オーバーロード ~俺の嫁は狂ってる件について~ 作:誤字脱字
休みが欲しいです、執筆時間が欲しいです
亀更新ですみません……
「…ねぇ、うさちゃん。ホントーに私もここで見るの?」
これから始まる李鳴海とシャルティアの死合を見守るにあたり、ナザリックで生活する上でも守護者との顔合わせが必須だとアインズが云うものだから、
「クレマンティーヌさんの気持ちも判りますが、リーさんとシャルティアの戦域に入るのは危険すぎます。いざとなったらアウラとマーレが対処してくれますけど……」
「いや、違くて……ここの方が恐ろしいんですけど~?」
ボヤキながらも周りを見渡す
『神々しい』の一言では表現できない程の豪華な室内は百歩譲ってまだ理解できる。どれほどの価値があるか見当もつかない装飾が施された家具もまだ大丈夫。だけど……白いドレスを身に纏ったサキュバス、スーツを着た悪魔、その巨体から恐怖と威厳を感じさせる蟲王。彼ら彼女の存在だけは一生命として黙認する事ができなかった
自分の命程度、瞬時に奪う事が出来る絶対強者の存在にクレマンティーヌは生きた心地がしなかった。しかも、追い打ちを掛ける様にアインズの事を『うさちゃん』と普段通りに呼んだ瞬間には恐ろしい程の殺気が三者から飛んできたのだ
今からでも遅くない、引き換えし
「申し訳ありません、アインズ様。少しお時間を頂いても構わないでしょうか?」
「かまわん」
「ありがとうございます。では……そこの君、いま自分がいる場所が何処だかお分かりかね?ここは、アインズ様にリー様の死合を拝見する事が許された者だけが入室できる部屋なのですよ?ナザリックに席を置く者としてリー様のお姿を拝見したいという気持ちは判りますが、直ちに退出しなさい。それと…アインズ様に対し『兎』など無礼にも程があります」
「え、あ、え~と……」
口調は優しいモノで在ったが、煌めく眼光からは無礼者に対する明確な殺気が伴っており、殺気を叩きつけられたクレマンティーヌは、アインズに助けを求めようとしたが思わぬ所から救いの手が伸びて来たのだ
「ナザリック一の切れ者とも呼ばれる貴方が随分と視野が狭くなったものですね?」
「……どういう意味かね、アルベド?」
クスリと笑いをこぼしたアルベドは、視線をアインズに送り発言の許可を貰うと静かにクレマンティーヌの横に立ち並び肩に手を置いた
「彼女の種族は『キョンシー』ですわ。」
「ッ!まさか!」
(え、それだけ!?)
明確な説明がされると思っていた矢先、出た言葉は種族のみ
あまりにも内容のない理由にクレマンティーヌは、反射的にアインズに伝言を飛ばした
「(彼女達は、ナザリックの頭脳達とも呼べる存在ですから納得してください。私はそうしてます)……どうやら私が説明する必要はないようだな」
「「はっ!」」
先程とは一転、2人からの敵意や殺気は一気に消え失せ、特にデミウルゴスからは後悔の念、何故気づかなかったのだと歯を喰い縛ってもいた
「2人ダケデ納得サレテモ困ル。説明ヲ求メル」
しかし、一人置いて行かれたコキュートスだけが理解出来なくデミウルゴスに答えを求めた
「君がわからないのも無理もないさ、私も気付くのに遅れ恥ずかしい思いをしたよ。……アルベドが言う様に彼女の種族は『キョンシー』。アンデット系の種族であり、ナザリックに居ても何も不思議ではない種族だが………コキュートス、君はナザリック内で『キョンシー』に会った事があるかい?」
「ナイ。『キョンシー』ハアンデットノ中デモ特殊ナ種族。『武道家』ヲ極メ『札術』サエモ極メタ『人間』ガ身ヲ堕トシ習得ノ出来ルモノダ」
「そう、一度は『人間』でなければ習得できない種族。その特質性からナザリックには一人を除いて『キョンシー』の種族は存在しない。そう……至高の御方であるリー様を除いて!ならば考えられる答えは一つ。……彼女はリー様が御創りに成られた新たな眷属である「違うぞ、彼女はリーさんの嫁だ」な、な、なんと!」
デミウルゴスだけではない、この場にいる守護者全員に衝撃が走った
