ソードアート・オンライン〜黒の剣士と神速の剣士〜   作:ツン

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第26話 談判

 

第3車side

 

 

翌日

 

カゲヤは朝早くからエギルの雑貨屋の二階にいた。

カゲヤはソファに座りながら新聞を広げていた。

 

「尾ひれが付くにもほどがあるだろ……」

 

カゲヤは新聞を読みながら呟く。

今、アインクラッド中がある話題で持ちきりだった。

フロア攻略、新しい街へのゲート開通だけでも充分な話題なのだが今は別の話題が持ちきりだった。

曰く『軍の大部隊を全滅させた悪魔』、曰く『それを単独撃破した二刀流使いの150連撃』、曰く『更に強力になって復活した悪魔を、1分で撃破した神の速さを持つ神速使いの100倍速』etc……

 

「どう考えてもおかしいだろ、こんなの。だいたい100倍速なんてしたら体が保つわけがないだろう」

 

カゲヤは新聞を読みながら更に愚痴をこぼす。

そんなカゲヤを見ながらエギルはにやにやと笑顔を向けながら言う。

 

「更に有名人になったな、カゲヤ」

 

「前にもこんな事があったから別にいいが……前回より大袈裟になっている気がするんだが……」

 

「そりゃあそうだろう。キリトの二刀流が出るわ、ボスが復活するわで大騒ぎなんだから。そこにお前の新しいスキルがでりゃ前回より大騒ぎになるさ」

 

「はぁ……」

 

カゲヤはため息を吐くと新聞をテーブルに置き、代わりにコップを持ちお茶を啜る。

そしてコップをテーブルに置くのと同時に勢いよく扉が開いた。

 

「遅かったな、キリト」

 

勢いよく扉を開けたのはキリトだった。

キリトは息を荒げながら部屋へ入ると倒れ込むようにして揺り椅子に座った。

 

「引っ越してやる……どっかすげぇ田舎フロアの絶対見つからないような村に……」

 

キリトはエギルが出したお茶を不機嫌に啜りながらブツブツ呟く。

 

「まあそう言うな。一度くらい有名人になってみるのもいいさ。どうだ、いっそ講演会でもやってみちゃ。会場とチケットの手はずはオレが」

 

「するか!」

 

にやにやと笑顔を見せるエギルにキリトは叫び、右手のカップをエギルの頭の右横を狙って投げた。

だが、染み付いた動作によって投剣スキルが発動してしまいカップは輝きながら猛烈な勢いですっ飛んでいき、部屋の壁に激突して大音響を撒き散らした。

 

「おわっ、殺す気か!」

 

大袈裟に喚くエギルにキリトは、ワリ、と右手を上げると再び椅子に沈み込んだ。

エギルはキリトを睨むとお宝鑑定に戻った。

エギルは時折奇声を上げながらキリトとカゲヤが昨日の戦闘で手に入れたお宝を鑑定している。

そんなエギルをカゲヤはいかがわしいものを見る目でエギルを見ながらお茶を啜る。

 

「もう少し落ち着いたらどうだ?キリト」

 

ずっとそわそわして落ち着きのないキリトにカゲヤが声をかける。

 

「だ、だが……」

 

「心配なのはわかるが、落ち着け。その内来るだろ」

 

「……」

 

不安な表情でお茶を飲み干すキリトを見てカゲヤはため息を吐く。

カゲヤが新聞を読み始めようとした時、扉の奥で階段を上ってくる足音が聞こえてきた。

しかも物凄い勢いで……

キリトの時と同様に勢いよく扉が開かれる。

それと同時に何かが凄い勢いで部屋に入って来てそして、

 

「カゲヤく〜〜ん!!」

 

カゲヤに向かって飛び付いた。

 

「うぐっ!!」

 

カゲヤは飛び付いてきた人物を受け止めるも頭突きを喰らい苦痛の声を上げる。

 

