オーバーロード ~俺の嫁は狂ってる件について~ 作:誤字脱字
「「「「………」」」
「ぷぷぷ、あんな威力で武器を投げられちゃシャルティアちゃんも流石に参っちゃうよね~?さっすがダーリン、常識外れもいいところだよ」
先程、至高の一人『李鳴海』が見せた物理法則なにそれ美味しいの?と云わんばかりの戦闘に一人、腹を抱えて笑うクレマンティーヌを除き、ナザリックの面々は驚愕した面持ちで事を成した存在を見つめていた
「……ユグドラシルで見た事も聞いた事もないスキルでしたが、あれはこの世界の武技と呼ばれる技なのでしょうか?」
他の守護者よりもいち早く驚愕から立ち直ったデミウルゴスが目の辺りにした光景を疑問に思いモモンガに伺いを立てるが、守護者と同じく驚愕を露わにリアルで顎の骨を落していたモモンガは取り急ぎ顎を元に戻し、咳払い一つ威厳を整えるとクレマンティーヌを一見したのちに口を開いた
「……いや、あれはリーさんがこの世界で編み出した技だろう。身体強化と投擲術のスキルを複合的に使用した、言うなれば『ナイフ投げ』の規模が大きくなったようなモノだ」
クレマンティーヌの反応からこの世界の武技ではないと判断し、李さんのスキル構成から検討が付くモノを憶測で伝えたが、おそらく想像通りなのだろう
「……スキルの複合使用。さすが至高の御方です。では最後の技も?」
「あぁ、そうだ」
あれはわかるとばかりにモモンガは大きく頷いた
脳裏に浮かぶのはリアルで見たリーさんの試合の数々。その中に先程の動きと酷似した技をフィニッシュブローとして使っているのを何度かテレビで見た事があるのだ………流石に地形を変化させるほどの威力は要していなかったが、彼の得意技とも呼べる技であったのだ
「アルベド、各守護者を宝物殿へ集めろ。シャルティアの蘇生を行う」
「はっ!」
鏡に映るシャルティアが光の粒子となって消えていくのを確認したモモンガは、もしシャルティアの洗脳が解けていない時の保険の為にも守護者を宝物殿に集め立ち会うように指示を出した。
そして、タイミングを見計ったかのようにこの戦いの立役者から伝言が届いたのだった
(モモ、終わったぞ)
(はい、すみません。嫌な役目を引き受けて貰って……)
(気にするな。ぺぺも我が子を好きに使われるより肯と答えていただろう)
(そうだと思いたいッ!!リーさん後!)
(なにッ!?)
俺の呼び声にリーさんは素早く臨戦態勢を取ったが、目の前で起きている現象に動く事が出来ないでいた。唐突に散って滅したと思われた粒子が逆再生の様に再び集まりだし、一つの形を作りだし、そして戦闘前となんら変わらない姿のシャルティアを創り上げたのであった
「蘇生アイテムだと!?(ペペロンチーノさん、どんだけだよ!)」
その現象に心当たりがあったモモンガは直ぐに原因を突き止める事が出来たのだが、ぺロロンチーノのシャルティア愛は、まさか完全回復の蘇生アイテムを密かに持たせるまでとは想像もしていなかった
直ぐに李鳴海のHPを確認し、アウラとマーレに第三者の存在を確認するように念話を飛ばした
「アインズ様!私を増援として行く許可をください!」
「……デミウルゴス」
「いくら至高の御方であられる李様であっても万全のシャルティアとの連戦は雲行きが怪しくなります!」
「………」
「アインズ様!ごけ「うっさいわね~、黙ってみていなさいよ」ッ!貴様ッ!」
自身の主である至高の存在の危機にデミウルゴスは声を上げてモモンガに救援の許可を求めるが思いもよらぬ人物からの横槍に『焦り』は『怒り』と変わり矛先を向けた
「李様の奥方となられるお方だと云うのに貴女は心配ではないのですか!」
「はぁ?心配にきまってんじゃん?でも、ここで行ったらアンタ……ダーリンに殺されるよ?」