『嫁』…すなわち、伴侶。至高の御方に仕える守護者にとって至高の御方の嫁と云うポジションに付く彼女は、ナザリックの未来を照らす希望とも云える存在なのだ
もはやデミウルゴスは思考が止まり、アルベドはクレマンティーヌのポジションを自身とアインズに置き換えて悶え、コキュートスは完全にトリップした
「どうした、座らないのか?」
驚きの事実に取り乱す守護者を尻目にアインズはクレマンティーヌにも腰を下ろす様に促した
「……いや~、うさ――アインズ様は本当にここの支配者なんだなぁ~って」
「うさちゃんで構いませんよ?……さぁ、始まりますよ」
宙に浮かぶ鏡にはスポイトランスを携えたシャルティアに拳を鳴らしながら近づく武道家の姿が映し出されていた
「ッ!?李様、無用意に近づくなど!?」
衝撃の事実から逸早く復活したのは、やはりデミウルゴスであり、シャルティアに無防備で近づくリーの安否を心配して声をあげた。が、直ぐにアインズはデミウルゴスの心配事を払拭させた
「気配遮断だ」
「なん…ですと?」
「お前達は、相手が敵対行動を取っているかは、どのように判断する?」
アインズの問に、三人の中でも前衛職のコキュートスが冷気が籠った吐息を吐きながら応えた
「武器ヲ向ケル、間合イ二入ルナド色々アリマスガ一番ハ……敵意デショウカ?」
「あぁ、リーさんは相手に敵意を感じさせぬように気配を完全に遮断している……らしい」
最後の言葉は守護者には聞こえないようにこぼしたが、アインズは武道の心得もましてや前衛職でもない。リーから聞いた事をそのまま口にしただけであり、明確な証拠はありもしない。今度はアインズが助けを求める様に視線をクレマンティーヌに送れば彼女もアインズの要望を応えるべく口を開いた
「そだね~。修羅場を潜れば潜るほど気配に敏感になるし、勘の良い奴なら気配だけで相手が次にどう動くか判るね?上等な剣士とかは結局、相手の気配をどれだけ読み切れるかで勝敗が見えて来るモノよ。……ダーリンは、気配を消す事で敵意も殺意も隠して此方の出方を読めなくさせているみたいね」
クレマンティーヌの非科学的な説明に頷くのは武人であるコキュートスだけであり、他の面々は首を傾げた。
「しかし、そんなスキルなど聞いた事などありません。……李様がこの地で身に着けた武技と呼ばれるスキルの一種だとしても既に完成された李様が習得できるとは思えません」
暗殺者に似たようなスキルはありますが…と言葉を漏らすデミウルゴスに対しアインズは軽く笑いデミウルゴスの意見を否定した
「認識が甘いぞ、デミウルゴス……リーさんは、『人生常に功夫』と云う程の脳き……武芸者だ。彼にとって『限界』と云うモノは存在しない」
極致に存在する至高の御方……しかし、その成長を留まる事を知らない
頂点だと思っていた存在には更なる成長の可能性があると諭されれば驚きはあるモノの『至高の御方』ならば何処か納得が行くと頷くデミウルゴスは視線を鏡へと戻した。そして―――――
「始まるぞ……アインズ・ウール・ゴウン至高の一人、世界に認められた男の戦いが!」
僵尸VS吸血鬼―――第一回異種格闘技戦の火蓋が落とされたのであった
◆
オーバーロード ~俺と鰻がバトった件について~
◆
「シャルティア・ブラットフォールン……」
目の前に佇むのは我が盟友の子……しかし、その瞳には意思が感じられなく只の人形のように佇んでいるだけであった
「ペペは、お前にあらゆる最強の要素を注ぎ込んだと云っていた。……アルベドもそうであった様にお前も己の意志を持ち、アインズを支えていると思っていたのだが――――いや、そもそもの原因はワールドアイテムであり、簡易な行動を取らせた俺達だったな」
指を鳴らしながらも気配を断って近づく
本来ならこんなに拓けた場所で気配を断っても仕方がないのだが、正気を失っている相手には様子見としては調度良かろう
「攻撃行動を取るまで反撃しない……まさにNPCらしい」
