前話で修正&この話の中で再掲しておきました。
菫さんが、ちょっぴり抜けてそうに見えるのは気のせいです。
「……粉チーズ?」
彼氏さんの一言に、刑事さんは頭を捻る。
チーズという単語が、この現場では何か浮いたもののように思えたのかもしれん。
「はい。俺はここの常連なんで、よく知ってるんっすけど……」
「この店のスープスパの食べ方があって。途中から粉チーズをかけて味の変化を楽しむんすよ」
「そうなのか?店員?」
「ええ。ウチのとっておきの食べ方で……ほら、そこの壁にも貼ってあります」
≪一口目、アツアツのスープを≫
≪二口目、コシのあるスパを≫
≪三口目、チーズをたっぷりかけてよく混ぜてお召し上がり下さい≫
「あくまで食べ方の一例ですが」
「そういう風に食べる客が多いという事か」
「そうですね、常連さんは自分なりの食べ方をされる方もいますけど」
「なるほど……彼氏さん、続けてくれ」
「粉チーズをかけてから、彼女は倒れた……そうだ! 思い出した。あの時」
「……そこの女が、粉チーズの缶を俺たちに渡してきたんだ!!!!」
「ふぇっ?」
そう言うと、彼氏さんは、一人の女を指差した。
宮永さん、終始オドオドしとる様子が目立つ。
疑わしいと言えば、疑わしくも見える。
「まさか、お前が毒を入れたんじゃないだろうな?!」
「ち、違います! 確かに私が彼女さんに粉チーズを手渡しましたけど、毒なんて入れてません!」
「それに……渡したって言っても順番に使っただけですし」
「元はと言えば、私にこの粉チーズを渡してきたのは強女さんです!」
「ちょっとアンタ。私がやったとでも言いたいわけ?!」
「えぅっ、そ、そういうつもりは……ただ、そういう順番だったって……」
「そう言ってるわよ!!」
ウチを置き去りに、口論が始まった。
事件発生時、店に入ってきたばかりやったウチは、端っから容疑から外れとるようなもんやし当然。
徐々に声のボリュームが上がっていくのを見て、弘世刑事は、即座にその場を収めに入った。
「ちょっとお前ら落ち着け、状況を整理させろ!!」
「今の話を聞くと、被害者含めて三人とも同じ缶の粉チーズを順番に使ったってことか?」
「どうなんだ、マスター」
「そうですね、お客様が少ないときは、缶の数を減らしてます」
「それに加えて、今日は十周年記念日で昼に予想以上にチーズを使ってしまって……」
「カウンターとテーブルで、合計一缶しかない状況だったかもしれません」
「それで、お料理の提供は四方ほぼ同時だったので……そういうことが起こりうるかもしれません」
「すると強女は……」
「そうよ。私は親切心で回しただけなのに……失礼しちゃうわね」
★粉チーズ使用の順番
強女→宮永咲→彼女(→彼氏?)
★店内図
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
↑向きにカウンター
○|【強女】|○|○|【宮永咲】|○ 返却口
入 【怜】
口 調理場 【マスター】
「 | 」「【彼女(死亡)】|【彼氏】
二人づつ座れるテーブル席 ドリンクバー トイレ
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
刑事さんはそれぞれの証言をもとに描いたであろう、メモらしきものを一瞥すると
それを千切って、乱雑に胸ポケットにしまった。
「……なるほど。皆、お疲れさま、協力感謝する」
「な、なんだ。急にまとめにかかりやがって。俺の彼女を殺した奴は分かったのかよ?」
「もう考えるまでもない」
「≪二口目≫まで無事でチーズをかけた後に倒れた、ということは……」
「その中に粉チーズの中に毒物が入っていた可能性は高い」
「それなら犯人は命が無事で、なおかつ直前に毒を入れることが可能な人物に限られる。ということは」
全員の目線が、無垢な制服に向けられる。
「えっ…?」
「お前しかいないな。宮永咲――――――だったか」
「……!! 私、やってません!するはずがありません!」
「今日初めて会った人……話したことすらない人を殺すなんて――――――」
「だったら、どうして学生さんが、こんな時間にこんな店でくつろいでいたというんだ?」
「っ」
「何か『特別』な理由があるからだろう……?」
「わ、わたっ――――」
「状況証拠はあるからな。じっくり、署で煮詰めていこうじゃないか」
「そんな……」
「……人殺し……この人殺し!!! 返せ、返せっ!!!!」
「俺の彼女を、返せッ!!!」
「ち、ちがっ!」
「何が違うんだよ!!」
私、本当に――――――
「宮永咲。殺人容疑の疑いで―――――――」
やってな――――――
「うっ?! げっ、げほっ、げほっっ!!!!」
疑いをかけられた咲ちゃん。
急に咳き込んだ怜。
トリックとも言えない、トリック。
ここまで見返すとなんとなく怪しい発言、ってところで
次で解決編です。(終わるとは言ってない)