オーバーロード ~俺の嫁は狂ってる件について~   作:誤字脱字

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~俺も嫁と狂ってる件について~

何も変わりどころのない共同墓地に置いて、黒づくめのローブを纏った集団と血色が悪い――もはや血が通っていないかと感じる程、肌が白い男女が対面していた

 

こういう場面を映画や雑誌では、見た事あるモノだが実際に当事者として経験する事になろうとは、純粋に武術に打ち込んでいた事の俺では想像できなかったであろう

 

「お前がクレンティアの片割れ、か」

 

黒ローブの集団のリーダーらしき骨の様に痩せ干せた男……カジットが、おそらくクレマンティーヌの事を示しているであろう呼び軍名で彼女を呼ぶ

 

「ん~、その呼び名は好きじゃない…殺すわよ?」

「ふん、威勢が良い事だ。………それでそこの男は?」

 

まぁ、そうだよな

呼び掛けていた女に見知らない男が付いて来ているのだ、怪しく思うのは当然だろう

 

「李鳴海だ。訳あってクレ「私の旦那様だよ~」…よろしく頼む」

 

何事も初めが肝心、触り当らない紹介をしようとしたが、クレマンティーヌに遮られてしまった

しかも、また『旦那』だと云うか……

『守る』とは約束したが、それが人生を共に歩む一生なモノだとは思いもしなかったぞ?

第一、俺はよくてもクレマンティーヌが遊びで云っているのか、本気なのかわからない今、己が欲をクレマンティーヌにぶつけるのは却ってクレマンティーヌを傷つけてしまう

 

「貴様も訳ありと言う訳か……まぁいい、人手はあって困らん。使えなければ贄にするまでよ」

「……期待に応える働きはしよう」

 

勝手に勘違いして、従者を連れて墓地へ潜るガジットを見送りながらも『リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』の代わりに着けた『変化の指輪』を撫でた……無事に効果が発揮したようだな

拳を作る際に指輪は邪魔になる為、最低限の数しか拡張していない指輪装備数は3つ

『リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』と『変化の指輪』、それに今は無き『怠惰の指輪』が俺の本来装備するはずの指輪だ

 

「……いいわけ~?あんな奴の駒になって?」

 

カジットの姿が見えなくなるやクレマンティーヌは、不満げに顔を歪めるが、アヒル口に上目目線……ペペロン曰く『萌え』しか感じない仕草に俺は笑みを浮かべた

 

「下級アイテムで誤魔化しているとは言え、種族の判別も出来ぬ雑魚だ。……お前は虫が喚いているのを気にするのか?」

「そうね~……でも耳障りだわ」

「ふ、違いない。まぁ精々利用させて貰おう」

 

種族がら人間が下等生物にしか感じくなっている事もあるが、やはり自分より弱者の下に付くのは、いくら下等生物だとしても癪に触る………俺が目的を達した際には思う存分、潰してやろう。そう、月明かりの下、誓いを立てたのであった

 

 

 

 

オーバーロード ~俺の嫁は狂ってる件について~

 

 

 

 

「クレマンティーヌ、それとリー……ついて来い。計画を実行する為に最後の駒を取りに行くぞ」

 

ズーラーノーンに身を寄せカジットの駒使いとして過ごして数日、遂に計画は実行されるに至った。本来ならもっと早くに実行したかったモノだが、カジットが行う儀式にはそれなりの準備が必要なようで、儀式の材料、首飾りの解析等を行っていたおかげで直ぐには実行できないでいたが、カジットの言葉の通り儀式は最後のピースを残すのみになった

 

根っからの魔術師資質なカジットの体力や攫うにあって人目に付かぬよう一般的な馬車に偽装した魔術工房を馬で引きながら目的の人物が住まう町へと馬車を向ける

馬車の中ではカジットが儀式の最終調整を行っており、魔術に疎い俺とクレマンティーヌは工房から追い出され馬の引手になっていた

 

