2月2日(木)...午前3時になって、ドラ丸とリアンを除く仲人達四人はセレンとの修行を受けた。修行の内容で特筆する所は無く、いつもの通り。
仲人達の朝は何事も無く過ごし、魔法の訓練は順調だ。アキラは今回から、昨日契約したウンディーネを使用して仲人や翔と魔法の訓練をしている。午前と午後の時間を使って、地道に今まで教わった4つの魔法の熟練度を上げていった。その間、リインは自分の字を気にしているようで、研修室でミッド語・ベルカ語・日本語を書く練習をした。
放課後...仲人達四人は買い物があるので、なのは達四人と会わなかった。仲人はお金を取りにドラ丸の元へ行く際、リアンに抱き付かれて「翠屋のシュークリームを食べたいですぅ」と強請ってきたので、買い物の帰りで翠屋に寄る事になった。なのは達四人の魔法訓練で、アリサとすずかは防御魔法であるラウンドシールドとプロテクションを教わり、なのはとフェイトと一緒にその魔法の訓練をした。知っているように今回の防御魔法のレベルは、デバイスを使わなくても出来るF級だ。魔法教育担当のラステルに教えられ、防御魔法は魔法の中で一番重要であるとアリサやすずかは理解している。
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夕食を食べて後片付けが終わった仲人達六人は、リビングでテレビを見たり楽しい話をしたりして寛いでいる。入口やテレビがある東から順に、南のソファで仲人・リアン・リイン、北のソファで翔・アキラ・ドラ丸。
寛いでいる中...アキラの携帯電話が鳴る。アキラは携帯電話を開いて画面を確認すると、なのはからのメールが来ていた。その内容は...
『こんばんは。今日はアキラちゃん達と会えなくて残念なの。でも、明日会えたらいいな。私からお願いがあるんだけど、明々後日の日曜日に友達とうみなみ寮へ遊びに行っていいかな? 理由は今日、友達とお話しして、うみなみ寮の中は如何なっているのかなって気になったんだ。都合が悪かったら別の日でいいよ。いいお返事を待っているね』
「皆。なのはからのメールで、此処へ遊びに行きたいと書いてあったよ。明々後日の日曜日は大丈夫かな?」
読み終えたアキラは仲人達五人を呼んでメールの内容を伝えた後、その日で良いか?と訊ねた。
「土曜日は、皆で海鳴市の色んな所を回る予定があるけど...日曜日の予定は、まだ決まっていないね。僕は構わないよ」
「楽しい休日になるから、俺は大歓迎だ」
「私も構わない。ドラ丸とリアンを紹介する良い機会だからな」
「お友達が増えるなら、リアンは嬉しいですぅ~」
「僕もリアンと同じだね。皆で遊べる秘密道具も沢山あるよ」
誰一人も反対は居なかったので即決定となり、アキラはなのはとメールでやり取りする。昼食は秘密道具の披露を兼ねて【グルメテーブルかけ】を使うって事で、なのは達がうみなみ寮へ遊びに来る時間は午前10時と決まった。
「そう云えば、リインは土曜日の夕方にはやての家へ実家帰りするから明々後日の日曜日は、はやてを連れて此処に戻る形になるね」
「ふふっ...そうだな」
リインは八神家にも家族である為、仲人の言う通り毎週土曜日の夕方は八神家へ帰る事になっている。勿論、リインの娘であるリアンも一緒だ。
少し時間が経って午後8時前になり...アキラとリインとリアンは、お風呂に入る為にリビングを出て自分の部屋へ戻って行った。
「なぁ、仲人。明日は金曜日だから、セレンさんとの修行でスーパーマリオみたいなアスレチックをやるよな。ミス無しでいけそうか?」
「う~ん...分からない。たぶん、前回より難易度が上がっていると思うよ」
「あー、そうだった。まぁ...ミスしてもやり直しされるだけだし、諦めないで頑張って行こうぜ」
「うん、そうだね」
その後、仲人達三人はリビングの中を片付けて自分の部屋へ戻って行った。
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2月3日(金)...仲人達四人は、深夜にあるセレンとの修行で3つの科目(拳法・剣術か槍術・気法)をこなし、とうとうスペシャルアスレチックの時間がやって来た。
トラック(乗り物のトラックではない)側に出現したステージは前回と同じなのだが、仕掛けの配置や速度が若干違う。今回の難易度はNORMALだ。
