オーバーロード ~俺の嫁は狂ってる件について~   作:誤字脱字

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最終話です


~俺と嫁の生き方について~

見渡す限り一面の黄金の海が広がっている一室において、ここナザリック地下大墳墓の主である死の支配者モモンガと跳ねる死体李鳴海、そしてナザリックを守護する階層守護者達が強張った表情で目下に広がる黄金を見つめていた

 

「ユグドラシル金貨5億枚。……準備は出来たぞ、アインズ」

「あぁ、これよりシャルティアの復活を行う」

 

主であるモモンガの声に守護者達は各々、これから行われる守護者の復活に対し、あるモノは武器を握りしめ、あるモノはステータス画面を広げ、あるモノ達は怒りと期待を胸に秘めながら目前の金貨を睨み付けていた

 

ナザリック勢が緊張した面持ちで金貨を見つめている中、いまいち緊張感に欠けているモノ達がいた………跳ねる死体李鳴海とその眷属クレマンティーヌだ

鳴海は、純粋に旧友が失敗するはずがないと言う絶対的な信頼と期待から、眷属であるクレマンティーヌは目の前の黄金から復活すると言う話しに対し現実味を持てず、むしろ生前の癖から目の前に広がる黄金の方へ興味が移ってしまっていた

 

「……ねぇ、ダーリン」

「なんだ?」

「これってダーリン達の世界の金貨だよね?」

「そうだ」

「ふ~ん」

 

徐に黄金の海から一枚の金貨を掬い上げたクレマンティーヌは、施された装飾を眺めたり、手で此方の世界の金貨と比べたり、重さを計ったり齧ったりして金貨の価値を計ろうとするが、出てくる答えは規格外という結果のみが浮かび上がってしまう

 

「……私も専門家じゃないから詳しくないけど、普通の金貨よりこっちの金貨の方が断然価値があるよね、これ?」

「俺も詳しくはないが、盟友の一人に詳しい奴がいた。ソイツ曰く『金の価値は1に純度!2に重さ!3にデザイン!』と言っていたのを覚えている」

「その3つともコッチの金貨が圧勝だよ、これ?……こっちの金貨にすると幾らくらいかな?」

 

クレマンティーヌから此方の金貨とユグドラシル金貨を受け取った李は、天秤の様に手を揺らし互いの重さを比べるが、苦い顔をしたままユグドラシル金貨を黄金の海に投げ戻し、此方の金貨をクレマンティーヌに返した

 

「……盟友の言葉を信じ重さだけで判断するのであれば、およそ二倍は違うはずだ」

「って事は単純にコッチの金貨にすると―――ッ!だ、だ、ダーリンもこの金貨いっぱい持っているの!?」

「………俺個人は然程持っていない。あったとしても4億程度。盟友である公爵に比べれば微々たるモノだ」

「いやいや!十分お金持ちでしょ!?」

「ウ、ウウン!!(あの~、リーさん?シャルティアを復活させて良いですかね?)」

「(ッ!すまない、モモ。)」

 

念話で話せば良いモノを直接、声にして話していたので復活の儀式を中断させていた様でモモから催促の念話が届いた。一言侘びを入れた李はモモの隣へと歩み寄った。

 

「(では……行きますね?)さぁ、シャルティアよ、蘇るのだ!」

 

モモの呼び声に応える様に積み上げられた金貨は融解し、本当の意味で黄金の海となって、うねりながら一ヵ所へと集まり出していった

 

「……ねぇ、ダーリン」

「なんだ」

 

クレマンティーヌ、うねる黄金を目の前に一言――――――

 

「あの子って金貨で出来てるの?」

「………」

 

生あるモノが無機物から産まれるなど変な所はゲームのままだな?と思いながらもクレマンティーヌに無言で答えを濁し、黄金の海が一ヵ所に集まり形を成した先の――裸体で横たわるシャルティアに視線を送った

 

「―――ん、ここは……」

「大事はないか、シャルティア?」

「え、ええ、なんともありませんわ」

「………アルベド」

 

身体に支障が出ているかどうかは、本人が一番よく分かる。

本人が問題ないというのであれば身体的には問題は生まれていない。質問を繰り返すモモと受け答えも出来ているようだが―――

 

「………ステータスに異常は見られませんわ」

 

