その身に宿すはキングストーンⅡ   作:桐生 乱桐(アジフライ)

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遅くなりました
出来は微妙ですが(いつもの)お収めください

正直どこまで続くかわかんないですけどのんびりやっていきますゆえご容赦ください




<ジャガーノート ドライヴ!>

 

採石場全体を包み込む眩い光、やがてそれは確実にフェンリルさえ包んでいく

これが白龍皇のジャガーノートドライヴ…

輝いているヴァーリが不意に黒歌へ指示を飛ばした

 

「黒歌! 予定のポイントに俺たちを転送しろ!」

 

輝くヴァーリは黒歌に向かってそう叫んだ

彼女の方もそれを聞いて小さく笑うと手をヴァーリに向けて指を動かす

よく見るとジャガーノートドライブの影響かヴァーリの鎧が少しづつ変化していった

そして例のフェンリルを縛る鎖もヴァーリの方へ移動していく

確かに開放した今のヴァーリならいけるかもしれない

 

次第に大きな輝きとともにヴァーリとフェンリルが夜の夜景に紛れて消えていく

 

「ヴァーリ!」

 

兵藤が叫んだ、が、返事などあるはずもなく

フェンリルを強引に外に連れ出したのだろうか、というか予定のポイントとも言っていたしもしかしたらなにかよからぬことを企んでいるのかもしれない

と、そんな思考に埋没してると誰かの悲鳴とも取れる声を聞いた

 

「朱乃っ!」

 

リアスの声だ

視線の先には今まさに子フェンリルに噛まれようとしている彼女の姿が

 

「させんっ!」

 

言葉とともにバイオライダーへと姿を変え、体をゲルへと変化させ駆けつける

道中、背後からロキがなんか言いながら魔術を撃ってきたが全てすり抜けたので大した問題ではない

…だが間に合うか!? 最悪な事態だけは避けれれば…!

 

ザシュ、と鈍い音が聞こえた

 

それは子フェンリルに噛まれた音だ―――バラキエルが

バラキエルがその身を呈し、娘である朱乃を守ったのだ

 

「―――ごふっ!?」

 

大量の鮮血がバラキエルの口から零れ出る

対して朱乃はその表情を驚きに変えたまま

 

「…なんで…?」

「お前まで、失うわけにはいかない…」

 

そう言って彼は小さく笑う

きっとそれは、彼なりの罪滅ぼしでもあるのだろう

子を思わない親など、いるはずがないのだから

 

「サタンサーベルッ!」

 

取り出したその剣を振るい子フェンリルを追っ払う

崩れ落ちるバラキエルを支えながら、バイオはアーシアの名を叫んだ

それに反応してアーシアは淡い緑色の光を生み出しこちらに向けて飛ばしてくる

光に包まれた彼の体が少しづつ癒えていく、が即座に戦線復帰は難しいだろう

 

「…ワタシは、…! 私はぁ…!!」

「しっかりしろ朱乃、戦いは、まだ終わっていないのだ」

 

微笑みながら彼は朱乃の頭を撫でる

きっと彼女も複雑な胸中なのだ

頭の中では理解していても、認めたくなかった

本当は入り込みたくはないが、今が戦闘の真っ只中というのも事実

心を鬼にしてバイオは彼女の肩にその手を置いて―――

 

ぽうっ、と浩太郎のキングストーンが輝きだし、バラキエルと朱乃、そして浩太郎の三人を包み込んだ

 

 

まず耳に聞こえてきたのは、小さな女の子が鞠をつきながら、謳っている光景だ

平屋建ての小さな家の庭で、鞠付きをしている幼い女の子

 

「朱乃、どこ?」

 

朱乃によく似た女性が幼い朱乃を探している

それに気づいた朱乃は「かあさま!」と元気よく叫んで母親に勢いよく抱きついた

黒髪が美しい、母親だ

その美しさの奥に、どこか儚さを感じる

 

「かあさま、とうさまは今日のいつごろ帰ってくるの?」

「あら。父さまとどこにいくの? 朱乃」

「はやく帰ってきたら、いっしょに街にかいものにいくの!」

 

―――寂しかった

 

不意に聞こえる朱乃の(ほんしん)

 

「とうさまのはね、嫌いじゃないよ。くろいけどつやつやしてて、わたしのかみのけといっしょだもん!」

「そうか、ありがとう、朱乃」

 

