その身に宿すはキングストーンⅡ   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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短い

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「というわけで訪日したぞいっと」

 

兵藤家自宅にて

最上階に作られたVIPルームにて、オーディンのおっさんが楽しそうに笑っている

なんでか日本に用事があって、ついでにこの街にきたらしい

下手な所より悪魔、天使、堕天使の三大勢力の協力体制が強いこの街にいる方が安全なようだ

しかしまさか知人の家に神がいるとは、人生何が起こるかわからないものだ

ちなみに家にはグレモリー眷属はみな集合しており、アザゼルも顔を出している

おまけに珍しくメリディも姿を具現化させており、浩太郎の横には飛鳥も待機している

律儀に跪こうとしてたが浩太郎がそれを阻止した

そこでふと、なんとなしに朱乃をちらりと見やる

 

父親であるバラキエルと邂逅したからか一層不機嫌になっており、前に出ず、完全な作り笑顔を浮かべていた

はっきり言って怖いの一言である

そんな朱乃の父もここにはいるが、朱乃は視線すら合わせようとせず、完全にスルーしている

どうやら父との確執は思った以上に深いようだ

 

バラキエル

アザゼルから多少人となりは聞いている

たしか武人気質で堅物、とのことだ

そして堕天使の中でもアザゼルと肩を並べるほどの強さという話だ

なんでも一撃の重みなら堕天使一だとか

 

「どうぞ、お茶です」

「かまわんでいいぞい。…しかし変わらずデカイの―――」

「エロジジィ。あんまセクハラとかしないでよね」

 

すかさずメリディがガンを飛ばす

それを受けてまたオーディンがほっほと笑い飛ばした

 

「…オーディン様ったら、いやらしい目線を送らないでください。こちらは魔王の妹君なのですよ?」

 

ヴァルキリーの人がそう小言を飛ばす

それを聞いてオーディンが唇を尖らせるような仕草をする

可愛くない

 

「全く硬いのぅ。おっと、こやつはわいの付きヴァルキリーでの、名は―――」

「ロスヴァイセと申します。しばらくお世話になります、お見知りおきを」

 

おっさんの紹介でロスヴァイセが挨拶する

今回は前のように鎧を着込んでおらず、スーツを着込んでいる

美人である

 

「彼氏いない歴=年齢の生娘ヴァルキリーじゃ」

 

どストレートに下ネタぶっ込んできたぞこのジジィ

 

「そ、それは関係ないじゃないですかァァァァ! 私だって好きで独り身じゃないんですよぉ!?」

 

そう言いながらその場にくずおれてバンバンと床を叩き出した

前言撤回、この人も残念な人だ

 

「ヴァルキリーも厳しいのよ。器量よしでも芽吹かない人だって多いからね」

「最近じゃ英雄や勇者の数も減ったもんでのぉ。経費削減でヴァルキリー部署が縮小傾向での、わしのお付きになるまでコヤツも職場の隅にいたのじゃ」

 

神の世界どうなってんだと思う

経費削減ってなんだよとも

 

「じいさんが日本にいるあいだ。俺たちで護衛することになってる。バラキエルは堕天使からのバックアップ要因だ。俺も最近は忙しくて、ここにいられるのは限られているからな。その間、バラキエルが見てくれるだろう」

「よろしく頼む」

 

アザゼルの言葉に短くバラキエルが返答する

つまり自分たちは今回オーディンを護衛することになるのか

 

「つうかじいさん、来日するのはちと早かったんじゃねぇか? 俺が聞いてたときはもう少し先だったと思ったんだが」

「まぁの。それと、我が国の内情で厄介事、というか厄介なもんにわしのやり方が批難されておっての。先に動いておこうと思っての。日本の神々といくつか話をしておきたいんじゃよ。今までは交流すらもってなかったからの」

 

オーディンは長い白ひげをさすりつつ嘆息する

神も神でいろいろ厄介なことを抱えているらしい

どんな場所にも問題があって当たり前なのだ

 