アルベドに視線を送れば、シャルティアのステータスを確認していたアルベドは、笑みを浮かべながら蘇生が無事に成功し洗脳から解放された事を告げた

 

その言葉を気に守護者たちはシャルティアへ詰め寄ると非難の嵐を投げかけ始めるが、洗脳された記憶がないシャルティアとっては身に覚えのない非難に首を傾げるばかりであった

その姿がどうしても彼らの親と重なり、昔を思い出して自然と笑みを浮かべてしまうが、そのように感じたのは俺だけではないらしい

 

「……聖騎士、山羊の悪魔、タコ、軟体生物、娯楽の友」

「ッ!?」

「盟友達の面影を見たか?」

「……そうですね。」

 

そう、俺と同じ様にモモンガも守護者達に盟友の姿を思い浮かべていたのであった

ナザリックと最後まで共にしたモモンガにして見れば至高の存在は至高の宝であり、同時に旧友が残した守護者達も同じく至高の財なのだと感じさせてくれる

 

「俺は、今ほどNPCを造らなかった事を後悔した事はない」

「リーさん、不器用の前にアナログ派でしたからね?」

「絵で描こうにも意味がわからんと云われた」

「筆で書いたモノをレイアウトにするのにはタブラさんも頭を抱えていましたから」

 

互いに笑みを浮かべ、あの頃に思いを寄せるのはとても心地よいモノだが、俺はこの気持ちとは別のモノがふつふつと湧き上がっているのを感じていたのであった

 

 

 

 

「帰ったぞ」

「おっかえり~」

 

自室の扉を開けた先には、先に帰っていたクレマンティーヌが、ソファに横になり寛ぎながら俺を出迎えた

ただ横になっていたのではなく、部屋に飾ってあった武器を手に取り感触を確かめる様に眺めていた事からモモとの打ち合わせが思っていたより時間が掛っていた事が窺えた

同じ様にクレマンティーヌのソファと反対のソファに腰を下ろした俺は、改めてクレマンティーヌが弄んでいる武器を見るが、危険性もレア度も低く見栄え重視で飾られた武器だったので特に注意もせずに逆に武器の説明をしてやることにした

 

「筆架叉と言う二体一対の武器だ」

「へぇ~、なんか私のスティレットに似ているねぇ~?……コレもやっぱりヤバイの?」

「どちらとも刺突に特化した武器だからな。それは……確か聖遺物級(レリック)アイテムだったな?」

「あ~…もう一度聞くわ、それってヤバイの?」

「……右が第3位階魔法【ライトニング】を、左が第三階位魔法【フレイボム】を撃ち出す程度のモノだ」

「うわ~、やっば!………貰っても?」

「かまわん。」

「ダーリン、だ~いすき!」

 

満面の笑みを浮かべながら手に馴染ませるためにか何度か武器を振るう姿を見ていると一見危ない奴だと思われがちだが、彼女の笑みを見れば本当にうれしく思っている事が判り上げた此方側まで嬉しくなってしまう……だが、その武器が日の元で振るわれる事はないであろう

 

「………クレマンティーヌ、話があるのだが「私はアンタについて行くよ」ッ!?」

 

勝負事において一瞬の動揺は致命傷へと繋がる

だからこそ、精神面を鍛え余程の事では動揺しないように訓練していたつもりだが、話の内容を聞く前に答えを云われたのは初めての経験で正直……顔に出るくらいに驚いた

 

「珍しいもの見れたわ~!伝説級の化け物の驚く顔って。……これでも結構マジで好きなんだからダーリンの考えてることは判るよ?……私を守ろうとしてくれているんでしょ?」

「……無理に付き合う必要はない。ナザリックに居れば最高の待遇を保証するぞ?」

 

二つの筆架叉を器用に回しながら手に馴染ませ笑みを浮かべるクレマンティーヌの瞳には迷いが一切感じられなかった

 

「あはは、むり~!流石にココの人たちに比べれば私は、よわっちいけど人間相手に遅れは取らないわよ」

「それも、そうか」

 

大きく息を吐きながら俺もクレマンティーヌと同様に笑みを浮かべた

双星の意志は確認した。ならば後は君主に我が意志を伝えるのみ

それが一番難しいよな~と、これから立ちはだかる問題に天を仰いでいた時―――

 

「失礼します、李様。入室の許可を頂けないでしょうか?」

 