カジットの計画の最後の駒は、全てのアイテムを制限なく使用出来るタレントと呼ばれる特殊能力を持った少年が必要だとの事……

カジット曰く彼に、クレマンティーヌが盗んできた首飾りを使用させ魔力を増幅させ儀式を行うらしい。しかし――――

 

「ンフィーレア、か……歳いかぬ少年を道具に使うのは忍びないな」

 

本来なら関わる必要も犠牲になる必要もない只の一般人、それも少年を贄にしなくてはいけないのは、いくら下等生物だとしても武を嗜むものとしては気が引ける

重々しく息を吐きながらも手綱を引き、馬車を進める。

ここは、目的を果たす為に心を鬼にして望まなくてはいけないと踏ん切りをつけたというのに、隣に座るクレマンティーヌはニヤニヤしながら俺の顔を覗き込んできたのだ

 

「どうした?」

「んふふ、いや~、殺戮に関しては右に出るモノはいないダーリンにも、まだそんな心が残っているんだな~って思って」

「顔に出ていたか?でも、勘弁してくれ。……俺は心から人を殺したいと思った事は一度もないぞ」

 

嘘だ~と笑みを浮かべながら否定するクレマンティーヌを尻目に俺は恩師であり師匠の言葉を口にした

 

「我ら武道家とは、生涯探究。武を磨き己が築き上げてきた功夫を後世に伝承していく人種だ。……歴史に於いては人殺しも行ってきたが、基本的には武を磨くためであり、自身の欲求を満たすモノではない」

「ふ~ん」

 

己を高め、身を武に捧げる。そして後世に伝える事が武道家としての誇りなのだ

そして武を昇華させる事が出来る後世―――子供を殺すのは本来の武道家にとってはあってはならない事なのだろうが、この身はその『誇り』さえも腐らせてしまっている

 

「丁度いい機会だから云っておく。……俺が暴走したら止めてくれ。あの俺は、己が欲求を満たす為だけに武を振っている武道家の恥だ。いくら理性が無かったと言い訳しようが、振るうのは俺の拳に違いない。無理を承知なのは理解しているが……頼む」

 

男のプライドなど関係なしに頭を下げる。俺にとってはプライドよりも武を穢す事の方がよっぽど耐えきれない事象なのだ

俺がいきなり頭を下げた事にクレマンティーヌは、軽く驚きはしたが、直ぐに「ダーリンの頼みじゃ仕方ないな~」と笑いながら了承してくれた

 

馬車を裏路地に止め、目的の少年の住まう家まで行き、鍵が掛っているドアノブを強引に破壊して中に入った

 

「ちわー、ンフィーレア君いる~?っていないね~」

 

部屋の中には灯りも人影もなく、どうやら此方が先に到着しただけのようだった

しかし、居ないのであればそれに越した事はない。侵入するより待ち構えていた方がリスクは少なくて済む

一見するに極普通の民家だ。入り口を塞ぎ逃げ道を断てば増援を呼ばれる事はない

クレマンティーヌとカジットに部屋の奥で待機してもらい俺は、玄関先に気配を消して待ち構えた………そして―――

 

「来るぞ……数は5だ」

 

気配を闇と同化し、家の中に入って来た5人組を観察する

先頭を歩く眼を隠した髪型の少年が、情報によると目的の人物。後に続く初心者装備で身を固めた如何にも冒険者な4人は、おそらく……護衛?いや、一介のタレントに護衛が付くとは思えない。何らかの理由で同伴しているモノ達だろう……運が無かったな……

 

「おばあちゃんは、いな「はーい、おかえりなさい」っ!?」

 

不思議そうに辺りを見渡していた少年であったが、家中からいきなりクレマンティーヌが姿を現した事に驚き後ずさる

 

「ずーっと待ってたんだから~、君を攫いに来たんだ~、どんなマジックアイテムでも使えるっていう君のタレントで、アンデットの大群をサモンして貰いたくて~」

 