団欒している、バラキエルと幼い朱乃

そこには、笑顔があった

 

―――いつも父さまがいてくれたら、よかったのに

 

「ねぇかあさま。とうさまは私のこと、すきかな?」

「もちろんよ、朱乃」

 

家の縁側でのひと時

母は微笑みながら、幼い朱乃の髪を優しくすいている

朱乃の顔は、笑っていた

 

―――たまにしか、会えなかったから

 

場面は一変する

 

ズタズタに荒らされ、畳は抉れタンスは倒れ

夕食時を襲撃されたのか、床には食事が散らばっていた

 

「その子を渡してもらおう。忌々しき邪悪な天使の子をな」

「絶対に渡しません! この子は私の大切な娘です! そしてあの人の大事で、大切な娘…! 何があろうと、絶対に渡しません!」

「どうやら貴様も黒き天使に穢されてしまったようだ。仕方あるまい」

 

そう言うと男は刀を向き放ち―――朱乃の母に斬りかかった

 

少し時間は進む

最初に映ってきたのは返り血に塗れた―――メリーディエースの姿だった

 

<―――この日、たまたま近くに遊びに来ててね。お夕飯に誘われてたの。…私が駆けつけた時には、もう…>

 

バラキエルが駆けつけるのは、メリディが最後の襲撃者の頭を踏み砕いたあとだった

 

「いやぁぁぁぁぁ!! かあさま! かあさまぁぁぁぁぁ!」

 

幼い朱乃は遺体となった母親をゆすり、泣き喚いている

無理もない、目の前で母親が殺されたのだ、とてもじゃないが、耐えられるようなものでもない

 

「朱璃…!」

「触らないでッ!」

 

遺体に触れようとするバラキエルの手を、朱乃が弾く

思うままに、感情を爆発させて、力の限り己の怒りを叩きつけた

 

「なんでよ! なんでかあさまのところにいてくれなかったの! ずっととうさまを待ってたのに! きょうはお休みだって言ってたのに!」

 

バラキエルは何も言わなかった―――否、何も、言えなかった

佇んでいたメリディも、沈痛な面持ちで見守るしかなった―――否、見守るしか、出来なかった

 

「あの人たちが言ってた! とうさまが黒い天使だから! 黒い天使が悪いんだって! 私にも、それがあるから悪いんだって! こんなものがあるから! こんな羽大っ嫌い! あなただって嫌い! 嫌いきらい! 大っキライ!!」

 

―――あの人が悪くないってことは頭ではわかってた。…だけどああでもしなければ私の精神は保たなかった…! 私は…弱くて、寂しくて…ただ三人で暮らしたくて…!

 

キングストーンが包み込んでいるこの輝きの中、朱乃の母親の声色が聞こえてくる

優しく、慈愛に満ちた、変わらない声色で

 

<朱乃。…何があってもあの人を信じてあげて。確かに、あの人はこれまでたくさんの誰かを傷つけてしまったかもしれない…だけど、あの人が私を貴女を愛していたのは本当だから。…だから…朱乃もあの人を…愛してあげて…ね>

 

 

ふと、意識が戻る

どしゃり、とその場に崩折れる朱乃

その両目にはとめどなく流れる涙

気が付けば浩太郎はいつの間にか変身が解け、生身の人間へと戻っていた

朱乃は慟哭する

 

「お母さまっ…! 私はもっとお父様と遊びたかった! もっともっと会いたかった! 頭を撫でてもらいたかった! ―――家族三人で…もっといっしょに暮らしたかったッ!」

 

紛れもない、彼女の本心が綴られる

先の風景は、浩太郎と朱乃、バラキエルの三人だけにしか見えていなかったのだろうか

横たわっているバラキエルは朱乃の方へと手を伸ばし

 

「朱璃や…お前のことを…忘れたことなど…一日たりともないよ…」

 

傷はあらかた治ってはいるが、それでもバラキエルの手は震えている

朱乃はその手を優しく握り返し―――

 

「お父様…」

 

刹那、その時である

想いを受け止めた二人に呼応するかのように、キングストーンが眩い輝きを放っていく

同時に体の内側から力が湧き上がってくる

動きの止まった浩太郎を好機と見たのか

 