「私は一定時間ごとに光弾を1発撃って妨害しますので、避けるか防御魔法で防いで下さいね。当たったら攻略中のステージの最初からやり直しです」
「「「えぇっ!?/げっ!?」」」
セレンは微笑んで進行妨害を宣言する。聞いた仲人とアキラと翔は不満の声を漏らして項垂れる。逆にリインは余裕な表情で頷いた。リインにだけ、攻撃が激しいハンディキャップがあると予想されるが、そうでもないようだ。
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多くの立方体ブロックで10段積まれた高さ10mの横三角柱みたいなピラミッドが3つあり、落ちてミスになる所は一つも無い第1ステージ。
「うわっ!? 危ねぇ...」
ステージの左側...フィールドに立つセレンがピラミッドの上へ放った白い光弾を、しゃがんで避ける翔。光弾の大きさは直径23㎝で、速度は小学生が強く投げたドッジボールと同じなので、頑張れば躱せる。
「セレンさんは、正確に当ててくるね...早く避けないと当たっちゃう」
「アキラ。そんなの当たり前だよ。攻撃が下手な最高神は居ないって」
「...っ!? アキラ! 仲人! 喋っている暇は無いぞ!(あれは、気で形成された弾なのか...くっ、感知出来ないから目で確認するしかないな)」
登っているピラミッドを後ろ一段降りてセレンの光弾を躱したリインは前に居るアキラと仲人に叫んで注意する。セレンの光弾を感知出来ないと判り、リインは焦っていた。仲人達四人は、いつか・・気法で気を探る技能を身に着けたら、その光弾を感知出来るだろう。
仲人達四人は、ステージの左側に居るセレンに注意しながら、早く3つのピラミッドを越えて第1ステージを突破した。
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下の赤いマットに落ちてミスになる所を、幅跳びや平均台渡りや懸垂梯子渡りのアクションで越えて行く第2ステージ。
幅跳びは勿論、平均台は早く渡れれば良いので難しくは無かったのだが...
「...っ!? ラウンドシールド!」
懸垂梯子渡り中のアキラは右手だけでぶら下がりながら、セレンの光弾に向けて左手を突き出し防御魔法で防いだ。懸垂中は躱すのが難しいので、さっきアキラがやったように防御魔法で防ぐのが妥当である。
アキラの後に続く仲人と翔とリインも、その方法で懸垂梯子渡りエリアを突破した。
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前後・左右・上下と往復に動く数々のリフトから落ちないように、タイミング良く跳び渡る。それだけの第3ステージ。
リフトの上は狭いので、躱すのは難しい。其処で仲人達四人は防御魔法とリフト跳び移りの繰り返しで進んだ。そしてミスは一つも無くクリア。
仲人達四人は気付いているかどうかは、判らないが...実はリフトの動きを見る、セレンに注意を向ける、一度に2つ行動するので、マルチタスクの訓練にもなっている。
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大きい三日月型の振り子ギロチンと巨大ハンマーが、何基も設置された第4ステージ。今回の難易度はNORMALなので、速度がEASYより速い。
セレンの光弾に注意し、タイミング良く進む点は第3ステージと同じ。加えて足場は悪くないので躱すのも難しくない。仲人達四人は、このステージもノーミスでクリアした。
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第4と第5ステージの間にある中間地点で息を整えて、少し休憩している仲人達四人。なお、ステージに出ない限り...セレンは攻撃して来ない。
「ふぅ...これで半分か。前回と比べて倍近く疲れた...」
「うん、私も」
「そうだな。セレンさんは、よそ見や仕掛けを抜けた直後などの隙を積極的に狙ってくるから、えげつねぇ...」
「ふふっ...それでも、前回の反省を生かして最後まで気を抜かず、進んだからノーミスで此処まで来れたんだ。誇っていい」
疲れた顔をして呟いた仲人に、アキラと翔は苦笑しながら応える。続いてリインは微笑んで、此処までの好成績を褒めた。仲人と翔とアキラは正直言って、セレンに対して恨めしい気持ちがあるが...自分の為だと思い、割り切っている。
