ソードアート・オンライン〜黒の剣士と神速の剣士〜   作:ツン

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第20話 集合場所で

午前9時。

俺たちは74層の主街区ゲート広場でアスナを待っていた。

……のだが

 

「遅いね……アスナ…」

 

すでに時刻は9時15分を過ぎており、ゲートからは勤勉な攻略組が次々と現れ迷宮区目指して歩いていく。

 

「確かに遅いな。アスナに限って寝坊なんてことはないと思うが……」

 

「何かトラブルにでも「きゃああああ!よ、避けてー!」うわああああ!?」

 

キリトが何か言っている途中に転移門が光り、そこから出てきたアスナがキリトに向かって突っ込んできた。

キリトは避ける間もなく思いっきり衝突し2人は派手に地面に転がった。

俺とサキは転移門から離れていた為被害はない。

それにしても

 

「もう少し公衆の目を気にした方がいいと思うんだが……」

 

「2人とも大胆だね〜」

 

サキは笑顔で俺は呆れ顔で言う。

 

「や、やーーーーっ!」

 

突然アスナが悲鳴を上げ、同時にキリトの後頭部が再び激しく地面に叩きつけられた。

アスナはキリトの上から退くと両腕を胸の前で交差させ座り込む。

それを見たキリトはようやく状況を理解したのか遣り場のない右手を閉じたり開いたりしながら、こわばった笑顔とともに口を開いた。

 

「や、やあ、おはようアスナ」

 

アスナの眼に浮かんだ殺気が一際強まったような気がした。

 

「あいつは馬鹿なのか?」

 

「馬鹿だと思う」

 

そんなやり取りをしていると再び転移門が青く光る。

それを見たアスナは、はっとした表情で後ろを振り向くと慌てた様子で立ち上がりキリトの背後に回り込んだ。

キリトは訳が判らないまま立つ。

すると、ゲートは輝きを増し、中央から新たなプレイヤーが現れた。

そのプレイヤーはアスナの護衛の1人、クラディールだった。

クラディールはキリトの背後にいるアスナに目を留めると眉間と鼻筋に皺をよせ、憤懣やるかたないといった様子で口を開いた。

 

「アスナ様、勝手なことをされては困ります!さあ、ギルド本部まで戻りましょう」

 

ヒステリックな調子を帯びた甲高い声でクラディールは言う。

 

「嫌よ、今日は活動日じゃないわよ!……だいたい、アンタなんで朝から家の前に張り込んでるのよ!?」

 

キリトの背後から相当キレ気味でアスナが言い返す。

 

「ふふ、どうせこんなこともあろうかと思いまして、私1ヶ月前からずっとセルムブルグで早朝より監視の任務についておりました」

 

得意げなクラディールの返事を聞いて俺はサキに尋ねた。

 

「血盟騎士団はあんな連中が多いのか?」

 

「そんなことないよ。あっ、でも、今日ヴィクトさんも家の前にいたよ」

 

「大丈夫だったのか?」

 

「うん。カゲヤ君と一緒に行くって言ったら素直に聞いてくれた」

 

「そうか。なら良かった」

 

そんなやり取りをしているといきなり叫び声が広場に響く。

 

「ふざけるな!!」

 

キリトの方を見るとクラディールが顔を歪めて叫んでいた。

 

「貴様のような雑魚プレイヤーにアスナ様の護衛が務めるかあ!!わ、私は栄光ある血盟騎士団の…」

 

「あんたよりはマトモに務まるよ」

 

「ガキィ……そこまででかい口を叩くからにはそれを証明する覚悟があるんだろうな……」

 

クラディールは震える手でウインドウを呼び出すと素早く操作し、キリトにデュエルを申し込んだ。

 

「……いいのか?ギルドで問題にならないか?」

 

「大丈夫。団長には私から報告する」

 

キリトは頷き返すとデュエルを承諾する。

もちろん勝負内容は《射撃決着モード》だ。

 

「ご覧くださいアスナ様!私以外に護衛が務まる者など居ないことを証明しますぞ!」

 

クラディールは狂気を押し殺したような表情です叫び、芝居がかった仕草で腰から大ぶりの両手剣を引き抜くと、がしゃっと音を立てて構えた。

キリトもアスナが数本下がるのを確認してから片手剣を抜き構える。

 

「名門ギルドの所属だけあって得物はクラディールの方が格段に見栄えがいいな」

 

「でも、ああいう装飾華美な武器って……」

 

「あぁ、概して耐久力に劣る」

 

まぁ、キリトはもう気付いてると思うが……

 

