ソードアート・オンライン〜黒の剣士と神速の剣士〜   作:ツン

18 / 41
第18話 エギルの店での再会

 

第3者side

 

第50層主街区《アルゲート》

この街を簡潔に表すなら猥雑だろうか。

その街の転移門のある中央広場から西に伸びる道を進んだ先に5人も入ればいっぱいになってしまうような店があり、その店の主は今まさに店頭で商談の真っ最中だった。

 

「よし決まった!《ダスクリザードの革》20枚で500コル!」

 

店の主、エギルはごつい右腕を振り回すと相手の肩をばんばんと叩き、ウインドウを出し自分側のトレード欄に金額を入力する。

しかし相手はまだ悩んでいたが、エギルの凶顔に一睨みされると慌てて自分のウインドウからアイテムをトレード欄に移動させOKボタンを押した。

 

「毎度!!また頼むよ兄ちゃん!」

 

最後に相手の背中をバシンと叩くとエギルは豪快に笑った。

 

「どう考えても500は安すぎるだろ」

 

カウンターの横に座っていたカゲヤはプレイヤーが出て行くのを確認してから言った。

 

「安く仕入れて安く提供するのがウチのモットーだからな」

 

「高く提供するの間違いだろ」

 

カゲヤはお茶を飲みながら指摘する。

 

「カゲヤは厳しいな…っと、いらっしゃい」

 

話の途中で客が入ってきた為エギルは会話を中断して商売に戻った。

カゲヤはカウンターの横で椅子に座ったままお茶を飲み、また良心の欠片もない値段で買い取るんだろうな、と思いながら商談を見守った。

 

 

 

 

 

 

「毎度!!また頼むよ!」

 

カゲヤの予想通りまたもエギルはひどい値段で買い取った。

商談の相手が立ち去った直後に今度は全身真っ黒のプレイヤーが入ってきた。

 

「うっす。相変わらず阿漕な商売してるな」

 

「よぉ、キリトか。さっきカゲヤにも言ったが安く仕入れて安く提供するのがウチのモットーなんでね」

 

「久しぶりだな、カゲヤ。てか、後半は疑わしいもんだなぁ。まぁいいや、俺も買取頼む」

 

カゲヤはお茶を飲みながら手で挨拶する。

 

「お前らはお得意様だしな、あくどい真似はしませんよっ、と……」

 

そう言ってエギルはキリトの提示したウインドウを覗き込む。

途端、エギルの両眼が驚きで丸くなった。

 

「おいおい、S級のレアアイテムじゃねぇか。《ラグー・ラビットの肉》か、オレも現物を見るのは初めてだぜ……。キリト、おめえ別に金には困ってねぇんだろ?自分で食おうとは思わんのか?」

 

「思ったさ。多分2度と手に入らないだろうしな……ただなぁ、こんなアイテムを扱えるほど料理スキルを上げてる奴なんてそうそう……」

 

その時キリトは背後から肩をつつかれた。

 

「キリト君」

 

キリトは呼ばれた直後に相手の顔を確認する前に左肩に触れたままの相手の手を素早く掴み、振り向きざまに言う。

 

「シェフ獲得」

 

「な……なによ」

 

キリトに手を掴まれた相手、アスナはいぶかしげな顔で後ずさる。

キリトはアスナの後ろにいる護衛プレイヤーの殺気の満ちた視線もあって、アスナの手を離し言葉を返した。

 

「珍しいな、アスナ。こんなゴミ溜めに顔を出すなんて」

 

エギルは自分の店がゴミ溜め呼ばわりにされ、顔がぴくぴくと引き攣るがアスナに「お久しぶりですエギルさん」と声をかけられると途端にだらしなく顔を緩ませた。

その直後、アスナの後ろにいたプレイヤーが中に入ってきた。

 

「……あっ!いた!カゲヤくーん!!」

 

入ってきたプレイヤーはカゲヤを見つけると勢いよく飛びついた。

 

「!?」

 