控えめのノックと共にアルベドの声が聞こえたのだ

 

「あぁ、大丈夫だが何か用か?」

「はい、シャルティアが李様との対面を所望しております」

「シャルティアが?かまわん、通せ」

 

まさかの来客に疑問を感じるが、別にやましい事をしている訳でもないので、特に何も考えずに招き入れたのだが、客人であるシャルティアは終始顔を伏せ、モジモジとドレスの裾を弄っているばかりで此方を見ようとはしなかった

排泄でも我慢しているのか?と思い声を掛けようとしたが、俺より早くアルベドが「至高の御方をお待たせするつもり?」と声をあげ、シャルティアに即した。すると、シャルティアは徐に膝を屈し頭を下げてきたのだ

 

「こ、この度は!私の不注意で至高の御方自らの手を使われる始末、改まって謝罪したく存じ上げます。つきましては私に罰を与えて頂きたく参上しました」

 

完全なる土下座である

生きている内に、これほどまで綺麗な土下座を見る事が出来ようとはと感心する一面、何故この場において土下座する必要があるのか理解が出来なく唖然としているとクレマンティーヌが俺の横腹を突き正気に戻した

 

「罰とは……どういう事だ?アインズから今回の件について詳細は聞いていないのか?」

「………いいえ、聞いております」

「ならば何故罰せなければならない?……今回の件は、世界アイテムの存在を視野に入れなかった我々のミスだ。……貴様に罪はない」

「で、ですが!」

「二度は云わん。……貴様を罰する事はない」

「ッ!………畏まりました」

 

この判断は、シャルティアに余計な罪悪感を与えない為にも今回の件に関しては俺達が原因であり、シャルティアに責任を負わせる事はしないとモモンガと前もって決めていた事で決定事項だったのだが、何故かシャルティアは納得していないように感じた

 

「ちょっとぉ~、ダーリンそれはないんじゃないかな~?」

「……なんだ」

 

俯くシャルティアを余所にクレマンティーヌは俺に背に覆い被さると頬を突き始めたのだ

 

「いやねぇ~?これは、ダーリン達のミスってことで終わらせる問題ではないのよ。部下であるシャルティア、ちゃん?の不注意で起きた問題でしょ?これを『自分達のミスです。貴女にミスはないです』で終わらすのはシャルティアちゃんが可哀そうだわ」

「だが、実際にそグフっ」

 

頬を突っついていた指が俺の口に侵入し言葉を塞いだ

あ、こら!下を弄ぶな!

 

「部下のミスは上司が取るってぇ云うダーリンの心意気はいいけど、こういうのは『ケジメ』が大切なのよ、『ケジメ』が。……それをシャルティアちゃんも望んでいんの」

「んぐ……そういうモノなのか?」

 

クレマンティーヌの指から解放されシャルティアに相違はないか確認してみれば言葉無くとも首が取れるのではないかと云う程に縦に振っていた。しかし、罰か……

体育会系出身者としては悪事を起こしたモノには鉄拳制裁と云う名のグーパン一発で許していたゆえに鉄拳制裁以外の罰し方を俺は知らない。……今世の俺のグーパンは制裁の域を超え消滅しかねない威力が出る為、今回はグーパンでは収まらないだろう

いや、シャルティアなら受け入れるかもしれないが、折角復活したというのに俺の手でまた殺しては意味もないし金貨5億枚が勿体ない。ユグドラシル金貨も有限であるのでナザリックの財を自分勝手な理由で消費する訳にはいくまい。……だからと言って手加減して手を下すのは相手にも失礼に当たる行為だ

 

「……己の手で下す罰とは難しいモノだ。拳以外の罰し方など俺は知らないし、故人の知識を借りようにも武則天の罰は罰と云うよりは処刑。手足を切り落とした後に酒壺に入れるなど部下にすることでもない」

「いやいやいや!ダーリンの知っている罰って怖くない!?普通は鞭打ちとか罰金とかだよ!?」

「鞭打ちなどシャルティアが喜ぶだけだ。罰金に関してもシャルティア自身がナザリックの財であり、求める物は既に貰っている。………むしろ給金を払っていないのにどうしろと?」

「あ~……、なら精神的に罰を与えて見たら?」

「精神的………第三欲求か?」

「そそ、シャルティアちゃんは女の子だから……期限が来るまでうさちゃん専用肉便器とかは?」

 

頭を捻る俺を見かねたクレマンティーヌがアドバイスをくれるが、どうもピンと来ない。そもそも、ぺぺの子を自らの手で陥れるのには抵抗があるし、モモが相手だとむしろ喜びそうに感じてしまうのだが………いや、なるほどそうか!

