「くらえ!」
ブスっ!
鈍い音とともに百姓の放った槍に俺は腹を貫かれた。
「殿っ!」
百姓をあらかた片付けた安宅信康が慌ててかけよる。
俺を刺した百姓は他のものに切られたのか事切れていた。
「殿、すぐに直します!」
信康がそう言って止血使用とする。しかし信康の行動虚しく血は止まらない。
「・・・信康」
俺は途切れそうになる意識を無理矢理引き起こしながら信康に声をかける。
「との、喋らないでください」
信康は涙を流しながら答える。しかし俺はやめない。
「聞け信康。俺はもうだめだ。・・・自分の体だ。自分が良く分かる」
「いえ、殿は助かります!だから弱音を吐かないでください!」
「いいか、俺が死ねば三好は持たん。恐らく織田信奈が天下を取る。・・・だから、早く信用できるものを連れて織田家に、降伏しろ」
「そんなこと言わないでください!」
「三好三人衆はきっと最後まで抵抗、するだろう。あいつらは三好家への忠義が熱いからな」
「その気持ちは誰もが一緒です!だから、だから弱音なんか、穿かないでください」
信康はもう涙で顔がぐちゃぐちゃになっていた。俺は感覚がほとんどなくなった右腕を持ち上げ信康の頬をそっと触る。
「信康、お前は優秀な一門衆だ。兄上がなくなった分はお前に任せたかった」
「まだ三好家は負けてないです!」
「ははっ、そうだな。死が近づいているせいか弱音ばかり出てくる」
俺はそこまで行って右腕を下す。いや、完全に感覚がなくなり重力に従って落ちただけだ。
「殿!」
「何だよ、泣くな。可愛い顔が台無しだぞ?」
俺は意識がなくなりそうになるのを必死で抗いながら最後の言葉は言う。
「いいか・・・信康。・・・三好家は・・・お前が・・・継ぐんだ・・・」
「っ!・・・はい」
「ふふ・・・頼んだぞ?・・・」
そこで俺の意識は途切れた。既に必死に呼び続ける信康の声も聞こえなくなった。
意識の落ちる寸前俺は夢を見た。
十七年前に俺の知る戦国時代とは違うこの戦国の世に初代天下人三好長慶の跡継ぎである三好義継として生を受け、戸惑いながら毎日を必死に生きた事。
史実通り長慶様の死後三好家が没落しない様に色々な事を行った事。
そして、堺で出会ったもう会う事もない一人の少女。
「(吉・・・来世ではまた会えると言いな・・・)」
俺は夢を見終え意識を完全に手放した。
「杣山城の戦い」で惨敗した三好家は当主義継他たくさんの犠牲を出し衰退してしまう。
急遽当主となった安宅信康改め三好信康によって立て直しが行われるも勢いを付けた織田家によって近江、山城を失ってしまう。
更に山城奪還を目指した挙兵で三好三人衆と信康が討ち死にしてしまい三好家は立て直しが聞かなくなってしまった。
その後は織田信奈が天下人となり史実(原作)通り織田包囲網が敷かれそれと戦っていくのであった。
「・・・ん?」
俺は不意に目が覚めた。
どうやらうつ伏せに寝ているらしく体の前面に重力を感じる。
俺は上半身を起こし回りを見回す。
そこには見渡す限りの草原が広がっていた。
「・・・ここは何処だ?確か俺は連合軍から逃げる途中に百姓に見つかってそのままやられたはずだが」
ここがあの世ならそれはそれでいいのかもしれないが死んだ人間がこんなところにホッぽりだされるものなのか?
「取りあえずここがどこだか・・・ん?」
立ち上がろうとしたところで近くに本が落ちているのを発見した。しかもそれは戦国時代には存在しない現代の本であった。
「懐かしいな。こんなもんを見たのは生まれる前だから・・・三十四年?・・・俺って精神年齢おっさんかよ」
と、気付かなかった発見で落ち込みつつもタイトルを見る。
『SAOの説明書』
それだけのタイトル。作者名は書かれておらず黒い文字でそう書いてあるだけであった。
「何かの説明書か?というよりあの世で説明書って」
そう思いつつも本を手に取り読み始めた。
「・・・なるほど、実に面白い」
VRMMORPG。フルダイブ型のオンラインゲームの事らしい。
「で、そのタイトルが『ソードアート・オンライン』ねえ」
中はそう書かれており他にもい色な事が書いてあった。
「ええと、何々、『メニューを開くときは右腕を振る』か。こんな感じかな」
前世でも本などあまり読まなかった俺だが説明書は何故か読む気になった。むしろ戦国の世で培った勘がこれを読め、と言っている。
そんなわけで説明書通りに腕を振る。ここはあの世なのでメニューなどでなくイメージやったのだがほんとに得ニューが現れたのだった。
「・・・」
俺はあまりの事にメニューを閉じ見なかった振りをした。しかししばらくしてからもう一度振るとメニューが出てきたため混乱した。
「・・・え?ここってあの世じゃないの?じゃあここが『SAO』の中かよ」
俺は一呼吸して呟いた。
「・・・説明書を読むか」
「・・・やはりここはゲームの中か」
説明書をあとがきを残して読み終えた俺は一人つぶやきながらあとがきを読む。
「ええと、何々。『それでは戦国の世で無念を残したまま死んだ義継さん、この世界を楽しんでください』・・・」
・・・ゲームの中に直接転生したのかよ。
「・・・一度転生は経験してるけどゲームの中に転生とかありえねえよ」
とは言う物の、来てしまった以上は仕方がない。
「取りあえずは楽しむとするか。ゲームは久しぶりだしな」
俺は最初の一歩を踏み出した。