ソードアート・オンライン〜黒の剣士と神速の剣士〜   作:ツン

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第35話 ユリエールの頼み

軍の徴税隊の件から翌日

 

 

ユイのこともあり、教会に泊まった俺たちは朝食をとるため教会1階の広間に来たのだが……

 

「これは……すごいな……」

 

「そうだね……」

 

「うん……」

 

眼前で繰り広げられる戦場さながらの朝食風景に、アスナ、キリト、サキの3人は呆然と呟きを交わした。

巨大な長テーブル2つに所狭しと並べられた大皿の卵やソーセージ、野菜サラダを二十数人の子供たちが盛大に騒ぎながらぱくついている。

 

「でも、凄く楽しそう」

 

少し離れた丸テーブルに、俺、サキ、キリト、ユイ、サーシャさんと一緒に座ったアスナは、微笑しながらお茶のカップを口元に運んだ。

 

「毎回こうなんですよ。いくら静かにって言っても聞かなくて」

 

そう言いながらも子供たちを見るサーシャさんの目は心底愛しそうに細められている。

 

「子供、好きなんですね」

 

アスナが言うと、サーシャさんは照れたように笑い話した。

 

「向こうでは大学で教職過程とってたんです。ほら、学級崩壊とか長いこと問題になってたじゃないですか。子供たちを私が導いてあげるんだーって、燃えてて。でもここに来て、あの子たちと暮らし始めたら何もかも見ると聞くとは大違いで……むしろ私が頼って支えられてる部分のほうが大きいと思います。でも、それでいいって言うか……それが自然なことに思えるんです」

 

「何となくですけど、解ります」

 

アスナは頷いて隣でスプーンを口に運ぶユイの頭をそっと撫でる。

 

「今となっては子供たちが私の宝物みたいなものです」

 

「本当に子供が好きなんですね」

 

「はい!」

 

アスナの言葉にサーシャさんは満面の笑みで

応えた。

 

 

 

 

 

 

 

その後、サーシャさんと共に軍の最近の行動などについて話しているとキリトが不意に顔を上げ教会の入り口の方を見て呟いた。

 

「誰か来るぞ、1人……」

 

「え……またお客様かしら……」

 

サーシャさんの言葉に重なるように、館内に音高くノックの音が響いた。

 

 

 

 

 

 

サーシャさんと念のために付いていったキリトに伴われて食堂に入ってきたのは銀色の長い髪をポニーテールに束ね、軍のユニフォームに身を包んだ長身の女性プレイヤーだった。

子供たちは一斉に押し黙り警戒して動きを止めていたがサーシャさんの「大丈夫」という言葉に子供たちはほっとしたように肩の力を抜き、すぐさま食堂に喧騒が戻った。

女性プレイヤーはサーシャさんから椅子を勧められると軽く一礼して腰掛けた。

 

「ええと、この人はユリエールさん。どうやら俺たちに話があるはしいよ」

 

ユリエールと紹介された女性プレイヤーはぺこりと頭を下げて口を開いた。

 

「はじめまして、ユリエールです。ギルドALFに所属してます」

 

「ALF?」

 

「おそらくアインクラッド解放軍の略称だと思うが……」

 

聞いたことが無いのか首を傾げるアスナに説明する。

 

「はい、そうです。正式名はどうも苦手で……」

 

小さく首をすくめながら言うユリエールにアスナは挨拶を返した。

 

「はじめまして。私はギルド血盟騎士団の……あ、いえ、今は一時脱退中なんですが、アスナと言います。この子はユイ」

 

「アスナと同じくギルド血盟騎士団を一時脱退中のサキです」

 

「ソロのカゲヤです」

 

「KoB……なるほど、道理で連中が軽くあしらわれるわけだ」

 

連中、昨日の恐喝集団のことか……ということは

 

「つまり、昨日の件で抗議に来たということですか?」

 

「いやいや、とんでもない。その逆です。よくやってくれたとお礼を言いたいくらい」

 

「……」

 

ふむ、事情が掴めないな……

 

「今日は皆さんにお願いがあって来たのです」

 

「お願い?」

 

「はい。最初から説明します………」

 

ユリエールはアスナの問いに頷くと話を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

ユリエールの話とは、軍の成り立ちと今のような現状となった理由、そしてシンカーという男性プレイヤーを助けて欲しいというものだった。

 

「お会いしたばかりで厚顔きわまるとお思いでしょうが、どうか、私と一緒にシンカーを救出に行って下さいませんか」

 

ユリエールは深々と頭を下げ、言った。

 

助けに行ってやりたいのは山々だが、他人の言うことをそう簡単には信じれない。

この世界では感傷で動くのはとても危険なのだ。

 

「残念ながら、その話が本当であるという確証がない限り協力することは難しいでしょう」

 

「それは……当然、ですよね……」

 

ユリエールはわずかに俯くと瞳を潤ませながら言う。

 

「無理なお願いだってことは私にも解っています。でも、《生命の碑》のシンカーの名前にいつ横線が刻まれるかと思うと、もうおかしくなりそうで……」

 

「わかりました。助けに行きましょう」

 

「そうだな。疑って後悔するよりは信じて後悔しようぜ。きっと何とかなるさ」

 

「相変わらずのんきな人ね」

 

「カゲヤ君はお人好しだね」

 

「ありがとう……ありがとうございます……」

 

ユリエールは瞳に涙を溜めながら深々と頭を下げた。

 

「それはシンカーさんを救出してからにしましょう」

 

アスナがユリエールににこりと笑って言うと、今まで黙って事態の成り行きを見守っていたサーシャさんがぽんと両手を打ち合わせて言った。

 

「そういうことなら、しっかり食べて行ってくださいね!まだまだありますから、ユリエールさんもどうぞ」

 

その後俺たちはサーシャさんの言葉に甘えて子供たちと一緒に食事をした。

 

 

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