 

「与えるのではなく、禁ずるのもまた罰か……シャルティア!」

「はい!」

 

俺の声に背筋を伸ばし、話を聞き受け入れる体制となったシャルティアの強き瞳を見て俺の中に燻る罪悪感は消えた。ならば心置きなく罰を与えよう!

 

「俺からの罰は一つだ……今日から一か月間『性交』を禁じる」

「ッ!」

「自身が行うのは勿論、『性交』に関わる全ての行為を禁じ、己が職務を全うするように」

「そ、それは!ヤる事も見る事も行わせる事もですか!?」

「無論。……俺の意に異存はあるか?」

「あ、ありません!謹んで罰を全うします!」

「うむ。アインズからも罰を与える様に俺からも進言しておこう。……そしてアルベド!」

「えっ!あ、は、はい!」

 

まさか自分にも声が掛るとは思っていなかったアルベドは驚きながらも膝をついた

 

「守護者総統と云う守護者を管理する立場にありながら守護者の離反を許した管理不足に対する罰を与える」

「ッ!」

 

罰を受けるならシャルティア以外にも俺やモモも受ける対象だが、アルベドもその条件に当て嵌まっていると思い罰を執行する

 

「俺は、今の職務に傲慢していたのが原因だと考え、アルベトの守護者統括の任を解く」

「ッ!」

 

俺の言葉にこの世の終わりとばかりに顔を歪めるアルベドから何故だか殺気が漏れ始めたが、話はココで終わりではない

 

「……の、つもりだったが、霊廟で見せた『仁』の心、創造主を忘れぬ『信』の心を俺は評価し、職務を増やし管理能力を一から鍛え直そうと考えた」

「……ご配慮感謝します。して、その職務は?」

「今後、守護者統括の職務と兼任してアインズの秘書。アインズのサポートを徹底して行え」

「それはつまり――」

「今後、アインズの補佐をし「よ、よっしゃーーーー!」…聞いていないか」

 

殺気から一転、歓喜に打ち震えるアルベドの魂からの叫びは、至高の方の発言を遮った不敬にあたる行為だが、見ていて清々しく諌める気にはなれなかった。

逆にシャルティアは、歓喜に沸くアルベドを睨み付けながら血の涙を流していた

 

この件は終わりとばかりに大きく息を吸い、モモンガへとシャルティアの罰に対して念話を繋げようとした時、デミウルゴスが一歩前に出た後に胸に手をおいて二人と同じ様に膝をついた

 

「……一つ、よろしいでしょうか、李様。」

「どうしたデミウルゴス」

「畏れ多くも、私には李様がナザリックをお離れになると聞こえましたので」

「「ッ!」」

 

一を知って十を知る。

モモからデミウルゴスの事は聞いていたが、まさかこれほどまでに早く気づくとは予想外だな?

 

「よく分かったな」

「アインズ様を補佐するには同じ至高の御方である李様が最も相応しい。と云うのに、その職務をアルベドに任せると任命されては、歓喜で冷静さを失ったアルベドでは気づかなくとも私には判ります」

 

眼鏡の奥に輝く宝石のような眼からは、『恐怖』と『悲しみ』なにより『怒り』が感じられた。……恐らく『恐怖』と『悲しみ』は、俺がナザリックを離れる事に対して、『怒り』に関しては俺にではなく、俺を止められなかった自分に対して怒りを感じているのであろう

 

「デミウルゴス……貴様は、今からナザリックに離反しろと云われて出来るか?」

「出来る筈がありません!そのような考えすら抱いた事はありません!」

「なぜ」

「私は、我が創造主ウルベルト様からの命により、至高の御方が作られたナザリックを守護する事に誇りに思っております。それを…創造主の意を背くことはできません!」

「そうか……それが貴様の生き方なのだな?」

「はい」

 

