ソードアート・オンライン〜黒の剣士と神速の剣士〜   作:ツン

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第15話 ラフコフ討伐戦

 

 

第3者side

 

 

サキのホームは22層の森の湖の近くにある小さなログハウスだ。

1人で住むには少し広いが2人なら丁度いい広さだ。

玄関まで連れて行くとカゲヤはサキから手を離す。

 

「あとは1人でも大丈夫か?」

 

「うん。ありがとう、カゲヤ君」

 

「無理はするなよ。徐々に克服していけばいいから、今は休め。それと、何かあったらメッセージを飛ばせよ。すぐに来るから」

 

「うん」

 

そう言うとサキはホームの中に入っていった。

 

さて、鍛冶屋を探すか…

 

カゲヤはそう思いながらサキのホームを後にした。

 

 

 

 

 

サキは心に大きな傷を負った。

最も愛する者を失ったことで…

しかも、最悪の状況と最悪の状態で…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今から約1ヶ月前

 

55層主街区《グランザム》

ギルド《血盟騎士団》本部

今、カゲヤ達は討伐会議に集められていた。

だが、今回の会議の討伐対象はモンスターではなくプレイヤーだ。

しかも、オレンジのだ。

 

「今から、笑う棺桶討伐会議を始めます」

 

しんと静まり返った部屋にアスナの声が響く。

今回、カゲヤ達が相手にするのはレッドギルド笑う棺桶(ラフィン・コフィン)だ。

レッド、つまり殺人を楽しむプレイヤーが集まったギルドがラフコフだ。

彼らは殺人方法を次々と編み出しては人を殺し、対策されれば新しい殺人方法を編み出しまた殺す、最悪で最低のギルドだ。

 

「ここがラフィン・コフィンのアジトです」

 

アスナがマップを出しながら言う。

マップに映っていたのはかなり下層の洞窟だった。

製作者も忘れてしまいそうな場所にラフコフのアジトがあった。

 

「洞窟か……」

 

皆、口を揃えて言った。

 

ラフコフのアジトを探すために数え切れないほどの情報屋や不動産のショップを調べたらしい。

だが、それでも見つからなかったのになぜ見つかったのか。

それは、ラフコフから密告者が出たからだ。

その密告者のおかげで奴らのアジトがわかり、偵察することが出来たのだ。

 

「10日間の偵察である程度の構造が把握できました。それと、今は余り活動していないので制圧するなら今かと」

 

「アスナ、いつ頃に制圧しようと思っているんだ?」

 

「…1週間以内には」

 

その応えに他のプレイヤーが呟く。

 

「1週間って……早くないか?」

 

「確かに早いですがそうしなければまた彼らは人を殺します。それを防ぐ為にも早めに制圧するのが一番です」

 

確かにアスナの言っていることは正しい。

だが、正しいからといって最善ではない。

本来ならじっくりと時間を掛け作戦を練るのが最善だ。

しかし作戦を練っている間に、今、会議をしている間にも奴らは人を殺しているかもしれないのだ。

何故なら彼らは『制限がされていない行為なら何をやっても構わない』と思っているからだ。

だから、今すぐ制圧するのが一番なのだ。

だが、意見は『今すぐ討伐』と『作戦を練ってから』の2つにわかれ、その議論に移ってしまった。

アスナが一人一人に意見を聞く。

 

「じゃあ、最後にカゲヤ君の意見を聞かせて?」

 

なぜ俺が最後なんだろうか……

 

カゲヤはそう思いながらも応える。

 

「俺は、今すぐ制圧したほうがいいと思う。アスナの言った通り今、この瞬間にもあいつらは人を殺そうとしている。それにいつ、俺たちの行動が敵にバレるかわからない。だから早く制圧した方がいいと俺は思う」

 

カゲヤの意見に誰も異論や反対はなく全員が賛成し、今すぐ制圧するという意見にまとまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

8月某日

 

ラフコフ討伐のため集まったプレイヤーの数は50人。

作戦は討伐ではなく制圧。

つまり、殺さず捕らえるのだ。

何人かのプレイヤーは本気で1人も死亡者を出すことなく捕らえることが出来ると思っていた。

だが、ほとんどのプレイヤーは必ず死亡者が出ると感じ取っていた。

 

 

 

 

