『仮面ライダードライブ』に登場する怪人・ロイミュードの幹部。
メディックを救って退場したところまでの記憶は残っているため、超進化の鍵となった「嫉妬」、ハートに対して感じていた「愛情」、そしてメディックを救った「自己犠牲」の精神など、機械でありながら人間以上に人間臭い部分はそのまま引き継がれている。
やるときはやる男。ただし、蛮野に従ったフリをしたときのように、何か目的を持って覚悟を決めているわけではないので、基本的にはメディックにイジメられていた頃のような「頭はいいけど、どこかポンコツでヘタレ気味」な状態に戻っている。
どこかの世界に存在する、現代日本にそっくりな王国。
これはその国の王族である櫻田家、取り分け次期国王候補である葵、修、奏、茜、岬、遥、光、輝、栞の九人の兄弟姉妹の物語であり…
「お願いブレンさん!今日も監視カメラハッキングして映らないようにして!」
「いや、あれは以前こっぴどく叱られたので、もうやらないと…というか私は今、見ての通り櫻田光と櫻田輝の給食当番用白衣のアイロンがけをしていてですね……」
「ブレン殿!今日こそ僕にも『ちょうしんか』に至る方法を教えて下さい!」
「ですから私は今お前たちの…というか、そんな事してる暇ないだろ!遅刻しないように早く準備を……」
「ちょっとブレン。トイレットペーパーの予備が切れてたわよ。買ってきておいて」
「だ・か・ら!今私は作業中だし、それは今じゃなくてもいい事でしょうが!というかそもそも、なんで私がお前の分まで雑用を押し付けられているんだ!」
同時に、現在小学校の給食当番用の白衣にアイロンをかけているこの男、
「うるさいわね…ギャーギャー言ってると、また数字の状態に戻すわよ」
「おのれ…なんて心のドス黒い卑劣な性悪女なん…あ!やめて!私が、私が悪かったから!」
「奏、ブレンくんに意地悪しない。嫌がってるでしょ」
櫻田家次女である奏に睨まれて完全にビビっている、この眼鏡をかけた青年・ブレンの物語でもある。
事の始まりは数週間前まで遡る。
ゴルドドライブこと蛮野博士の卑劣な策略からメディックを救うため身代わりとなったブレンは、肉体もコアも消滅し、その生涯を終えたはずだった。
にも関わらず、再び彼は目を覚ました。
「ここは…?私は…一体……」
最初に目に入ったのは、見知らぬ天井。どこかの部屋に寝かせられているらしい。
次にブレンは寝たままの姿勢で、軽く辺りを見回してみる。すると、右には本棚や写真立てなどが、左にはベッドが目に入った。
どうやら少なくとも、かつて自分たちが生まれたような研究施設の類、あるいは仮面ライダーたちの本拠地である特上課などでは無いらしい。
見たところ、人間の女性の部屋のようである。
「何故私はこんなところに…そもそも私は死んだのでは」
と、そこまで言いかけて彼は思い出した。かつてプロトドライブとして自分たちに敗北し、その後ロイミュードの番人・魔進チェイサーとして改造されるも、今度は仮面ライダードライブに敗北した
(もしかしたら…私も以前のチェイスのように、死んでしまうほどのダメージを負いながらも、奇跡的に生きていたのではないだろうか?ここがどこかは分からないが、偶然ここへ辿り着いた私は、この地で傷を癒し…たった今復活した!)
