その身に宿すはキングストーンⅡ   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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兵藤家の地下一階の大広間

そこにみんなが集まっていた

まずグレモリー眷属+イリナ&浩太郎、そしてアザゼル、バラキエル、シトリー眷属…それにヴァーリチームという謎なメンツなのである

知人の家にヴァーリや美猴がいる時点で不思議である

リアスは最後まで彼らの同席を反対していたが、アザゼルとサーゼクスの意見を聞いて渋々ながら承諾した

しかし、彼らがこっちに協力する理由がわからない

ちなみにオーディンのオッサンとロスヴァイセの二人は別室で本国と連絡を取り合っているようだ

ロキが日本に来たことはあちらでも大問題になっているようだ

そんなわけで今現在、そのロキについて話し合っている

今回のロキ襲来、当たり前だがサーゼクスはもう知っているし、堕天使にも天界にも情報は伝わっている

オッサンの会談を成功させるために三大勢力が協力して守ることとなったのだ

しかし協力といっても協力体制の強いここのメンツで頑張ってなんとかしろとのことなのだが

つまり自分たちだけでロキを退けろ、ということである

…鬼か

相手は神な上、さらに神を殺す牙を持つフェンリルが最大の障害だ

なんでも封じられる前は二天龍に匹敵するくらいの力を宿していたらしくアザゼルやタンニーン単体でも勝利は難しいらしい

二天龍の力を完全に引き出せていないヴァーリと兵藤では勝てない

覇龍を使用すれば勝てないことはないかもだが、そうすれば兵藤は死んで、ヴァーリは魔力を使い果たし彼も死んでしまうかもしれない

ロキとの戦いで死力を尽くして戦えば勝てるが、犠牲は出る

加勢はどの勢力からも期待できないらしい

英雄派から神器(セイクリッドギア)所有者を送り込んでくるテロは未だに続いているようで、各勢力は混乱してるのだ

各地の重要拠点は警戒を最大限にしているため、戦力を割けない状態なのだとか

だからまずは犠牲をゼロにして勝つ方法を探る、ようである

 

「まず先に聞くぞヴァーリ。なぜ協力する?」

「ロキとフェンリルと戦ってみたいだけさ。美猴たちも了承済みだ。不服か?」

 

相変わらずの戦闘狂だ

あんなのと戦いとかどうかしている

その言葉を聞いたアザゼルは怪訝そうに眉をよせ

 

「まぁ不服だな。しかし戦力が欲しいのは確かだ。今は英雄派のテロのおかげで各勢力もこちらに戦力を割けないことだしな。お前の性格上、英雄派と行動を共にするわけないか」

「あぁ。基本的に互いに干渉しないことになっている。俺はそちらと組まなくても戦うつもりだ。組まない場合は、巻き込んででも戦闘に介入する」

 

…面倒くさい男だな、こいつ

組めば重畳、組まねば粉砕…本当にメンドくさい

 

「サーゼクスも悩んでいるが、旧魔王の生き残りであるお前からの要求を無下にはできないと言っててな。甘い王だが、お前を野放しにするよりは協力してもらったほうが賢明だと俺は感じている」

「納得できないことのほうが多いけれどもね」

 

リアスがアザゼルに続く

文句はあるが魔王が良しとするならリアスもそう強くは言えないのだろう

ソーナも頷いて了承している様子である…物凄く不満げな表情だが

確かに勝手に動かれるよりはこっちの目に届く範囲にいてもらったほうが対応しやすいのだろう

まぁ、変な行動を起こしたらぶん殴ればそれでいい

 

「まぁいいや。いったんお前の事は置いておくとして、ロキ対策なわけだが、ロキとフェンリルの対策をあるものに聞く予定だ」

「対策を聞く?」

「あぁ。あいつらに詳しいのがいてな、そいつにご教授してもらうのさ」

「それは、誰です?」

 

兵藤が挙手して問う

 

「五大龍王が一匹、ミドガルズオルムだ」

「―――順当、だが。ミドガルズオルムが俺たちの声に応えるだろうか」

 

ヴァーリの声にアザゼルは答えた

 

「二天龍、ファーブニル、ヴリトラ、タンニーンでドラゴンゲートを開く。そこから意識だけを呼び寄せるんだよ。本体は北欧の深海で眠っているからな」

「お、俺も、ですか? 正直、怪物だらけで気が引けるんですけど…」

 

匙が恐る恐る言葉を述べる

そういえば彼もヴリトラドラゴンの神器(セイクリッドギア)を持っていたのだった

 

