その身に宿すはキングストーンⅡ 作:桐生 乱桐(アジフライ)
ダンテたちのキャラが正直言って不安しかない
ではどうぞ
屋根を伝い続けて何分経っただろうか
いや、そもそも分であっているのかわからない
一度足を止め、ふと時間を確認する
…大体一時間くらい、か
<待ち合わせ場所の確認はついた?>
「うん? いや、まだ携帯には…お?」
浩太郎の携帯が鳴る
それはメールが来たことを知らせるアラームだ
内容に目を通す…
「待ち合わせ場所は京都タワーだ。わかりやすくていいね」
<おっけー、じゃあさっさと向かいましょう>
メリディとそんな短い会話を交わし、浩太郎は再び足を動かし始める
太陽の下にいるからなのか、疲れは全くと言っていいほどに感じない
そして同時にいよいよ自分も人間をやめてきたなぁ、と思う
…今更かもしれないが、というか今更だ
とりあえず目的地も決まったことだし、さっさと京都タワーに向かおう
◇◇◇
同じ頃とあるホテル内
望月は同じように太陽の光を浴びながら背を伸ばした
彼がここに来るまでに結構満喫してしまったが、大丈夫だ、問題はない
というか案内というのは実質望月の建前に過ぎない
そろそろ自分の友達を彼に紹介したい、という個人的なワガママだ
もちろん、案内というのも建前とはいえ理由に入っているのだが
その時ガチャリ、と扉が開き、そこから赤いコートを着込んだ銀髪の男性と視線があった
「よう、お前さんはいつも元気だな」
彼の名前をダンテという
職業デビルハンターで、望月をその職へと誘ってくれた男性だ
普段はその大きな背中に大剣を一本背負っているのだが、今回は何も背負ってはいない
それでも、愛用している二丁拳銃は忍ばせているのだろうが
ふと見ると彼は片手に大きなカバンみたいなものを持っている
「おはようございますダンテさん。そりゃあ元気が私の取り柄ですし、ねぇ」
「おぅ、結構結構。―――っと、その前に、こいつを貸しとくぜ、モチヅキ」
そう言って持っていたカバンをこちらに渡してくる
それは魔具の一つ、〝災厄兵器パンドラ〟だ
「いいんですか? また使っても」
「あぁ、俺にはいつもの相棒がいれば問題ないしな。トリッシュでもいいが、お前さん今飛び道具持ってないだろ? こいつならカバンってことで持ち運び自由だからな、持っとけよ」
ズイっとダンテは差し出したそのパンドラを受け取る
何度かこれを借りて仕事したことがあるが、これは意外と軽いから持ち運ぶのはそんなに苦ではない
流石に本物のカバンとして使用することはできないが
と、話していたところでさっき自分が出てきたところからもう女性が出てきた
相部屋のレディだ
「早いわねショウコ。あら、そしておはようダンテ」
「おう、グッドモーニングだ、レディ」
短い挨拶を交わすと、先ほどダンテが出てきた部屋と、その奥の扉からも人が出てくる
「あ、皆さんも起きていらしたんですね」
「おはようキリエ。ふふ、ネロはちょっと眠そうだね」
「そうなんですよショウコさん。ネロったら早速買った本読みふけって」
「ちょ、キリエ、それは言わないでくれよ」
ショウコと話した女性の名前はキリエ、そして彼女の発言に突っ込んだのがネロ、という銀髪の青年だ
そしてそんな三人の会話を少し遠い位置でダンテ、レディと共に微笑んで見ている金髪の女性がトリッシュだ
望月は一度会話を切り上げて一行を見回して
「さぁ、みんな起きたところで浩太郎くんが来る予定の京都タワーに行きましょうか」
◇◇◇
京都タワー
太陽の加護を全身に満遍なく受けた浩太郎はさしたる疲労もなく京都タワー下までたどり着いた
<…まさか本当に京都に着くなんてね。途中でライドロン呼び出すのかな、なんて思ってもいたけど>
「呼ぼうとは思いましたけどね」
結局呼ばずじまいでここまで来てしまった
そういえば望月たちはどこから来るのだろう、メールでは一発でわかる集団だから大丈夫、などと書かれていたが―――と、思っていたところで視界の端に妙な集団を見つけた
というか望月翔子(なんでかカバンを持っている)だ…しかし妙、と思ったのは彼女の付近にいる人たち
赤いコートを着込んだ男性に、右腕を怪我している(?)青年、白い服のポニテの女性に、きわどい格好の黒髪ショートのグラサン女性、そしてシンプルな金髪ロングな大人の女性…というような集団だ
