力持ちの人魚と祝福の風も神様転生   作:峻天

10 / 15
010 アキラ専用のデバイス

 

2月1日(水)...午前3時に行われたセレンとの修行で内容はいつもの通り。補強の内容は昨日と同じ筋トレだった。セレンの話によると一週間ごとに内容が変わるらしい。そして、毎週金曜日にスペシャルアスレチックを行うとの事。それは臨機応変に行動する総合的なお遊戯で、週末のお楽しみって奴だ。仲人達四人は修行を積み重ねてレベルアップすれば、スペシャルアスレチックでスーパープレイを要求されるステージになるのは間違いない。

 

 

~仲人 side~

 

「リンディさん。おはようございます」

 

僕達四人は【どこでもドア】でアースラ艦長室に入って直ぐ、リンディさんに挨拶をした。チラッと奥の大きい金閣寺模型を見たら、屋根に鯱は無い。外された鯱は、部屋の隅の鹿威し(ししおどし)の隣に置いてあった。まるでお土産の収集品だね。

 

「皆、おはよう。...ふふっ、今日も元気そうで何より。早速だけど...名前や住所や連絡先など、この書類の必須項目に記入して頂戴」

 

リンディさんは、此方に3枚の書類を差し出してきた。それを受け取って読んでみたら、デバイス貸与申請書。あっ...今日借りるから、その手続きだね。他の2枚は、翔とアキラに1枚ずつ渡した。

 

「リンディさん。結構ギリギリな気がしますけど、大丈夫なんですか?」

 

「私が艦長の権限で認印を押すだけで、通るから問題ないわよ」

 

アキラは申請書に目を通して訊ねると、リンディさんは大丈夫と答えた。借りるデバイスはアースラの備品だから、艦内所属デバイスマイスターからの確認と艦長からの許可で十分のようだ。処理が早く終わるとはいえ、ギリギリは良くないと思う。

 

「しかし、困った事が...俺は、うみなみ寮の住所と電話番号を知らねぇぞ」

 

「それなら...以前、セレンさんとメールで確認したから知っているよ」

 

「おっ、本当か!? いやぁ~助かったぜ...」

 

「既に把握出来ているとは...ふふっ、しっかりしていて頼もしいな」

 

その心配は要らないと答えると、頭を掻きながら困っていた翔はホッとして安堵の表情を浮かべる。此方を見ていたリインは微笑んで感心した。照れるから、言わないで欲しいな~。

 

翔とアキラに、うみなみ寮の情報を教えながら...申請書の必須項目に記入する。それを仕上げた後、3枚を束ねてリンディさんに提出した。因みに住所欄の始まりは、日本からではなく第97管理外世界アースからである。所属は民間協力者と記入した。勿論、ミッド語と似た英語で記入だよ。まだ英語をマスターしていないから、おかしい所があるかもしれない。

 

「......うん、どれも記入漏れは無いようね...OKっと」

 

リンディさんはキリッとした目で、3枚ある申請書のチェックをした後...認印を押した。その姿勢はキャリアウーマンで、とてもカッコイイね。

 

「仲人君、これを返します...はい。デバイスルームでデバイスを受け取る際、必要になるから落とさないようにね」

 

「はい。解りました」

 

そう応えて、リンディさんから受け取った3枚の申請書をクリアファイルに挟んで自分の鞄に入れた。申請書を各自で持つのもあるけど...どっちでもいいや。翔やアキラから、何も言わなかったし。

 

少し時間が経ち...ラステルさんが艦長室に来て、僕達四人は彼女に付いて行ってデバイスルームへ向かった。

 

・・・・・

 

デバイスルームは訓練室の近くにあった。その中は...中心に台という机があり、機械や工具箱もあって工房と変わらない。金属や油や薬品などの臭いがして部屋に入った途端、鼻がツンとしたよ...少しキツイかな。

 

「担当の人に渡しますので、艦長から貰った申請書を下さい」

 

「はい、解りました」

 

そう応えて、鞄から申請書のクリアファイルを出してラステルさんに渡した。

 

「デバイスを取りに来ますので、少し待っていて下さいね」

 

ラステルさんは微笑んでそう言い、申請書のクリアファイルを持って奥の小部屋に入って行った。あそこは美術室や理科室にもある準備室かな?

 

「おーい、皆。あそこにあるカプセルが気になるから、行ってみようぜ」

 

呼び掛けた翔は、右の方に指差す。右の方を見ると、逆U字のようで上端が丸いガラスのカプセルがあった。その中に小さい何かが浮いている。間違いなくデバイスだと思うけど...誰の物だろうか?

 

気になった僕達四人は、カプセルがある所に近づいた。常識的に考えて触るのはダメでも、見るだけなら問題ないよね。

 

「わぁ、綺麗な宝石...」

 

アキラは、カプセルの中にある綺麗な宝石に見惚れている。それは菱形で透き通った海色の宝石が付いたペンダント...アクアマリンかな? 本物は見た事がないけど......あっ、光った!?

 

『黒髪ポニーテールの少女......もしや、貴女は大河内アキラですか?』

 

~side out~

 

 

~アキラ side~

 

『黒髪ポニーテールの少女......もしや、貴女は大河内アキラですか?』

 

カプセルの中にある宝石を見ていると、それは光輝いて此方に訊ねてきた。行き成り私の名前が出てきたので、ビックリしちゃった...勿論、仲人や翔やリインも私と同じ反応だ。

 

「うん、そうだよ。私の名前は、誰から聞いたのかな?」

 

『貴女をこの世元へ転生させた神様から伺っています。私の名前はウンディーネと言って、貴女を助ける為に造られたインテリジェントデバイスです。本来なら、転生する前にデバイスを渡す予定だったのですが...神様はうっかり忘れていたようで、昨日...貴女に会える事を祈って、アースラ内の何処かに送られました』

 

