その身に宿すはキングストーンⅡ 作:桐生 乱桐(アジフライ)
本当に申し訳ない(メタルマン感
楽しんでいただけたら幸いです
ではどうぞ
飛鳥にそんなことを報告し終えて改めて先ほど送った写真を確認する
…自分にはただの風景画にしか見えないが…
<…指摘されると、確かに妙な気配を感じるわね、この写真>
「…俺には全く見えないんだけど…メリディがそう言うのならそうなんだろう」
ここで考えていても仕方がない
とりあえず一旦戻ろうとお茶屋の方を振り返ると、どういうわけか松田と元浜、桐生の三人が目をつむって眠っていた
昨日の疲れでも残っていた? いや、いくらなんでも自分が電話していたあの短い時間で眠るなんてことはないだろう
現にアーシアや兵藤たちは起きているわけで…と、そこでゼノヴィアが一人の女性店員を怖い目つきで睨んでいるのが見えた
視線を追うと―――そのどうして怖い目つきで睨んでいたのがわかった
獣耳と尻尾があったのだ
周囲を見渡してみると、寝ているのは松田たちだけではなく、一般観光客まで倒れこむように寝ているのだ
観光地なら襲っては来ないだろう、と高をくくっていたらこれだ
…とは思ったが、目の前の女性からは敵意を感じれない
それでもゼノヴィアが構えているのを見て、浩太郎も構えようとしたその時だ
「お待ちください」
不意に声をかけられる
聞き覚えのある声に振り返ると、そこにはロスヴァイセがこちらに向かって歩いてきていた
「ロスヴァイセさん!? どうしてここに!?」
場を代表して兵藤が問いかける
ロスヴァイセは少しを息を吐きながら兵藤の問い掛けに答えた
「はい。あなたたちを迎えに行くよう、アザゼル先生に言われました」
「―――アザゼルさんに?」
その言葉に浩太郎は首を傾げながら返す
ロスヴァイセは頷きながら
「停戦です。というか、誤解が解けました。九尾のご息女が、謝りたいと言うのです」
ロスヴァイセの言葉を肯定するように、自分たちの前にいた獣耳の女が一人、前に出て深く頭を下げてくる
彼女は続けた
「私は九尾の君に使える狐の妖しです。…先日は申し訳ありませんでした、我らの姫君があなた方に謝罪したい、と申されてます故、どうか私たちについてきてください」
「…ついてきて? どこにだ」
浩太郎の問いに狐の妖しが答える
「京の妖怪が住む、裏の都です。魔王様と堕天使の総督殿も先にそちらにいらっしゃっています」
…どうやらのんびり観光している間に上がどうにかしてくれたみたいだ
◇◇◇
踏み込んだ場所は一言で表すなら異界、とも言える場所だろうか
江戸みたいな古い家が建ち並びそこら中から面妖ないきものたとがこちらを覗き込んでいる
ここにいる妖怪全部がこちらを見て好奇の視線を向けているのだ
故に、ちょっと落ち着かない
そんなことを考えながら狐の王女が居るというところまで案内されていく
「うきゃきゃ」
なんか急に提灯が笑いだした
ゲゲゲのなんとかで出てきそうな提灯の妖怪だ
明らかにタイミングが悪い
兵藤とか一瞬後ろに後ずさっていたし
「…ここは妖怪の世界なんです?」
驚いてる兵藤を尻目になんとなく聞いてみる
「えぇ。ここは京都に住む妖怪が身を置く場所です。悪魔の方々がレーティングゲームで使うフィールドがありますが、あれに近い方法でこの空間を作り出してると思っていただいて構いません。私たちは裏町、裏京都まどと呼んでいます。もちろん、こっちではなく表の京都に住む者もいますが」
レーティングゲームのフィールドって便利なんだなぁ、と思う
厳密にはほぼ同じ、だけなのだがこの際一緒だろう
と、不意に話し声が耳に入ってきた
「…人間か?」
「いんやぁ、悪魔だとよ」
「ほう、珍しいな」
「あの綺麗な娘も悪魔か?」
「龍だ、龍の気配もあるぞ…悪魔と龍…」
「太陽…? 王の気配もするぞ…?」
妖怪たちの会話だ
とはいえここは妖怪の領域だ、悪魔が珍しいのだろう
家屋が立ち並ぶ場所を抜けると小川を挟んで林に入り、さらに進んで大きい赤い鳥居が目に入ってくる
