ソードアート・オンライン〜黒の剣士と神速の剣士〜   作:ツン

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第22話 昼食と再開

キリトとアスナは安全エリアに飛び込み、並んで壁際にずるずるとへたり込むとお互いに顔を見合わせ笑った。

 

「あはは、やー、逃げた逃げた!」

 

アスナは愉快そうにわらう。

 

「こんなに一生懸命走ったのすっごい久しぶりだよ。まぁ、私よりキリト君の方が凄かったけどね」

 

「いや、俺よりもカゲヤの方が……壁走ってたし……」

 

「サキを抱えていたからしょうがないだろ。それにどっかの誰かさんは置いていくからな」

 

「うっ……」

 

先に逃げたのはキリトたちのだが先に安全エリアに着いたのは俺たちだった。

そして、キリトたちを追い抜く際に俺は壁を走りキリトたちを抜いたのだ。

アスナは憮然とした表情のキリトを眺めながらくすくすと笑う。

アスナは急に顔を引き締めると言った。

 

「あれは苦労しそうだね……」

 

「そうだな。パッと見、武装は大型剣一つだけど特殊攻撃アリだろうな」

 

「前衛に堅い人を集めてどんどんスイッチして行くしかないな」

 

「あと、盾装備の人10人は欲しいね……。まぁ、当面は少しずつちょっかい出して傾向と対策を練るしかないね」

 

「盾装備、ねぇ」

 

アスナは意味ありげな視線でキリトを見る。

 

「な、なんだよ」

 

「君、なんか隠してるでしょ」

 

「いきなり何を……」

 

「だっておかしいもの。普通、片手剣の最大のメリットって盾持てることじゃない。でも、キリト君が盾持ってるとこ見たことない。私の場合は細剣のスピードが落ちるからだし、スタイル優先で持たないって人もいるけど、君の場合はとっちでもないよね。……あやしいなぁ」

 

「確かに……言われてみればそうだね〜」

 

サキがアスナの言葉に賛同して言う。

キリトの方を見るとキリトは何かと葛藤していた。

 

「アスナ、その辺にしておけ。スキルの詮索はマナー違反だ」

 

「そうね」

 

アスナは時計を確認すると、目を丸くして言った。

 

「わ、もう3時だ。遅くなっちゃったけどお昼にしましょうか」

 

「なにっ」

 

途端キリトが色めき立つ。

 

「て、手作りですか」

 

アスナは無言ですました笑みを浮かべると手早くメニューを操作して小ぶりなバスケットを出す。

 

「さて、俺たちも食べるか」

 

「うん」

 

そう言うと俺もメニューを操作してハンバーガーのような物を出す。

隣ではサキがアスナと同じようなバスケットを出していた。

サキはその中の1つを取り出すと言った。

 

「ねぇカゲヤ君。そのハンバーガーとサンドイッチ交換しない?」

 

「別にいいぞ」

 

断る理由も無く俺はサキのサンドイッチと交換する。

サキのサンドイッチは2つの四角いパンの間に肉と野菜をふんだんに挟み込んだ物で香ばしい香りが漂よっていた。

 

「いただきます」

 

そう言って俺はサンドイッチにかぶりつく。

 

「……うまいな、これ」

 

「カゲヤ君のも美味しいよ」

 

お互いに褒め合いながら食べ続ける。

隣ではキリトが「マヨネーズだ!!」などと叫んでいたがそんなのは気にせず黙々とサンドイッチを食べる。

俺はサンドイッチを食べ終わるとサキに言った。

 

「とても美味しかったよ。時間がある時に作り方教えてもらっていいか?」

 

「それじゃあ、今日の夜教えてあげるね!」

 

そんなやりとりをしていると不意に下層側の入り口からプレイヤーの一団が鎧をガチャガチャ言わせながら入ってきた。

キリトとアスナは瞬間的にパッと離れて座りなおす。

現れたのは6人のパーティーで、そのリーダーを見た瞬間俺とキリトは肩の力を抜いた。

その男はこの浮遊城でもっとも古い付き合いの刀使いだったのだ。

 

「おお、キリト!それにカゲヤも!しばらくだな」

 

俺たちに気付いた刀使いは笑顔で近寄ってきて言った。

俺とキリトは腰を上げて挨拶を交わす。

 

「久しぶりだな」

 

「まだ生きてたか、クライン」

 

「カゲヤはともかく、相変わらず愛想のねぇ野郎だ。珍しく連れがいるの……か……」

 

荷物を手早く片付けて立ち上がったアスナとサキを見てクラインは目を丸くした。

 

「あー……と、ボス戦で顔は合わせてるだろうけど一応紹介するよ。こいつはギルド《風林火山》のクライン。で、こっちは《血盟騎士団》のアスナとサキ」

 

キリトの紹介でアスナとサキはちょこんと頭を下げたがクラインは目の他に口も丸く開けて完全停止していた。

 

「おい、何とか言えよ。ラグってんのか?」

 

キリトがそう言いながら肘でクラインの脇腹をつつくとようやく口を閉じ凄い勢いで最敬礼気味に頭を下げた。

 

「こっ、こんにちは!!くくクラインという者です24歳独身」

 