「なっ!なにも知らない雑「その先は云ってはいけないわ、デミウルゴス」ッ!アルベド!」
幾ら至高の御方の伴侶とはいえ、アインズ・ウル・ゴーンにおいては新参者でしかないクレマンティーヌの云い様に眼鏡の奥に潜むダイヤモンドの瞳は輝きを増し、大事に思うからこそ湧き上がる暴言が口を過ぎようとした瞬間、アルベドが口を挟む事によって阻止される事になった
吐いた唾は戻らない
アルベドの介入により冷静に戻ったデミウルゴスは先程まで自分が崖の淵を歩いて来た事に気づき己の過ちを止めてくれた同僚に感謝すれど、想いは変わらなかった
「止めてくれた事には感謝するよアルベド。しかし!」
「言いたい事は判るわ。でも……李様は私に『武』を見せて頂けるとおっしゃっていたわ。ならば、私達はただ李様の『武』を見とどける事が成すべき事なのじゃないのかしら?」
「確かに李様が『見とどけろ』と仰ったのであれば私に異存はありません。しかし、
「それは……」
デミウルゴスの言い分に私の応える質問でないとモモンガに視線を移すアルベド
アルベドの意図に気づいたモモンガも頷き口を開いた
「デミウルゴス、お前の気持ちは理解できる」
「では!「しかし」ッ!」
許可が降りたと思い至急、リーを
「お前の言い分……私には、リーさんが自分の足で帰還出来ぬように聞こえるのだが?」
「ッ!畏れ多くもそのようなことは!」
「よい。お前の危惧する事もわかる。……が、リーさんは、私にも王座で見物していろと云っていたのだ。ならばこれは、見せ物なのだよ?客が舞台に上がるモノではない」
王座に肘を付き、観戦する態度を崩さなないモモンガの様子にこの戦いを完全に至高の一人、李鳴海に任せていると悟った守護者たちは手に汗を握る思いで再び水晶へと視線を送ったのであった
(んで~本心は?)
そして守護者でもなければナザリックのモノでもない李鳴海の眷属であるクレマンティーヌは、モモンガの本心を確かめるべく周りに悟られないように視線は遠見の鏡に向けたまま念話を送った
(戦闘区域ギリギリにアウラとマーレがいますし、いざとなれば直ぐに転移出来る様になっていますよ?)
(ぷぷ、やっぱり心配なんだ~)
(えぇ、第三者……シャルティアに精神異常を掛けた術者の介入を警戒していますね)
(あれ?それだけ?)
随分とあっけない言い方をするモモンガにクレマンティーヌは首を傾げるが、モモンガだけは軽く笑みを浮かべ、守護者達にも聞こえる様に言葉を発した
「リーさんはまだ『抑止力』の力を振るっていない。デミウルゴス、ナザリック防衛班隊長にして最強の『盾』である『李鳴海』の力を見るがいい。お前の敬拝する至高の存在……その中でも一対一では敗北を知らない存在の力をな!」
困惑が渦巻くこの場に置いてただ一人、モモンガだけが友である李鳴海の絶対的な勝利を疑いはしなかったのであった
◆
オーバーロード ~俺が鰻を滅した件について~
◆
「……
「?……我が創造主であるペロロンチーノ様から承ったものでしたが、至高の御方を相手取るのであれば出し惜しみしている余裕はありませんでしたわ」
光の中から戦闘前と変わらぬ姿で復活を果たしたシャルティアの様子を見るに完全復活のアイテム、それもMPやスキルまで全快で復活を果たしたと考えればぺぺがシャルティアに持たせたアイテムは伝説級のアイテムだと容易に想像できた
「それは光栄と答えれば良いのか?……しかし、勝敗が決したかのような云い様だな、シャルティア?」
「ふふふ、いくら『武』の極地とも云われる李様であろうと大きくHPを削られた状態で今の私に勝つのは難しい……いえ、不可能な事ですわ」
まぁ、確かに今の状況下でナザリックに置いて最強のNPCであるシャルティアを相手取るのは厳しいモノがあるが、逆に云えば相手の切札を使わせたと言う事になるがな?
