【短編集】須賀京太郎、ここにあり   作:にしん

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他のが進まないので前の続き
台本形式が楽すぎて地の文が書けない病


初詣の少し前/ある冬の日-2

この季節は真昼間でも外出を躊躇う。

日が出ているとはいえ空気は刺すように冷たいし、雪が降れば冷たいし濡れる。京太郎自身、体を動かすのが好きな方だが、冬だけは家でゴロゴロするのが一番だと思っている。

それが正月ともなれば、ひたすらテレビを見て、おせちを食べ、寝るだけの毎日だ。

まぁ、日本全国それはあまり変わらないだろう。家から出る用事は挨拶回りや初詣くらいであり、京太郎もまた、初詣のためにコート・マフラー・手袋と重装備でコタツという楽園から離れていた。

 

 

「寒いね」

 

 

手袋を頬に当て、身を小さくしながら隣を歩く咲とは、既に新年の挨拶を終えている。

麻雀部一同で初詣をしよう、と言い出した優希だった。さすがに元日はそれぞれ予定があるだろう、という事で集まるのは二日になった。

 

 

「耳当てもつけてくればよかったのに。去年まで使ってた奴、まだ使えるだろ」

「なんか、子供っぽいような気がして。あと、耳当てじゃなくてイヤーマフって言うんだよ」

「同じだろ。それに子供っぽいって……気にすることか?」

「気にするの。今からみんなに会うんだし」

「そういや、学校にも着けていってないもんな。でも、もうちょっと厚着してこいよ。スカートとか見てるこっちが寒い」

「タイツもあるしそんなに寒くないよ。一応、おしゃれしてるんだからそんなこと言わないでよ」

「すまんすまん」

 

 

会話しながら、少し驚いていた。咲もそういうのを意識するんだな、と。もちろん、ずっと見てきたので中三ぐらいから女の子らしい格好や言動をするようになったのは覚えている。それでも、咲からそういう事を言われるのはなんだか慣れない。言葉にするのが難しい、居心地の悪さを感じるのだ。

 

 

「まだ誰も来てないね」

「ちょっと早かったかな」

 

 

集合場所にはまだ誰も来ていなかった。周りを見まわすが、人影は無い。携帯を確認すると集合時間までまだ二十分あった。

 

 

「ずっと立っとくのもなぁ。どこかで時間潰すか?」

「どこも開いてないよ。コンビニとか、ちょっと遠いし」

「あー……失敗したな」

 

 

そういえば、まだ三が日の真っ最中だ。運の悪いことに、太陽に雲がかかり一気に寒さが増した気がした。

足踏みして気を紛らわしつつ、咲を見ると、同じようにぴょんぴょん跳ねていた。寒いな、なんて無駄なことを言い合っていると、咲が何かを思いついたようにぽん、と手を叩いた。

 

 

「京ちゃん、京ちゃん、コート開いて」

「は? 貸さねぇぞ」

「そうじゃなくて。ほら、はやくはやく」

 

 

言いながら、コートのボタンを外してくる。いたずらかと額を押して抵抗するが、それでもボタンに手を掛けるので好きにさせることにした。

すぐにボタンが全て外れコートが開かれ、冷たい空気が流れ込んできた。体が一瞬震えるが、なぜか、その後すぐに暖かさを感じた。

 

 

「えへへ。あったかい」

 

 

驚いて下を見ると、コートの中、胸元のあたりに咲の頭がある。

 

 

「お前……」

「京ちゃん、コート閉めて。風が寒い」

 

 

言われるがまま咲を包み込むようにコートの端を合わせた。咲はこちらを向いているので、胸元に顔を埋めている状態だ。収まりが悪いのか腕を少し動かした後、そっと俺の腰の辺りに手を添えてきた。

 

 

「これは……なんというか、幼馴染的にはちょっとやりすぎなんじゃないか?」

「……そうかな? 私は別に嫌じゃないけど」

 

 

俺も嫌じゃない。そう言おうとして、言葉が喉に詰まった。

最近、咲との距離が以前よりも近くなった気がする。隣に座ったり、肩を叩いて呼んだり、というのは昔からあった。それに特に何も感じなかった。だが、最近は同じ事をするのに緊張したり、躊躇ったりすることがある。それなのに咲は気にせず触れてくるし、距離をつめてくる。今だって傍から見ればカップルが抱き合っているようにしか見えないだろう。

 

 

「お前はあったかいかもしれんが、俺は寒い。空気が入ってくる」

「ちょっとくらい我慢して。男の子でしょ」

 