ウンディーネは私に応えて自己紹介の後、事情を説明した。それを聞いた仲人と翔とリインは、私を転生させた神様に対してしっかりして欲しいと呆れてしまう。その通りなんだけど...あの時、神様は謝罪する気持ち一杯で余裕が無かったから忘れて仕方ないと思う。こうして無事に会えたんだから、結果オーライかな。

 

「事情は大体、理解出来たよ。ウンディーネって、良い名前だね」

 

『ありがとうございます......其方の三人は貴女のご友人でしょうか?』

 

「うん、友達だけど...うみなみ寮で一緒に暮らしているから家族に近い関係だよ。紹介するね」

 

笑顔で、仲人と翔とリインの紹介をする。彼等も神様転生されたと話したら、ウンディーネは驚きの声を上げたものの...紹介は円滑に進んで直ぐに、お互い名前で呼び合う仲となった。ウンディーネは人と違って手足が無いから、握手が出来なくて残念かな。

 

「アキラにウンディーネとの契約を済ましたいところだが...今はリンディ提督の許可が要るだろうな」

 

「僕も思うよ、リイン。アースラで拾ったとなると...現在、ウンディーネの所有権は管理局にあるかもしれない」

 

「今日も、クロノやエイミィやリンディさんと一緒に昼食を摂るよな? その際に申し立てて、許可を貰おうぜ」

 

「今は仕事の邪魔になって迷惑になるから、その方が良いね。昼休みになったら、私からリンディさんにお願いしてみる」

 

私と仲人とリインは、頷いて翔の意見に賛成した。そんな急展開な話でリンディさん、驚くかな? 私も、神様が自分専用のデバイスを送ったなんて思わなかったし...

 

「ラステルさんにウンディーネの事を、どう説明しよう? 神様転生については秘匿扱いだからね...う~ん」

 

『仲人、そんなに難しい事ではありませんよ。私がインテリジェントデバイスでアキラをマスターに指名したと、その人に伝えるだけで良いのです』

 

ウンディーネは、どう伝えるかについて悩んでいる仲人に助言した。ウンディーネの立場は、持ち主が分からない落し物という単純な話。うん、考えた説明は嘘をついている訳でもなく、解り易いね。

 

~side out~

 

 

~仲人 side~

 

話し合いが終わってウンディーネはスリープモードに入ったところで、3つのケースを持ったラステルさんが奥の部屋から戻って来た。

 

「皆さん、お待たせしました。共有デバイスを収めているケースを、お渡ししますね......はい」

 

ラステルさんはデバイスのケースを僕と翔とアキラに配った。そのケースの色はメタリックシルバーでビカビカ。辺と角の部分は丸く、大きさはA5用紙と同じサイズで、厚さは3㎝くらい。表面に鏡みたいな色の字でFREEDOMと書いてある。このケース...高級感があるな。

 

「ラステルさん。カプセルの中にあるデバイスについて話したいのですが...良いですか?」

 

「アースラ内のデバイスルーム近くの通路で落ちていたのを発見し、未だ持ち主が見つかっていないデバイスですね...それが如何しましたか?」

 

「あれはインテリジェントデバイスだったそうで、少し前...アキラをマスターにしたいと話し掛けてきました」

 

ラステルさんを呼んで、さっきウンディーネが助言した通りの内容で説明した。彼女は驚いてウンディーネの方を見る。

 

「(まだ持ち主が見つかっていないとなると...あれは任務中、何処かで回収したデバイスなのでしょうか?)...インテリジェントデバイスに指名されたと言う事は、とても嬉しい話ですね。残念ながら、あれは此方で管理されていますので、艦長と掛け合って許可を貰って下さい」

 

ラステルさんはウンディーネを見ながら考えた後、此方に振り向いてリンディさんの許可を薦める。それで、僕達四人は勿論ですと頷いた。もし許可を貰えたら、今後...アキラは借りたデバイスのフリーダムではなく、ウンディーネを使って魔法の訓練を行うと笑顔で言われた。うん、自分専用になる訳だから...その通りだね。それにしても...ウンディーネをセットアップしたら、どんな武器に変わるんだろう? 気になるな。

 

その後...僕達五人はデバイスルームを出て、研修室へ移動した。

 

・・・・・

 

ラステルさんとリインは研修室のホワイトボードに説明文を書いている間、席に座っている僕と翔とアキラはデバイスケースの蓋を開けて中身を確認した。最前面にあるミッド語で書かれた取扱い説明書を退かすと、白いクッションに囲まれたシルバーカードがあった。そのサイズはキャッシュカードと同じくらいで、表面に飾りを加えた▽型なマーク...管理局のエンブレムがプリントされている。あと裏面は面の縦中心にFREEDOMの文字。

 

「毎日使う程、出し入れの多いカードは知らない内に失くし易いから、気を付けないと」

 

「アキラ。カードを毎日使う経験はあるの?」

 

「うん、麻帆良学園に居た頃...学食で支払いの時や女子寮で自分の部屋に入る時など、色んな施設でID学生証を使ってたよ」

 

「うわ、麻帆良学園は凄いハイテクだな...」

 

聞いて驚く翔。アキラは初等部(小学)から...そんな学生生活を送っていたようで、一度だけ知らない内にID学生証を紛失してしまった経験がある。その時、大変苦労したらしい。魔法先生ネギま!の漫画を見て技術レベルが高いと感じていたけど、麻帆良学園は、初等部からIDカード処理システムを導入していたとはね...転校や転勤で慣れていない内には、気を張り詰めて疲れそうだ。

 

「むぅ...字が上手く書けないな...練習が必要か」

 

納得いかないリインは、字を書く練習をしようと決意する。ホワイトボードを見ると、リインが手伝って書いた字は下手だった。ラステルさんの字と比べて大きめだから、読めない事もない。これじゃあ、日本語で漢字を書くのに苦労しそうだね...頑張れリイン。

 

「皆さん、お待たせしました。それでは、授業を始めます」

 