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プロペラの様に回るファイアバーが沢山コースに配置された第5ステージ。
「うわっと! やっぱりかよ...」
横に縦回転のファイアバーがあって早く登らないといけないハシゴを突破した所を狙って左から飛んで来たセレンの光弾をサイドステップで躱す翔。最後まで気を抜かない典型的なアクションだ。
「...っ!(此処まで来て、やり直しは嫌)」
最後の難関、水平に回るファイアバー4本の3段式プロペラを突破したアキラは一旦、前進を止めバックステップでセレンの光弾を躱す。そして、全力で走りゴールした。もし、ゴールしか目になかったら当たったかもしれない。
後に続く仲人や翔やリインも、アキラと同じ流れでゴールした。見事にミス無しでクリアなので、仲人と翔とアキラはリベンジ出来たと言える。
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「なあ、次のステージで防御魔法は難しくねぇか? 足場が悪いから、弾を避けるのも難しいぜ」
第5と第6ステージの中間地点で第6ステージを眺めながら、皆に訊ねる翔。
「確かに、防御魔法を使って防いでいたら...足場が消えて落ちるな」
「そうだね。防御魔法を使っている間、移動は出来ないから」
リインは、第6ステージの空中で出たり消えたりする立方体ブロックの足場(一辺50㎝)の数々を見ながら答え、それに頷くアキラ。修行の意味が無くなるので、リインは飛行魔法を使わない。
「防御魔法も回避行動も難しいとなると、他の手段は......あっ! 射撃魔法の存在を忘れてた」
「「「あっ」」」
射撃魔法があると気が付いた仲人に対して、翔やアキラやリインも気が付く。もし、スペシャルアスレチックが始まる前にセレンが射撃魔法も口にしていたら、仲人達四人は最初から使っていたのだろうか?
「でもよ...今の腕前じゃ、迎撃の自信がねぇぞ」
「うん、当たったり外れたりする私も自信が無いかな」
「そう言われても...やらなきゃクリアは出来ないよ」
「魔力弾を形成して何時でも撃てる状態にしておき、絶対に当てられる距離まで光弾が近付いて来たら撃てば良い。きっと上手くいく筈だ」
リインは、迎撃に自信が無い仲人と翔とアキラにアドバイスした。距離が近ければ近いほど、当たり易いと云う単純な話。ただ...自分に向かって来る弾を迎撃する場合は、勇気が要る。
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決まった空中の位置で出たり消えたりするブロックの足場を跳び渡って、高い壁や落ちたらミスになる赤いマットを越えていく第6ステージ。但し、ブロックの足場が出る順番は前回と異なる。
仲人達四人は常に、利き手に魔力弾を形成しておき、セレンの光弾を迎撃しながらブロックの足場を跳び渡って進んだ。勿論、ブロックの足場が出る順番を見て覚える時でも、セレンの光弾が飛んで来るので回避も忘れない。
それを3回繰り返して3つのエリアを突破し、見事ノーミスでクリアした。
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「あれ? スネークブロックのスタート位置が前回と違う」
「矢張りか...あれの進むコースが前回と違うと考えた方が良いな」
「うへぇ...注意する事が多いから頭の中がパニックになりそうだ」
第6と第7ステージの中間地点で第7ステージのスタートにある薄い紫色のスネークブロックを見て呟く仲人とリイン。スネークブロックの動きや仕掛けの動きやセレンの妨害で、3つの対応が忙しい上に考える時間も少ないから、翔が頭を抱えてしまうのは無理もない。
「やっぱり“慣れ”だよね...前回は何度も再チャレンジした上で、このステージをクリアしたんだし」
「ははは、そうだね...前回、1ミスだけでクリア出来たリインは凄いけど」
仲人は苦笑してアキラに応える。そう、リインは前回...このステージの仕掛けを余裕で回避していた。一度のミスはスネークブロックをあまり知らなかった故に、不覚をとってしまっただけである。