カゲヤは驚いたものの避けずにちゃんと受け止めた。

 

「サキ、いつも言ってるだろ。いきなり飛びつくなって」

 

「いいじゃん。いつもそう言いながら受け止めてくれるんだから」

 

サキはカゲヤに抱きついたまま笑顔で言う。

 

「次は受け止めないからな」

 

カゲヤはため息を吐きながら言うがそんなカゲヤをサキは見上げながら言い返す。

 

「でもこの前もそう言ってたよ?」

 

カゲヤは何も言い返せず黙っていると

 

「うわっ!!こ、これS級食材!?」

 

とアスナの叫び声が聞こえ、カゲヤ達はアスナのいる方に目を向けた。

 

「取引だ。こいつを料理してくれるなら一口食わせてやる…」

 

が、キリトが言い終わる前にアスナがキリトの胸倉を掴み顔を寄せながら言った。

 

「は・ん・ぶ・ん!」

 

キリトは思わず頷いてしまう。

アスナはやったと左手を握る。

キリトはため息を吐くとウインドウを消しながら振り向きエギルに向かって言う。

 

「悪いな、そんな訳で取引は中止だ」

 

「いや、それはいいんだけどよ……なあ、オレたちダチだよな?な?俺にも味見ぐらい……」

 

「感想文を800文字以内で書いてきてやるよ」

 

「そ、そりゃあないだろ!!じゃ、じゃあカゲヤは食わせてくれるよな?さっきの言ってただろ!な?」

 

バカが…そんなこと言ったら……

 

カゲヤはそう思いながらそろーと顔を動かすと案の定サキが目を輝やけながらカゲヤに向かって言った。

 

「もしかしてカゲヤ君も持ってるの?S級食材。私も食べたいな〜」

 

カゲヤはサキに上目使いでお願いされ、断れるはずもなくはぁーとため息を吐き「わかったよ」と言ってサキの頭を撫でた。

 

サキは嬉しそうな顔をするが逆にエギルはこの世の終わりか、といった顔でカゲヤを見る。

 

「今度料理作ってやるからそれで我慢してくれ」

 

そんなエギルを見兼ねてカゲヤは言う。

 

「わかったよ」

 

エギルはしょんぼりしながら店の奥へ行った。

 

「さて、俺たちは行くか」

 

カゲヤはそう言い店を出ようとしたが途中でアスナに止められた。

 

「せっかくなんだしカゲヤ君とサキちゃんも一緒に食べましょうよ」

 

「俺は構わないが……どうする?サキ」

 

「じゃあ、お言葉に甘えて一緒に食べようかな」

 

「決まりね!それじゃあ私の家に行きましょう。料理器具は一通り揃ってるから」

 

そう言った直後、店の外で待機していた護衛の1人の長髪の男が我慢の限界に達したとでも言うように叫んだ。

 

「お待ちくださいアスナ様。こんなスラムに足をお運びになるだけに留まらず、素性の知れない奴をご自宅に伴うなどと、とんでもない事です。」

 

するとアスナの護衛の2人の横にいた2人組の1人の茶色の短髪の男も叫んだ。

 

「サキ様も軽率な行動は慎んでください。副団長補佐なんですから、もう少し自覚を持って行動してください」

 

アスナとサキはうんざりとした表情になり、アスナは長髪の男に言った。

 

「このヒトは素性はともかく腕だけは確かだわ。多分あなたより10はレベルが上よ、クラディール」

 

「カゲヤ君もクラディールさんよりかは上だと思うよ。それとヴィクトさんよりもね」

 

「な、何を馬鹿な!私がこんな奴に劣るなどと……」

 

クラディールの半分裏返った声が路地に響き渡る。

逆にヴィクトは何も言わなかったが納得がいかないといった表情でサキを睨む。

途端クラディールの顔が何かを合点したかのように歪んだ。

 

「そうか……手前、たしか《ビーター》だろ!」

 

それを聞いたヴィクトは鼻で笑いサキに言った。

 