ラステルさんとリインが説明文を書き終えた後...授業が始まった。デバイスは魔導師を補助する機器であると知っての通り。主な役割は、使用者が構築したF級魔法の術式に書き加えて拡張させ、魔法のレベルを上げる事にある。例えば、B級プロテクション使うのならF級プロテクションの術式構築→魔法レベルをBと指定→魔力注入で完成する。魔力注入が上手くなれれば、強い魔法でも手間はF級魔法のとあまり変わらないという訳でデバイスはとても便利だ。

 

「成る程。そう言うシステムだから、新しい魔法を使う為に...先ずは、そのF級魔法に鳴れる事。ですね」

 

「はい、その通りです。貸与したデバイスにB+級までの射撃魔法や防御魔法や拘束魔法のデータが入っていますが、他の魔法はデータをインストールしないと、レベル上げの指示をしてもエラーとなります。そういうミスの無いように、気を付けて下さいね」

 

ラステルさんは微笑んでアキラの確認に肯定し、後に注意点を説明した。どうやらフリーダムの初期は、B+級までのフォトンシューター・ラウンドシールド・プロテクション・リングバインドで計4つのデータしか入っていないようだ。少ないと寂しいな...今まで教わった4つの魔法を十分扱えるようにようになったら、欲しい魔法を追加していこう。

 

次は、デバイスのマスター登録について説明を受ける。手順は、フリーダムを持って合言葉を言う→応答のメッセージが聞こえて来たら、フリーダムに念話で自分の名前を伝える→登録完了とメッセージが聞こえたら登録の実行はお終い。メールアドレスとパスワードだけで済むサイトの簡単会員登録と少し似ているね。

 

「ラステルさん。その合言葉を教えて下さい」

 

「ごめんなさい。合言葉はデバイス一つ一つ違っていて、私は分かりません。取扱い説明書の中に、合言葉の紙が挟んでありますので確かめて下さい」

 

ラステルさんは翔に応えて、取扱い説明書に指差す。そして僕と翔とアキラは、合言葉を確認して教わった通りの手順に従い、マスター登録を行った。因みに僕の方の合言葉は“レジアス中将は、とてもお酒が好き”だった...レジアス中将って誰?とラステルさんに訊いたら、ミッドの首都クラナガンにある管理局地上本部の偉い人らしい。あと、翔の方は“甘い物を食べたら、ちゃんと歯磨きを”で、アキラの方は“優先する魔法訓練は、防御魔法と移動魔法”で二人共標語でした。

 

時間が余ったので、ラステルさんに色々質問したり、取扱い説明書を読んだりして過ごした。リインはホワイトボードで一生懸命、字を書く練習をしていたよ。

 

・・・・・

 

昼休み...クロノとエイミィとリンディさんを加えて僕達七人は食堂で昼食を食べている。座った席の位置は、昨日と変わっていない。

 

「リンディさん。昨日...この艦の通路に落ちていた海色宝石のデバイスについて、知っていますか?」

 

ウンディーネの存在について話したら、リンディさんとクロノとエイミィは難しい顔をした。デバイスの管理におけるトラブルだから無理もないよ...此方の問題に巻き込んで迷惑をかけたと、僕達四人は申し訳ない気持ちで一杯だった。

 

「ええ...アースラ乗組員の皆に訊いても、あのデバイスは如何いう経緯で通路に落ちていたのか...それが分からなくて、頭を悩ませているわ」

 

「あの...迷惑をかけてごめんなさい。あれはウンディーネと言うインテリジェントデバイスで、私を転生させた神様が私の為に送られた物なんです」

 

アキラはリンディさんに謝った後、ウンディーネの事を話した。リンディさんとクロノとエイミィは目を丸くしたが、肩の荷が下りたような感じで気が緩くなる。納得してスッキリしたから、さっきと逆で顔は明るい。

 

「アキラちゃん。午後の魔法訓練が終わったら、艦長室でデバイス個人所持の手続きをした後、ウンディーネを返します。これで構わないかしら?」

 

「はい、解りました。お手数お掛けします」

 

リンディさんに頭を下げるアキラ。許可と言うより手続きをするだけで、ウンディーネを返して貰えるようだ。良かったね...アキラ。

 

「あのね......勝手に調べちゃったから悪いんだけど、ウンディーネは良いデバイスだよ~。性能の高さは、レイジングハート・エクセリオンやバルディッシュ・アサルトと変わらないからね。おまけにカートリッジシステムも組み込まれてあるし」

 

「カートリッジシステム?」

 

「アキラ。カートリッジシステムは...日常で有り余る魔力を、予め特殊の薬莢に詰めておき...実戦でその薬莢にある魔力弾丸を使う事で、魔力注入に時間が掛かる強力な魔法を一瞬で発動出来るようにするシステムだ」

 

エイミィは少々興奮した様子で、ウンディーネについて伝えた。知らない単語を聞いて首を傾げるアキラにリインはその説明をする。その他に、残り少なくなった魔力を補充する使い方もあると聞いた。

 

「成る程。とても便利なシステムだね」

 

「だが、痛い欠点もある。使用者に大きな負担が掛かるそうだ」

 

カートリッジシステムに対して感嘆したアキラに、クロノは苦笑してダメ出しする。以前...なのはとフェイトに感想を聞いたところ、爆発の衝撃を受けた感じで心臓に響いて体がフラフラしたり、暫く臭覚がおかしくなって血が混じったようなニオイで気分が悪かったりしたとか。ふ~む、想像以上だ...どう考えても皇帝特権と同じ様に子供の身では、きつそうだな。

 

「となると...人の命に関わるような緊急事態に陥った時以外、そのシステムを使わない方が良いな」

 

「ところが...シグナムさんとヴィータちゃんとなのはちゃんとフェイトちゃんは、模擬戦で毎回カートリッジシステムを使ってるよ」

 

「「「え!?」」」

 

「若いのって...良いわねぇ~」

 

翔は気を付けようと言ったところで、エイミィは苦笑して驚くべき事実を話した。それで僕と翔とアキラは唖然としてしまう。理由を訊いたら、使い慣れる事で抵抗力を着けるという考えらしい。それと、羨ましがっているリンディさん...貴女はまだ若いですよ~。

 

「多少無理をする、しっかり休む、それを繰り返す事で超回復するというトレーニングの様な発想なのかな?」

 

「た、たぶん...私も思う」

 

「そ、そうだな...俺も思うぜ」

 

模擬戦でなのは達四人の行動に対して考えられる事を言うと、アキラや翔...この場にいる皆も同意見で頷いた。

 

「まぁ...カートリッジシステムを使うか使わないかは、ウンディーネと相談して決めると良いだろう」

 

「うん、解った」

 

アキラはリインの話を聞いて了解と頷いた。今は魔法の経験が浅いから、ウンディーネの判断に任せた方が良いよね...うん。予想だけど、カートリッジシステムの使用を認めるまで一年、早くても半年先かなぁ。それ以前に強力な魔法を習得しないと、カートリッジシステムの必要性が無いんだし...

