名探偵 怜-Toki-   作:Iwako

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前回、咲ちゃんと強女さんの席の位置が逆でした。

前話で修正&この話の中で再掲しておきました。



菫さんが、ちょっぴり抜けてそうに見えるのは気のせいです。




一巡先 心の鍵③

 

「……粉チーズ?」

 

 

彼氏さんの一言に、刑事さんは頭を捻る。

 

チーズという単語が、この現場では何か浮いたもののように思えたのかもしれん。

 

 

「はい。俺はここの常連なんで、よく知ってるんっすけど……」

 

「この店のスープスパの食べ方があって。途中から粉チーズをかけて味の変化を楽しむんすよ」

 

「そうなのか?店員?」

 

「ええ。ウチのとっておきの食べ方で……ほら、そこの壁にも貼ってあります」

 

 

≪一口目、アツアツのスープを≫

≪二口目、コシのあるスパを≫

≪三口目、チーズをたっぷりかけてよく混ぜてお召し上がり下さい≫

 

 

「あくまで食べ方の一例ですが」

 

「そういう風に食べる客が多いという事か」

 

「そうですね、常連さんは自分なりの食べ方をされる方もいますけど」

 

「なるほど……彼氏さん、続けてくれ」

 

「粉チーズをかけてから、彼女は倒れた……そうだ! 思い出した。あの時」

 

「……そこの女が、粉チーズの缶を俺たちに渡してきたんだ!!!!」

 

「ふぇっ?」

 

 

そう言うと、彼氏さんは、一人の女を指差した。

 

宮永さん、終始オドオドしとる様子が目立つ。

 

疑わしいと言えば、疑わしくも見える。

 

 

「まさか、お前が毒を入れたんじゃないだろうな?!」

 

「ち、違います! 確かに私が彼女さんに粉チーズを手渡しましたけど、毒なんて入れてません!」

 

「それに……渡したって言っても順番に使っただけですし」

 

「元はと言えば、私にこの粉チーズを渡してきたのは強女さんです!」

 

「ちょっとアンタ。私がやったとでも言いたいわけ?!」

 

「えぅっ、そ、そういうつもりは……ただ、そういう順番だったって……」

 

「そう言ってるわよ!!」

 

 

ウチを置き去りに、口論が始まった。

 

事件発生時、店に入ってきたばかりやったウチは、端っから容疑から外れとるようなもんやし当然。

 

徐々に声のボリュームが上がっていくのを見て、弘世刑事は、即座にその場を収めに入った。

 

 

「ちょっとお前ら落ち着け、状況を整理させろ!!」

 

「今の話を聞くと、被害者含めて三人とも同じ缶の粉チーズを順番に使ったってことか?」

 

「どうなんだ、マスター」

 

「そうですね、お客様が少ないときは、缶の数を減らしてます」

 

「それに加えて、今日は十周年記念日で昼に予想以上にチーズを使ってしまって……」

 

「カウンターとテーブルで、合計一缶しかない状況だったかもしれません」

 

「それで、お料理の提供は四方ほぼ同時だったので……そういうことが起こりうるかもしれません」

 

「すると強女は……」

 

「そうよ。私は親切心で回しただけなのに……失礼しちゃうわね」

 

 

★粉チーズ使用の順番

強女→宮永咲→彼女(→彼氏?)

 

★店内図

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

           ↑向きにカウンター

         ○|【強女】|○|○|【宮永咲】|○    返却口

入 【怜】 

口                                                                        調理場                                   【マスター】

                                            

        「  |  」「【彼女(死亡)】|【彼氏】

              

           二人づつ座れるテーブル席      ドリンクバー トイレ

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

刑事さんはそれぞれの証言をもとに描いたであろう、メモらしきものを一瞥すると

 

それを千切って、乱雑に胸ポケットにしまった。

 

 

「……なるほど。皆、お疲れさま、協力感謝する」

 

「な、なんだ。急にまとめにかかりやがって。俺の彼女を殺した奴は分かったのかよ?」

 

「もう考えるまでもない」

 

「≪二口目≫まで無事でチーズをかけた後に倒れた、ということは……」

 

「その中に粉チーズの中に毒物が入っていた可能性は高い」

 

「それなら犯人は命が無事で、なおかつ直前に毒を入れることが可能な人物に限られる。ということは」

 

 

 

全員の目線が、無垢な制服に向けられる。

 

 

 

「えっ…?」

 

「お前しかいないな。宮永咲――――――だったか」

 

「……!! 私、やってません!するはずがありません!」

 

「今日初めて会った人……話したことすらない人を殺すなんて――――――」

 

「だったら、どうして学生さんが、こんな時間にこんな店でくつろいでいたというんだ?」

 

「っ」

 

「何か『特別』な理由があるからだろう……?」

 

「わ、わたっ――――」

 

「状況証拠はあるからな。じっくり、署で煮詰めていこうじゃないか」

「そんな……」

 

「……人殺し……この人殺し!!! 返せ、返せっ!!!!」

 

「俺の彼女を、返せッ!!!」

 

「ち、ちがっ!」

 

「何が違うんだよ!!」

 

 

私、本当に――――――

 

 

「宮永咲。殺人容疑の疑いで―――――――」

 

 

 

やってな――――――

 

 

 

 

「うっ?! げっ、げほっ、げほっっ!!!!」

 

 




疑いをかけられた咲ちゃん。

急に咳き込んだ怜。

トリックとも言えない、トリック。

ここまで見返すとなんとなく怪しい発言、ってところで

次で解決編です。(終わるとは言ってない)

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