「厄介事って、ヴァン神族にでも狙われたのか? 頼むから〝神々の黄昏(ラグナロク)〟を勝手に起こさないでくれよ」

「そっちの方はどうでもいいんじゃが…いや、この話をしても仕方ないの。それよりアザゼルや、どうも最近の禍の団は禁手できる使い手を増やしておるようじゃが、あれは稀有な現象ではないのかの?」

 

唐突にその話になったことにその場の空気が変わった

やはり各勢力にぶつけたのはとっとと禁手化にいたらせるためだったのか

 

「あぁレアさ。けどどこかの阿呆が手っ取り早く、それでいてわかりやすい方法でそんな現象を乱発させようとしてるのさ。それは神器(セイクリッドギア)に詳しいやつなら一回は思いつくが実行すると確実に周囲から批判されるからできなかったことだ。成否に関わらず、そいつは酷評確定だからな」

「それが、リアスちゃんらが出くわしたあいつら、みたいな方法ってわけね」

 

メリディの言葉にあぁ、とアザゼルが頷く

気になった浩太郎は率直に聞いてみた

 

「方法って?」

「まぁあれよ。まず世界各国から神器(セイクリッドギア)持ってる人間拉致って、洗脳する。次に強者がたくさんいるところに突っ込ませる。それで禁手になる人がいるまで繰り返すってやつよ。ソシャゲで言うなら出るまで回す、みたいなものよ」

 

例えが生々しい

彼女は続けた

 

「こんなの思いついてもおいそれとは実行に移せないわ。こんなの協定結ぶ前に起こってたらそれこそ戦争よ。けどあいつらは手段選ばぬテロリストども。平然とやったんでしょうね」

 

そうメリディは吐き捨てる

彼女にしてはなんとなく怒っているようにも見える

ちなみに兵藤はじとーっとアザゼルのことを見ていたのが気になった

そういえば彼はドラゴンと追いかけっこした上でそんな修行をしていたっけ

 

「俺はそんな目にあって至りましたって言いたそうな顔だなイッセー」

「そりゃそうですよ先生」

「あれはお前だから別にいいんだよ。あくまで人間より頑丈だからな」

「えぇぇぇぇぇ!? またそれで片付ける!? ひどいよ先生!」

 

そう言ってわんわん嘆く兵藤

 

「どっちにしろ、そんな方法を平然と行えるあいつらはテロリストならではってところだな」

「そんな方法をやってのける連中はどんな集まりなんだ?」

 

浩太郎の問いにアザゼルが答えた

 

「英雄派のメンバーは伝説の勇者や英雄の子孫が集まってるみたいだ。身体能力は悪魔や天使に引けをとらず、さらに神器(セイクリッドギア)は伝説の武具を所有、おまけに神器(セイクリッドギア)は禁手に至ってて神をも倒せる力を持つ神滅具だと倍プッシュじゃあすまないぜ。報告じゃオーフィスの蛇に手を出さない傾向が強いみたいだから、底上げに関してはまだ知らんが」

 

正直言ってることの五割も理解できなかったがスゲェ強い連中ということはよくわかった

しかし勇者や英雄の子孫がそんな非人道的なことを平然としているとは少々許せない

 

「まぁ、ここでどうこう言ってても始まらねぇ。おい爺さん、どっか行きたいところはあるか?」

 

アザゼルがおっさんにそう聞いた

それを聞くとおっさんは両手をわきわきさせながらいやらしい表情を浮かべて

 

「…おっぱいパブに行きたいのぉ!」

「はーっはっぁ! さすが爺さん、目の付け所が違いますなぁ! ようし、いっちょそこまで行きますか、俺んとこの若い連中がVIP用の店を最近開いたんだよ!」

「おっほ! さすがアザゼル坊じゃ、でっかい乳をしこたま用意しとくれ!」

「ついて来なクソジジィ! あ、あれだ、帯くるくるするか!? 日本来たらやっとかなきゃ損だぜ損!」

 

なんか二人で勝手に盛り上がって、そそくさと部屋を退散していった

そんな二人の背中を見ながらメリディははぁ、とでかいため息をつきながら

 

「―――男ってのはもう」

 

