ソードアート・オンライン〜黒の剣士と神速の剣士〜   作:ツン

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第4話 リトルネペント狩り

 

俺は今、1人で《リトルネペント》と戦っていた。

最初はキリトと一緒に戦っていたが、2人だとすぐ狩りつくしてしまうから別々に狩ることになった。

別々といってもそんなに離れて狩るのではなく、何かあった時にすぐ駆けつけれる距離でしている。

数体倒した後、獲物を探して歩いていると視界に小さくカラー・カーソルが表示された。

索敵スキルによって反応距離が増加しているから本体はまだ視認できない。

カーソルの色はモンスターを示す赤だが色合いはほんの少し濃い。

侮ってはいけない相手だが、怖じ気づいてもいられない。

俺は周囲に他のモンスターがいないことを確認すると、リトルネペントに向かって走る。

 

「やっぱりハズレか」

 

少し期待していたのだがやはり普通のリトルネペントだった。

剣を抜きリトルネペントに向かう。

こっちに気付くと2本のツルを威嚇するように高々と掲げているが、気にせずそのまま突っ込む。

シュウウウウ!とリトルネペントは叫ぶと右のツルで攻撃してくる。

それを左に飛んで回避し、そのまま側面に回り込み剣で弱点部分であるウツボ部分と太い茎の接合部を素早く2回攻撃する。

その後、後ろに飛んで距離を取る。

リトルネペントは怒りの声?を上げると、ウツボをぷくっと膨らませた。

腐蝕液発射の予備動作(プレモーション)だ。

それを確認すると少しリトルネペントに近づいて止まる。

ぎりぎりまでタイミングを見極め、ウツボ部分の膨張が止まった瞬間思い切り右にジャンプする。

そして右足地面に触れると同時に剣を振りかぶり弱点部分を攻撃する。

悲鳴とともにリトルネペントは仰け反りスタン状態になる。

 

「よし!これで終わりだ!」

 

そう言って、俺は剣を大きく引く。

一瞬のタメ動作によってソードスキルが起動し、刀身を薄水色の光が包む。

 

「はぁっ!」

 

この世界で初めて気合を迸らせ激しく地面を蹴り、片手剣スキル単発技《ホリゾンタル》を放つ。

《スラント》とは軌道が斜めか真横かの違いだが《ホリゾンタル》のほうがリトルネペントの弱点を狙い易い。

先の3撃で6割近くHPを喪失していたリトルネペントはスタンから回復する寸前、剥き出しの茎にソードスキルを直撃されウツボ部分が茎から切り離され宙に飛んだ。

それと同時にリトルネペントのHPゲージが減少していき、0になると同時にリトルネペントの体が青く凍り付き爆散した。

直後視界に経験値の加算表示が浮き上がる。

 

「戦闘時間は約40秒か。単純計算で1時間50体程度か……大丈夫かな……まぁ頑張るか」

 

俺は剣を持ったまま次の獲物に向かって再び走り出した。

 

 

続く15分で10匹のリトルネペントを屠った。

勿論花つきは出現していない。

 

「あー、やっぱり1時間で50体は無理だな。せいぜい40体が限界か」

 

そんなことを言いながら11匹目のリトルネペントを倒すと、ファンファーレが鳴りレベルが上昇した。

 

キリトもそろそろレベルアップした頃かな〜

 

そう思いながらステータスを振り分けるためウインドウを開くと不思議なことが起きていた。

 

「あれ?なんで既に敏捷力が3も増えてるんだ?しかもステータスアップポイント残ってるし」

 

バクかなんかだろうと結論づけて一応ステータスアップポイントを筋力に3振り分けておく。

ステータスアップ操作を終え、ウインドウを閉じる。

 

「さて、この調子でどんどん狩っていくか」

 

そう呟くと俺は前にいるリトルネペントに向かって走り出した。

 

 

 

「もうやだ、精神的にキツイ」

 

あれから1時間以上リトルネペントを狩っているが花つきは一向に出る気配がない。

多分70体ぐらいは狩っているがそれでも出てこない。

 

「まさか出現率が変わってるとかはないよね……」

 

出ないことに対して愚痴をこぼしていると目の前でモンスターがPOPした。

まさかと思い期待して見ていたがPOPしたのは普通のリトルネペントだった。

 

「いい加減花つき出てこいよぉぉ!!」

 

そう叫んで俺はリトルネペントに突っ込んでいった。

 

