ~でっかい建物やね」

「こんにちはー予約していた清水谷です」

 

「私、女将の松実と申します…ようこそ、お越しくださいました」

 

「玄ちゃん、お客様のお荷物をお部屋に運んでくれる?それとご案内もお願い」

 

「おまかせあれ!!お荷物、お預かりしますねっ!」

 

黒髪ロングの方の子が、ウチらの荷物を預かってくれる。

なんや、この子、りゅーかに似てるな。髪とか、胸とか、なんというか見た目もそれっぽいし。

最初にあいさつしたほうの子は、雰囲気ちょっと違っとったけど。

しかし、この二人、ずいぶん若いなあ……

 

「怜、この旅館広いなぁ」

「築何年かな?」

「どうやろ、怜の家くらい年季入っとるんやない?」

「ウチの家と比べたら失礼やろ」

「そうやね」

「ウチの家に」

「そっち?!」

 

りゅーかとの会話もそこそこに、案内されるがままに廊下を歩いていって

ちょっとしたら、雰囲気のある襖が目に飛び込んできた。

襖を開けると――――――――

 

「おー」

「綺麗なお部屋!」

 

「はい、こちらが当館自慢のお部屋です!」

 

建物自体はけっこう古かったけど、中は掃除が行き届いとる。

ウチの事務所とは大違いやなあ。ウチはそういうの気にならん質やから、

掃除しようなんてモチベーションは全く湧いてこん。

あのオンボロを掃除しようとしたら、 逆に汚くなるまである。

 

「ふふっ、怜。ええやろ、綺麗なお部屋って」

「せやね」

「ということで、これを機に怜も頑張ってみよ?」

「う~ん……」

 

ウチはこう思うんや。もし自分で掃除がきちんとできるんなら、

こういう場所に来る価値がなくなると――――――。

そんな下らん屁理屈が頭に浮かんだ。

 

「お二人共、本日は松実館にようこそなのです!」

「あと2時間くらいでお夕飯ができますので!その間に温泉に入っていただければと思います!」

「もちろん、夕食後に入ってくださっても構いません!」

 

はえ~お湯にのんびりつかとったらご飯が出てくるって、ここは天国かなんか?

もう一生ここで暮らそうかな。

 

「怜、どうする?」

「ん、どっちでもええよ。竜華に合わせるわ」

「え?そう?じゃあ…」

「夕食後のお風呂はつらない?」

「どっちでもええんやないんかい!」

 

軽く叩かれる。

竜華のはたきは加減が分かっとるさかいな、音ほど痛くなかったりする。

ホンマに怒っとるときは痛いけど…

 

「ごめんごめん、じゃあこうしよや」

「今からお風呂に行く→夕飯→セーラのお土産を買う」

「これでええやろ?」

 

「ふんふん、怜にしてはちゃんと考えとるな、そうしよか」

「というわけで、そうします!」

 

「かしこまりました!」

「ちなみに、お二人は食べ物の好みとか、好き嫌いはありますか?

 リクエストがあればその通りにお作りいたします!」

 

「うーん、ウチは食べ物ならなんでも食べるで。たとえ草の根でも」

「戦時中やないんやから…あ、ウチも構いません。お任せします」

 

「承知しました!」

「それじゃあ、おふとんはお二人がお土産をご覧になってる間、

 敷かせていただくのです…いただきます!」

 

「はい、お願いしますー」

「おおきにー」

 

「それでは、失礼します!」

 

元気の良さとは裏腹に、丁寧に襖が閉じられる。

かと思ったら、ちょっとだけ間残して、そこから顔だけ出した女中さん。

 

「あ、言い忘れてました!」

「浴場にタオルはないので、お部屋のを持って行ってください!」

 

 

  *

 

 

「よし怜、それじゃあさっそくお風呂行こっ!」

「せやな。それにしても……この女将さんと女中さんめっちゃ若ない?」

「それ思ったわ。ウチらと同じか…さっきの子なんか年下な気がする」

「同じくらいの子に敬語使われるんはなんかむず痒いな…」

 

ま、客商売やから丁寧な言葉遣いになるんはしゃーないけどな。

ウチだって、依頼人には最低限の言葉遣いは……しとるよな?

 

「確かに…よし、後であったら話に行こ!仲良くなれるかもしれんへん」

「せやな」

「もしかしたら、ウチのお花買ってもらえるかもしれんしな!旅館にだってお花は必要やし!」

「………竜華、抜け目ないな」

「お客様を増やすためには、こういう営業努力が大事なんやで!」

「なるほど…参考になります」

 

《大浴場 脱衣所》

 

暖簾を潜ってすぐ、でっかい看板が目に飛び込んでくる。

ほうほう…地下○○メートルから湧き出る天然温泉がどうのこうの…

そういうの詳しくないからよく分からへん。

 

「露天風呂もあるな」

「温泉の醍醐味やね!それにしても、お客さん少ない気がせん?」

「まるで貸切みたいやなぁ」

 

脱衣所だけじゃなくて、旅館全体にお客さんは…というより、館内から人気を感じんかった。

もちろん平日いうんはあるんやろうけど、それにしても旅館の規模に対して、

お客さんが少なすぎるような、印象をウチは受けた。

 

さ、服も脱いだしそろそ…お、体重計やん。乗るん久しぶりや。

 

「どれどれ……」

 

あぁ、ロクな食生活してないから…やっぱり。

たったの○○キロや…体脂肪率は……うわっ、ウチの体脂肪率低すぎへん?