こんなんがトップでいいのだろうか

二人共一応神様と総督なのだけれど

 

「オーディン様! 私もついてきます!」

「お前は残っとれ。アザゼルがいれば問題はないだろうて」

「いいえ、行きます!」

 

そんなやり取りをしながらロスヴァイセはそのままついていってしまった

部屋に残された我々には微妙な空気が漂った

 

◇◇◇

 

その後メリディ、兵藤とともに浩太郎は一回のキッチンに行き軽く水を飲んできた

他愛ない雑談を二人と交えながら最上階に戻っている最中に、ふと誰かの声が耳に入ってきた

 

「…お前と話し合いをしたいのだ」

 

ふとそっちを見ると五階の廊下、そこで朱乃とバラキエルがもめている

 

「―――気安く名を呼ばないで」

 

そう言い放つ鋭い針のような視線がバラキエルを貫く

笑みなどなく、不機嫌そのものを絵に書いたような顔だ

敵意むき出しである

 

「赤龍帝と逢引していたとはどういうことだ」

 

表現古っ

逢引とかいつの時代だよと思わず口にしそうになっやがすんでのところで口を閉ざす

盗み聞きはしちゃいけないのだが、内容が内容だけに気になってしまった

というかメリディは完全に盗み聞く気マンマンマンで壁に張り付いてた

 

「私の勝手じゃない。それをあなたにとやかく言われる筋合いないと思うのだけれど」

「噂を聞いてる。女の、ち、乳房を糧に活動するハレンチ極まりないドラゴンだと。乳龍帝という二つ名があるそうではないか」

 

乳龍帝!?

わけのわからん二つ名が耳に入ってきて、耐え切れずメリディが声をあげて笑い出す

その声にバラキエルと朱乃はの二人は一斉にこちらを振り向いた

 

<…相棒はどこまで俺をいびるつもりなんだ…うおォォん>

 

ドライグ号泣

泣きたくなる気持ちもすごくわかる

朱乃は戸惑い半分のような表情で

 

「聞いていたのね、イッセー君に浩太郎くん、それにメリディさんまで」

「他意はないわ。ちょっと最上階に戻る過程で話聞こえちゃってさ。それで気になってつい、ね」

 

そう言って笑みを浮かべるメリディ

全く悪びれてないのが彼女らしい

一方でバラキエルは視線を兵藤に向け

 

「盗み聞きなどとは破廉恥な! やはり娘の乳を狙う噂は真か! そうはさせんぞ乳龍帝めが!」

 

そもさん彼にそんな噂吹き込んだの誰だろうか

アザゼルっぽい、なんか想像が容易だ

しかしそんなバラキエルに向かって叫んだのはほかでもない朱乃だった

彼女は兵藤の隣に立って

 

「今更父親面しないでよ! …なら、ならなんであの時お母様を見殺しにしたの! 来てくれなかったのはあなたじゃない!」

 

その一言にバラキエルは沈黙してしまった

何とも言えない空気がこの場を支配する

やがてメリディが言った

 

「バラキエル、一旦上に戻りなさい。この状況じゃ話もできないよ」

「…そう、させていただく」

 

短く返事した彼はゆっくりとした足取りでこの場を去っていく

ガタイのいい彼の背中には少しだけ、さみしさが垣間見えた

静寂が包み込む

朱乃はふいにぎゅっと兵藤に抱きついていた

 

「こっちももどるよ浩太郎」

「え、けど」

「しばらく二人にしてあげよう? いろいろあるのよ、彼女にも」

 

メリディにそう言われ、最後に兵藤にちらりと視線を合わせる

彼も戸惑ったような表情を浮かべていたが、やがてうんと首を縦に振りそれを見届けた浩太郎はメリディと一緒に先に最上階に戻っていった

 

あの親子のあいだにある確執は、想像以上に大きいもののようだ

彼女を救えるのは、赤龍帝であるあいつだけだと個人的に思っている

機会があるかはわからないが、あったら自分は脇役に徹そうと一人、浩太郎は決心した

 

―――何事も、ないといいなぁ

 

そんなことを考えながら、浩太郎も最上階へと戻っていった

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