討伐隊のメンバーは下層の洞窟を進む。

いつもの討伐とは違い、討伐対象がプレイヤーだけあって全員緊張していた。

 

それから数分進んだ先にラフコフのメンバーがいるであろう広場に辿り着いた。

だが、その広場には誰1人としていなかった。

人がいたという痕跡もなく、まるで今まで誰もこの場所にいなかったと錯覚しそうなほどに何もなかった。

そのことに討伐隊に動揺が走る。

 

「何もないぞ…」

 

「まさか、情報が漏れて逃げたのか?」

 

口々にプレイヤーは不満を漏らす。

殆どのプレイヤーがラフコフが逃げたと思い込み、武器を下ろしたり鞘などに納めたりと少なからず安心していた。

だが、ほんの数名のプレイヤーは違和感を感じていた。

それにいち早く気付いたのはキリトだった。

 

「みんな武器を構えろ!攻撃が来るぞ!」

 

キリトが叫んだ直後、白い煙幕が広場を覆った。

 

 

 

 

 

広場は一気に混乱に包まれた。

討伐隊のメンバーはラフコフが逃げたと思っていた。

だが、違った。

ラフコフは逃げるのではなく迎え撃つために隠れていたのだ。

奇襲は煙幕だけではなかった。

 

「な、なんだ!?何か降って……」

 

「短剣が降ってる!」

 

「ガードだ!全員ガードするんだ!」

 

だが降ってくるのは短剣だけではなかった。

 

「短剣だけじゃない!いろんな武器が降ってくるぞ!」

 

槍やハンマーなどいろんな武器が次々と降る。

ある者は腕を切断させ、ある者はハンマーに押し潰されるなど瞬く間に被害が大きくなる。

武器の雨がやむと同時に煙幕も消えていく。

そして広場の惨状が露わになった。

蹲る者や腹に槍が突き刺さった者、中には10個もの武器が刺さった者もいた。

 

「被害の少ない人は周りの人の援護を!」

 

アスナが自分に刺さった短剣を抜きながら叫ぶ。

だが、ラフコフのメンバーは態勢が整うまで待ってくれるほど甘くはなかった。

ラフコフは煙幕が消えると同時に壁の穴や後方から攻撃してきた。

 

「被害の大きい人は中央に集まり回復を!他の人はラフコフの相手を!数はこっちが上だから最低3人で固まってスイッチしながら戦うの!」

 

流石というべきか、いち早く状況を判断したアスナが的確な指示を出す。

素早くみんなを統一し、徐々に態勢を立て直していく。

しかし、これはまだ序盤に過ぎず大変なのはこれからだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あははははははは!」

 

「死ね!死ねえぇぇぇえ!」

 

「ヒャッハー!ゾクゾクするぜぇえぇぇえ!」

 

「一旦下がるんだ!」

 

「何なんだこいつら!」

 

「くっそ!どうすればいいんだよ!」

 

状況は最悪だった。

ラフコフはHPを気にせず、そして躊躇いもなく殺しにくる。

逆に討伐隊のメンバーは死ぬ恐怖に怯えたり、敵のHPがレッドゾーンに入ると攻撃を躊躇する。

ラフコフと討伐隊のメンバーの間には大きな差があったのだ。

 

 

 

 

パリィィィィン!

 

 

 

何処からかポリゴンの破裂音が響いた。

それはラフコフのではなく、討伐隊のメンバーの者だった。

討伐隊のメンバーは殺すのを躊躇していたのだ、いつかは誰かが殺されるのは目に見えていた。

 

「あああぁぁぁぁぁああ!!」

 

近くにいた討伐隊のプレイヤーが叫んだ

知り合いだったのだろう。

殺されたことによってたがが外れ次々とラフコフのメンバーに斬りかかった。

それに続くように他のメンバーもラフコフに斬りかかった。

 

 

 

 

「くそ。状況が悪すぎる」

 

カゲヤは呟きながらも敵を斬り、動けなくして拘束する。

 

「流石に1人じゃきついな。キリト達を探さないと」

 

カゲヤは辺りを見回しながら探す。

 

「死ねえぇぇぇぇえ!」

 

背後からラフコフが攻撃しようとするが、武器を弾き両腕を斬り飛ばす。

 

「混戦しすぎじゃないのか。早く見つけないと」

 

カゲヤは入り乱れる戦場の中へ走っていく。

危険な状態のプレイヤーを助けながらカゲヤはキリト達を探す。

 