彼女の攻撃範囲に入ったというのに反応はなく、真っ直ぐに手を伸ばしシャルティアの頬に手を当てながら顔を上げさせて見れば、やはり彼女の瞳には意思が無く悲痛な気持ちになってしまう
頬を一撫でし、俺は無心のまま拳を構えた
「出来るのであればペペの愛の結晶をNPCではなく、ありのままシャルティアで迎えて欲しかったが、暫くはお預けだな?…………崩拳!!!!」
「ッ!??」
岩を砕くような爆音と舞い上がる砂煙
放った拳の衝撃が地を砕き風を舞い上げ、直撃したシャルティアを砂煙を引き連れながら吹き飛ばした。……が拳から伝わっている違和感に顔を歪めた
「……
初撃で終わるに越した事はないが、相手はナザリック領域守護者において最強。ガチビルドとスキルで構成された最高戦力。……引き連れていた砂煙が中にいるモノの翼によって一瞬にして晴らされた
真っ赤な鎧を身に纏い、翼を広げスポイトランスと呼ばれる神話級の武器を携えた真祖の吸血鬼が姿を現したのだ
「これはこれは李様!ご帰還を心からお祝いしますわ!」
「謝謝……俺からの帰還祝いだが、後ろに飛んだな?」
拳があたった瞬間に感じた違和感―――鉄の硬さと軽さ……槍を盾にしながら僅かに後ろに飛んで衝撃を上手く薙いだようだ
「えぇ、一瞬にして命が散りそうな程の恐怖が体全身を突き抜けましたわ!どうすればその様な威力が出るのか不思議でならない程に!」
「人体は水風船と同じだ。衝撃を人体に直接流す技術は他説あるが……功夫。この一言に限る」
「さすが……『脳筋プレイヤー』とペロロンチーノ様が称える御方ですわ!」
「……それは褒めていないからな?」
シャルティアが見せた技術はゲーム内には存在しない技法……おそらく出所は、ペペからだろうが、ゲーム内の行動しかとらないと云う概念は捨て置いた方が良いみたいだ。それに、功夫するまでも無く話を聞いただけで実践に使用出来るまで昇華するシャルティアの技量も上方修正した方が良いみたいだ
想像以上の強敵との邂逅に自然と頬が上がってしまった
……アインズには悪いが、機械染みた行動しかとらない相手とのつまらない戦いになると思っていたが、どうやら楽しめそうだ
「構えろ、シャルティア・ブラッドフォールン。アインズ・ウール・ゴウンが一人、『幽玄対極』李鳴海がお前を粛清しよう」
「粛清……あれ?私はなんで至高の御方に敵対を…?いや、違う。攻撃されたから…よく分かりませんが攻撃されたからには、李様を滅ぼす必要がありますねぇ?」
アインズ曰く今のシャルティアは指示待ち状態であり、剣を向けるモノに対し防衛として反撃する―――――もし『傾城傾国』の装備者が今の攻防を見ている筈なら反撃やら闘争など指示を出す筈だが、その様子は見られない。即ち近くにシャルティアを陥れた存在はいないと言う事だ
「術者が戻る前に片付けるべきか…………シャルティア!忘れていないと思うがあえて掲げよう!アインズ・ウール・ゴウンに敗北はない!」
「それは恐ろしいぃぃぃい!」
「来ッ!」
スポイトランスを俺に構え真っ直ぐに突撃してくるシャルティア
ランスの性質上、その行動は単純な行動であるが、使い手が達人級ならば簡易な攻撃は究極の一撃に昇華される!一般人なら身体に風穴を開ける事になるのだろうな?……一般人なら、な!
「府ッ!」
「ッ!?」
真っ直ぐに伸ばされたランスに対し俺は腕を回し突撃の威力を流しながらシャルティアの突撃を無効化し受け流した
避けるのではなく、無効化する。中国武術の歴史において奥義として名を残した技法『化勁』。相手の流れに乗り受け流すこの技法は、追撃にこそ真髄を発揮する!
「破ッ!」
「ッ!」
突撃を流されたシャルティアは、俺に後頭部を曝す結果となり、俺は流れに身を任せながら肘をシャルティアの後頭部に叩きこんだ
一撃で沈んでも可笑しくない衝撃がシャルティアに襲い掛かった筈だが、彼女もLV100の強者。無防備で衝撃を受けながらも踏みとどまり振り向き様にランスを向けてくるが………いかんせん、この間合いは俺のモノだ!