玄関先で待機していた冒険者達は、異妙な騒ぎを嗅ぎつけたのか少年の元へ向かい、クレマンティーヌの姿を目視すると、自分の武器を構え臨機に備え始めるが―――危険予知までの行動、そして退路を断たれた事に気づいていない事を顧みるに雑魚だな

 

俺は、気配を消し冒険者の後ろへと回り込んだ

 

「お姉さんのおねがい。逃げられたら困っちゃうな~?」

「遊び過ぎた」

「カジット、目撃者はどうする」

「「「「ッ!?」」」」

「始末しろ」

 

いつの間にか後ろへと回り込まれていた事に、驚き武器を構えようとするが……遅い

俺は、懐から4枚の札を取り出し冒険者たちの額へと貼り付けていった

 

効果は直ぐに現れ、貼り付けられた傍から冒険者達は、力なく石像の様に硬直し、佇んでいるだけの肉塊へと変わった

 

「目的の為だ。すまない」

 

貼り付けた札は『フジュツシ』のスキルにある『コウソクフダ』

種族が『キョンシー』になった時にノリで習得したが、思いのほか利便が利いてLVを上げていたのだが、まさかここで使うとは思いもしなかった

 

指の一本も動かせず何が起きたのか困惑し、苦しそうに顔を歪める4人を尻目にクレマンティーヌは、手に持ったスティレットを揺らし始めた

 

「ん~ふふふ……最近、美味しいのがいなかったから迷っちゃうな~?貴方はゴツいから固そうだし、貴方はあまりそそらないな~」

「美味しそう?……あぁ、そういう事か、戦闘狂め。死体はアンデットに変えてやる。……好きにしろ」

 

クレマンティーヌの言葉に首を傾げたカジットであったが、クレマンティーヌのこれまでの行動から殺戮を楽しむ事の彼女なりの隠語だと思ったのだろう……しかし、俺から云わせて貰えば言葉の通りなのだけどな

 

「はぁ~い。じゃぁ……彼をメインで食べてからデザートに彼を食べよ。固そうなのとそそらない方はダーリンにあげるわ」

「……いらん」

 

スティレットの示した先には、弓使いの冒険者と幼い冒険者

弓使いは兎も角、幼い冒険者の命を摘むのは頂けない

クレマンティーヌを止めようと声を掛けようとするが、カジットがこの場に居る為、声を掛ける事が出来ない………割り切るしかないか

 

「ぐぁぁぁ!」

 

男の野太い声が部屋の中に響いた。見ればスティレットが男の腕を裂いていた

傷が広がるにつれて男の苦痛の悲鳴が大きくなるが、これほど大声を出されては周りに気づかれるのでは?と思いカジットに視線を向ければ魔法で音を遮断してあるとありがたくもない言葉を貰ってしまった

 

クレマンティーヌの食欲は抑えきれず、ガジットは、彼女の行為を黙認している。もはや止める事は出来ないとタメ息を零し、せめて幼い冒険者だけは安らかに命を摘もうとして一歩踏み出したが、クレマンティーヌが、殺すには関係なさそうなフォークを取り出したので足を止めてしまった

 

「クレマンティーヌ、フォークで何をするつもりだ?」

「うん?あぁ、ダーリンが前に云っていたじゃない?筋肉って云うのは筋肉繊維が束になったモノだって……だから~パスタみたいに巻けるかなぁ~って」

 

いや、だから巻くという発想は出ないと思うんだけどな?