リトルネペントが爆散した直後、ファンファーレが鳴り響きレベルが上昇した。

 

「レベルアップしたからいいか」

 

俺は剣を鞘に納めてウインドウを開いた。

 

「……またなってる」

 

ステータスの敏捷力が3上がっていた。

そしてステータスアップポイントも3残っていた。

 

「このクエが終わってから考えるか」

 

そしてステータスアップポイントを筋力に3振り分けてウインドウを閉じる。

 

「そろそろ花つきが出てきてもいいのになぁ」

 

愚痴りながら歩いていると索敵範囲ぎりぎりにカーソルが2つ浮かんだ。

 

「カーソルが2つ?誰かがこの森まで来るのはもう1、2時間後だと思ったのにな。

まぁ、たぶん片方はキリトで間違いないだろうし一度合流するか」

 

俺はカーソルが浮かんでいる方向へ向き走り始める。

だが、少し走ったところで奥のほうからパアァァン!と凄まじい破裂音が森を揺らした。

その後薄緑色の煙と異臭が襲ってきた。

俺は顔をしかめながらスピードを上げる。

 

一体何が……‼︎まさか‼︎

 

頭の中で最悪の状況が浮かんできた。

もしそうなら急がなければ死んでしまう。

俺は敏捷力の許す限りの最大の速度で走る。

近づくにつれモンスターのカーソルをどんどん増えてくる。

そしてモンスターの隙間から微かにキリトの姿が見えた。

 

「キリト‼︎なに突っ立っているんだ‼︎早くそいつらを倒せ‼︎」

 

そう叫ぶと剣を抜き目の前にいるリトルネペントに向かって片手剣スキル単発技《ホリゾンタル》を放つ。

 

するとキリトがいきなり茂みに向かって語りかけた。

 

「……コペル。知らなかったんだな、お前。

たぶん、《隠蔽(ハイディング)》スキルを身につけ取るのは初めてなんだろ。あれは便利なスキルだけど、でも万能じゃないんだ。視覚以外の感覚を持っているモンスターには効果が薄いんだよ。

たとえば、リトルネペントみたいに」

 

その瞬間俺は悟った。

キリトがミスをして実を攻撃したのではなく、キリトと一緒にいた奴が故意に実を攻撃して《MPK》をしたことに。

 

キリトはそう言うとくるりとこっちを向き、自分に突進してくるリトルネペントの列に視線を据えた。

キリトは剣を握り直すと目の前の敵に向かって威力をフルブーストした《ホリゾンタル》を弱点部分に命中させ1撃で敵を屠った。

キリトの後ろでは茂みに向かってリトルネペントが近づいていった。

たぶんその茂みにMPKをしたコペルというプレイヤーがいるんだろう。

 

「…ッ‼︎ヤベッ‼︎」

 

間一髪で横からのツルの攻撃を避け《ホリゾンタル》で捕食器を切り裂く。

だが、相手が爆散すると同時に斜め後ろからツルが襲ってくる。

それを体を捻って直撃を免れるが少しHPが削られる。

相手の方を向くと突っ込みそのまま《スラント》を発動させ、敵のHPを0にする。

それと同時に後ろに飛び距離をとり、周囲を観察する。

敵の数は軽く30はいた。

 

これだけの敵をたった2人で倒せるのか……?

 

そんなことを思っているとリトルネペントの集団の真ん中から幾つものポリゴンの欠片か宙に舞っていた。

 

「キリトが戦っているのに諦める訳にはいかないな」

 

俺はそう心に決め、リトルネペントの集団に向かって突っ込んでいった。

 

 

 

そこからの十数分俺たちは無我夢中で戦った。

直撃だけをギリギリで避け後の攻撃は無視し、剣を振るい続けた。

1時間前みたいに考えるか余裕はなくただひたすら剣を振るう。

自分のHPの量を気にする暇もなく敵を斬ることだけに集中した。

一体ずつと倒す数は少ないが確実に敵の数は減っていった。

何体目になるかかわからないリトルネペントに《ホリゾンタル》を打ち込み倒したところで何処からか、パリィイィィン!と明らかにモンスターが爆散する音と違う音が響き渡った。

プレイヤーの死亡エフェクト。

10匹以上のリトルネペントに囲まれていたコペルがついに力尽きたのだ。

だが俺は気にせず横にいるリトルネペントに向かって《スラント》を放ちHPを0にする。

 