ブレンの頭にそんな考えが浮かぶ。
「うん…そういえばそんな気がしてきた。いや!そうに違いない!事実、前に仮面ライダー三人の必殺技を一斉に食らった時も、肉体はやられたがコアは無事だった!」
もはや他の可能性を考える事すら放棄し、彼は心の底から湧き上がってくる根拠の無い自身に酔いしれる。
『
「きっとそうだ!やはり私は屈強で幸運で粘り強い男なんだァー!」
喜びのあまり立ち上がって小躍りを始めたブレンだったが、
「…おや?」
ようやく部屋の入口が開いていることと、そこで一人の少女がドン引きしながら立ち尽くしている事に気付いたのだった。
「……成程。つまり、簡単に言うと私はお前に生成されたお手伝い用ロボットだと……」
「それで、あんたは自分の事を、ここではないどこかから来た機械生命体だと……」
「「って、信じられるわけないでしょ!」」
『少女の部屋で、(その正体はともかく、少なくとも外見上は)二十歳を超えてそうな男、それも知的そうな青年が一人鼻歌交じりに小躍りしている。そしてそれを目撃したのが初対面かつ部屋の持ち主である少女』
という、あまりに衝撃的な二人の出会いから数分後。部屋の主こと櫻田奏が、ブレンに何故小躍りしていたのかを尋ねたことをきっかけに、二人は互いの認識にズレがあることをなんとなく察し始めた。
そして現在。
「櫻田王家だと!?私の知る日本では、王政どころか王族がいた歴史など、はるか昔の神話の時代以降は存在しない!第一、ただの人間が特殊能力なんて持っているはずがない!」
「そっちこそ!ここは日本なんて国じゃないし、『ロイミュード』とか『グローバルフリーズ』とか『どんより』なんて聞いた事無いわよ!大体『仮面ライダー』って何よ!」
「なっ…貴様、私のネーミングセンスにケチを付けるのか!?お前は見た事が無いからわからないかもしれないが、あれ以上の呼び名を思いつける奴など絶対にいない!結果論ではあるが、特にマッハにはピッタリなんだぞ!」
「知らないわよ!何よマッハって!」
なんとなくだが、互いに相手が『自分の知る世界とは別の世界』に関して主張している事を理解し、そんな馬鹿な話があるか…と、議論は平行線をたどっていた。
いよいよお互いにイライラし始めてきたその時、二人の元へ救いの手が差し伸べられる。
「奏?さっきから何騒いで…そのメガネの人はどちら様?」
「お?さっきはずっと動かなかったけど、ようやく動いたのか」
奏の姉で櫻田家長女の葵と、奏の兄で長男の修である。
「な、なんだお前たちは…。お前たちも、私の事をお手伝いロボとかなんとか言うのか?」
「お手伝いロボ…?奏、それは一体何の事?」
二人と初対面であるブレンは警戒し、また葵も状況が飲み込めずに困惑する。
そんな中修だけは状況を理解したのか、少し面倒臭そうな表情を浮かべて「なるほどなー」と呟いた。
「奏、お前が生成したこいつが自我や何らかの記憶を持っていて、その上お前に生成された事を自覚していない…そういう事か?」
『こいつ』と言いながらブレンの方を指さした修は、若干呆れたように奏に問いかける。
「仕方ないでしょ。少しうとうとしてた時に、寝ぼけて無意識に作っちゃったんだから。というかそもそも、そんな事態になったのは修ちゃんのせいでしょ。『そんなに独りで頑張りたいのなら、せめてお手伝いアンドロイドでも生成して』なんて言うから」
「あー…それで無意識のうちに生成しちゃったのね」
呆れ顔の修に噛みつくように説明する奏。そして葵もなんとなくだが状況を理解して苦笑いした。
「こらー!さっきからなんなんだー!無視するなー!」
と、ここまでスルーされ続けていたブレンが、我慢の限界とばかりに地団太を踏みながら抗議する。その姿はどこぞのカリスマ(笑)ドーパントを彷彿させるような、蛮野との決戦時とはまるで別人の情けない姿であった。が、それを知る者はこの場にはいない。
「黙って聞いていれば好き放題言って…見ていなさい!私が人間の手伝いなんかではない証拠をみせてやる!」
ブレンはそう叫ぶと、自身の体をロイミュード本来の姿へと変化させる。
「「!?」」
「おいおい…確かにこれは、お手伝いさんにしては不気味すぎるな」
思わず息を飲む三人。しかし無理も無い事である。
脳味噌のような形状をした頭部をはじめ、体の各所に脳をモチーフとしたデザインがあしらわれ、まさに
頭部やその他脳のようなデザインの部分は銀色に輝き、下半身、そして背中から垂れたマントのような部分は濃い緑色をしている。この二色の対比が、見た者により一層の威圧感や不気味さを感じさせ……
「…緑?」
そう、緑。
かつて仁良光秀と融合し、彼の嫉妬心にシンクロしたことで得た『超進化態』の証である黄金の輝きは、完全に失われていた。
「バカな…何故なんだ……いやあああああああああああ!見ないでええええええええ!!」
変身を目撃した三人ではなく、変身したブレン自身の悲鳴が、家の中に響き渡った。
城下町のブレン様!
「オレは櫻田茜ファンクラブの会長と副会長を倒すために生まれた…仮面ライダー3号」
3号登場により、変わってしまった世界!
「全ての監視カメラは…オレが破壊してやるぜ」
「オレたち以外の会員は、皆敵だと思え」
この男は正義か?それとも悪か?
「茜様の笑顔を守り、希望の光を照らし続けるッ…!それが仮面ライダーだ!」
「勝てば正義、負ければ悪…」
「見ていて下さい…オレのトップギア」
目覚めよ!そして戦え!今、監視カメラ撤廃をかけた、史上最大級のレースが開幕する!
次回、『櫻田ファミリー大戦GP 仮面ライダー3号』!
お楽しみに!(この予告はフィクションです。実際の内容とは一切関係ありません)