「戦場で考え事とは随分と余裕だな!」

 

戦闘していた兵藤を一度突き飛ばし距離をとったロキがこちらに向けて量産型ミドガルズオルムを一体差し向けてくる

だが―――不思議と恐怖などはない

浩太郎はサタンサーベルを取り出し、その刀身に力を込めるように撫でる

そして今まさに向かわんとしている量産型オルムに向かって、サーベルを振り抜いた

その一太刀で量産型オルムは四散する

自分でもびっくりな力だ…それゆえに、負ける気はしない

 

「バラキエルさん、その手、離しちゃダメですよ」

「―――あぁ」

 

バラキエルにそう言って一度サタンサーベルを突き刺し、再度身を変える動作を取る

普段とっているモノとは少々簡略化してはいるが…十分なはずだ

 

「変身―――!」

 

呟きとともにもう一度RXへと姿を変え、改めて兵藤の隣へと跳躍する

 

「浩太郎、朱乃さんたちは…」

「大丈夫だ、問題ない。 行くぞ兵藤、アイツを叩き潰す!」

「―――おお! 行くぜ浩太郎!」

 

構えるRXに応えるように兵藤も拳を作りロキを見据える

しかし変わらずロキは不敵な笑みを崩さないままに

 

「ふはははっ! 面白い! やはり今代は面白いなっ!」

 

そう言うとロキは再度マントを広げて己の影を拡大させていく

するとそこからまたしても量産型オルムの一団が現れた

数は五匹だが、問題ない、何匹でも来いだ

数で押してくるのなら、何度でも蹴散らすだけである

そう考えた直後、視界に黒色が写りこんだ

瞬く間に今度は地面から黒い炎が巻き起こりうねりとなってロキと子フェンリル、そして先ほどの量産型オルムの集団を飲み込んでいった

 

「この漆黒のオーラ…! ヴリトラか!」

 

タンニーンがそう言った

ヴリトラ…匙か? だけど彼は炎まではなかったと浩太郎は記憶している

直後、地面に巨大な魔法陣が現れ、その中心から黒い炎がドラゴンの形を作っていく

 

<兵藤一誠くん、梓馬浩太郎くん。聞こえますか? 私はグリゴリ副総督、シェムハザです>

 

緊急用、ということで耳につけていたイヤホンマイクから聞いたことのない声音が聞こえてきた

恐らくはアザゼルの同僚かなにかだと思うが

 

「あのデカイ龍を送ってきたのはそっちですか?」

<えぇ、アザゼルに匙くんの特訓が終わったらこちらに転送するように、と言われていましたから>

「! あれやっぱり匙なんですか!?」

 

兵藤の驚きの声

シェムハザは続ける

 

<アザゼルは多少計算ミスをしてしまったみたいでして。特訓を開始したはいいですが、そのままこの状態になってしまいって。時間が来てしまったのでこのまま送ってみたんです。一応、敵と味方の区別はついているみたいですね>

「…結果オーライってわけですね。それで、何をしたんです?」

<彼にヴリトラの神器(セイクリッドギア)全部くっつけました>

 

グリゴリは極端だった

 

<ヴリトラは退治されて封じ込まれるとき、幾重にもその魂を分けられてしまった、そのため、ヴリトラの神器(セイクリッドギア)所有者は多いのです。全部で四つあるのですが、それらを我がグリゴリが回収し、保管していたそれらを匙くんに埋め込みました。イッセーくんと浩太郎くんとの接触でヴリトラの意識が出現していたので、すべての神器(セイクリッドギア)が統合されるかもしれない、とアザゼルは踏んだのです>

 

それでアザゼルは匙を連れて行ったのか

 

<結果、ギアは統合されヴリトラの意識は蘇りました…が、復活したばかりで暴走してしまったみたいですね。しかし彼の意識は残っているようなので、兵藤くんがドライグを通じて語りかければ反応するはずです。…できますか?>

「…どうする、兵藤」

「―――わかった。なんとかやってみます! 最悪、力尽くでも匙を止めます!」

「わかった…匙は任せたぜ!」

 

改めて視線を向けると、ヴリトラの炎はロキと子フェンリル、そして量産型オルムの動きを止めている

黒いその炎は意思を持つ蛇のように蠢いて、巻き付いているように見える

 