どさくさに紛れて妙なことを口走るクラインにキリトはもう一度脇腹を強めにどやしつける。

しかしクラインの台詞が終わらないうちに後ろにいた5人のパーティーメンバーがガシャガシャ駆け寄ってきて我先にと口を開いて自己紹介を始めた。

 

「凄いな、あいつは」

 

俺は風林火山のメンバーに囲まれているアスナたちを後ろで眺めながら呟く。

 

「?どういう意味?」

 

隣にいたサキが不思議そうな顔で聞く。

 

「クラインによると風林火山のメンバーは全員SAO以前からの馴染みらしいんだ。それをクラインは独力で仲間を1人も欠けることもなく守り抜き、しかも攻略組の一角を占めるまでに育て上げたんだ。これは簡単に出来ることじゃないし、真似しようとしても出来ることじゃないんだ」

 

「凄い人なんだね」

 

「ああ、尊敬すらする相手だ」

 

キリトとクラインがじゃれあっているのを眺めているとクライン達が来た方向から足音と金属音が響いてきた。

 

「……軍か」

 

予想通り二列縦隊で現れたのは軍だった。

しかし、森で見た時ほど整然とはしておらず足取りは重くヘルメットから覗く表情は疲弊の色が見て取れた。

軍は安全エリアの俺たちとは反対側の端に部隊を停止させると先頭にいた男が「休め」と言った。

途端残り11人が盛大な音と共に倒れるように座り込んだ。

しかし、先頭にいた男は仲間の様子に目もくれずにこれらに向かって近づいてくる。

男は俺たちの目の前で止まるとヘルメットを外し、先頭に立っていたキリトに向かって口を開いた。

 

「私はアインクラッド解放軍所属、コーバッツ中佐だ」

 

…ん?軍は集団外部の者が揶揄的につけた呼称のはずなんだが……

 

キリトもそんなことを思ったらしく、やや辟易しながら「キリト。ソロだ」と短く名乗る。

コーバッツは軽く頷くとキリトに横柄な口調で訊いた。

 

「君らはもうこの先も攻略しているのか?」

 

「ああ。ボス部屋の手前まではマッピングしてある」

 

「うむ。ではそのマップデータを「断る」提……なんだと?」

 

「断ると言ったんだ」

 

俺はキリトの隣まで行くと言った。

コーバッツは俺を睨みながら言う。

 

「我々は君ら一般プレイヤーの解放の為に戦っている!」

 

そしてさらに声を張り上げて続ける。

 

「諸君が協力するのは当然の義務である!」

 

傲岸不遜とはこのことだな

 

「いつ、誰がお前ら軍に頼んだ。それについ最近出てきたお前らが偉そうにするのは可笑しいと思うが?どうなんだ?」

 

コーバッツは顔を歪ませ言葉を詰まらせる。

だが、そんなことは気にせず俺は続ける。

 

「それにさっき『協力するのは当然の義務』とか言っていたがその義務は誰が決めた。同じギルドの者だったら協力するのは当然だが他のギルドやソロプレイヤー達が軍に協力する義務は無いはずだが。違うか?」

 

「そ、それは……」

 

コーバッツは言葉を詰まらせて沈黙する。

だが、後ろからキリトが俺の肩に手をポンと軽く叩くと前に出る。

 

「その辺にしておけよ、カゲヤ。それに街に戻ったら公開しようと思っていたデータだ。別に構わないさ」

 

「お、おい。キリト………」

 

俺はキリトを止めようとしたがキリトはコーバッツにマップデータを送信する。

 

「協力感謝する」

 

コーバッツは感謝の気持ちなど欠片も無さそうな声で言うとくるりと後ろを向く。

その態度に俺は少し怒りを覚えコーバッツに言おうとしたがキリトに止められる。

コーバッツは残りの11人のメンバーの所に行くと「貴様等さっさと立て!」と叫ぶ。

コーバッツの声にのろのろと立ち上がり二列縦隊で整列するとガシャリと一斉に武器を構え、重々しい装備を鳴らしながら進軍を再開した。

 

「……大丈夫なのかよあの連中……」

 

軍が上層部へと続く出口に消え規則正しい足音も聞こえなくなった頃、クラインが気遣わしげな声で言った。

 

「いくらなんでもぶっつけ本番でボスに挑んだりしないと思うけど……」

 

アスナも心配そうに言う。

だが、俺はその言葉を否定した。

 

「いや、あいつは多分ボスに挑む気だ」

 

「どういうこと?」

 

「あいつの言動から察するにボスに挑むと予想したんだ。それを止めるためにマップデータをやるのを断ったんだが……」

 

そこまで言うと俺はキリトを睨む。

 

「わ、悪かったよ」

 

「まぁ、やってしまったことはどうしようもない」

 

「一応様子だけでも見に行くか……?」

 

「そうだな」

 

他の6人も首肯する。

俺たちは手早く装備を確認すると上階へ向かって歩きだした

 




作者「さて!次回はボス戦!……かもしれません!」
カゲヤ「未定なのか?」
作者「高い確率でボス戦だと思うけど変に期待させるのもあれだと思ったから……」
カゲヤ「誰も期待してないだろ」
作者「それもそうか。では!次回も!」
カゲヤ「よろしくな」
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