提督に会いたくて   作:大空飛男

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コラボ回2話目。特殊な概念や、宗教的な話をしているかもしれません。


コラボ2:八坂神社へ行きます!

取り敢えず拓海の元に大和がいるとのがわかったが、俺たちはあくまでも旅行に来ている訳で、経緯を聞くのはまた後にすると、その場の空気で決定した。要するに、取り敢えず空気読んでおこうって訳。

 

そんなこんなで邪魔になる荷物を旅館へ置かせてもらい、俺たち一行が向かう最初の目的地となったのは、祇園四条方面だ。旅館から最寄である鞍馬駅で電車に乗り、文字通り祇園四条まで向かうことになった。

 

「はー。電車ってやっぱり窮屈ですねぇ」

 

祇園四条の出口から出るや否や、解放されてせいせいしたような口ぶりで、飛龍はぼやく。そこまで乗っていないような気もするが、艦娘たちにとって「電車」と言うものは堪えるようだ。蒼龍は以前あれだけ楽しそうだったのに対して、飛龍を筆頭に夕張と大和も、割と疲れたような顔をしている。艦娘に現代人が勝てるもの、ここにあり。

 

因みに、俺含めいわゆる「いつものメンバー」総勢八人に加え、京都旅行中はみんたくが加わることになる。拓海曰く現在旅館は貸し切り状態で、人手が足りているらしい。加えて女将にもなにかしら言われたようで、この二日間は彼らが京都のガイドさんをやると言うのだ。旅館の運用ってそんなもんでいいのか?もっと厳しいかと思っていたんだが…。まあ高級旅館では無いし、そこまでのスキルと言うか、厳しさは必要無いんだろうか?

 

「それで、清水寺に行きたいのに何故祇園四条で降りるん?京都本線の表を見ると、清水五条の方が近いと思うけど」

 

統治は不思議そうな顔をしながら、みんたくに説明を求める。事実、統治の言う通り目的地である清水寺寺まで行くなら、清水五条で降りた方が早いのだ。

 

そもそも何故目的地が清水寺になったのかと言うと、まあ言うまでもなく艦娘勢が口を揃えてここへ行きたいと言ったからだ。特に蒼龍の押しは強く、「絶対に行きたいです!」の一点張りだった。彼女らは艦娘だし、イコール向こうの世界では修学旅行とかも無い訳で、まあここまで言われれば、行くしかないじゃ無いか。と、いう訳。

 

「えっとですね。まあ確かに清水五条で降りた方が近いと思うんやけど、祇園さんから清水まで行く方が、良いと思うんすわ」

 

「つまり、八坂神社から清水まで歩こうって話か」

 

拓海の言葉に合点がいった俺は、納得するように言う。確かに八坂神社も、行く価値がある場所だ。それに、清水までの道のりはそれこそ古き良き街並みで、蒼龍達も確実に喜ぶだろう。

 

「それに、いろいろな店に寄りながら清水までいくのは、京都の魅力をじかに感じると思うんですよね」

 

 まあ、一種のお土産通り見たいな感じなんだけどもね。それでも景観を崩さないように、歴史を感じさせてくれるような建物が連なってるし。最近の建物でも、有名どころで言えば、某青色のコンビニが景観を乱さぬべく、木目色になってるしね。

 

「まあとりあえず歩こうぜ、旅は寄り道してなんぼだからな」

 

取り敢えず歩き始めようと提案して、いざ八坂神社へ向かうことに。ここからまっすぐ行けば、すぐそこだしね。

 

先遣隊は蒼龍達艦娘が行くらしい。見るものすべてに目が行くようで、遠目で見るとなんつう微笑ましい光景か。と、まあ俺と拓海意外の男陣も、割と関心した声がちらほらと。ともかく京都の町並みは、それだけ歴史深いって感じなんだよね。

 

「ところでセブンスターさん。彼女達はどんな経緯でこちらに?」

 

拓海とそんな彼奴らを見ながら並列して歩いていると、不意に声をかけられる。っと、いきなりだな。いや、今だからこそ聞けるのか。

 

「うへ、気持ち悪りぃなぁ。普通に七星って呼んでくれよ。んで、そうだな…」

 

取り敢えずこいつに語っても問題はないだろう。同じ穴のムジナ。要するに奴も共犯者のようなものだ。それに仲間は多い方が良いし、理解者も多い方が良い。赤信号みんなで渡れば怖くないって言うし。

 