「要素の一つとしてきてもらうだけだ。大体は俺らと二天龍に任せとけ。まぁとりあえずタンニーンと連絡が着くまで待っとけ、俺はシェムハザと対策について色々話してくる。それまで待機な。ついてきてくれバラキエル」

 

アザゼルとバラキエルはそうして大広間から出て行った

残されたのはグレモリーウィズ浩太郎+イリナ、生徒会にそして、ヴァーリたち

 

「赤龍帝!」

 

不意に美猴が手を上げた

 

「な、なんだよ」

「この下の屋内プール入っていいか?」

 

軽っ

 

「ちょっと、ここは私とイッセーの家なのよ。勝手な振る舞いは許さないわ」

 

正しくは兵藤の家なのですがリアスサン

魔改造したのは貴方の家なのだけども

 

「いいじゃねぇか、固いこと言うなよスイッチ―――イってぇぇぇ!?」

 

言葉の途中で唐突にリアスが美猴の頭をぶっ叩いた

そういえばなんでかリアスの態度は美猴に対して少々きついことがある

敵なのだから当たり前かもしれないが

 

「あなたのせいであたしは冥界で変な名称で呼ばれてるのよ!?」

 

涙目に美猴に対して、なぜかリアスも涙目だ

…そういえばスイッチ姫って一番最初に呼び始めたのはこの人なのだっけ

んで、それを聞いてたアザゼルが採用した、と

いわばリアスにとっては元凶なのである(恥ずかしい名称の

 

そのあとも色々続きそうなので、浩太郎は苦笑いをしながらその場を離れることにした

近くではアーサーとイリナが聖剣について話し合っていた

こういう時彼女は誰とでも仲良くなれる、これもある種の才能だ

 

<…アーサー、かー>

「うん? どうしたのさメリディ」

<いいえ。昔、その子供にちょっとした事件で会ったことがあったのよ>

「…アーサー、の子供?」

<知らない? 歴史の勉強くらいしなさいな。いえ、知らないなら知らないでいいんだけどね。…その気になれば力の一部を再現とかできそうだけど…うーん…今んとこは様子見、ね>

 

なんか不意にぶつくさつぶやき始めた

そのまま声は聞こえなくなったので、今はそっとしておくことにする

すると不意にとんとんと肩を叩かれた

 

「どうした飛鳥」

「い、いえ。その、あそこなんですが…」

 

ちらりと飛鳥は一点を見やる

するとそこには小猫と黒歌の姉妹コンビがにらみ合っていた

いや、正確には睨んでいるのは小猫だけで姉の黒歌の方は妖艶に笑んでいるだけだ

小猫の後ろにはブルブルと震えるギャスパーがいる

もう一度連れてくつもりなら二度と鏡の見れない顔にしてやるつもりではあるが、今は敵意はないので言葉だけにしておこう

 

「勧誘するなら、相手になるぞ」

 

真っ直ぐに黒歌を見据え告げる

小猫もやっぱり怖かったのか浩太郎の手を握って彼の背中に隠れた

やっぱりまだ苦手なのだろう

黒歌はキョトンとしてたがすぐにまたにんわり微笑んだ

…くそ、この人髪型は個人的にどストライクなのだよね

…これでもう少し胸が小さければ

 

「…最初に出会った頃よりもっと凛々しくなったねぇ。聞いたよディオドラのこと。その1件が変えたのかしら? あるいは、〝女〟かにゃん?」

「あいにくまだ女は知らないよ。まぁアタシも男だから、興味ないわけじゃないけど」

 

思わず変なこと口走ってしまった

何言ってんだ俺と自問自答するがもう遅い

なんかよくわからないがものっそいいい笑顔をした黒歌がこちらを覗き込み

 

「それだったらちょうどいいにゃん。ねねね、一つ提案があるんだけど」

「…提案?」

「私と子供、作ってみない?」

 

…ナニイッテンダコイツ

 

「私ね、子供が欲しいの。特別強い子供。ヴァーリにも頼んだけど断られちゃったし、赤龍帝の子は主一筋だし。だけど子供は強い遺伝子のが欲しい。で、二天龍に匹敵するのが君なわけにゃの、アズマくん♪」

 

ゼノヴィアみたいなこと言い出した

しかもタチが悪いことにゼノヴィアが勢いだけな気がしてきたが、コイツの場合は何かしら裏がありそうで怖いのである

…グレモリー眷属や小猫に会ってなかったら確実に頷いてしまいそうだ

 

「どうするにゃん? 今ならお買い得だよ? 妊娠するまででいいから。ね?」

 