突き立ててきたランスを脇で挟み込み、固定する。伸ばされた腕は自然と脇腹を曝け出す結果となり、俺はシャルティアの脇を穿った
「っく!」
「
後頭部に引き続き、脇に重い一撃を受けたシャルティアは一旦距離を置こうと後退しようとするが、そんな事させるつもりは微塵も無い!
デカい図体を極限まで縮め、シャルティアの懐に込むと両手で顎をかち上げた
『龍頭』とも云える技であり、顎に衝撃を与え脳を揺らす技だが、それだけで終わる筈がない。そもそも、中国武術の技の多くは一撃で敵を仕留める程の威力は込められていない。中国武術の神髄は、中身に如何に衝撃を伝えるかであり、一撃の重さではなく連撃が本質なのだ
顎に始まり、脇、溝、金的と人体の急所に衝撃を伝え揺らしていく
生身の人間ならば既に倒れても可笑しくないほどの衝撃を受けたシャルティアの中身は荒れているだろう。だが、手加減はしない。俺はシャルティアにトドメを刺すとばかりに心臓の箇所に拳を突き伸ばした
「終わりだ、三歩必殺!!!」
「ッぅ!!え、エインヘリヤル!!」
「ッ!」
三歩必殺
俺が中国武術を更に昇華させるために、他武術を学んでいる際に『るし☆ふぁー』に再現してほしいと云われた技。なんでも、初見殺しであり、三段構え、画面が真っ白になる……らしいが、どないせいと?
武術で再現するには不可能だと伝えたのだが、俺の功夫はその程度なのかと煽られムキになって創り上げたのが、初撃が防がれても心臓・顎、鳩尾の3か所の急所に繋げる事が出来る俺流連撃『三歩必殺』である
顎に向けた拳を防ごうにも拳は回転を伴っているので威力は落ちぬまま心臓を穿ちハートブレイクを引き起こす。だからと云って心臓に向けた拳を防ごうにも拳は顎を貫く
心臓と顎を守り通したとしても三歩目で鳩尾を穿つ
『夫婦手』と呼ばれる前手も後手も攻撃にも防御にも使う現代空手の概念に基づき創り上げたこの技は、思いのほか使い勝手が良い技になったので試合にも多用していたが――――
「まさか身代わりを立てて防ぐか……この技で沈まなかったのはお前が初めてだ」
「それは光栄ですわ。でも李様に接近戦を仕掛けるのは愚策だと理解しましたわ……少し趣向を変えましょう」
必殺の一撃にエインヘリヤルは消滅したが、空に飛び距離を取ったシャルティアは、手を掲げ光の槍が作り出した
「清浄投擲槍!」
「…そうなるよな」
第二ラウンドの鐘は、シャルティアの手によって鳴らされるのであった
◆
「流石ハ『武』ノ極致トヨバレル李様。見事ナ連撃ダ」
「そだね~、ダーリンって技の『入り』が早いからお終いだと思ったけど……なにあれ?」
「エインヘリヤル……シャルティアのスキルの一つでHPを消費し自身の分身を作るスキルだ。あの流れを断ち切るには多少のリスクを犯してでも離脱する必要があったみたいだな」
鏡に映されているのは上空からリーに向い清浄投擲槍を撃ち込むシャルティアの姿
高威力であり、リーさんの種族弱点を付く強力な攻撃だが決して連続で使う事はせずに他の遠距離魔法を交えてリーさんに距離を詰めさせないように戦っていた
「やっぱり、距離を取るよねぇ~?」
「遠距離戦は、リーさんにとっては鬼門だ。リーさんとリアルでも交流があったペロロンチーノさんがシャルティアにリーさんの弱点を教えていても不思議ではない」
「リアル?………例え李様が遠距離攻撃を不得手だとされても目暗ましに使用する事が出来るのではないでしょうか?」
確かに魔法が苦手だろうとシャルティアの集中力を削ぐ為なら手段の一つとして有効だ
でも、リーさんは混本的に『苦手』の意味が違うからなぁ~
「……李さんは距離を問わず『魔法攻撃』を習得していない」
「「「「ッ!」」」」
連れ添っていたクレマンティーヌさんも守護者と同じく驚いている
確かに一芸特化のプレイヤーはユグドラシルにも多くいたけどリーさんのそれはそれを遥かに超える
「種族的には成長の過程で三位階や五位階の魔法を覚えてきただろう。しかし、彼は課金アイテムを使用してまでも自身に『魔法攻撃』と云う手段を消したのだ」
憶えたとしても使わなければ良いだけなのに、スキル欄に『魔法攻撃』の4文字が書いてあるだけで、本来ならバットスキルを消去する為に使われる一個1000円もする課金アイテムを使ってでもスキル欄から『魔法攻撃』を消していた
『フジュツシ』であり、カンストプレイヤーでもあるリーさんが憶えたであろう『魔法攻撃』………最低でも数十万円は超えていたんじゃないかな?