「お、やっほー浩太郎くん!」
彼女はこちらを見つけると手を振りながら少しだけ小走りで近づいてくる
その集団も少し遅れて到着した
「冥界以来、かな? こうして直接会うのは」
「そうですね、ディオドラのときでしたっけ、会ったの」
そう言い出して思い出す
…正直今思い出してもムカムカしてくる
もう関わることはなさそうではあるのだが
「ところで、そちらの方々が…」
「うん、私の同僚で、デビルハンターの先輩なんだ。こっちの赤いコート着てる人がダンテさん」
「お前さんがモチヅキが言ってた坊主か。…いい目してるじゃねぇか」
そう言ってニヒルな笑みを浮かべる赤いコートを着込んだ男、ダンテ
次に翔子は彼の隣にいる金髪の女性へと視線を向けて
「んで、この金髪の女性がトリッシュさん。ダンテさんの相棒、でいいんです?」
「えぇ、問題ないわよ。ショウコ。…貴方がブラックサン? 色々凄いことやらかしたって噂よ」
どんな噂されているのだろうか
「そんで、こっちの子がネロくん。まぁ一応? ハンターとしては後輩…になるのかな?」
「ネロだ。よろしく頼むぜ、コウタロウ」
ダンテと同じような銀髪だが、彼のように下ろしてはおらず、少々ワイルドな雰囲気だ
それと、なんでだろう、どことなくダンテと同じ気配、のようなものを感じる
「そんで、こちらが私の仕事のパートナーのレディ姉さん」
「はぁい? よろしくね坊や」
「え、えぇ。こちらこそ」
白い服にタイトスカート? を着込みグラサンをかけたショートカットの女性が微笑みかける
ちらりとグラサンを彼女がずらすと、その先の瞳と目があった
左右で瞳の色が違う…オッドアイってやつだろうか
「そして、最後にネロの彼女のキリエちゃん」
「! おいっ!? ショウコさん!?」
「違うの?」
「違…わないけど…」
顔を僅かに赤くして目を逸らすネロを見てキリエはくすりと苦笑いを漏らす
そして彼女は改めて浩太郎を視界に捉え
「ショウコさんからご紹介に預かりました、キリエです。よろしくお願いしますね」
そう言ってにこりと微笑んだ
風に揺れるロングの髪も相まって、大変美しい
小猫たちオカルト研究部の面々に会っていなかったら一目惚れでもしてたかもしれない
「ところで、一ついいか? 坊主」
「うん? なんですダンテさん」
「ここに来るまでに、妙な視線を感じてな。まぁ俺たちは普通に観光していただけだから、特に何もなかったんだが…」
「仕掛けられれば、遠慮なくやり返したんだけどねぇ」
トリッシュがやれやれ、といった様子で腕を振る
視線…そういえば自分も京都に来たときから変な視線を感じるようにはなっていた
<恐らく、それは地元司ってる人たちじゃない? ほら、浩太郎ってか、浩太郎たちは悪魔で天使じゃない? ここの人らからすれば、みんな異物みたいなもんなのよ。もちろん、事前に話は言ってると思うけどね>
「お、今の女の声、メリーディエースってやつか?」
<あら。私のことをご存知?」
発しながらメリディが浩太郎から出てくるようにその姿を顕現させる
長い黒髪をたなびかせ、ダンテに向かって微笑んだ
彼女を見たダンテは口笛を吹きながら
「beautiful…。想像してた以上だぜアンタ」
「ありがとう、お世辞として受け取っておくわ」
「ダンテさん、あんまり口説くのは無しですよ」
「わかってるって。社交辞令みたいなもんさ」
まったくもう、と言っておほんっ、と翔子が一つ咳をする
「ほんじゃあまぁ、みんな揃ったところで…今度は自然でも見に行きません? 伏見稲荷とか」
「問題はないぜ、デジタルな観光は俺たちはたくさんしたからな。坊主、お前さんは大丈夫か?」
「俺も問題ないですよ、土産とかは後でも買えますしね」
「じゃあ決定ですね。バスにでも乗って行きましょう!」
そんな望月の一声で、一行の次なる目的地は伏見稲荷へと決まった
正直この頃はあんな出来事になるなんて思ってもいなかった―――
◇
バスに揺られて何分経っただろうか、いつの間にか目的地に到着していた
しかし翔子の知り合いは何というか個性的なメンツばかりだ…いや、個性的、というか個性の塊しかない気がする