「可笑しなことを言いますね、サキ様。この俺がビーター共に劣るわけがないでしょう」

 

今まで笑顔だったサキの顔から笑みが消え眉根が不愉快そうに寄せられ、何か言い返そうとした直前にカゲヤに止められた。

カゲヤはヴィクトに向かって言った。

 

「試してみるか?俺がお前よりか劣っていか」

 

「いいだろう。証明してやるよ。俺がお前より勝ってるという事を」

 

そう言うとヴィクトは店を出る。

カゲヤもヴィクトに続いて店の外へ出る。

店の外にはいつの間にか野次馬が集まってきていた。

2人が外へ出ると野次馬は円を作るように退いていく。

ヴィクトは野次馬で出来た円の中央付近で止まるとカゲヤにデュエル申請を出す。

勝負内容は《初撃決着モード》

カゲヤは承諾すると、カウントダウンが始まる。

周りは次々と野次馬が集まってくる。

カウントダウンが20を切った所でヴィクトは片手剣を抜き中段で構える。

カゲヤも片手剣を抜き、右足を少し下げ構える。

そしてカウントダウンが0になり『DUEL!!』の文字が弾けた瞬間、両者とも同時に地面を蹴る。

両者ともソードスキルを使わずヴィクトは上段からの斬り下ろし、カゲヤは右下からの斬り上げを放つ。

数秒鍔迫り合いになった後に両者とも後ろへ退がる。

そしてまた同時に地面を蹴る。

だが、ヴィクトはカゲヤよりも速いスピードを出し斬りかかった。

しかし、カゲヤは動揺せずヴィクトの攻撃を弾いていく。

最初はヴィクトが押しながら攻撃しカゲヤが後退しながら攻撃を弾いていたが徐々に形勢が変わっていき、カゲヤが攻撃しヴィクトが後退する状態に変わる。

ヴィクトは攻撃に移れずどんどん後退させられHPも徐々に減っていく。

 

「クソッ!」

 

ヴィクトは悪態を吐くと距離をおくために後方へ跳ぶ。

しかしそれを待っていたのか、カゲヤはヴィクトが後方へ跳んだ直後に地面を蹴り一瞬で距離を詰めると左からの水平斬りを放つ。

ヴィクトは驚き慌てて防御しようとしたが間に合わず攻撃をもろに受け、バランスを崩して倒れた。

その直後ウィナー表示が現れそれと同時に周りにいた野次馬から歓声が上がった。

 

「クソッ!なんでだ!神速剣を使ったのに……」

 

ヴィクトは膝に額を押し付け俯きながら呟く。

カゲヤはそんなヴィクトを気にせず剣を鞘に収めるとサキ達の所へ戻る。

 

「とにかく今日はここで帰りなさい。副団長として命令します」

 

店の中からアスナの声が聞こえ、その直後キリトを引き摺りながらアスナが出てくる。

 

「カゲヤ君のデュエルが終わったことですし行きましょう」

 

アスナはそう言うとキリトを引き摺りながら転移門へ向かっていく。

サキはもう1人の護衛のプレイヤーに帰るように言うとカゲヤと一緒にアスナ達の後を追った。

 




今回はサキについて説明します♪
サキは66層からギルド血盟騎士団に入りました。
理由はカゲヤから勧められたのとアスナがいるから。
カゲヤ曰く「俺1人では守っていけるか難しいがkobに入ればアスナと一緒に行動出来て安心だから」とのことだった。
それから、皆からの信頼や実力を認められ副団長補佐になりました。
サキについては以上です♪

作者「それにしてもよく神速スキルを使わずに勝てたねカゲヤ君」
カゲヤ「神速剣を使ってきた時は少し驚いたが追いつけない速さじゃなかったからな」
作者「す、凄いね……」
カゲヤ「そんなことはない。慣れれば簡単だ」
作者「結構難しいこと言ってるけど、まぁいいか。では!」
カゲヤ「次回もよろしくな」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。