打てば響くような返答

それほどまでに彼の中に曲げられないモノがあるのだと嬉しく思う反面、そこは『命』ではなく自身の『気持ち』で答えて欲しかったと思いながらも俺は自身の心の内を打ち明けた

 

「俺も同じなのだ」

「………」

「俺もナザリックに愛着も執着もある。俺の帰る家だとも思っている。……しかし、俺の生き方が安泰や停滞を拒むのだ」

「ッ!………畏れ多くとも教えて頂きたいのですが、その生き方とは?」

「武道家として己が『武』を後世に伝える事だ」

「ッ!?」

 

『武』を後世に伝える

武道家が積み重ねてきた長い『武』の歴史に俺も貢献したいのだ

そして、この世界の『武』を越えたいのだ

 

「それは…ナザリックでは出来ぬことなのでしょうか?」

「あぁ、俺は弱者に……人間に己が『武』を伝える」

「ッ!人間如きに李様の『武』を伝授されるとは……私には理解が出来ません!」

「ふっ……確かに今の俺も理解する事が出来ない。しかし、俺の心が弱者である人間に『武』を伝承し、強者に登り上げろ!と訴えかけているのだ」

「……」

「何も一世代で強者に成らなくとも良い。次の世代が更に次の世代に『武』を伝承し磨き上げる事で強者へと至る事を俺は望んでいる。だから俺は……旅に出る」

 

この世界の人間が生み出した『武』は存在するだろう。しかし、その『武』を俺が残した『武』が超えた時、俺は本当の意味で、この世界に勝ったと思えるのだ

だから、俺は―――――

 

「デミウルゴス。お前に言葉を送ろう」

「はっ!」

「Don’t Think. Feel!考えるな、感じるんだ………俺は俺の心が感じたモノを信じる。なに、絶縁した訳ではない、帰って来たら暖かいメシを用意して迎えてくれ」

「…はッ!ご帰還をお待ちしております!」

 

―――――世界に喧嘩を売りに行くのだ

 

 

 

 

光輝く太陽、青い空、風に靡く草木がゆっくりと時間を進めているのかと錯覚するほどにのどかな草原に一組の男女が歩みを進めていた

 

「絶好の旅出日和だ」

「そだね~?太陽の光が気持ちいいわ~」

「キョンシーならぬ言葉だが、確かに気持ちが良いな」

 

片方は何処かの民族衣装を思わせる旅装をした伊達男、片方は戦闘に支障が出ない様にアレンジした際どいスリットが目に入る男と同国の衣装を纏った色白の美女

傍から見れば異国出身の美男女のペアに見えるが、その正体は英雄の領域に足を踏み込み更には人間の領域を越えた美女。そして男は………その気になれば世界を拳一つで破滅させる程の武力を持った武道家なのだが、すれ違う人々はそんな化け物が農道をのんびりと歩いているとは夢にも思わずに、ただカッコいい男と美しい女が旅をしているしか感じられないのだろう

 

「モモを説得するのに時間を要したが、ようやく旅をする事が出来たな?」

「『私をおいて行くんですか!いや、私と一緒に冒険者をやる約束はどうしたんですか!?』ってうさちゃんって本当に兎ちゃんだったねぇ~」

「……冒険者『漆黒』との【同盟者】として事があれば合流する約束だがな?」

 

モモの云いたい事も判る。この件が終わった暁には2人もしくは3人で、まだ見ぬ世界へ冒険の旅に繰り広げようと語り合ったゆえに、彼に対する罪悪感は拭い捨てられない。

だが、冒険者として『未知への冒険』を語るモモとシャルティアの件を境に『武の発展』を目指し、旅をする事を決めた俺とでは目的が合わぬ相入れないモノになってしまったので、一緒に旅をする事は断念しお互いに譲歩できる折衷案を決めたのだが………俺には、もう一つ、モモと旅をする事を断った理由がある。

 

それは、クレマンティーヌと云う存在だ

生前は漆黒聖典の一員であり、なんかの秘宝をスレイン法国から盗み逃亡した裏切り者。

俺とモモが共に冒険すると云う事は眷属である彼女も同行する……即ち、追われる身の彼女と行動を共にすると言う事はモモが考える冒険碌に支障が出る可能性があると考えたのだ