 

『次は、レジアス・ゲイズ中将からの演説に移ります。......どうぞ』

 

皆と楽しく会話しながら昼食を食べている際...レジアス中将と最近知った名前が聞こえたので、気になって食堂のテレビを見たら、黒に近い茶髪で口の周りに髭を生やした角刈りのおじさんが映っていた。あの人がレジアス中将...厳つい顔で閻魔大王みたいに威厳があるな。

 

彼からの演説を聞いたところ...ミッド内の犯罪件数が上昇する現況、管理局地上本部の人手不足を解消する為に、魔法を使えない人でも戦力になるように質量兵器の運用を求めていると深刻なものだった。質量兵器って...ピストルとかライフルとか戦争に使う物なのだろうか? あれは魔法と違って、敵を気絶させるだけの便利な設定が出来ないから物騒な話だ。周りから「また言ってるわよ」「全く、懲りねぇな...あのオッサン」と聞こえたので、今の演説が最初ではないらしい。というか...自分の上司に向かってオッサン呼ばわりは良くないと思う。

 

あの演説以降、食堂の雰囲気はシリアスな感じになってしまったものの...引き続き、皆と会話を楽しんで昼休みを過ごした。

 

平和の為に質量兵器を求める位なら、ドラ丸と相談して何時か...レジアス中将に会って、安全な武器【ショックガン】か【ショックスティック】と、強力な盾になる【ひらりマント】か【バリヤーポイント】と、飛べない魔導師でも頼りになる【タケコプター】等、使える22世紀の技術を提供しようかな。タイムパトロール法か航時法だっけ...22世紀の地球はミッドの存在を知らないから問題ないと思う...たぶん。

 

・・・・・

 

リンディ達三人と別れ、食堂から移動して訓練室...ラステルさんとリインは自分の周りの距離を少し開けた。そして、ラステルさんは自分のデバイスであるペンダントを掲げ、リインは目を瞑って両腕を広げ、唱える。

 

「BCロッド、セットアップ!」

 

「騎士甲冑、展開!」

 

その二人は白い光に包まれ、暫くして収まると...先端に青水晶が付いた杖を持ち、肘までの白ロンググローブ・膝までの白ロングブーツ・黒タイツで上着に桜色が入った(裾の所)白いドレスのような服を身に纏ったラステルさんと...背中に四枚の黒い羽が生え、黒い羽の髪飾り・指抜きの黒グローブ・黒ショートブーツ・右足は黒ニーソックス左足は黒ショートソックスで上着に黒いミニスカートと黄色のラインが入った半袖の黒い服(腰マント付き)を身に纏ったリインが立っていた。ラステルさんのバリアジャケット...PS3ゲームのテイルズオブヴェスペリアで、登場するエステルの服装そっくりなんだけど...単なる偶然?

 

「ラステルさん。その服装...お姫様みたいですね」

 

「ふふっ...ありがとう」

 

スカートの様なものを掴む仕草で微笑むラステルさん。まぁ、エステルはエステリーゼお姫様だしねぇ...彼女とそっくりだから、アキラが言った事は間違いじゃない。

 

「リイン。ソックスの長さが左右と違うのは、ファッションなのか?」

 

「そう言われてもな...私の騎士服のデザインは、初代夜天の主が考案したものだ。翔から見て、私の騎士服はおかしいだろうか?」

 

「いや...全然おかしくねぇよ。なっ、仲人」

 

「うん。片足だけのニーソックスは個性的でおかしくないよ」

 

リインと話していた翔は顔を横に振った後...僕に振ってきたので、リインに微笑んで応えた。片足ニーソックスは何だか子供っぽいと、正直な感想なんだけど...精神は大人な彼女は傷つくかもしれないから、言えないな。

 

「次は、貴方達の番ですよ。さっき私がやった様に、フリーダムを掲げて“フリーダム、セットアップ”と唱えて下さい」

 

「「「はい! ......フリーダム、セットアップ!」」」

 

僕と翔とアキラはラステルさんに返事した後、カードを掲げてセットアップと唱えた。その途端、自分の周りは光に包まれる。フリーダムを持った自分の右手で形がカードから棒に変わるのを感じた。

 

暫くして包まれた光が収まると...自分の右手は100㎝位ある杖に変形したフリーダムを持ち、自分の身に纏ったバリアジャケットは黒い革靴・黒い長ズボンで上着は紺色のコート。右胸に管理局の▽エンブレムが付いている。なお、フリーダムのデフォルト設定なので、翔とアキラも僕のバリアジャケットと同じ。コスプレみたいな感じで、気恥しいよ。

 

「ふんっ、ふんっ......この重さは、飲み物が入った1.5リットルのペットボトルと同じ位だな」

 

杖になったフリーダムをブンブンと振る翔。あっ!? バリアジャケットの背中に大きな管理局の▽エンブレムがプリントされてる...右胸にも付いてあるから、漫画ドラゴンボールの亀仙流道着と同じ派手な表現だね~。

 

「皆さん。デバイスを手にした今の課題は、習得した4つの魔法ををB+級で素早く使えるようにする事。期限はありませんので...気にせず、どんどん訓練を重ねていきましょう」

 