 

「………」

「あ、竜華。どしたんぼ――と突っ立って」

「え、な、なんでも?」

「竜華も乗る?」

「う、ウチはええよ」

「え?なんで?」

 

らしくなく身をよじる竜華。なにその乙女らしいポーズ。可愛いやん。

 

「え、だって…自分の体重とか見たくないし…身体測定でもあるまいし」

「別にええやん。ほら、ドカッーっと、のりーや」

「『ドカっ』て?! ウチのことどういう目で見とるん?!」

「この体重計は100キロまで大丈夫みたいやし、なんとかなるやろ」

「とーーーーーーーきーーーーーーーー??」

 

あ、ちょっと苛めすぎた。

涙目になりながらこっちを睨みつけてくる。

 

「う、うそうそ。竜華スタイルええし、なんも恥ずかしがることないやん」

「そ、そうかな…?」

「そうそう。胸もおっきいし、腰くびれとるし、

 ふともも柔らかくて、まるで霜降り肉みたいやし」

「最後!最後ぉ!!」

「ええか、竜華。ウチが食べ物の比喩で褒めるんやで?これは最高の評価や」

「えぇ……でもなぜか納得してしまうウチがいる…」

 

どこか腑に落ちへんとブツブツ言ってたら、流石にマッパのままいるのは寒なってきたね

とかお茶を濁しつつ、いよいよ浴場に入ることになった。

 

「それじゃあウチは先にはいっとくでー」

 

おおー広い広い。かけ湯、かけ湯……

 

「それにしても、やっぱり竜華胸でかいなあ…久しぶりに見たけど、あれは兵器や」

 

あんなんあったら、肩こるやろうなあ。

胸が小さいの気にしとる人多いけど…全然ウチは気にならん。

あっても邪魔やろうし、ウチやったら間違いなく持て余すしな。

 

 

「………」

 

 

「………」

 

 

「怜?何しとるん、胸になんか付いた?」

 

「な、なんも」

 

「じゃあ、入ろ!」

 

「りょうかいー」

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

それから、竜華と温泉を楽しんだ。

 

普段行く銭湯は混んでるし、お風呂も一種類しかないから疲れを癒すっていうよりは、

ただ体を清潔にするために行くって感じやったけど

今日は時間いっぱい、のんびりつかることができた。

 

途中途中サウナに行ったり(怜には危ないいうて、途中で止められた)

水風呂に入ったりして、バリエーションも楽しめた。

そして最後の仕上げに、露天風呂に行くことした。

 

「うわ~~いい眺めやなぁ…」

「ホンマ……夕日が沈みかけとる」

「あっちが怜の事務所がある方やない?」

「そうやな。あ、海。遠くに見えるんが南地区や」

「あーーーー仕事の疲れが癒されるーーーーーーーーーーー」

「せやな~~~最近ウチはニートやけど、癒されるわーーーー」

「いずみにかんしゃやな~~今度お礼せなアカンな~~~~~」

「ホンマやで~~」

 

あまりの気持ちよさに、露天風呂で20分近く過ごしてしまった。

だって、しゃーない。体はぽかぽか、頭から上はひんやりした空気、

このコンビネーションがたまらんのや。

この組み合わせ、言うなれば…こたつに入っとると、アイス食べたくなる、アレや。

とにかく、逆相性のものを組み合わせると、ロクなことにならん、いい意味で。

 

「セーラも来れたら良かったなあ……ふにゅ……」

「残念やけど……ちゃんとお土産買っていこ……そうすれば、だいじょぶだいじょぶ………」

 

それから部屋に戻ると夕食が用意されていて、案内の子が給仕してくれた。

早速それをウチは、ものすごい勢いで平らげ―――ようとしたら竜華に止められた。

はしたないから止めなさいって。それで、竜華と品の良い食べ方をやらを練習した。

途中で耐え切れんなって、投げ出して普通に食べた。やっぱ好きなように食べたほうが美味い。

 

 

  

   *

  

 

《玄関前 おみやげコーナー》

 

「もう、もう入らへん…」

「美味しかったなー海の幸、山の幸盛りだくさんの懐石料理やったな」

「竜華の食べ方はお嬢様みたいやな…ウチには受け付けん」

「そんなことないで?あくまで女らしい食べ方しとるだけや。

 綺麗に盛り付けられた懐石を、牛丼みたいに掻き込むんはちょっと見てられへん」

「そんなん言われても、美味しいんやし、どんどん食べたいやん」

「いや、でもな…」

「それに竜華だって、最後の方はがっつり食べよったやん」

「うっ、だって…怜があんまり美味しそうに食べるから、ウチもいいかなって…」

「ほれみぃ」

「美穂ちゃんみたいにはいかへんなぁ。でも、近づけるように頑張ろ!」

 

 

「ふふっ、気に入っていただけましたか?」

 

 

おみやげコーナー前のベンチで駄弁ってたら、

 クリーム色の艶のある髪をした、綺麗なお姉さんが話しかけてきた。

 

よぅみたら―――――始めに迎えてくれた女将さんやった。

 

 

 

 





くろちゃーと宥姉二人の可愛さを
 文字に起こすの難しかりけり。 字余り。


次回もお楽しみに。
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