「なんつうか、明石のコエールくんなるものにより、こちらへ来ることが出来たんだと。蒼龍は純粋に、惚気っぽいが俺に恋して。飛龍は曰くそんな俺と蒼龍を見極めるためとかなんとか言ってたけど、なんかそんな感じしないというか…。ま、こんな感じだわ」

 

「え、『そんな俺と蒼龍』って事は、相思相愛なん!?あーないわー」

 

にやにやと卑しい笑みを浮かべ、拓海は茶化してくる。取り敢えず空手チョップを打っておこう。鈍い音が、俺の手に響く。

「イッテェ…。で、まあ、俺もそんな感じだったと思いますわ。でも、うちの場合は大和の他に長門と陸奥とー」

 

そのメンバーから察するに、なんとなく他は予想がついた。

 

「金剛、榛名、比叡か?」

 

どうやら当たっていたようで、拓海は驚いた顔をしながら「なんでわかるん!?」と声を上げた。いや、お前からよく聞いてたし。おそらく拓海自慢の戦艦ガン積み大艦巨砲主義第一艦だろう。戦艦の時代は終わったのだ。今は空母の時代じゃよ。

 

「で、そのメンバーが全員来る予定だったそうです。来られたらたまったもんじゃないわほんまにさぁ」

 

確かにそれだけ来られたら、うちの場合顔面蒼白だろうよ。どうやって家族に説得すれば良いんだろうか…。むしろ一人暮らしを強いられるレベル。うちの第一艦隊の場合はすでに蒼龍飛龍が来てるから、残すとこ初霜、叢雲、武蔵、大井って感じか。強いて置けるのは、叢雲と初霜くらいだな。うん。大きさ的に。と、言うか大井はないな。レズだと思うし。でも、喋ってみると過剰な程ではなかったというか、ただの親友としてか見てなかったような気もする。あ、うちの場合なんだけどね。

 

「まあでも、結局来たのは大和だけだったと。あれ?そういうお前らは相思相愛じゃないん?」

 

大和だって何かしらの意図があってこちらへと来たはず。その意図を考えるとしたら、拓海に恋して来たのが妥当だろう。まあ純粋にこっちの世界のメシを食いに来たとか、いわゆるクールジャパン文化に目がいったとかもあるけど、そんな薄い覚悟でこっちへ来たのは少々考えにくい。

 

すると拓海は、何やら意味深な顔をしながら、答えてきた。

 

「いやぁ、よくわからんのがマジな話っすわ。逢いたかったからとしか聞いてないし」

 

うーん。蒼龍の場合はケッコンカッコカリをしている故に、逢いたくて来た訳だ。だが、拓海はの場合まだ大和とケッコンカッコカリ出来てないらしいし、付き合いも長いと思えない。つまり拓海が首をかしげるのもわかる話。

 

「まあ、なるようになれとしか言えないなぁ。でも大和は今の所親しいのはお前くらいしかいないわけだろう?なら吊り橋効果というか、想い人になる可能性は十分にあるんじゃ?」

 

右も左もわからない状況下で、誰かしら知り合いと会えば自然と安心感を覚えるもんだ。要するに拓海は、大和の止まり木になってやれば良い。そうすれば自然と、大和も特殊な感情を抱いていくだろう。あくまでも人間の心理的な事から憶測してるだけなんだけどもね。

 

「望ー!つきましたよー!」

唐突に蒼龍の声が聞こえたので、その方角を見ると、俺と拓海以外のメンバーは八坂神社の象徴的建物の一つ、重要文化財の西桜門の前にいた。どうやら思いの外、早くたどり着いたようだ。

 

「おーう!…取り敢えず合流しようか」

 

「そっすね。行きましょう」

 

俺と拓海は顔をわせて言うと、小走りで合流へと向かった。

 

 

八坂神社は、牛頭天王もとい素戔嗚尊(以下スサノオ)を祭神にしている神社で、京都にあるこの八坂神社は八坂社系列の総本社だ。拓海がちらりといったように、通称祇園さんとしても呼ばれるこの神社は、社伝によると六五◯年代に高句麗から来た、とある人物により創建されたとされる。元々は祇園社とか言われてたらしいけど、慶応四年の神仏分離令により八坂神社と改められたらしい。つまり名前は似てるけれども、某ガ〇キャノンとか言われている神様とは、縁がないです。はい。

 