そしてその鳥居の先に、アザゼルと着物を着たレヴィアタンが立っていた
「お、来たか」
「やっほーみんな♪」
平常運転である
そしてその間に金髪の少女と、浩太郎たちを襲撃してきた男性が立っていた
男性の服装は襲撃時と同じ服装だが、女の子の方は戦国のお姫様が着るような豪華な着物を着込んでいた
「―――皆様をお連れしました」
そう言うと案内してくれた女性はボウっと炎とともに消えてしまった
狐火ってやつだろうか
そのあとでお姫様がこちらに歩いてきて
「―――私は表と裏の妖怪を束ねる者―――八坂の娘、
「俺は風祭ゴウ。…まぁ、九重の世話役みたいなもんだ」
それぞれ自己紹介が終わると風祭は土下座をし、九重も同様に深く頭を下げた
「先日は本当にすまなかった。心から謝罪する!」
「お主たちの事情を知らぬまま襲撃してしまった…どうか許してほしい」
そう言って謝ってくる
浩太郎は困り顔で笑みを浮かべながらで兵藤を見やる
もっとも、答えは決まっているのだが
とはいえどう言葉にしていいか困っているとゼノヴィアが口を開いた
「…まぁ、いいんじゃないか。誤解が解けたのなら、私は別に構わない。京都を堪能できれば問題ないよ」
「そうね、許す心も天使には必要だわ。私はお姫様を恨んだりはしません」
「はい、平和が一番です」
ゼノヴィアに続けるようにイリナ、アーシアが言葉を続ける
彼女たちがそう言うならこちらも断る理由はない
「ま、そういうことだ。俺たちは怒ったりなんかしないよ」
「…し、しかし…」
「あー…九重、でいいのかな? 君はお母さんが心配で、行動を起こしたんだろう?」
兵藤が九重の目線に腰を下ろし、彼の隣に浩太郎も並ぶ
九重は兵藤の言葉に頷き、不安そうにこちらを見つめている
「じゃああの時みたいに間違えてしまうこともあるさ。そりゃあ場合によっては問題になったりもするけどさ」
「だけど君は謝ってくれた。じゃあそれでいいじゃないか」
ポンポンと浩太郎が兵藤の言葉に付け足すように言いながら九重の頭を軽く撫でる
九重はこちらの声を聞くと顔を赤くしつつ、撫でられた頭を触りつつ、もじもじしながら呟いた
「あ…ありがとう…」
これでとりあえず誤解は溶けた
横の風祭に視線を向けたら小さく笑んで改めて頭を下げられた
立ち上がる兵藤をアザゼルが小突きながら
「さすがおっぱいドラゴン、子供の扱いが上手い」
「ちゃ、茶化さないでくださいよ! これでもいっぱいいっぱいなんですから!」
「いや、さすがおっぱいドラゴンだ」
「はい! 流石です!」
「本当、頼れる子供の味方よね」
照れる兵藤にゼノヴィア、アーシア、イリナが賛辞する
本人は本気で恥ずかしがっているだろう
「多少見直しました。教師として鼻が高いですね」
ロスヴァイセの中でも評価が多少上がった模様だ
…正直百円ショップでも紹介すればぐんぐん上がりそうなもんだが
「ま、負けてらんないわ! 魔女っ子TV番組、〝ミラクルレヴィアたん〟の主演としては負けてらんないわ!」
なんか対抗意識燃やしてる人がいる
っていうか冥界ではどんな番組が流行っているのだ
そんな光景を尻目に、浩太郎は改めて九重に向き直る
彼女は照れながらも、こちらに向かって言った
「咎がある身で悪いのじゃが…どうか、どうか母上を助けるために、力を貸して欲しいのじゃ!」
それは、女の子の悲痛な叫び―――
◇◇◇
簡単な概要はこうだ
この京都を取り仕切る妖怪のボス、九尾の狐、〝八坂〟は須弥山の帝釈天から遣わされた使者と会談するために数日前にこの屋敷を出て行ったらしい
しかし八坂はその会談に姿を現さなかった
妙だと思った妖怪サイドが調べたところ、彼女に同行していた警護の烏天狗を保護した
怪我がひどく、瀕死の状態で、死の間際八坂が襲撃され、攫われたことをつげたみたいである
そして京都にいる怪しい奴らを徹底的に探してたら、たまたま京都に修学旅行で来ていた自分たちが襲撃された、ということになる
んで、その後でレヴィアタンが九重らと交渉し冥界側の関与はないと告げて、手口からこれらの事件は禍の団の可能性が高いという情報を提供する