確かにクレマンティーヌには、筋肉の仕組みとかは話したが、妙に首を傾げていたから理解できていないと思っていたが、ここで人体解剖を行うとは……その発想は無かった

 

一方、解剖対象に選ばれた男は顔を引き攣られ眼で先程、クレマンティーヌによって裂かれた腕に視線を送った後、ガタガタと震え始めた

 

「それじゃ~まっきま~す!」

「―――――ッ!」

 

声にならない叫びとはこの事だな

裂かれた傷口にフォークを刺されるだけでも激痛が走るというのに追い打ちをかけるように巻かれては想像も付かない痛みを味わう事になるだろう

 

溢れる血など気にもせずにフォークを回していくクレマンティーネ

時たま、強引に引っ張られた為に断切した繊維の音は、彼の悲鳴で掻き消され人外の身体を持つ俺の耳にしか聞こえてこなかった

 

上手く巻けたのかは知らないが、クレマンティーヌはフォークを引き抜く

最後にブチブチと千切れる音と共にフォークには血に染まった繊維が窺えた

 

「へぇ~…本当に巻き取れるんだ~……美味しそう」

「ッ!き、貴様、人食か!?」

 

そしてクレマンティーヌは、血に染まったそれを口に運び捕食した

流石のカジットも人食をするとは思ってもいなかった様で、顔を引き攣らせクレマンティーヌの行動に驚きを現していた

 

「ん~…やっぱり、パスタじゃなくて肉って感じかな~?……ダーリンも食べる?」

「いや「おい!さっさと殺せ!時間が押しているんだ!」……」

 

どんなに身を落そうと生きた人間のソレを食べるクレマンティーヌの行いに耐えきれなかったカジットは声を上げてクレマンティーヌに指示を飛ばした

 

「えぇ~まだ一口しか食べてないし~デザートも!というか……なに私に命令してんのよ」

「ふ、ふん!拾ってやった恩を忘れたかクレンティアの片割れめ!」

「……あぁ?」

 

一触即発

 

久方ぶりの食事を止められたクレマンティーヌは『キョンシー』としての狂化も相まってカジットに不満をぶつけカジットも舐められたくないのか強気に喧嘩を売っていた

正直、味方をするのならクレマンティーヌ一択なのだが、今は加担する事はよそう

俺は、クレマンティーヌの気がずれている内にデザートの方へと歩みを進めた

 

「すまないが、死んでくれ。……彼女に殺されるよりかはマシだろう」

「ッ!」

 

声も出せずに涙を流すデザートを横目に俺は、高ぶる気持ちを押さえながら拳を作った

 

 

 

 

……いや、なんで高ぶってんだよオレ

俺には、殺人の趣味も無ければショタの兆しも無いというのに、こんな幼い冒険者に興奮するなんて変態じゃないか………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ッ!まさか!

 

「すまない!」

「ッ!」

 

俺は、握り込んだ拳を解き、彼の…いや、彼女の服を切り裂いた

そこには、僅かに膨らんだ胸部を晒で押さえつけている女体が現れた

 

「ッ!クレマンティーヌ!コイツは女だ!」

「え!?マジ?」

「糞がっ!」

 

今までは男だと思っていたから然程、暴走する兆しは少なかったが、彼女を女だと意識した瞬間、溢れる程の衝動が俺に襲いかかって来た

 

「撤収するぞ!」

「ッ!りょーかい!」

「な、なにを言っている!速く始末「黙れ!」ッ!?」

 

押さえていなければ、今にも喰らいつきそうになる本能を辛うじて残る理性で押し込み、クレマンティーヌに離脱するように伝える。

クレマンティーヌも先程、俺が伝えた事を汲んでくれたのか少年を抱えて撤収の準備にかかるが、カジットが制止の声を上げてくる

精神的にも余裕がない俺は、『キョンシー』の本能が赴くままカジットに〈絶望のオーラⅢ〉を叩き付けてしまった

案の上、Ⅰですら立つのがやっとだというのにⅡを飛ばしてⅢのオーラを受けたカジットはその場に泡を吹いて倒れた

 

操你妈!!(くそったれ)穿着手足!(足手まといが)クレマンティーヌ!先に行け!俺はゴミ虫を運ぶ!」

「えぇ、わかったわ」

 

地に倒れるカジットの片足を掴み引き摺りながら馬車に向った俺達は、目撃者を残してしまったが、なんとか目的を達成したのであった

 

 

END

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