「う……おおぉぉああああ‼︎」

 

疲れきった体に鞭を打ち俺は咆哮をあげ、地面を蹴る。

左からくるツルの攻撃を最小限の動きで避けそのまま敵に突っ込み、弱点の茎の部分に素早く2回攻撃し、瞬時に背後に回って敵の背中に剣を刺しそのまま右足を軸に回転して敵を斬る。

HPが0になるのを確認せず次の獲物に向かって走る。

前後左右からツルや腐蝕液で攻撃されるが気にせず狙いを定めた敵を倒すとまた次の獲物に向かって走るのを繰り返す。

右の敵に《ホリゾンタル》で頭を斬り飛ばし、すぐに方向転換して腐蝕液の攻撃を避けながら《スラント》でまた頭を斬り飛ばす。

後ろからきたツルをギリギリで避けるとそのツルを数回斬りつける。

そして敵の正面に飛び込み右斜めから斬り下ろし、そのまま繋げて左からの水平斬り。

そして横にいる敵に向かい《ホリゾンタル》で頭を斬り飛ばす。

 

「遅い……もっと…もっと速く‼︎」

 

その瞬間体が加速する。

今の敏捷力ステータスでは出せるはずのないスピードで俺は動いていた。

リトルネペントはウツボ部分がぷくっと膨らませ腐蝕液発射の予備動作をしていたが構わず正面から向かっていき、5回斬りつけ 腐蝕液発射の直前で左に移動して背後に回り2回斬り敵のHPを0にする。

倒すと同時に周りを確認する。

敵は殆どいなくなっていた。

俺の方に2体、キリトの方に3体いた。

俺は敵の方に向くと同時に走りだす。

ありがたいことに敵は縦に並んでいたから《ホリゾンタル》で一気に2体倒す。

するとファンファーレが鳴りレベルが上昇したが、後回しにしてキリトの方へ向かう。

リトルネペントの手前で《スラント》を発動させ、頭を斬り飛ばす。

それと同時にキリトも《ホリゾンタル》で2体同時に倒した。

全ての敵を倒し終え俺たちはただそこに突っ立っていた。

すると視界の端にモンスターがPOPする。

俺たちはそれを無表情に眺めていた。

先に奥の2体が出現する。こっちは普通のリトルネペントだった。

だが次に出現したのは頭にチューリップに似た巨大な花がついていた。花つきだ。

リトルネペントたちは花つきを先頭にこっちに向かってくる。

俺は足に力を込め思いっきり地面を蹴る。

通常ではあり得ない速さで近づき一気に片付ける。

後ろの2体も5秒程度で片付ける。

戦闘が終わり剣を鞘に戻すと俺は体を屈め光る球体《リトルネペントの胚珠》を拾い上げウインドウを広げてストレージに格納した。

グッタリ草地に座り込みたくなったが油断するのはまだはやい。

キリトの方を見ると、キリトは落ちていた剣を拾い上げると周りで1番大きな樹の根元に突き立て、《胚珠》を根元に置き呟いた。

 

「お前のだ、コペル」

 

そう言い終えるとキリトは立ち上がる。

俺はキリトに近づいて言う。

 

「村に戻るか」

 

「……あぁ」

 

きびすを返し俺たちは村に向かって歩き始めた。

幸い乱獲したことによってPOPが多少枯渇したのか、モンスターとエンカウントすることなくホルンカの村に帰ることが出来た。

時刻は夜の9時になっていた。

先生のチュートリアルが終わってからすでに3時間が経過している。

さすがに村の広場には数名のプレイヤーの姿があった。

だが、今は誰かと話す気分ではなかった。

キリトも同じだったらしく、プレイヤーたちに気付かれる前に裏道を通って村の奥を目指す。

民家に着くと先にキリトがクエストを完了させる。

キリトが民家から出てくると次は俺が中に入り、クエストを完了させる。

キリトが出てくるとき目に涙の跡があったが敢えて触れずにスルーする。

両方のクエストが完了したところで報酬の《アニールブレード》をストレージに格納する。

それを終えると俺はキリトに聞く。

 

「これからどうする?」

 

「俺は次の拠点へ向かうよ」

 

「そうか……俺はもう少しここに残るよ。

じゃあ、どこかでまた会おう」

 

「あぁ」

 

「またな、キリト」

 

「あぁ、またな」

 

俺は宿を探しに村に戻り、キリトは次の拠点に向かって走っていった。

 

 

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