流石のぺぺも蘇生アイテムを重複させて持たせはしないと思うが、念には念を入れて復活アイテムを無効にする技で仕留める必要がある………とすれば
俺は大きくタメ息を零し自身のHPの残量を確認した
「不可能、か……なぁ、シャルティア。俺の二つ名を覚えているか?」
「……『幽玄道士』。武道とフジュツシを極めたキョンシーが得られる称号でしたわね?」
「あぁ、そうだ。しかし、俺にはもう一つの二つ名がある」
「?」
自身のHPは既にレッドポイントに到達し、シャルティアはノーダメージ状態。
投擲に使用していた武器も
友の采配に感謝しつつも俺は笑みを零した
「俺は、この二つ名が嫌いでな?ごく一部プレイヤーには『運営の犬』と呼ばれたモノだ。ぺぺ曰く元ネタがあるらしいが、この話は貴様が帰ってからしてやる……『
「……『
「しかり。ユグドラシルにおいて『
スキルの発動と共に全身の力が抜け立っていられなくなる程の脱力感に襲われるが、一瞬にして力が巡り渡り、全身から緑のオーラが溢れだし地面をヒビ割る程の余波を生み出した
「この状態になった俺は……
「何を云っているかわかりませんが……無駄な足掻きを!清浄投擲槍!」
湧き出るオーラを不審に思いながらも最後の抵抗と銘打ったシャルティアは、スキルを使用し遠距離から必殺の魔法を放ってくるが今の俺には、策も無しに貴重なスキルを使用する愚行とも云える攻撃に感じた
「覇っ!」
此方に迫る清浄投擲槍に対し俺は、清浄投擲槍と同等の力。そして速度を乗せて拳を解き放ち………清浄投擲槍を爆散させた
「ッ!?」
「何を驚いている?『矛』を持って槍を相殺させただけだろう?」
「攻撃魔法である清浄投擲槍を相殺させた?いえ!ただの物理攻撃で相殺するとはどういう事ですか!」
「深くは知らんが、パリィ?ジャスガ?……ようは同じタイミングで同等の威力の攻撃を打ち放てば相殺できると我が旧友ぷにっと萌え軍師殿から教え仕った」
「ぷにっと萌え様の教え!?な、ならなぜ最初からその技を使われなかったのですか!?」
「守護者において戦闘面では一線を越すお前の攻撃をいなす事は容易ではない。しかし、先の戦闘である程度の技は見極めさせて貰った。あとは同等の攻撃を繰り出せば相殺できよう……素人でも出来る簡単な技だ」
あれは良い鍛錬になった。
低位階から高位階までの魔法をランダムに撃ち込み同等の力でひたすら相殺し続ける。威力を見極める眼力に留まらず、力の加減、反射神経さらには数多の魔法を捌き切る為の不屈の精神力が鍛えられた。……鍛錬に協力してくれたぷにっと萌え軍師殿をはじめギルドメンバーには感謝の意しか浮かばない
「か、簡単?じ、自分が何を言っているのかおわかりでしょうか!それは理論上の話であって実際に出来るのとは話が違いますわ!」
「軍師殿にも『言ったの私だけど本当に成功させるんだ』とお褒めの言葉を頂いた記憶があるが……まぁ、第一条件として技量・力量全てを相手よりも圧倒しなくはいけないらしい……無論、職業柄『吸血鬼』より種族値の少ない『キョンシー』である俺には本来出来ぬ技だが――」
「ッ!『
「あぁ、術者のHPが15%を切り、敵エネミーとのHP差が60%以上。さらには武器の装備制限と一対一と発動条件が鬼畜仕様。……『
拳を握りしめればバキバキと骨や筋肉が悲鳴を上げ崩壊するであろう過剰な力。だが、人外となった我が身においては骨や筋肉は俺の期待に応えるべく歓喜の声を上げ、まだ行かないのか?いつでも用意が出来ている!と俺に訴えかけて来ている様だった
「自身の魔法攻撃力、魔法防御力、物理攻撃力、物理防御力を統括。再び任意的に振り直す事が出来る」
「なっ!?」
シャルティアが驚くのも無理はないだろう
割り振られた数値を任意的に変更するなどNPCからしてみれば神の行い。俺達プレイヤーにおいても極振りはいたが、ある程度のステータスを振らなければ後半で詰り本当の意味で強いキャラを造れずにリメイクする羽目になる。だが………俺は今この時、禁断の全振り。全てのステータスを物理攻撃力へと回したのだ