ラステルさんの話が終わった後...僕と翔とアキラは、防御魔法を優先して訓練する。始めにE級の魔法を素早く使えるようになったら...D級の魔法訓練へと、少しレベルアップしていく流れで進めた。その間、ラステルさんとリインは飛行魔法で訓練室中央の高さ15mに滞空し、射撃魔法と防御魔法を使って攻撃と防御の組手をやっている。ショー並みに良いパフォーマンスで、見惚れてしまった...後で、その二人から念話で注意されたけどね。

 

15時前まで訓練を続けて、武装解除(デバイスを待機状態に戻す・バリアジャケットを解く)と終わりの挨拶をした後...僕達四人はラステルさんと別れて艦長室へ戻った。

 

・・・・・

 

艦長室に戻った後...アキラはリンディさんに呼ばれ、机の前に座ってウンディーネに関する手続きをしている。その間、僕と翔とリインは畳の上に座って、リンディさんから頂いたお茶を飲みながら談笑中。

 

「そう云えば...さっきの訓練でラステルさんと撃ち合いの時、リインは魔法を複数同時に使っていたよね。どうやって使ったの?」

 

「方法は、魔法を完成させるまでの行程を複数同時に進めるだけで良い。説明は単純だが、マルチタスクを鍛えないと難しいぞ」

 

「マルチタスク......ああ、同時に物事を2つ3つ考えて行動する技能か」

 

リインの説明を聞き、マルチタスクの意味を自己確認する翔。う~ん...魔法となると左手と右手にペンを1つずつ持って、左右違う絵を描くより難しいかもしれない。センスが良くないと、訓練で必死な努力が必要だな...

 

~side out~

 

 

~アキラ side~

 

私を転生させた神様から送られたウンディーネを返して貰う為に、リンディさんと手続きをした。この際...仲人と翔とリインの話を聞いて、マルチタスクを鍛えると魔法を複数同時に使えるらしい。魔法って、奥が深いね...見た事が無いけど、ネギ先生魔法使い達も魔法を複数同時に使えるのかな?

 

「アキラちゃん。これで手続きは終了よ。手間を掛けてごめんなさいね...ウンディーネを返します」

 

「いえ...リンディさん。ありがとうございます」

 

書類に目を通したリンディさんは微笑んで、机にある書類の横に置いてあったウンディーネを此方に差し出す。それを受け取ってお礼を言った。ウンディーネに呼び掛けても反応がないから、今でもスリープモードかな?

 

「自分専用のデバイスを得て、貸与したデバイスの必要が無くなったのよね...此方で処理しておくから、返してくれるかしら?」

 

「はい、解りました。貸して頂いたデバイスをお返しします」

 

返事してデバイスケースに収めたフリーダムを、リンディさんに返却した。これを借りた時間は、意外と短かったね。

 

その後...私とリンディさんは机を片付けて、仲人達三人の輪に加わった。喉が渇いたので、リンディさんにお茶をお願いする。彼女は気遣いで、お茶を淹れて直ぐに砂糖とミルクを入れようとしたので、慌てて止めさせた。ふぅ~危なかった...

 

「リンディ提督。アキラとウンディーネの契約や性能の確認をしたいのだが...訓練室を使って良いか?」

 

「訓練室の使用はフリーになっているから、いつでも使って良いわよ」

 

リンディさんは、自由に使って良いとリインに答えた。但し、無断で模擬戦(組手は別)は禁止である。うん、勝手な戦いは暴力な喧嘩と変わらないからね。あと、訓練室が壊れるからS級以上の魔法の使用も禁止だって。

 

「リンディさん。なのは達魔法部は、まだ来ていませんね...今、15時半過ぎですよ」

 

「......フェイトちゃん達なら、今は射撃訓練室に居ると思うわ」

 

リンディさんはお茶を口に含んだ後、仲人に答えた。15時半から17時まで(家族に連絡すれば延長は出来る)になっているから、アースラに着いて直ぐ魔法の訓練を始めているようだ。確かに、ゆっくりする時間が無いね...私達も四月から学校に通い始めるから、他人事ではないけど。

 

休憩?した私達五人は艦長室を出て、訓練室へ移動した。私達やなのは達の様子を見る為にリンディさんも一緒だ。

 

・・・・・

 

私は訓練室の真ん中に立ち、皆は少し離れた場所で横一列になって此方の様子を見ている。そして、ウンディーネから契約について教えて貰った。方法は契約起動呪文を唱え、初めてセットアップするだけ。契約起動呪文は詩のようで、管理局から借りたデバイスの合言葉より長い...

 

『契約についての説明は以上です。私の口に合わせて、さっき教えた契約起動呪文を唱えて下さい』

 

「うん、解った」

 

『「我、使命を受けし者なり。契約のもと、その力を解き放て。水は温もり、水は安らぎ、水が集う海は生命の母、そして労わる心はこの胸に、この手に魔法を。ウンディーネ、セットアップ!』」

 

ウンディーネを胸に添えて呪文を詠唱し、最終的にセットアップと唱えた。その途端、自分の周りは光に包まれる。手に持っていたウンディーネが無くなるのを感じた。

 

暫くして、光が収まると...前のと違うバリアジャケットを身に纏っていた。

その服装は...

頭部:プラチナ製のティアラ。髪型に変化はない。

胴部:袖口部分は黄色の半袖で胸部に黄色いリボンが付いた水色の服。

腕部:肘丈で嵌め口部分は黄色の水色ロンググローブ。右手首に銀色の腕輪。

腰部:裾の部分は黄色の水色ミニスカート。後ろは腰マントで覆っている。

脚部:白ニーソックス。膝丈で履き口部分は黄色の水色ロングブーツ。

身に締まる感じ...下着はスクール水着になっているようだ。あと、ロングブーツはスマートで丈夫そうだけど...意外と足首が自由に動けるので、普通の靴と同じ様に歩き易い。

 

「襟の近くにある黄色いラインがセーラー服っぽい...お姫様が身に着けている様なティアラがあるから、プリンセスアキラって感じだね」

 

仲人に、お姫様みたいと言われた...う~、こんなの初めてだから、恥ずかしくて顔を仲人達の方に向けられないよ...