因みにこれは余談なんだけども、牛頭天王とスサノオは同一神と見られてるらしく、スサノの妻である櫛稲田姫命のや、スサノオの子供である八柱御子神とかも祀られている。正直ちんぷんかんぷんな人が多いだろうから、こんな堅苦しい説明は一部の方には申し訳ないけど、これで終わり。取り敢えず来てみてぱっと見で受ける印象は、赤い、でかい、すごい神社って感じだろうか。なお同県内にある、まさに赤い神社は、今日行かない。

 

「おお、こんなに大きな神社初めて来ました!」

 

飛龍は桜門を通ると、キョロキョロと周りを見渡して言う。実際神社仏閣に興味が薄い人物って、こういうリアクションだろうしね。と、言うか飛龍はマジで極端な奴だな。

 

「感想それだけかよ。ま、いいけどさー」

 

もう少し博のある感想が欲しいところだけど、元の提督同様脳筋飛龍ちゃんには期待しない。まあ正直なところが、良いんだけどねぇ。と、言うか、大和や拓海を除くその他も、そんな感じのリアクションしてるんだけども…。脳筋しかいねぇ!?

 

「望、ここは何を祀ってるの?」

 

対して知識に貪欲蒼龍ちゃんは首をかしげて聞いてくる。蒼龍は自然とこうした建造物や、そのルーツに興味を持つようになってきて、嬉しい限りだ。ただ行きたかっただけではないと、今では思える。

 

「主祭神は…有名どころと言えばスサノオだね。日本神話じゃ、スターの一人ともいえるかな?」

 

「えっと…正式名称は素戔嗚尊でしたっけ。意地悪なイメージがある人…あ、神様ですけど」

 

思い出すように顎を人差し指で抑えながら、蒼龍はつぶやく。そこまで勉強しているのか。感心感心。やっぱりサーフェスを買った事で、いろいろと調べて戦い以外の知識も身に着けているんだなぁ。って、意地悪なイメージ?バチが当たりそうだ。もしかして『老いたる素戔嗚尊』のことを言っているんだろうか。そういえば蒼龍に、青空文庫を進めたような気がする。ちなみに作者は、クッソ有名な賞にもなってる人。

 

「はは、まあ意地悪というか、あれは一種の試練というか…まあでもそうだね、正式名称はそれであってる。有名な話と言えば、スサノオはそのとき生贄になりそうだった櫛名田比売を文字通り櫛に変えて髪に指して、八岐大蛇を退治したんだ。その際にゲットしたのが、三種の神器の一つの草薙剣。ちなみに八岐大蛇を倒した際に使った武器は、十拳剣って言われてるよ」

 

 「うげ…私まったくわからないや…。でも八岐大蛇って、頭がいっぱいある蛇でしたよね?」

 

 ジト目交じりの苦い顔で飛龍はぼやき、ついでに質問してきた。まあうん、八岐大蛇は文字通り八つの頭に八本のしっぽが着いたバケモノ。よくゲームやマンガに出てくるよね。

 

「うん、そうだけど。なんだよ、それは分かるんだな」

 

「だって、八岐大蛇自体は有名じゃない?強そうなイメージあるし。でもオリハルコンの像で封印されていたんでしたっけ?」

 

 飛龍の持つ知識がえらく偏ってマジでよくわかんねぇ。そういえば飛龍はダイ大とかロ〇の紋章とかも読んでいたし、そっから八岐大蛇の知識を得たのかもしれない。あ、わかる人は割とオッサン。ア〇ンスラッシュとか、王者の剣とか知ってる人は、特にオッサン。

 

「相変わらず小難しい話してやんの。で、参拝しに行かねぇの?もうみんな行っちまったぞ?」

 

どうやら二人と話し込んでいるうちに、ほかのメンバーは敷地内のどこかへと言ってしまったらしい。キヨは律儀に待っていたようで、こうして声をかけてくれたようだ。

 

「そうですね。飛龍、現代ではパワースポットって概念があってね?こうして勇猛、力強いスサノオのパワーを分けてもらいましょう?ほら、三人とも行きましょう!」

 

そう言って、蒼龍は飛龍を引いて敷地内の奥へと歩いて行く。神社に行ったからといって強くなれる訳でもなければ、何かしらのパワーを得られる訳でもないのにな。パワースポットって正直どうなのさと、思うのが本音。日本の神様はそこまで万能ではないというか、色々と偏ってるんだけどもね。こじつけでギャーギャーと騒がれたら、騒がれた神様は迷惑な話だろうさ。

 