そんなことを思っていると周囲に次々とギャラリーが集まってきていることに気付いた。

これまでの険悪な成り行きを知らない見物人たちは口笛を鳴らすわ野次を飛ばすわ大変な騒ぎになった。

クラディールは野次を気にしてちらちらと周囲に苛立った視線を向ける。

逆にキリトは野次を気にせず集中していた。

 

「クラディールは突進の上段攻撃、キリトは下段の小攻撃はフェイントで同じ突進の上段攻撃か」

 

俺はキリトとクラディールを見て冷静に行動を推測する。

それを聞いたサキは驚いて言った。

 

「え!?あれフェイントなの!?」

 

「多分な。デュエルを見ればわかるだろう」

 

そう言った直後キリトとクラディールの間に紫色の閃光を伴って『デュエル!!』の文字が弾け、同時に2人は猛然と地面を蹴った。

予想通り2人共突進の上段攻撃でクラディールは両手剣スキル突進技《アバランシュ》、キリトは片手剣スキル突進技《ソニックリープ》を発動する。

ほぼ同時に発動し徐々に2人の距離が縮まりそして技同士が衝突した。

凄まじい量の火花が散り、次の瞬間には耳をつんざくような金属音を撒き散らしクラディールの両手剣がヘシ折れ、爆発じみた派手なライトエフェクトが炸裂した。

2人はもと居た位置を入れ替えて着地。

それと同時に折れた剣が2人の中間の石畳に突き刺さりその直後、剣全体がポリゴンの欠片となって砕け散った。

しばらくの沈黙の後、キリトが剣を左右に斬り払うと、わっと歓声が巻き起こった。

キリトはクラディールに歩み寄ると剣を背中の鞘に納めながら言った。

 

「武器を替えて仕切りなおすなら付き合うけど……もういいんじゃないかな」

 

クラディールはうずくまりながら体を細かく震わせていたが、やがて軋るような声で「アイ・リザイン」と発声した。

直後、開始の時と同じ位置にデュエルの終了と勝者の名を告げる紫色の文字列がフラッシュした。

再びワッと歓声が上がる。

クラディールはよろけながら立ち上りギャラリーに向かって喚くとキリトの方に向き直り言った。

 

「貴様……殺す……絶対に殺すぞ……」

 

クラディールは三白眼に憎悪の色を浮かばせながらキリトを睨む。

アスナはキリトの傍らにスッと歩み出すとクラディールに言った。

 

「クラディール、血盟騎士団副団長として命じます。本日を以て護衛役を解任。別命あるまでギルド本部にて待機。以上」

 

「……なん…なんだと…この…」

 

クラディールはぶつぶつと何かを呟くとマントの内側から転移結晶を掴み出し「転移……グランザム」と呟き、青光に包まれ消え去った。

俺はクラディールが消えるのを確認してからキリトの所へ行き声を掛けた。

 

「面倒くさい奴に目を付けられたな、キリト」

 

「助けてくれてもよかったんじゃないか?」

 

「キリトなら問題ないだろ」

 

「はぁ……」

 

キリトはげんなりとしながらため息を吐く。

サキはアスナの所へ駆けつけると言った。

 

「アスナ、大丈夫だった?」

 

「うん。大丈夫。ごめんね、嫌なことに巻き込んじゃって」

 

「気にしないで、アスナ」

 

アスナは少し疲れた様子だったがいつもの調子に戻った。

その様子を見てサキはニッコリと微笑むと振り向いて言った。

 

「カゲヤ君、今日は息抜きさせてもらうから前衛(フォワード)よろしくね!」

 

「それじゃあ、キリト君にも頑張ってもらおうかしら」

 

「「はぁ!?」」

 

俺とキリトはギョッとしながら叫ぶ。

 

「待ってくれサキ。それは流石に……」

 

「そうだぞ。前衛は普通交代だろう!」

 

俺とキリトは必死に抗議するが聞いてもらえず「さあ、行こ〜」とサキが言いながらアスナと一緒に街の外に続く道をすたすたと歩き出す。

 

「「まじか……」」

 

俺とキリトはため息を吐きながらサキたちの後を追った。

 




作者「お二人さん前衛ファイト〜」
カゲヤ「キリトと2人なら何とかなりそうだな」
キリト「それでも結構キツイと思うんだが…」
カゲヤ「そこは何とかするしかないだろ」
キリト「まじか…」

作者「さて、次回は74層迷宮区に入ります!それでは」
カゲヤ「次回も」
キリト「よろしくな!」
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