「…しかし、えらいことになってんなぁ」
屋敷に上がらせてもらった一行は九重を上座にして、座っている
ここまでの経緯を聞いて浩太郎は率直な感想を述べた
<まぁ各勢力が手を取り合うとこういうことが置きやすいのよね。前はロキが来たじゃない。今回はテロリストってだけだけど>
ため息を付きながらメリディが発する
それに合わせるようにアザゼルも大きなため息を発した
なんだかんだ平和主義なアザゼルはこういうのを許さない性分だ
九重の横には案内してくれた狐の女性と山伏姿の鼻の長いおじいさんが座っている
おじいさんは天狗の長で九尾の一族とは親交が深いらしい
彼はとても心配した様子で
「総督殿、魔王殿、どうにか八坂姫を助けることはできんじゃろうか…。我らならばいくらでもお力をお貸し申す」
そう言いながらおじいさんは一枚の絵画を見せてきた
巫女服を来た金髪の女性、そして頭には耳がピンと立っている
恐らくここに書かれているのが八坂姫、という人だろう
スタイルもいい、兵藤なんかあからさまに興奮している(すぐ落ち着いたが)
「彼女を攫った連中がここにまだいるのは確実だ」
アザゼルはそう言葉にする
それに対し兵藤が聞き返した
「なんでそう思うんですか?」
「京都全域の気が乱れてないからだ。九尾の狐はこの地に流れる色々な気を総括してバランスを保つ存在だ。殺されれば京都に異変が起こるはずだ。その予兆すら起きてないってことは、八坂姫は無事で、攫った連中もまだ残ってる可能性がたかいってことだ」
明かされる京都の裏事情
しかし彼女が無事なら救える可能性もあるということだ
「セラフォルー、悪魔側のスタッフはどれぐらいの調査を既に行っている?」
「つぶさにやらせているわ。京都に詳しいスタッフにも動いてもらっているし」
その言葉を聞いて頷き、アザゼルがこちらを見渡すように視線をうごかす
「お前らにも動いてもらうかもしれん。人手が少なすぎるからな、お前らは強者との戦いに慣れてるから、対英雄派の時に力を貸してもらうことになるだろう。最悪の事態も想定しておいてくれ。ここにいないシトリーと木場には俺から連絡しておくから、あとは旅行を満喫してこい」
『はい!』
その言葉に一行は応じる
しかしもう状況は旅行どころではない
めぼしい名所は先に回っておいて正解だったといえよう
ふいに、九重が手をついて、深く頭を下げ、それにゴウも膝まづいて続き、狐の女性とおじいさんも頭を下げる
「お願いじゃ…母上を助けるのに…力を…力を貸してください…お願いします…!」
その言葉は涙で震えていた
姫様みたいな喋り方ではあるが、内心では母親に甘えたい年頃なのだろう
―――自分の修学旅行は、これでおしまいだ
◇◇◇
その日の夜
浩太郎は外に出て、夜風を浴びていた
夕飯も済んで、既に入浴も終わっている
あのあと妖怪の世界で多少過ごした後、金閣寺へと戻った
寝ていた松田等を起こして観光再開、土産などを買ったりして時間まで金閣寺周辺を楽しんだ
ホテルに戻ってからは木場とシトリー眷属を加えての今後の作戦会議をし、今に至る
明日もまた観光ではあるが…いつでも戻れる転移用魔法陣の携帯版を持っていく
アザゼルからの連絡しだいでは戻らねばならないからだ
<ところで、アンタなんで外にいるのよ。もうすぐ消灯でしょう?>
「ん? あぁ、ちょっと前に連絡があったんだ」
<連絡?>
そう話しているとスタッ、と誰かが自分たちの前に着地していた
「浩太郎さん、お待たせしました」
「思いのほか早かったな。飛鳥」
そこにいたのは十三代目霞のジョー―――飛鳥である
彼女は浩太郎の前に歩いてきて軽く礼をした後に
「飛鳥、只今」
「ご苦労様。早速で悪いけどこっちの状況を簡潔に伝えるよ」
「了解です」
そういって浩太郎は今日に起こった出来事を簡単に纏めて伝えていく
浩太郎の話を聞きつつ、彼女は持っていたメモ用紙にそれらを記入しながら、時折こちらの話に相槌を打っていく
…案外マメ、なのだろうか
一通り話し終え、浩太郎は口を開く