「彼の生き方が魔法攻撃と云う選択肢を選ばせなかったのだ。……フジュツシとしてのスキルもステータス強化や妨害と云ったモノで攻撃に使用出来るモノは習得していない」
「……畏れ多くも、李様の『生き方』といかなモノなのでしょうか?」
理解できないとばかりに首を傾げながら訪ねてくるアルベド
至高と拝める存在の意外な弱点の理由が彼の生き方にあると云われれば不思議に思うのも頷けるが、おそらく彼の生き方を理解できるのは同じ武人であるコキュートスだけだろう
「彼は根っからの武道家と言う事だ」
◆
「良く避けますわね?でも、まだ私の清浄投擲槍は限界に達していませんわ!」
「ぐっ!」
3mもの長大な戦神槍が、ガードしていた腕を貫きゴッソリとHPを削っていく
現実とは違い、自由に動き回る槍を捌くのは至難の業であり、初見の俺には功夫が足りない!
「それに…魔法攻撃は何も清浄投擲槍だけではありませんわ!エクスプローション!」
「ッ!」
だからと云って清浄投擲槍の軌道を見極めようと気を取られていれば炎属性の魔法の集中砲火を受けてしまう。……まったく、キョンシーの弱点である神聖属性と炎属性の魔法を中心に攻撃してくるのだから堪ったモノではない!
「ほらほら!もっと上手く避けなくては死んでしまいますよ?清浄投擲槍ッ!」
「ぬっ!」
それにこの槍は、MPを消費することで必中効果も付与でき見極めたとしても必ず当たってしまう
……予測不可能な攻撃を捌く行為自体は、第六感を鍛えられる良き鍛錬だと思うが、今は死合の最中……またの機会にして欲しいモノだ!
「グッ!」
必中効果が付与された清浄投擲槍は、回避した瞬間に方向を変え俺の脚へと突き刺さった
縫い付けられた足を強引に動かし槍を引き抜き、動きに支障が出るか確認するが、特に問題はなく痛みだけを感じるだけであった……つくづくこういう所はゲームなのだな
「鬼ごっこもお終いにしましょうか?」
しかし、足に痛みを感じている状況で動き回る事など出来ず、足を止めてしまったのが最後……シャルティアは手に清浄投擲槍を待機させながらあざ笑うかのように俺の目前まで降りて来たのだ
「……この年でごっこ遊びはやりたくないが、お前も随分とMPが減ったのではないか?」
「ご心配なく、李様のHPを削る程度のMPはまだありますわ」
此方のHPは、5割弱……対してシャルティアのHPは最初の連撃で削ったとは云え5割強は残っているだろうから五分五分。
MPに関しては俺が8割で、シャルティアは……どのくらいだ?
「マナエッセンス!……と粋がって使ってみたが俺には知識がないのでな?そのオーラがどのくらいのMPを残しているのか理解出来ん」
「あら?ではライフエッセンスも理解できないのですか?」
「……あぁ、敵に関しては殴っていればいずれ殺せる位にしか考えていない。もとより頭を使って戦う事は好まないのでな?」
「……流石『脳筋プレイヤー』ですわ」
「……お前、意味わかっているだろ?」
どちらにせよ流れはアチラに流れているのは確かだ
このまま戦闘を続けていても攻めに攻めきれない……ここは流れを変えるべく『ナザリックの李鳴海』で戦う事にするか……
「我!今一時期武道家を捨て敵に向う!師よ!お許しください!」
「ッ!?」
両手を撃ち慣らしこの地に存在しない師匠に謝罪し、俺はストレージから武器を取り出した
武器を取り出した事により、シャルティアに警戒されると思っていたのだが、俺の考えとは裏腹にシャルティアは眼を大きく見開き驚きを現しているだけであった
「…なにを驚いている」
「武道家であられる李様が武器を手にするとは驚きと落胆で……しかも、そんな無骨で大きいだけの槍で私の槍と戦うなど云いませんよね?」
「確かに比べ合うには魅力はない無骨な槍……だが、信念はいつ如何なる時も拳に宿る!そして武器も拳の一部となるのだ!」
「ならばその槍は「こう使うのだ!!」ッ!?」
豪―――ッ!