そんな黒歌を後ろの小猫がものっそい勢いで睨んでいる

そしてもう一つ、ものっそいというほどではないがピクピクとこめかみをヒクつかさている飛鳥もいる

正直なにも言い返せないので時間が過ぎるのを待つことしかできない

っていうかこの黒猫絶対反応見て楽しんでるだろこれは

 

「ね、姉さまに…姉さまに先輩は渡しません!」

「そ、そそ、そうです! あ、貴方に浩太郎さんは相応しくないです!」

 

小猫と飛鳥が一緒になってそう言った

その二人の反応に気を良くしたのか黒歌はにこりと笑ったあと、こちらに手を振りながらヴァーリの方へと向かっていった

…そもそも自分が失言しなければこんなことにはならなかったんじゃないのか

今更ながらに自問自答

 

◇◇◇

 

翌朝

朝ごはんを済ませた一行は地下の大広間に集まっている

つい先日兵藤とヴァーリらが件のミドガルズオルムに話を聞いてきたらしいので、その話をするのだろう

ちなみに学校は休んでいる

兵藤らは自分を模した使い魔で誤魔化し、浩太郎と飛鳥は風邪ということでおやすみをもらっている

…正直風邪というのでは少々きついとは思うが、この際置いておく

 

「オーディンのじいさんからプレゼントだ。…ったく、あのジジィ、とんでもねぇもん隠し持ってやがった。こいつをイッセーに貸してやるってよ」

 

そう言ってロスヴァイセが見せたのは―――日曜大工とかで使う普通のカナヅチだ

気になった浩太郎はずいっと前に出て

 

「なにこれ?」

「北欧の雷神トールが使う伝説の武器のレプリカだ。ミョルニルってんだがよ。コイツには神の雷が宿ってるんだよ」

「へー? 触ってみてもいいです?」

「えぇ、いいですよ」

 

兵藤らの視線を受け、浩太郎はロスヴァイセが持っていたハンマーを受け取る

触ってみた感じは完全に普通のハンマーだ

 

「キングストーンで代用できるかはわからんが…とりあえず力を流してみろ」

「力?」

 

アザゼルに言われるがままに体の中にある力をハンマーに込めてみる

するとみるみる大きくなり、いつしか体の身の丈程の大きさになっていた

これでは少々大きすぎて振りづらいが…まぁ振れないということでもない

ふと視線を感じる

 

「…ほんとお前さんは規格外だな」

「? 何がさ」

「レプリカとはいえ神様の武器を片手で軽々扱うなんて…さすがキングストーンを身に宿したお方ですね」

 

アザゼルがやれやれといった顔で、ロスヴァイセが笑顔でそう言う

そんなにすごいのだろうか

 

「兵藤、持ってみる?」

「いいのか?」

「っていうか、これ元々お前に貸された武器だろうが」

 

そう言って大きくなったハンマーを兵藤に手渡すと、サイズが元の大きさに戻っていった

 

「使い方はさっき浩太郎がした通りだ。お前は魔力を込めればいい。だが取り扱いには気をつけろよ、下手すりゃここら一帯が消し飛ぶぜ」

「マジっすか!」

「だが、これにお前の力を譲渡すれば、エラい威力になるだろうな」

「あ、なるほど…!」

 

これならロキ対策にいいだろう

それにアザゼルははははと笑いながら

 

「ヴァーリ、お前もねだってみたらどうだ? なんかくれるかもしれねぇぜ」

「いらないよ。俺は天龍の本来の力で極めるつもりだからな。追加装備は必要ないさ」

 

中々にストイックなセリフである

しかし、それだけ自分に自信を持っているということでもある

彼は才能、兵藤は努力

圧倒的に対比のある二人がどうなるのか、浩太郎も少しばかり楽しみになってきた

 

「あぁそうだ、美猴、お前さんに伝言を預かってんだった」

「伝言?」

「あぁ。確か〝馬鹿者 貴様は見つけ次第仕置だ〟だ。初代孫悟空からだ。玉龍(ウーロン)と一緒にお前の動向を探ってるみたいだぞ」

「あ、あのジジィ、バレたのかテロのこと。ってかウーロンもかよ!」

 

エラい顔に汗をだらだら流しながら青ざめる猿

やっぱり初代孫悟空っているんだ

 

「お前も一度故郷に戻るか? その二人に会うのは楽しそうだ」

「やめとけよヴァーリぃ、ウーロンはともかく初代はマジでバケモンなんだったって。現役っつっても差し支えないし、アイツ妖術と仙術使いこなす上に極めてっからマジで強ぇんだ…」

 

あの美猴がこんなにビビるなんて珍しい

ちなみにタンニーンは決戦当日にこちらに来るらしく、現在は冥界で待機しているらしい

 