「…飛鳥、俺に化ける、ってこと出来ないか?」
「? えぇ。問題はないですけど―――浩太郎さん、まさか」
飛鳥の言葉に浩太郎はうんと頷きながら
「こっからは裏で俺も調べる。飛鳥には俺のふりをしてもらいたいんだ」
<―――思い切ったことするわねぇアナタ。…いや、平常運転、なのかしらね>
苦笑いと一緒に聞こえてくるメリディの言葉に浩太郎も小さく笑って返す
飛鳥は真剣な面持ちで考え込んだのち
「ですけど、もし万が一浩太郎さんに何かあったら、アーシアさんや小猫さんに顔向けできませんよ、私」
「大丈夫だ、自分の身は自分で守る。だから、心配しないでもいいって」
そう言って浩太郎は微笑んだ
迷いのないその瞳を見て、飛鳥は苦笑いする
これはもう何を言っても聞かないだろうな、ということを察したのだろう
「わかりました。欺けきれるかわかりませんが、この飛鳥、精一杯貴方の影武者を務めさせていただきます」
「ありがとう。…あとでアザゼルさんから怒られる未来が見えるけど、ね」
<わかってるならやめればいいのに>
メリディの言葉に飛鳥と二人して浩太郎は思わず吹き出した
本当ならサポートととしてメリディを彼女に憑依かなんかさせてあげたいのだが、流石にそれは無理だと事前に断られている
あとは、飛鳥を信じるしかない
彼女は印を組んで、目を閉じ
「秘伝忍法…写鏡!」
飛鳥がそう言って巻物を投げる
投げられた巻物は飛鳥の体を包んでいき、光が収まるとそこには自分とそっくりの人物が立っていた
―――っていうか本当にそっくりだ、事前に飛鳥だと分かっていなければ騙し通せるかもしれない
飛鳥浩太郎は軽く手を握って開いてを繰り返した後に
「…えぇ、問題なく変化できました」
そう自分と全く同じ声音で言葉を紡いだ
「…飛鳥ってすごいんだな」
「ふふ、恐縮です」
声色こそ飛鳥そのものだったがそれを言っている奴が自分なわけで、ちょっと変な気分になる
ともかくこれで準備は整った
浩太郎は自分の部屋や観光状況を彼女に教えると彼女を背にし
「飛鳥、任せたぜ」
「御意に。浩太郎さんもご武運を…!」
飛鳥の言葉を受けて、浩太郎は跳躍し夜の京都を駆け抜けていく
とはいえ班全員を欺く必要はないだろうと判断した浩太郎は望月翔子にメールで自分の行動を報告しておくことにした
彼女を通じてダンテたちにも伝わるだろうし、彼らなら飛鳥のフォローにも回れるだろうと思ったからだ
とりあえず手近なビルの屋上に立ち、辺りを一望する
「禍の団…幼気な女の子を悲しませ、あまつさえその母親を拉致したその愚行…俺が許さん」
拳を握り締めながら再度その場から跳躍しつつ、その姿をRXへと変化させ、彼は夜へと溶け込んでいった
◇◇◇
「そうか、お詫びに観光を手伝うことにしたんだな」
「うむ。イッセーたちには迷惑をかけてしまったからの…。正直我らがしでかしたことに比べれば小さすぎるやもしれぬが…」
裏京都八坂本邸にて
夜風を受けながら九重と風祭ゴウが話している
「…もしよかったらでいいんじゃが、ゴウも一緒に来てくれぬか? そうすれば、もっと面白く案内できると思うのじゃ」
「当たり前だろう。俺はお前の世話役だぞ? それに、お前を守ることが、俺の使命だからな」
そう言いながらゴウは九重の頭をくしくしと撫でる
それを気持ちよさそうに目を細めて受け入れる九重
「…すまぬ、ゴウ。願わくば、明日はゴウも楽しんでくれると嬉しいのじゃ」
「ありがとう。同じ位九重も楽しもう。…八坂さんも心配だが、根を詰めすぎても疲れちゃうからな。…ほら、今日はもう寝な」
「そーさせてもらう…。また明日、なのじゃ」
そう言って九重はとてとてとこの場から歩きさっていく
本当は八坂にたくさん甘えたいだろうに、その本心を我慢しているのだ
ゴウは彼女の頭を撫でていた手のひらをじっと見つめて、そしてぐっと拳を握り締めて改めて決意する
妙な力に悩まされ、路頭に迷っていた自分を拾ってくれた八坂の恩に報いるためにも
「待っててくれ、八坂さん…」
必ず貴女を助けてみせる―――
そう誓い、ゴウもその場を後にした