「『
「ッ!」
地面に向って放たれた拳を起点に蜘蛛の巣状に広がっていった地割れは、瞬く間にシャルティアの元まで伸びていき、滾り余った力は地面を割るだけで終わらずシャルティアを襲う『岩の牙』となって彼女に襲い掛かった。シャルティアは飛ぶことによって被害をこうむる事は無かったが、目下に広がる岩の牙が生えた野原に驚きを隠せないでいた
「な、な、なんですの!その力!この恐怖!その惨状は!」
「
「ッ!やぁぁあ!…え?」
空にいると言うのに音も無く背後を取ってきた李に対してシャルティアは、スポイトランスを反射的に薙ぎるが、まるで小枝を掴むように片手で受け止められてしまった
STRは、種族値的にキョンシーを凌駕し先程までもこのランスでダメージを与えられていたと言うのにたった一つのスキルを発動させるだけで、これ程までにも差が生まれるのかとシャルティアは恐怖心を加速させた
「そ、そんなスキルは…」
「スキルなど使わなくとも間合に入れば槍の対処など容易なモノだ。……さて、朗報だ、シャルティア。今の俺は魔法防御、物理防御ともに『
「う、うわぁぁっ!」
第二ラウンドが始まって数刻、もはやシャルティアは正気ではいられなかった
まさかの『世界級』スキルから始まり、いや、無骨な武器を投擲道具として扱う未知のスキルもそうだ。彼女から見て常識から逸脱した李の技術にシャルティアのメンタルはゴリゴリッと音を立てて削られていった
槍を薙ぎれば流され、突けばジャスガされ、槍が駄目なら魔法で攻めようと距離を取ればスキルである『縮地』と彼の技術を複合させた『縮地』で背後を取られる
気付けば無傷であった自身のHPは李と然程変わらないまでにも追い詰められていた
「っ!?」
敵対し攻撃せよと云う絶対命令に従う反面、心に残るシコリと防衛本能が現状の打破の為にも『逃走』を訴えかけているがシャルティアは、結論的に彼から距離を取る事を選択し続けている。
しかし、彼からの攻撃は休む事を知れず、嵐のような拳と脚の連撃は絶えずシャルティアのライフを削っていき空前の灯、このままでは『敗北』してしまうという中………嵐は不思議となりをすましたのであった
このまま攻めれば勝敗が決まるというのに突然と距離をとり、左手で右手の拳を包み独自な構えを取った彼にシャルティアは更に困惑することになった
「正気では無かったとは言え、お前の離反は我が『武』を登り詰める糧となった。……感謝する」
『抱拳礼』……拱手とも呼ばれる相手に対し敬意や謝意をあらわす挨拶
それが解かれた瞬間、彼の両手に目視できる程の力が宿った。そして彼女は知る事になる……
「そして改めて名乗ろう。我が名は『李鳴海』!『
「あ、あ、あぁ……」
………本当の嵐はこれから来るのだと
「
「く、くるなぁぁぁ!!!」
最後の抵抗とばかりに眷属たちを壁役として数多に召喚するシャルティアだが、彼から云わせれば冷静さを失った時点で勝敗は喫している
シャルティアの呼吸の乱れ、戦意の乱れ、錯乱とも云える状況下において意識の隙をつく事など彼にとっては朝飯前、壁役の眷属を擦れ違い様に滅し、勢いそのままにシャルティアの腹部に拳を押し当てた
「ッ!?」
「
ゼロ距離から放たれた翠色に色づいた力の奔流は、シャルティアを呑み込み消滅させるだけに終わらず時空を叩き割り、辺り一面を『白』へと替えたのであった
シャルティア戦闘に使用した投擲武器の数(参考資料)
無骨な槍×10(聖骸級)
幅広な槍×15(製作級)
無骨な大剣×10(聖骸級)
幅広な大剣×15(作成級)
手に持つと痛い槍×3(神器級)
燃えている大剣×3(神器級)
カジキマグロの剣×1(伝説級)
サーフボード×1(伝説級)
スプーン×1(伝説級)
ネギの剣×1(伝説級)
丸太×11(作成級)
スイカバー×1(伝説級)
えくすかりばー×1(神器級)
合計 72本