「サ、サキ。何時も言っているだろう。急に飛び付いてくるなと」

 

しかし、サキは聞こえていないのか顔を上げると扉の前にいるアスナと同時に泣き出しそうな声で言った。

 

「「どうしよう……大変なことになっちゃった……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新しく淹れたお茶を飲み、ようやく落ち着いたのかアスナはぽつりぽつりと話し始めた。

 

「昨日、あれからグランザムのギルド本部に行ってあったことを全部団長に報告したの。それで、ギルドの活動お休みしたいって言ってその日は2人とも家に戻って……。今朝のギルド例会で承認されると思ったんだけど……」

 

「団長が、私たちの一時脱退を認めるには条件があるって……。キリト君とカゲヤ君と、立ち会いしたい……て……」

 

「な……」

 

キリトは一瞬理解できずに声を上げる。

カゲヤも難しい顔をして疑問を口にした。

 

「どうしてそんな話になったんだ?」

 

「それが、私たちにも解んないの……」

 

サキは俯いて首を振った。

 

「そんなことしても意味ないって一生懸命説得したんだけど……どうしても聞いてくれなくって……」

 

「でも、珍しいな。あの男がそんな条件出してくるなんて……」

 

キリトは脳裏に彼の姿を思い浮かべながら呟く。

 

「そうなのよ。団長は普段ギルドの活動どころかフロア攻略の作戦とかも私たちに一任して全然命令とかしないの。でも、何でか今回に限って……」

 

キリトは首を捻りつつもアスナに言った。

 

「ともかく、一度グランザムまで行くよ。俺が直接談判してみる」

 

「なら俺も行くか」

 

「カゲヤ君も行くの?キリト君に任せたら?」

 

サキの提案にカゲヤは首を振りながら応える。

 

「それでもいいんだが……キリトに任せるのは少し不安があるからな……」

 

「それじゃあ、みんなで行こうか」

 

「そうだな」

 

カゲヤとキリトは同時に立つと55層にあるギルド《血盟騎士団》の本部に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここか……」

 

「うん……」

 

長い螺旋階段を昇っていくと無表情な鋼鉄の扉が現れた。

アスナは気乗りしない様子で頷くと、やがて意を決したように右手をあげると扉を音高くノックし答えを待たずに開け放った。

中は塔の1フロアを丸ごと使った円形の部屋で壁は全面透明のガラス張りだった。

中央には半円形の巨大な机が置かれ、その向こうに並んだ五脚の椅子にそれぞれ男が腰掛けていた。

アスナはブーツを鳴らし机の前まで行くと、軽く一礼した。

 

「お別れの挨拶に来ました」

 

その言葉にヒースクリフはかすかに苦笑し、

 

「そう結論を急がなくてもいいだろう。彼と話をさせてくれないか」

 

そう言ってヒースクリフはキリトを見据える。

キリトはフードを外してアスナの隣まで進み出る。

 

「君とボス攻略戦以外の場で会うのは初めてだったかな、キリト君」

 

「いえ……前に67層の対策会議で少し話しました」

 

キリトは敬語になってしまいつつ答える。

ヒースクリフは軽く頷くと机の上で両手を組み合わせながら言う。

 

「あれは辛い戦いだったな。我々も危うく死者を出すところだった。トップギルドなどと言われても戦力は常にギリギリだよ。……なのに君達は、我がギルドの貴重な主力プレイヤーを引き抜こうとしているわけだ」

 

「貴重なら護衛の人選に気を使ったほうがいいですよ」

 

ぶっきらぼうなキリトの台詞に机の右端に座っていたいかつい男が血相を変えて立ち上がろうとしたが、ヒースクリフはそれを軽く手で制すと、

 

「クラディールは自宅で謹慎させている。迷惑をかけてしまったことは謝罪しよう。だが、我々としてもサブリーダーとその補佐を引き抜かれて、はいそうですか、という訳にはいかない。キリト君、カゲヤ君───」

