【短編集】須賀京太郎、ここにあり 作:にしん
「京ちゃんってさ」
「ん?」
「いろいろ出来てすごいよね。自動卓のメンテとか、いつの間にか覚えてたし」
「そうだな」
「料理も上手だし、勉強もなんだかんだそこそこできるし」
「そうだな」
「この前編んでくれた手袋なんて手作りとは思えないくらい綺麗だったし」
「そうだな。咲」
「あったかくて、やっぱり京ちゃんってすごいなーって」
「咲」
「何?」
「つまり?」
「……喉渇いた」
「……」
「あと、みかんほしいなーって」
「……はいよ」
「わぁい、京ちゃんやっさしー! いやぁコタツから出るのってめんどくさいよねー」
「俺もコタツに入ってたんだけどなー?」
「私本読んでるし」
「俺は宿題してたんだが」
「ほい、茶とみかん」
「ありがとー。あ、みかんむいて」
「……今日のお前、いつにもまして生意気だな」
「たまにはそんな日もありますぅー」
「うぜぇ……」
「あー、寒いね、というか雪すごいよ」
「夕方から降るって分かってただろ。これ、お前帰れるか? 迎えに来てもらったほうがいいんじゃないか?」
「お父さん出張中だし……どうしよ」
「後でうちの母さんに送ってもらうか」
「んー。……よっと」
「おい、寝るなよ足伸ばせないだろ」
「京ちゃん足邪魔だよー。無駄にでっかくなっちゃって」
「なんだこいつ……いつにもましてうざいぞ」
「はぁ、天国……」
「……」
「……」
「……」
「……ところでさ」
「……またかよ」
「いや、そういうのじゃなくて」
「はいはい。で、何?」
「京ちゃん、彼女とか出来た?」
「なにそれ嫌味?」
「いや、高校入る前、今年こそ彼女作るぞー!って言ってたの思い出して」
「あー……そういや正月にそんなこと言ったかも」
「ことしもあとよっかですが」
「二日あれば余裕」
「わぁ、すごいね」
「……」
「いたっ! いた、痛いって! 蹴らないでよ!」
「咲のくせに! 咲のくせに!」
「もぉ……。だいたい、京ちゃんはモテないわけじゃないのに」
「やめろよ……慰めるなよ……悲しくなるだろ」
「だってほら、優希ちゃんとか。仲良いじゃん」
「まぁ、悪くはないけど。なんかそういう感じじゃないっていうか」
「ふーん」
「……」
「じゃあ、ほら」
「……」
「……和ちゃんとか、どう、なの?」
「どうって、何が」
「いや、昔に比べたら仲良くなったじゃん」
「あー……」
「どうなの? 京ちゃん、好みでしょ?」
「……」
「……」
「特に何もないな。仲良くなったとは思うけど」
「……」
「横に座っても警戒されなくなったのは嬉しいかな」
「ふーん……」
「……なんだよ?」
「べっつにー……」
「……」
「優希ちゃんとか、和ちゃんと付き合うことになったらちゃんと教えてよ?」
「なんでお前に言わなきゃなんねーんだよ」
「保護者として責任があるんですー」
「お前が保護される側だろ……ほんとお前今日はうざいな」
「だからって蹴らないでよ! 最低だよ女の子に対して! あ、今お尻触った!」
「触ってねーよ蹴ったんだよ」
「なんで自慢げなの!?」
「けっ。あぁー……おい、吹雪いてんぞ外」
「うわ、ホントだ」
「これ帰るの無理じゃね? 泊まってくか?」
「でも正月前に悪いよ。いろいろ忙しいだろうし」
「別に、大丈夫だろ。ちょっと母さんに話してくるわ」
「ん……ありがと」
「おう」
「あ、立ったならついでに甘いものもお願い!」
「うるせぇ」
「……はぁ」
「……なんでだろ。ほんと。独占欲なのかな」
「咲ー? 母さん泊まってっていいってさ」
「やった。じゃあ、まだゴロゴロする」
「ずっとゴロゴロしてたけどな」
「いいのいいの。それにしても、もうこんな時期かぁ。今年もいろいろあったね」
「全国いったりな」
「楽しかったなぁ。来年は京ちゃんも一緒に全国出ようよ」
「おう。最近やっとトップ争いに入れるようになったからな。今に見てろよ」
「団体も行けたらいいんだけど……男子、入るかな?」
「俺、インハイも秋もパッとしなかったからなぁ……むしろ、俺の存在を知ってる奴はいるんだろうか」
「女子は和ちゃんと優希ちゃんの後輩が来るらしいから、心配ないんだけど。男子かぁ」
「和目当てで来たりして」
「そんな、京ちゃんみたいな人がいるわけないじゃん」
「おい外に放り出すぞ。ま、来なくても個人で頑張るさ。女子がたくさん来たら肩身が狭くなりそうだけど」
「京ちゃんなら大丈夫だよ。そもそも今だって男子一人じゃん」
「それもそうか」
「そうだよ。だから来年も……」
「ん?」
「来年も、よろしくね。京ちゃん」
「……おう。よろしくな、咲」
「……えへへ」
「つかそれ年明けてから言えよ。まだ正月気分にもなってねえよ」
「いーの。今思ったんだから。えへへ」
「……はいはい」
カン
京太郎にだけはわがままな咲ちゃんとか、咲にはなんだかんだ甘い京ちゃんとか、二人っきりなのにそれが普通、みたいな空気とか
定期的に探りを入れてるけどそれがどうしてか自分でも説明できない咲ちゃんとか
やっぱり京咲がナンバーワン!