モモも守護者達と違い、気軽に話し掛けてくるクレマンティーヌを気にいっている為、そのような些細な事など気にはしないと言うだろうが、俺としてはモモには、ややこしい事など考えずに純粋に冒険を楽しんでもらいたいという気持ちが強い故に折衷案として、冒険者チーム『漆黒』の臨時メンバーとして力が必要な時に合流する形に落ち着いたのだ

 

「……正直、俺としては、君にはナザリックに居てほしかった。いくら人外的強さを手に入れたとしても例外はある。クレマンティーヌと云う女性の存在を知る人間が死ぬ凡そ100年間はナザリックにいて欲しかった」

「100年って冗談……って訳でもないか」

「あぁ、なにも100年間部屋に籠っていろと言う訳ではない。ナザリックには娯楽施設もあるし、護衛をつければ外出もできる様に手配する予定だ」

「わぁ~、VIP待遇!」

「……まぁなんだ、責任を取ると云った事が良い意味でも悪い意味でも守護者達に知れてしまった故だが、ナザリックにおいて確かな地位と安全は確保されただろう。ナザリックで過ごす100年なんてあっという間だ」

「ふふふ、確かにダーリンの婚約者って事でチヤホヤされるし、豪華絢爛のお城のお姫様~って感じでダーリンと会う前までの生活が糞みたいに思う子供の頃に夢みた生活だったけど……肌に合わないのカナ~?やっぱり、夢は夢だわ。私はコッチの方が性にあってるみたいね?」

 

我が盟友達が作り上げたナザリックの娯楽施設は一生遊んでいても飽きぬ楽園であり、その楽園で最優遇の対応をされるのだ。ちょっとした大国の姫でも経験の出来ない生活が過ごせるというのに、金を捨てて銅を取る

薔薇色お姫様生活とは正反対の血と闘争の灰色生活に思いを馳せて武器を嬉しそうに打ち鳴らすクレマンティーヌの姿に俺の頬は吊り上った

 

「そうか……ならば何も言うまい。」

「そそ。帰る家だってあるんだし、新婚旅行だと思って気軽に行こうよ」

「……言っておくが遊びではない。モモが出した条件の一つにナザリックの敵となり得る組織、国の偵察がある。……油断せずに行くぞ」

「はいはい、わかってるわよ。そういう建前の修行の旅、でしょ?」

「む」

「最初の行き先は、カルネ村……うさちゃんが最初に出向いた村でしょ?」

 

当初は、シャルティアを洗脳した国であるステイン法国へと殴り込むつもりだったが、まだその時ではないようでナザリックの戦力を強化したのちに動く予定だとモモは言っていた……その為にも、確か蜥蜴人族を壊滅させると言っていたな?

チュートリアルでカルネ村を進めてきたモモに次の行き先は蜥蜴一族の集落を視察すると進言するのも悪くはないかもしれん

異世界の異種族がどのような『武』を身に着けているのか気になるからな?

 

未開の『武』の存在を知れるかもしれない、その『武』が我が『武』を更なる高みへと昇り上げてくれるかもしれない!そして、その『武』を――――

 

湧き上がる『武』に対する好奇心で胸が一杯になっていく

まだ知らぬ出会いに夢みて俺達は歩み始めたのであった

 

「さて、では行くぞ、クレマンティーヌ!ナザリックと武の発展の為に!」

「殺戮と凌辱をスパイスに、ね!」

 

 

END

 

 




あとがき
3年かけて完結。…もうね、本当にすみませんでしたと言う思いがいっぱいです
作者が、小悦を書き始めていた環境と今の環境が激変しているとは云え、待ったいてくれた読者に対し申し訳ない気持ちでいっぱいです………反省終わり

オーバーロードも三作目に入ります!今思うと一作目のクレマンティーヌに惚れ込んで書き始めた小説でしたが、完結できて一先ずよかったです!
最終話に関してはもっと詳しく書いて見たかったのですが作者の技量が足らなく至らない終り方になってしまいました!もっとモモンガの内面とか上手く書きたかった!
でもこれを糧に今後頑張っていこう!と思える個人の勝手な終わり方にしました!

長く書いても仕方がないので、最後に……
この終わり方を不快に思う方もいると思います。「白状過ぎ」とか「考えられない」とか
でも、李にとっての終わり方はこうしようと最初の段階で決めていたので後悔はしていません!作者の技量不足だと思ってください!

最後までありがとうございました<m(__)m>
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