 

「だな...俺も思うぜ。それより...セットアップしたのに、武器を持ってねぇぞ...ウンディーネは何処にあるんだ?」

 

翔も、そう思うんだ......そう言われてみれば、管理局から借りたデバイスと違って杖とか何か持ってない...ウンディーネは何処にあるのかな?

 

「見たところ...アキラの右手首に装備した銀色の腕輪が、ウンディーネだ。その腕輪に菱形の海色宝石が付いているぞ」

 

「珍しいわね...ウンディーネは、シャマルのクラールヴィントと似たタイプなのかしら?」

 

『これで、契約が完了しました。名前かマスターと、どちらでお呼びすれば良いですか?』

 

リンディさんが話した後に...リインの予想通り、右手首にある腕輪からウンディーネの声が聞こえて来た。う~ん...マスターと呼ばれるのは、慣れていないから名前の方が良いな。

 

「マスターと呼ばれるのはちょっと......出来れば、名前でお願い」

 

『了解しました。次は私の使い方について説明します』

 

ウンディーネは呼び名が決まった後、使い方の説明を始めた。救助活動の事も配慮して、腕輪形態のリングフォームと槍形態のトライデントフォームで、手持ちの武器が有りと無しとなっている。デバイス起動状態なので、武器を持たないリングフォームでも、魔法のレベルを上げて行使する事が出来る。但し、カートリッジシステムを使えるのはトライデントフォームだけ。

 

「成る程。そんな理由で、武器を収めた状態なのか...救助活動をする時、被災者を担ぐのに武器有りだと邪魔になるもんな」

 

「ふふっ、そうね...アキラちゃん。将来、管理局の正式局員になったら救助隊に志願してみる?」

 

「はい。実力を身に着けて人の役に立てたいです!」

 

翔の成程な話を聞いて、微笑んだリンディさんの質問に力強く答えた。生前...親友の裕奈から「アキラってさ、誰よりも運動能力が凄いよね~困った人に優しい性格だから、レスキュー隊に向いていると思うよ?」と言われた事があるから、将来は救助隊に入ろうかな。

 

『アキラ。私を武器形態に変えてみましようか。右手を翳して、トライデントフォーム、チェンジと指示を出して下さい』

 

「うん。......トライデントフォーム、チェンジ!」

 

言われた通りに右手を翳して指示を出すと、ウンディーネは腕輪から、自分の身長より少し長いフォークみたいな槍に変形した。三又の刃と柄を繋ぐ部分に菱形の海色宝石が付いている。深夜の修行で、セレンさんから借りた槍のレプリカより少し軽いな。

 

「それが三又の槍...初めて実物を見たよ(テイルズオブエターニアで登場する水の精霊ウンディーネが持っていた武器だ)」

 

「ふむ...今まで槍を扱うベルカの騎士達を見てきたが、あんな形状の槍は初めて見るな」

 

仲人とリインは、三又の槍になったウンディーネを見詰めてコメントした。私も、見るのは初めてだよ。

 

『そう云えば...アキラ。槍を上手く扱えますか?』

 

「今は上手くないけど...セレンさんから、槍の扱いを学んでいるよ」

 

『良い師が、おられるのですね。槍を使いこなせる日を楽しみにしています』

 

「うん、頑張る。でも私は武術の才能が無いから、あまり期待しないでね」

 

『ふふ...才能は関係ありません。重要なのは経験ですから...最後に私の固有魔法を一つ、此処でお見せしましょう......レーザートライデント!』

 

すると...ウンディーネの海色宝石が更に光強く輝き、三又の刃に水色の光が纏った。その間、何か吸い取られている様な感じがする。たぶん、私の魔力だと思うけど。

 

「おお!? テレビアニメのガンダムで、出てくる武器のビームサーベルだ...三又の形だけど」

 

「それは...魔力付与か」

 

『ええ、その通りです』

 

光の刃を見て感嘆する翔。ウンディーネは、リインに応えて説明した。レーザートライデントのレベルは、F級からSS級まで...今のレベルはC級。防御魔法か結界魔法によって形成した魔力の壁に対して、レーザートライデントのレベル以下であれば、抵抗も無く簡単に破壊出来るウンディーネの固有魔法。とても強力だが、突きによる攻撃しか効果が無い。この魔法をフルに生かせるように、頑張って槍の腕を上げよう。

 

因みに固有魔法とは、デバイスの特性に依存した特殊な魔法の事。

 

「そ、その魔法より高いレベルの防御魔法で、無理に防御すれば...魔力を無駄に多く消費して不利になってしまう。回避した方が良いわね」

 

「うわ...槍の腕が上がれれば、模擬戦とかでアキラの敵になりたくねぇな」

 

「フフ...翔よ、アキラだけではないぞ。私も素手で、レーザートライデントと似た効果を持つ魔法のシュヴァルツェ・ヴィルクングを使える」

 

「そ、そうっすか...(そう云えば、アニメで闇のリインが防御魔法を簡単に破って、なのはを吹き飛ばした描写があったな...忘れてたぜ)」

 

「あはは...相手に近づかなければ、恐くないと思うよ。対抗手段は、射撃魔法か砲撃魔法を使うとか」

 

リンディさんの話を聞いて恐怖し、不敵な笑みを浮かべたリインの話を聞いて項垂れる翔。そんな彼を見て苦笑しながら対処法を言う仲人。成る程...避ける訓練も頑張らないとダメだね。

 

『近づかなければ、恐くない? その考えは甘いですね。移動魔法で高速接近すれば良いだけの事。それに...もう一つ』

 

「えっ、ウンディーネ。何かあるの?」

 

『はい。私を人の居ない方向に向けて“貫け”と叫んで下さい』

 

「うん、解った......貫け!」

 

「「「「!?」」」」

 