「なんだこの炎は!? 力が、徐々に抜けて…!? そうか、これはあの黒いドラゴンの力かっ!」

 

ロキも狼狽えるようだ

子フェンリルと量産型オルムも暴れてはいるが、脱出はできなさそうだ

しかし暴走している彼の力では長続きはしなさそうなので、全員に総攻撃をするように声たかだかに叫ぶ

 

「みんな! 奴らは今動けない! このまま畳み掛けてぶちのめそう!」

 

浩太郎の言葉に全員が賛同し、子フェンリルと量産型オルムに攻撃しようと身構える

 

「オーディン様の敵は、全て倒します!」

 

ロスヴァイセが全身から魔法陣を展開させ、魔術攻撃を繰り出す

身動きが取れない子フェンリル、量産型オルムにその攻撃が直撃し、大きなダメージを与えた

匙の力でパワーが吸収されているからアイツ等も弱体化しているようだ

だがしかし、悪神ロキだけは違った

 

「ええい! この程度!」

 

彼はもがきながらも説得している兵藤に向かって魔力弾を放ってくる

しかし予期できていたことだ

 

「ボルティックシューター!」

 

僅かな動作のあと、ロボライダーへと姿を変えたRXは兵藤に向かって打ち出される魔力弾に向かって正確無比な一撃を撃ち込みそれらを打ち消していく

それを煩わしく思ったロキはこちらに狙いを変えてきた

射線をロキに変更しゆっくり歩いてこちらも接近していく

流石に悪神なだけあって被弾した際のダメージもなかなかのものだが―――歩みが止まるほどでもない

 

だが一瞬のあとロキが匙の炎の結界を打ち破った

曲がりなりにも神か

 

「このロキをこの程度で捉え続けるなど!」

 

そのまま空中高く飛び上がる―――逃げるつもりだ

だが、それをさせまいととある親子が力を解き放つ

 

「ふははは! 残念だったな! 我は一時退却する! そして再び訪れて混沌の―――」

 

彼の動きを止めたのは、雷の光

煌めいたその光は、悪神ロキを捉え確実にその動きを止めた

それを放ったのは―――手を取り合った朱乃とバラキエルの二人の親子

お互いに、黒き漆黒の翼を羽ばたかせながら

 

落下してくるロキを、再度匙の黒い炎が包み込む

まさしくナイスなタイミング、兵藤の説得が通用したみたいだ

 

「馬鹿な! 一度は解いたはずの結界だ!」

「残念だったな。俺の仲間はみんな根性あるんだよ!」

 

姿をRXへと戻し、RXは両手を握り、力を込めた

 

<ブースト! ブースト! ブースト! ブースト! ブースト!>

「受け取れぇ! 浩太郎ぉぉぉ!」

 

兵藤から高められた力がRXを包み込む

握り込める拳に力が入った

キングストーンが力強く輝きだし、RXはそのまま跳躍し、ロキに向かって拳を突き出す

 

「ライダーァ…! パァンチッ!」

 

繰り出されたその一撃は顔面を捉え、吹き飛ばす

中空に投げ出されたその体をRXは逃がさない

そのままもう一度RXは跳んだ

跳びながら、右足を突き出し―――叫ぶ技は

 

「ライダーッキィック!」

 

その一撃は、確実にロキの腹を捉えた

ごぶ、などという言葉とともに肺から息を吐き出したロキは地面を転がっていく

 

「―――聖書に、しるされし、神が…なぜ禁手という現象と…神を殺せるだけの、道具を残した…! こういうことが…想定されて…!? なにゆえ…人間の神殺しの術を―――!」

 

それだけ言い残して、完全に彼は動かなくなった

気を失ったみたいだ

 

「終わったみたいね」

 

メリディの声が聞こえる

どうやら子フェンリルと量産型オルムの始末も終わった様子だった

 

「あぁ、終わったよ」

「あっちの方も、大団円みたいね」

 

親子で飛び合う朱乃とバラキエルを見ながら、メリディが呟いた

それに小さく頷いたあと、RXは変身をとき、梓馬浩太郎の姿を見せる

いろいろありはしたし、障害もあったが…とりあえずは、だ

 

「…撃破完了、ってところかな」

 

なにはともあれ、ロキの撃破は成功した

今はこの喜びをかみしめるべきだろう

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