綺麗な女性を見かける度にダンテは口笛を吹きながらナンパしようとして、翔子に止められ、それを見てレディとトリッシュが笑っている
そんな彼らを遠目で見ながらネロとキリエは二人で色々視線を巡らせている
<翔子の仕事仲間の人たち、面白い人たちね>
「個性が強すぎるけどね…」
一行の少し後ろを歩きながらメリディとそんな会話を短く交わす
そんな時、不意にネロから声をかけられる
「なぁ」
「ん?」
「あそこにいる人、お前の知り合いか?」
え? と思いながらネロが指さした先には一人の赤いジャケットを着た男性と、巫女服を着込み狐の面を被った面妖な奴らが数人
いつの間にか周囲からも一般の人がいなくなっており、その場には自分たちとその変な集団しかいなかった
今いる場所は階段、少々動きづらい位置取りになっている
「…お前たち、普通の人間じゃあないな」
「そういう御宅も、普通とは違うみたいだが?」
おちゃらけた様子で返すのはダンテだ
しかし男はそれには答えることはなく
「お前たちも、上にいる連中の仲間だな。―――九重の母親を返してもらうぞ! いけ!」
そう言って男性が指示し、巫女服狐の連中が襲いかかってきた
男性もその場から跳躍し、浩太郎に向かって飛び蹴りを放ってくる
場所が場所なため、うまく避けれず、仕方なくその一撃を両手で防ぎ、吹っ飛ばして距離をとらせた
「おい! 母親ってなんだ!? 俺たちはここに観光に来ただけで―――」
「はっ! どうだかな!」
段差を利用して今度は顔面に横蹴りを叩き込んでくる
他のみんなも交戦してはいるが、どれも余裕綽々で、容易く捌いている
翔子はキリエを守りながらも、手に持っていたカバンで応戦していた
彼女もやはり余裕の表情だ
「おいコウタロウ、反撃していいのか?」
「わかんないです! 俺にも何がなんだか…!」
<死なない程度にはいいんじゃない? 向こうから仕掛けてきたんだし、正当防衛よ>
メリディの指摘にそれもそうかな、と納得する
いよっし、と改めて気合を入れてその足を掴み一気に引っ張ってバランスを崩し下に引きずり落とす
「ぐっ!?」
場所が場所故に、かなりダメージを与えたはずだ…相手が普通の人間なら
しかし相手はそのままダメージを顧みず自分から階段を転げ落ち、体制を立て直した
階段を転がったからか、来ていた服は少し汚れている
「へいboy、こっちは終わったぜ」
ダンテの声が聞こえてくる
ちらりと彼の方へ視線を動かすと両手を払って砂でも払うかのようにしているダンテたちの姿があった
トリッシュやレディは化粧でも確かめるように手鏡を覗き込んでおり、ネロは物足りなさそうに首を回して、翔子はキリエの無事を確認している
全員汗一つはおろか息すらも乱していない
周囲には倒れ込んで巫女服狐がおり、うめき声のようなものを上げている
それらを確認した男性は苦い顔をした後で
「…現状俺たちでは力不足のようだ。退くぞ!」
力強く男性が叫んだ
それを皮切りに倒れ込んでいた巫女服狐がよろよろと起き上がり、誰かが地面に煙玉を投げつけて視界を遮られる
「…古典的な逃げ方を」
煙が晴れると案の定巫女服狐連中は誰もいなくなっており、そこには浩太郎とダンテたちしかいなかった
「追う気になれば終えるが、どうする?」
「やめましょう。僕らは観光に来たんです。下手に事を荒げる必要なんてない」
「坊やの言う通りね。ほら、早く先に進みましょ?」
トリッシュに促されダンテも小さく笑った後で「そうだな」と同意し一行は再度足を進めた
◇◇◇
神社には見知った連中がすでにいた
「あ、浩太郎! それに翔子さんも!」
兵藤たちだ
今彼の横に居るのは木刀を構えたゼノヴィアとイリナ、アーシアもいる
アーシアは自分を見つけるととてとてとこちらに向かってくる
「来てたんですね、浩太郎さん!」
「あぁ。…っていうか、何かあったのか?」
「…実は…」
◇
「…お前も襲われたのか?」
「お前も? 浩太郎もか?」
事の顛末を兵藤から聞く
どうやらここに一番乗りで兵藤が到着して、お祈りをした後で同じような巫女服狐の集団に囲まれたらしい
そいつらを率いていたのは、何やらキツネ耳の幼女だったとか
それで、駆けつけたイリナとゼノヴィアと一緒にその場は凌いだらしい
こっちは男性で、兵藤はキツネ耳の幼女…妖怪の類か?