 

ヒースクリフはひたとキリトとカゲヤを見据えると続けた。

 

「欲しければ剣で───《二刀流》と《神速》で奪い給え。戦い、勝てばアスナ君とサキ君を連れて行くがいい。だが、負けたら君達が血盟騎士団に入るのだ」

 

「少し勘違いしてないか?」

 

今までキリトの後ろで黙っていたカゲヤが口を開いた。

 

「俺は別にサキをギルドから引き抜こうとしているわけじゃない。ただ休暇を貰いたいと言っているんだ」

 

「うむ。しかしそうすると階層攻略が遅くなってしまうが?」

 

「それはあんたが前線に出ればいいだろう」

 

「それだとギルドがうまく回らなくなるが?それにサブリーダーとその補佐の仕事はどうするのかね?」

 

「そ、それは……」

 

カゲヤは言葉に詰まらせる。

しかし今度はアスナが口を開いた。

 

「団長、私は別にギルドを辞めたいと言っているわけじゃありません。それに仕事ならみんなで分担してすればいいじゃないですか。私はただ、少しだけ離れて色々考えてみたいんです」

 

キリトはなおも言い募ろうとするアスナの肩に手を置くと一歩前に進み出てヒースクリフに向かって言い放った。

 

「いいでしょう、剣で語れと言うなら望むところです。デュエルで決着をつけましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わ、悪かったよ。つい売り言葉に買い言葉で……」

 

再びアルゲート、エギルの店の2階。

ため息を吐きながらソファでお茶を啜るカゲヤとキリトの座る揺り椅子の肘掛にちょこんと腰を乗せ、拳でぽかぽかと叩くアスナにキリトは申し訳なさそうな顔をしながら謝る。

 

「せっかく私が説得しようとしたのに、なんであんなこと言うのよ!!」

 

「悪かったって……」

 

キリトはアスナの拳を捕まえて、軽く握ると更に言う。

 

「大丈夫だよ、一撃終了ルールでやるから危険はないさ。それにまだ負けると決まったわけじゃないし」

 

「う〜〜〜……」

 

唸るアスナと申し訳なさそうな顔をしてアスナをなだめるキリトを見ながらカゲヤは今日4度目のため息を吐きながら呟く。

 

「なぜ次から次へと面倒事が増えるんだ……」

 

「ごめんね、カゲヤ君……」

 

サキは申し訳なさそうに俯いてカゲヤに謝る。

 

「気にすることないさ。負けなければいいだけだ」

 

「でも……」

 

「サキは心配しすぎだ。少しは信じてくれてもいいんじゃないか?」

 

「うん。そうだよね。信じるよ」

 

「ああ、必ず勝ってくるから待っていてくれ」

 

カゲヤがそう言うとサキは明るい笑顔で返事をした。

 

「うん!待ってる!」

 

カゲヤはサキの明るい笑顔を見て微笑むとお茶を啜る。

 

……約束したからには負ける訳にはいかないな。まぁ、元より負ける気はないが……

 

カゲヤは胸の中でそう呟くとお茶をぐっと飲み干した。

 

 




作者「さて次回はキリト君のデュエルを飛ばしてカゲヤ君のデュエルだよ!」
キリト「なに!?」
カゲヤ「残念だったな、キリト」
キリト「そこは原作で重要なシーンじゃないのか!?」
作者「そっちは原作だから。こっちは二次創作だから」
キリト「うそだろ……」
カゲヤ「まぁいいじゃないか。出番があるだけましだろ」
エギル「そうだぞ!俺なんか最初の方しか出てないんだぞ!」
リズ「それはいいんじゃない。私なんて1回も出てないのよ!」
シリカ「それを言うなら私だって「はい、これ以上言われたらきりがないので終わりまーす」ちょっと作者さん!」
作者「それでは次回も」
全員「よろしくな(ね)!」
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