周りを見回した後、言われた通りにウンディーネの先端を人の居ない方向に向けて叫んだ。すると...光の刃から、三又の槍と同じ形をした水色のレーザーが発射した。現在のレベルはC級なので、レーザーが着弾した壁に損傷は無い。それを見ていた仲人達四人は目を見開く。私も驚いてウンディーネを見た...あ、光が消えて刃が元に戻ってる。

 

「もしかしたら、と思ったけれど...」

 

「あの魔法、遠距離攻撃も出来るのか...」

 

「おいおい...マジかよ」

 

リンディさんと仲人と翔は、レーザーが飛んで行った方向と此方を交互に見て、冷や汗を流しながら呟いた。うん、私も同じ気持ちだよ。

 

「あれを放ったら、魔力付与が解けてしまったな...連射は不可能か」

 

『ええ、それが難点です。レーザートライデント飛ばしは、相手が防御魔法を使って、油断しているところを狙い撃つという支援攻撃に向いていますね』

 

「えげつないね...その戦法」

 

ウンディーネはリインに応えた。その話を聞いて顔が引きつってしまう。防御魔法を使っている間、この場から移動出来ないと訓練で気が付いたから。

 

その他は魔法の経験を十分積んでからと言う事で、ウンディーネのテスト使用は終了となった。武装を解除した後...私達五人はフェイト達の様子を見に、此処から隣にある射撃訓練室へ向かった。

 

~side out~

 

 

~仲人 side~

 

射撃訓練室に入って...リンディさんは、部屋の端に立っているラステルさんの元へ向かった。僕達四人は邪魔にならない場所から射撃位置の方を見ると...なのはとフェイトとアリサとすずかは一生懸命、射撃魔法の訓練をしていた。なのはとフェイトは、デバイスを使っていないようだ...魔法の先輩として、手本を見せているのだろうか? 因みに、なのはは桜色の魔力弾、フェイトは黄色で電気玉な魔力弾、アリサは赤色で火の玉な魔力弾、すずかは白い粒と煙で渦巻いた青色の魔力弾。

 

「驚いたな...アリサは将と同じ炎熱で、すずかは珍しい凍結。二人共、魔力変換資質を持っていたとは...」

 

アリサとすずかを交互に見詰めて呟くリイン。魔力変換資質...確か、シグナムの燃える剣やフェイトの電撃と云った、属性を無から火属性や雷属性等に変える力だったかな...此処で3属性揃っているから、まるでファイナルファンタジーでお馴染みの魔法のファイア・ブリザド・サンダーだね...

 

「なのはとフェイトは凄い...リインと同じ様に百発百中で的に当ててる」

 

「流石、魔法の経験者だぜ...アリサとすずかは、俺と仲人とアキラの様に当たったり外れたりするのにな...」

 

「そうだね...頑張って、なのはとフェイトとリインに追い付こう」

 

アキラと翔の呟きに応えた後、射撃位置を眺める。すずかは気にしていないようだが、アリサは悔しがっているようだ。開いてしまった経験の差は、負けず嫌いな彼女にとって辛いと思う。けど、今の内だけだよ。

 

数十分経って17時前になり、なのは達の訓練が終了した。なのは達四人は此方を見てビックリする。訓練に集中していて、気付かなかったようだね。

 

「アンタ達...会いに来たのなら、直ぐ声を掛けなさいよ! 今まで気付かなかった私は、バカみたいじゃない!」

 

「ごめん。アリサ達は一生懸命、訓練に励んでいたから...邪魔しちゃ悪いなと思って」

 

「まあまあ、アリサちゃん。落ち着いて」

 

顔を紅くして此方に文句を言ってきたアリサに、代表して謝った。そして、すずかは彼女を宥める。ふ~む、怒らせてしまったか...難しい性格で判断に悩むな。

 

「っ...そういう理由なら、許してあげる。訓練の邪魔になるとか気にしないから、今度からは声を掛けなさい。解ったわね?」

 

「うん、解った。挨拶が遅れたね...皆。こんにちは~」

 

アリサに了解と答えた後...リンディさんを含む僕達五人となのは達四人は、お互い挨拶した。平日は、会う時間がそんなに無いけど...

 

「ねぇ、アリサ、すずか。射撃魔法は如何だった?」

 

「手順を覚えて使えるようになったけど、魔力注入を早くするのが難しいわ。無理して早くしたら、魔力弾がパンクして失敗しちゃったしね」

 

「他に、魔力弾を的に当てるのが難しいかな。なのはちゃんやフェイトちゃんは、必ず的に当てられるから凄いよ」

 

アキラがアリサやすずかに訊いたところ、感想は僕達三人と同じようだ。

 

「にゃはは...九ヶ月間、魔法の訓練を頑張ってきたから当然の結果なのっ! アリサちゃんやすずかちゃんやアキラちゃん達も、同じ時間を掛けて訓練をすれば、きっと私の様に上手くなれるよ」

 

「くっ...仕方ない不公平とは、この事ね。いつか...追い付いてみせるから、見ていなさいよ」

 

「私も、負けないからね! 去年の五月...魔法の経験は私の方が上なのに決戦でなのはに負けてしまったから、アリサやすずかやアキラ達が相手でも油断出来ないんだ」

 

なのはの自慢にカチンときたアリサは、見返してやるとライバル宣言する。其処でフェイトは、慢心せず頑張って自分も強くなると応えた。彼女は本気だ...敗北を糧にすると言う奴か。ライバル関係は、そんなものなのかな?