あれは…キリトか

 

少し先にキリトがラフコフと戦う後ろ姿がカゲヤの目に入った。

だがその後ろでラフコフがキリトに向かって両手剣を振り下ろそうとしていた。

カゲヤは一気に距離を詰めるとジャンプし回転して敵の両手首を切断する。

そして、着地と同時に相手を蹴り飛ばす。

 

「すまん。カゲヤ」

 

「気にするな。それより1人か?」

 

「あぁ。さっきまで一緒だったけど混戦でバラバラになったんだ」

 

「アスナなら真横で戦ってる。サキ達は知らないか?」

 

「サキ達ならkobの奴と奥の方に行ったぞ。なんか幹部が奥にいるとか言ってたけど…」

 

「!?何故止めなかった!」

 

カゲヤはキリトに向かって叫ぶ。

キリトは少し驚きながら返す。

 

「止めようにもすぐに奥の方へ行ったから…」

 

「まずいな……キリト、お前はアスナと一緒にここを制圧しといてくれ。俺は奥の方へ行く。それとアスナにも伝えといてくれ。気をつけておけ、と」

 

カゲヤの言葉にキリトは疑問に思いながら言う。

 

「気をつける?何にだ?」

 

「裏切り者がいるかもしれない」

 

「!?」

 

カゲヤの言葉にキリトは驚く。

 

「あくまでいるかもしれないという予測にすぎない。だが、一応注意しといてくれ」

 

「わかった」

 

そう言うとキリトはアスナの所へ、カゲヤは奥の方へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

真っ暗な道をカゲヤはただひたすら走る。

後ろからの光しかなく進むたびに暗くなる。

それにつられるようにカゲヤの中で不安が募っていく。

だが、カゲヤはそれを振り払い加速してスピードを上げる。

十数秒進んだ先にようやく光が見えた。

カゲヤはより一層スピードを上げ、加速する。

カゲヤは通路を出ると光の眩しさに目を細める。

通路の先には広場の半分ぐらいの小さい広場のような場所に出た。

そして、小さい広場の中央には数名のプレイヤーがいた。

 

「随分遅かったね〜、カゲヤ君。時間切れだ」

 

その中の1人がカゲヤに向かって言う。

カゲヤはそのプレイヤーを知っていた。

 

「エヴァンス、それはどういう意味だ?それに何故お前がラフコフの奴らと一緒にいる?」

 

エヴァンスはkobに入っており、実力もあった。

それにサキやセレッソ、アスナと仲が良かった。

勿論カゲヤとも。

カゲヤはエヴァンスを睨みながら言う。

 

「それは勿論私がラフコフのメンバーだからだよ。そして時間切れはそのままの意味だ」

 

その言葉と共に周りにいたラフコフ達が退く。

それによって、ラフコフ達に囲まれて隠されていたものが露わになった。

 

「!!!」

 

サキとセレッソが麻痺状態で倒れていたのだ。

ただ倒れているだけならよかった。

だが、サキのHPは半分をきっておりセレッソに至ってはHPが1割も残っていなかった。

 

「カゲヤ君も早く来れば見られたのにね〜。面白かったよー、サキちゃんとセレッソさんの裏切られた時の顔…」

 

そこまで言うとエヴァンスは我慢の限界といった様子で笑った。

盛大に声を上げて嗤った。

嘲笑う様に。楽しむ様に。

周りのラフコフ達も嗤う。

エヴァンス達が楽しんでいるのとは裏腹にカゲヤの中では怒りが込み上げてきていた。

 

今すぐ斬り飛ばす

 

カゲヤはそう思い地面を蹴ろうとする前にエヴァンスが先に行動した。

 

「さっきも言ったけど時間切れだから。お別れの時間だねー」

 

エヴァンスは倒れているセレッソの近くに行くと両手剣の刃をセレッソに向け振り上げる。

 

「バイバ〜イ」

 

「やめ……」

 

サキが思わず叫ぶがエヴァンスは躊躇いもなく嗤いながらセレッソの頭に両手剣を振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

グシャッ!

 

 

 

 

 

 

パリィィィィン!

 

 

 

 

 

 

生々しく、儚い音が小さい広場に響きわたった。

 

 

 

 

 

 

 

カゲヤの中で何かが切れる音がした。

 

 

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