シャルティアは、一瞬なにが起きたのか理解できなかった
突然、黒い点が自分目掛けて有り得ないスピードで迫って来たので不浄化衝撃盾で防ごうとしたが、次の瞬間自分の左腕が無くなり夥しい血が傷口から流れ出していたのだ
いったい何が?いったい何が盾を貫通し自分の腕を引き千切ったのか?
突然迫って来た黒点の正体を確認するべく、敵前だというのに黒点が着弾した場所に目を向けて―――
「ッ!?」
―――――驚きを越えて恐怖を身に味わった
黒点の正体、自身の左腕を喰らいついた正体は……無骨な槍だった
なんのエンチャントも付加能力もない只の丈夫で堅いだけの槍、そしてそれは先程まで至高の御方が手に持っていた槍と酷似していた
恐る恐る槍から視線を外し、至高の御方に視線を戻せば……何かを投げた後の余韻が残る姿勢を取っており、手から煙が上がっていた
そして理解してしまった
あの槍は、あの御方が投擲したモノだと………
「な、な、な」
「何を呆けている。……弾はまだあるぞ?」
「ッ!?」
宣言するやいなや宙から夥しい数の武器が大地に突き立てられた
大剣や大槍、更には大盾。巨大な武器が大地に突き立てられ武器の針山となった戦場は云わば一種の魔境。
なぜその様な形なのか?なぜ突き立てられているのか?………魔境の主しか理解できず、しかしながら魔境の一端を肌身で感じたシャルティアはこれから起こり得る恐怖に氷付いた
「いくぞ!」
「ッ!」
横に刺さった大剣を引き抜くと構える事もせずに彼は、自分目掛けて投げ飛ばしてくる
ただえさえ『武』の頂点とも云える御人が付加能力で更に強化し、繰り出してくる投擲はもはや死神が迫ってくるようにしか感じられない
スポイトランスを盾に防ごうにも不浄化衝撃盾で防ぎ切れない一撃を武器を盾にしただけで防ぎ切れるとは絶対にありえない
結果は、先と同じく右手を持っていかれる。運よく防ぎ切れてもスポイトランスは武器としての役目を果たす事は出来なくなるだろう
自然と取れる行動は限られ空へと退避するしかなかったが――――
「甘いぞ!」
「なっ!」
―――――使い手の技量を見誤っていた
彼は、投げた武器を足場に自分より更に上空へと昇り上がると足場にした武器を手に掴み、身体を回転させ勢いを殺さずに武器を自分へ向けて投げ飛ばしてきたのだ
…………ありえない!
投げた武器を足場にする事も投擲した高速の凶弾に追いつく事も、ましてやそれを再び弾として使用する事も全てが常識外れだった
初弾を避けようにも避けた先で御方が待ち構え追撃を放ってくる。それが1つではなく2つ、3つと増えていけば冷静な判断など既に出来なくなっていた
「そ、その戦い方は武道家としてどうかとッ!思いますわ!」
「確かに武器を投げる戦い方は武道家として邪道にはいるだろう。しかし、今の俺は『ナザリックのリー・ミンハイ』としてここにいる。貴様を倒す為ならどんな手段でも使おう……それよりもそこにいていいのか?」
「ッ!」
変則的な追撃に精神的にも追い詰められていたシャルティアは、気付くのが遅れてしまった
自身が今いるのが、四方自由に回避できる上空ではなく、あと少しで大地に足が付くほどの低空にいることを………
しかし、時すでに遅し
―――上空から大量の武器が降り注ぎ、シャルティアを囲い逃げ道を塞いだ
左右を見渡しても武器に囲まれ逃げ出せず、下は大地が陣取り動く事もできない、ならば再び空へ逃げ様と翼を広げようとしたが……
「ッ!」
目視出来る程の力の奔流をその脚に宿した至高の御方が此方に迫って来たのだ。そして―――
「
「ッ!き、キャァァァアァァァァぁぁ…!」
シャルティアを中心に光の柱が生み出されたのであった
END
次回
李『やったか!?』
も「ちょ!?リーさん!それって!!!」