 

「なぁ、仲人。魔法や武術など関わった事で、俺とお前の関係が親友兼ライバルになる...のか?」

 

「翔とライバル? う~ん...悪い意味でもないから、そう言う関係で良いんじゃない?」

 

現に、お互いライバルを持った会社はサービスが良いし、販売される製品も満足出来る物が多いからね。競い合う事で社会が成り立っていると思う。

 

「リンディ提督。昨日行った適正検査の結果...アリサとすずかは、どんな魔導師に向いているんだ?」

 

「確か...アリサちゃんは砲撃タイプで、すずかちゃんは高機動タイプよ。それに、二人も飛行魔法の資質はあるわ」

 

「ふむ、二組同じタイプか...使える魔法が増えてきたら、アリサはなのはに、すずかはフェイトに、自分の戦い方を教えて貰う方が良いな」

 

リインはリンディさんと話している。ラステルさんは自分の仕事があるそうで、此処に居ない...本当に、お疲れ様です。話を聞いたところ、アリサとすずかのデバイスは、なのはとフェイトのと同じデザインになりそうだね。

 

「あっ、アキラ。そのペンダント...デバイスだよね?」

 

「うん。今日の朝、デバイスルームで会って...さっき契約したばかりだよ」

 

『初めまして。ウンディーネと言います』

 

ウンディーネを見て気付いたフェイトの質問に答えるアキラ。それからウンディーネは、なのは達四人に自己紹介する。インテリジェントデバイスと理解したなのはとフェイトはビックリするが、直ぐ笑顔になってレイジングハートとバルディッシュを紹介した。アリサとすずかは、その様子を見詰めながら早く自分専用のデバイスが欲しいと羨ましがっている。

 

「アリサ、すずか。僕と翔も自分専用のデバイスを持っていないよ。羨ましい気持ちは分かるけど、いつか...必ず手に入るから首を長くして待とう」

 

「っ...べ、別に。私は羨ましいなんて、思ってないわよ!」

 

「アリサちゃん。そう否定されても...顔に出てるよ」

 

苦笑してアリサとすずかをフォローする。アリサは動揺して顔を横に振りながら、羨ましくないと否定したけど...すずかの言う通りだよ。アリサは素直じゃないなぁ...それを直さないと、反応が面白くて弄られ易いと思う。

 

「自分専用のデバイスが手に入るまで、管理局から貸して貰える共有デバイスを使ってドンドン魔法の経験を積んでいこうぜ」

 

翔はカード形態のフリーダムを、アリサとすずかに見せながら話した。自分専用のデバイスが早く出来ると良いね。なのはとフェイトのデータがあるから、アリサとすずかのデバイスは僕と翔の分より先に完成すると思うよ。

 

こうして皆と楽しく話をし、リンディさんやなのは達四人と別れた後...僕達四人は【どこでもドア】がある艦長室経由でうみなみ寮へ帰宅した。なのは達四人は、リンディ達ハラオウン一家が住んでいるマンションの屋上を座標に転送ポートを通って海鳴市へ戻っている。なのはは自宅まで歩いて帰るが、アリサとすずかはお迎えのリムジンで帰宅している。

 

~side out~

 

 

今から少し時間を遡り、うみなみ寮の庭では...

 

「生意気にでかい家だな」

 

インターフォンを鳴らさず無断で門をくぐり、うみなみ寮を眺めている中年男の侵入者。外見は、やや茶色の黒髪ボサボサで口の周りに髭を生やしており、鼻が赤めで少し大きい。服装はボロボロで汚れた白いシャツと黒ズボン。

 

「オレの名は熊虎鬼五郎。この家にある金を、いただく」

 

鬼五郎と呼ばれる男はピストルをズボンのポケットから出して手に持ち、小さい子が見たら泣いてしまう様な鬼形相でうみなみ寮の玄関に近づく。扉を静かに開けて中に入って行った......が、

 

「!?」

 

突然、鬼五郎は黒い煙に包まれた!

 

煙が晴れると、鬼五郎は黒焦げになって仰向けに倒れていた。怪我は無いが、白目をむいた気絶状態。これは...一体、何が起きたのだろうか?

 

・・・・・

 

「「「「......」」」」

 

【どこでもドア】でアースラから戻った後...玄関の扉が開いたままであると気付いて不審に思い、玄関に入った仲人達四人は気絶状態の鬼五郎を見て唖然としていた。

 

「パパ~、ママ~。おかえりなさいですぅ......!?」

「皆。おかえりなさい......!?」

 

東の廊下から玄関に来たリアンとドラ丸も鬼五郎を見てビックリする。

 

「ただいま~。......ねぇ、ドラ丸。この人は如何したの?」

 

「このおじさんは、泥棒だろうね...うみなみ寮の警備員を任せた【N印おもちゃの兵隊】にやられたんだ」

 

ドラ丸は、鬼五郎に指差しながら訊ねた仲人に答えた。【N印おもちゃの兵隊】はドラ丸が出して「寮内の安全を守れ」と指示した秘密道具。現在、うみなみ寮の何処かに潜んでいるようだ。【N印おもちゃの兵隊】とは未来の仲人がアイテムクリエイションで造られた秘密道具【おもちゃの兵隊】の改良型。その改良点は、例え肩を軽く叩いて呼ぶだけで敵と決めつけ攻撃しないようにAIの強化である。

 

「以前、セレンさんが言っていた空き巣って...この人なのかな?」

 

「多分な...(この男、臭うな...何日風呂に入っていないんだ?)」

 

「兎に角、急いで警察を呼ばねぇと......目が覚めたら面倒だ(このおじさん...何処かで、見た事があるようなないような)」

 

アキラとリインの会話を余所に、翔は直ぐ自分の携帯電話をコートのポケットから取り出して110番と警察に通報する。

 

「用心深く、身動き出来ないように縛っちゃえ...ですっ!」

 

「そうだね......ドラ丸。縄はある?」

 

「あるよ~」

 

電話している翔を除いて仲人達は、ドラ丸が【四次元ポケット】から出した縄で鬼五郎を拘束する。リインは古代ベルカの戦乱時代より敵を拘束する経験があるらしく...縄抜けに困難を極める程、縛るのが上手い。

 

その数分後...一台のパトカーがうみなみ寮門前に停まり、二人の警察官が来て鬼五郎を回収(逮捕)した。

 

警察によると、鬼五郎は前科九十七犯の脱獄囚だそうだ。“ドラえもん のび太のねじ巻き都市冒険記”と云う映画を見た事がある仲人と翔は、名前を聞いて心底驚き「あの人、また刑務所から脱獄するな...」と思っていたと云うのも余談である。

 

 

つづく...

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。