ふと、兵藤の視線が浩太郎の横にいる集団に目が行く
「…兵藤くん、えっちぃ視線は禁止だよ」
「うえ!? そ、そんなに顔に出てました!?」
「お前自覚ないのかよ」
まぁわからんでもないのだが
「気にしないでショウコ。そういう視線には慣れてるもの」
「美貌にはそこそこの自信もあるしね。ねぇキリエ」
「え!? わ、私に降られても…」
トリッシュやレディの視線を受け、もじもじするキリエ
キリエも肌の露出こそないものの、見ただけでもわかるくらいスタイルはいいと思う
もっともキリエにそんな視線向けたらネロに殺されるのがわかりきっているのでしないけども
「浩太郎くん、とりあえず君は一旦修学旅行班に合流しちゃってよ」
「え? いいんですか?」
「うん。その代わり翌日以降もみんなと一緒に行動するよ。正直嫌な予感もするし。私たちも君のホテルに移動するから、場所教えてくれない?」
正直なぜ襲撃を受けるのか、という疑問だけはまだ晴れない
っていうか、ダンテたちはそれでいいのだろうか
「あぁ。俺は問題ないぜ。それに、お前らと一緒にいた方がおもしろそうだ」
「ダンテに同じ。刺激がありそうだもの」
そうダンテとトリッシュは返答し、レディもそれに頷いた
翔子はネロとキリエの方に振り向き
「二人もそれでいい?」
「あぁ。俺たちもそれでいいぜ」
「わざわざすいません、けど、心強いです」
「そう言ってくれると嬉しいよ。じゃああたしたち一旦ホテル戻って荷物纏めてくるから。またね!」
翔子がそう言うとダンテたちも彼女の後を追って歩いていく
彼らの後ろ姿が見えなくなってから、不意にゼノヴィアが呟いた
「そういえばあの人たち、誰なんだ? 翔子さんは知ってるけど…」
「あぁ、そういえば言ってなかったな、まずあの赤い人はダンテって言うんだけど―――」
「だ、ダンテ!?」
兵藤に問いかけられ、そう口を漏らす
そしてその名前を聞いたイリナとゼノヴィアが驚きの声を上げながら、ズズイッと浩太郎へと顔を近づける
あまりの近さに驚きながらも浩太郎は少し距離を取りつつ
「浩太郎は今まで彼の存在を知らなかったのか!?」
「ま、まぁ今日初めて出会ったし…」
「あ、あの人は〝伝説のデビルハンター〟って呼ばれるくらい有名な人なのに!? 本物は私らも初めて見たけどね!」
あまりの剣幕に兵藤と二人してポカンとしていると、落ち着いたイリナが軽く説明しだした
「…翔子さんがいるから、私たちが狙われることはないでしょうけど…もし彼らのターゲットとして誰かに依頼されたなら、グレモリー眷属は勝てないわ」
「―――そんなにか?」
「あぁ。型破りな剣技に、卓越された銃撃技術…勝てる未来が見えないな」
苦笑いしながらもゼノヴィアは短くそう結論を下す
それを思うと望月はエライ人と知り合いになったなぁ、と他人事のように思う
「…しかしさっきの女の人たち…なかなかいいおっぱいだった…」
「お前はそれしかないのか」
兵藤はブレなかった
とはいえ、この京都
最初に来た時はいろいろと見て思い出を作っていこう、などと思っていたのだが
なんとなしに空を見上げる
雲の動きはいつもと変わらないような気がしたが…妙な不安が頭を
「…浩太郎さん?」
隣のアーシアが不安げな表情でこちらを見上げてくる
浩太郎は彼女の頭を優しく撫でながら、彼女に優しく微笑みかけた
この京都で、何かが起こる予感がする
そう感じずにはいられなかった―――