 

そう。俺は男で、咲は女。それを意識するようになったのかもしれない。

 

 

「咲のくせに偉そうだな。……みんなが来る頃には離れろよ」

「ん」

 

 

俺と咲が仲良くなったのはなんでだろう、とふと思った。

中学一年だというのは覚えているが、確実に『ここから』というきっかけは思い出せない。特別な何かがあったのではなく、なんとなく仲良くなって、なんとなく一緒にいた。清澄に入ったのも、お互い話し合った訳でもなく、二人とも家から近いからという理由だった。偶然クラスがずっと一緒で、縁が切れなかった。それだけのように思える。

 

 

「ねぇ、そういえばさ」

「喋るなら顔離せ。なんか、息がこもってくすぐったい」

 

 

ぼうっとした暖かさが胸元に広がり、そこを意識してしまう。咲がもぞもぞと動いたが離れる気はないようで、顔を横に向けただけだった。

 

 

「んん……。そういえばさ、私と京ちゃんって幼馴染だよね?」

「そう……なんじゃないのか? 急にどうした?」

「本読んでるとさ、幼馴染って幼稚園とか、小学校とか、そこらへんから一緒にいるんだよね。私と京ちゃんって中学からじゃん。なんか、弱いなって。家もそんなに近くないし」

「あぁ、マンガとかドラマだったら、だいたいそうだな」

「それで、私たちってどうなんだろうって。まぁ、十年くらい経ったら小学校からも中学からも変わらないから、別にいいかって思ったんだけど」

「……そうか。変なこと考えるな。さすが文学少女」

「変って言わないでよ。京ちゃんが本読まなすぎるんだよ。貸してもまともに読まないし」

「挿絵がねーんだもん。もっと絵が多い奴にしてくれ」

「あれ以上多いのはもう漫画しかないよ。はぁ……これだから京ちゃんは」

 

 

たぶん、十年後は一緒にいない。

そう思った。あと二年は同じ高校だし、もし進級でクラスが変わっても部活がある。でも、その後は分からない。俺はたぶん大学に行くと思うけど、咲が同じ大学に行くとも限らないし、もしかしたら咲はプロになるかもしれない。インターハイであれだけの成績を残したし、これからも成長し続けたら、きっとトッププロにも届く。

 

寂しくなった。無性に、寂しいと思った。

 

 

「難しいのじゃなくて、面白いの……いや、読んでて楽しいの選んでくれ。そしたらたぶん読む」

「ほんとに? じゃあ、帰りにうち寄ってってよ。冬休みの暇つぶしに、いいの貸したげるから」

 

 

今、自分のコートの中にいる少女が、自分では手が届かないところに行くのが、自分のいるところから離れていくのが、嫌だと思った。

たぶん、独占欲なのだろう。咲は人付き合いが苦手だし、いろいろとぽんこつだから、俺が面倒をみてきた。子供とか、妹とか、そんなふうに思っているだけだと思う。

 

 

 

 

 

しばらく、そんなことを考えていた。咲に「今何時?」と聞かれて、ぼんやりしていた自分に気づき、周りを見回した。誰もいない。携帯を確認するとそろそろ誰かが来てもおかしくない時間だった。

 

 

「八分前」

「じゃ、出ようかな。……うう、やっぱり寒い。ありがと、京ちゃん」

「……おう」

 

 

咲が離れ、冷たい空気が体を撫でる。胸元に残った暖かさだけが今までそこに咲がいたという証拠だったが、それもすぐに冷やされ、よくわからなくなった。

 

 

「咲」

「ん? なに、京ちゃん」

 

 

乱れた前髪を直しながら、こちらを見上げる咲。

その笑顔が、なんとなく、いつもより可愛く見えて。

 

 

 

「後でジュースよろしく。暖房代な」

「京ちゃんもあったかかったでしょ? お互い様ってことで」

「ちっ」

 

 

なんとなく、気に入らなかった。

 

 

 

 

 

カン

 





Q.仲良すぎじゃない?
A.そういう世界線だから


素で十年後も一緒にいると思ってる咲ちゃんとか、数日前の咲と同じようなこと考えてる京ちゃんとか
実は少し前に着いていた先輩二人と同級生二人がいたり、邪魔しちゃ悪いかな?とドキドキしながら隠れて見ていた奴が四人いたり、からかってくる先輩がいたり、タコスが不機嫌だったりする、そんな京咲

やっぱり京咲がナンバーワン!


なお次はたぶん京モモの模様
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