「…まあでも、今日だけはそんな流行りにあやかろうかな」

 

「ん?どうした?」

 

独り言で呟いたつもりが、どうやら隣のキヨに聞こえてしまったらしい。取り敢えず「何でもねぇよ」と言っておくと、俺も敷地内を進んでいった。

 

西桜門から八坂神社へ入ると、少しだけ回る形で本殿まで行かなきゃならない。まあその間鳥居とかがあって、少々大きな石像があったりして、初見の人は飽きないだろう。そもそもこうした巨大な神社に行ったことがない人は、見るものすべてに驚きと内に秘めた何かしらの湧き上がるものが、出てくるはずだ。

 

「私、今何故かとってもドキドキしてるんです」

 

だからなのか、蒼龍は胸を押さえながら、本堂へ参拝する為に並んでいた。隣には勿論俺がいるんだけども。

因みにだけど、本殿は西桜門のように赤色ではなく、木色漂う建物になっている。

 

「総本社ってのは大体そうなるんじゃないかな。以前長谷川達大学メンツでお伊勢さんに行った時、全員が内宮へ入った途端、一言も口を開かなくなった。本殿を参拝するまでね」

 

いわゆる全員が賢者モードのように、悟りを開いたんじゃないかという程、心が落ち着いていたと思う。

「あはは、それはさすがに信仰心が強すぎるんじゃないですかね?」

 

蒼龍は多分、俺が話を盛り上げる為に言った嘘だと思ってるんだろうけど、割とマジな話だったりする。ここもそうだけど、総本社ってのは本当に独特の雰囲気があって、畏るんだよね。むしろそうなるのが普通だと思ってる。

 

「ともかく、総本社はそれだけ神聖な場所だって事だ。ま、此処は何処か落ち着くと言うか、口が開いちゃうんだけど」

 

スサノオは逸話通り豪快な人だから、天照大御神のように畏まることを求めていないんじゃなかろうか。しかしそれでも、独特の緊張感と、根底にある敬意が、体の中を駆け巡ってはいる。

 

「そういえば七星。八坂神社はどんなご利益があるんだ?俺、お前ほど詳しくねぇから」

 

後ろで飛龍と一緒に並んでいるキヨが聞いてくる。えっとなんだったか。

 

「確か、厄除、商売繁盛。縁結びだったか。ちょっと曖昧だわ」

 

商売繁盛ってそれこそ稲荷系だと思うんだけど、以前リサーチした記憶ではご利益にあった気がする。俺は基本、神社へ行くと、その社の神様に挨拶をしに行くだけだからなぁ。ご利益に関連は、二の次だったりする。

 

「なんかさ、提督って神主みたいな事ばっかり言ってるよね。と、言うか大本営の言葉みたい」

 

飛龍はニヤニヤと茶化してくる。まあ神主と言うか、神道が好きなんだけども…。と、言うか大本営と同じ?どゆこと?

 

「あー飛龍、その事はあまり言わない方がいい気がするなぁ」

 

すると蒼龍が、飛龍に釘を刺した。やばい、唐突過ぎて話についていけないぞ。

 

「おいおい、なんかそれすっげぇ気になる。大本営って言うと…?」

 

「うーん気になります?…まあいいかぁ。えっとですね、大本営曰く妖精さんは神の使いって言われてるんですよ」

 

妖精さんって言えば、装備や武装に着いてるあの妖精さんだろうか。って、艦娘達が言う妖精さんって、それくらいしかないか。

 

「へぇ、そっちの世界では、そう考えられているのか」

 

「はい。どこから来たのか、どうやって現れたのか不明なのよね。神様の使いと今のところ、言わざるを得ないんだって」

 

そういえば、向こうの世界の話ってこうやって聞くのは随分と久々な気がする。と、言うか基本的向こうの世界の文化や相違点を、まだよくわかっていないな。

 

「あ、あともう少しで参拝できますよ?」

 

どうやらこうして話し込んでいる内に順番まであと少しの様だ。さてさて、どんな事を素戔嗚尊に話そうか。楽しんでくれれば、良いのだけど。

 




どうも、就活忙しいマンの飛男です。何とか投稿することが出来ました。
今回はちょっとした経緯を触れて、あとは八坂神社の説明でしたね。一応正しいと思いますが、若干の違いがあるかもしれません。もし違いがあれば、メッセージで個別に送ってくれると助かります。
では、今回はこの辺りで、また次回お会いしましょう!

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