「あーいいか? 確認するぞ。まず、会場であいつが来るのを待ち、そこからシトリー眷属の力でお前らをロキとフェンリルごと違う場所に転移させる。転移先は採掘場跡地、広くて頑丈だからそこで思い切り暴れろ。ロキの対策のメインはイッセー、ヴァーリ、浩太郎だ。二天龍で相対して、浩太郎は臨機応変に対応してくれ。フェンリル捕獲は残ったメンバー…グレモリーとヴァーリのチームで捕縛して、そのあとで倒してもらう。絶対にフェンリルをオーディンのもとへ行かせるな。アイツの牙は神殺し、噛まれれば流石に死ぬからな」

 

大まかな流れをアザゼルが説明する

シトリーで我々を転移させ、そこでヴァーリと戦い、フェンリルは仲間に任せる

相手が神だから多少の不安は残るが、いちいちそんなことを気にしていたら命がいくつあってもたりないだろう

―――上等、生きてるのなら、神であろうと殴ってみせる

 

「捕縛用の鎖はダークエルフの長老に任せてあるから…匙」

「なんです? 先生」

「お前も重要だ、ヴリトラの神器(セイクリッドギア)があるからな」

「え!? ちょ、ちょっと待ってください! 俺二天龍やブラックサンみたいに馬鹿げた力なんて持ってないですよ!?」

「わかってるよ。お前に前線で戦えとは言わない。だがその神器(セイクリッドギア)の力で味方の補助をしてもらう。最前線で戦うあいつらのサポートにお前の力が必要なんだ」

「さ、ぽーと」

「そのためにはちいとばかしトレーニングが必要だ。試したいこともある。そんなわけでソーナ、しばらくこいつを借りるぞ」

「よろしいですけど…どちらに?」

「転移魔法陣で冥界の堕天使領…グリゴリの研究施設まで連れて行く」

 

妙に楽しそうな顔をしている

無茶をさせなければいいのだけれど

 

「匙、先生のシゴキは地獄だぞー? 俺も冥界で死にかけたし、しかも研究施設だ。ははっ、お前死んだな」

 

茶化すようにポンポンと兵藤は匙の肩を叩いた

その言葉を聞いてさらに顔を青くする匙

そんな匙の襟首を掴んでそのまま魔法陣を展開する

 

「よーし。それじゃあいくぞー匙ー」

「うえ!? マジかよ!? た、助けて!? 兵藤ぉぉ! 会長ぉぉぉぉぉ!!」

 

そのまま彼の声は魔法陣にかき消され消えていった

…しかしサポートと言っていたが、どうするつもりなのだろうか

 

<レーティングゲームでのお前との一戦で、やつの内に眠るヴリトラが反応し始めていた。>

 

ドライグの言葉でそういえばそんなことがあったことを思い出す

あの時はどちらか片方を応援することができず、試合を見に行かないという選択を取ってしまったのでどういった試合運びになったかはわからないが

 

<そういえばドライグ、アルビオンとは話さないの?>

<いや、話すことなどないが…。どうだ白いの>

 

メリディに促されたドライグが皆に聞こえる声で話しかける

 

<―――話しかけるな。私の宿敵に乳龍帝などいない>

<な!? ま、待て誤解だ! そう呼ばれてるのは宿主の方であってだな!?>

<…胸をつついて覚醒し、胸をつついて覇龍から解除など…ひどい有様で私は泣きたいくらいだよ赤いの>

 

物凄く落胆の色を含んでいる声音のアルビオン

それを聞いて兵藤のドライグが泣いた

 

<泣いたのは俺も同じだ! 未だに涙が止まらんのだぞ! うぉぉぉぉ!>

<…何がどうしてこうなった。誇り高き二天龍だったはずなのだ…>

 

目の前で二天龍と呼ばれていた二匹の龍が泣いていた

なんだこれ

 

「…すまない兵藤一誠。こういったときどう慰めればいいのだろうか。君を模したテレビを見ていたときもすすり泣いていたのでな」

「そんなこと俺が知るか! あととりあえずごめんなさい! どうせ俺はおっぱいドラゴンですよ!」

 

そんなやりとりを見ながら、浩太郎は苦笑いを浮かべていた

そこでぼそり、とメリディが浩太郎にしか聞こえない声量で呟いた

 

<…アルビオンにもなんかあだ名つかないかしら>

「やめろよ」

 

本当についたらどうするんだと思わずにはいられない

そんなどうしようもないやり取りの中で、VSロキ戦のための準備は進んでいく―――

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