「私が先に出よう。皆は此処でスネークブロックの動きを良く見て、進行コースを覚えておくんだぞ」
リインは気を引き締めて仲人達三人に言った後、射撃魔法のブラッディダガー(レベルはF級)を2本形成して両手に持つ。それからスネークブロックの上に跳び乗って第7ステージへ突入した。
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前後左右上下へとクネクネ動く一辺50㎝立方体を3×15で組まれたスネークブロックに乗り、下に落ちないように注意し、第4と第5ステージにあった仕掛けを回避しながら進む第7ステージ。進行コースは前回と違う。
第一関門...スタートしたスネークブロックは、5m進んだ所で左へ10m前へ3m右へ10m前へ3m左へ10m前へ5mとジグザグに進む。途中で左端と右端に水平回転ファイアバー4本のプロペラが設置されている。左端は時計回りで右端は反時計回り。
リインは自分もスネークブロックの動きに合わせて移動し、左端のファイアバーを縄跳びの様に跳んで回避する。次に右へ移動する時、普通はセレンに背を向けてしまうので、蟹みたいに横歩きでセレンの光弾に対処しながら進む。それから右端のファイアバーを跳んで躱し、左へ進んで第一関門をクリア。スネークブロックは待ってくれないので、防御魔法は使わない。
第二関門...スネークブロックは右へ8m前へ3m左上へ階段20段あとに左へ6m、折返し下降(前へ15m下へ1m後ろへ15m下へ1m)×5回、前へ15m左へ5m進む。折返しコースの右隣に水平回転ファイアバー4本のプロペラが設置されている。その回転軸に柱があり、スネークブロックの高度に合わせて高さを変えてくる。回転向きは反時計回り。
リインは横歩きでセレンの光弾に対処しながら右へ進む。次に階段状のスネークブロックを登りながら左へ進む。それから折返しコースで、セレンの光弾やファイアバーを11回躱して前へ進み左へ曲がって第二関門をクリア。
第2・3・6・7ステージの全体は円周を四分の一にした様な左曲線になっているから、此処でカメラ(第三者)視点の向きを左へ90°水平回転。
第三関門...スネークブロックは右へ5m前へ3m★前へ4.5m右へ3m★右へ5m上へ15m左へ9m後ろへ8m下へ15m前へ4.5m★前へ4.5m右へ3m★右へ5m上へ15m左へ9.5m下へ15m右へ4.5m★右へ5m前へ7m進む。★の所にコースを横切る大きい三日月型の振り子ギロチンがある。ループがあるので、振り子ギロチン避けは5回。
先ず振り子ギロチンを2つ抜けたリインは、一時的にスネークブロックの動きが遅くなったのを見て“次は垂直に上昇する”と直感し、急いで先端へ移動する。次にスネークブロックの垂直上昇中と垂直下降中は足場の面積が50㎝×150㎝で狭い為、リインは射撃魔法でセレンの光弾を迎撃する。それから再び、振り子ギロチンを2つ抜ける。セレンの光弾を迎撃して二度目のルーブをやり過ごし、最後の振り子ギロチンを抜けて第三関門をクリア。
第四関門...スネークブロックは右へ7m前へ25m右へ2m後ろへ20m右へ2m前へ20m左へ2m後ろへ20m左へ2m前へ20m★右へ12m後ろへ2m左上へ階段20段あとに左へ2m前へ2m右へ12m後ろへ2m左上へ階段20段あとに左へ2m前へ3m進んでゴール。第四関門の右隣に巨大ハンマーが1基あるが、前半でスネークブロックが∞の字を書く様に進むコースに入ったら...驚く事に、向きやアームの長さを変えてモグラたたきの如く、プレイヤーを追うように振り下ろして来ると云う今回初の仕掛けだ。スネークブロックが★地点を通ったら、巨大ハンマーの攻撃が止む。
「なっ!?」
アームを伸ばしながら向きを変え、襲い掛かって来た巨大ハンマーを見て目を見開き驚愕するリイン。咄嗟にバックステップで巨大ハンマーを回避しつつ、セレンの光弾を射撃魔法で迎撃。
「(左はセレンさん、右は巨大ハンマー...正に挟み撃ちだな)」
リインは実戦で培った反射神経を生かして両端から何度も襲うセレンの光弾と巨大ハンマーをやり過ごす。★地点を通過した後は、セレンの光弾に注意しながら横歩きで右へ移動と階段登りを2回して21m高い所にある第7ステージのゴールに辿り着いた。その広さは、横16m×奥行8m。
・・・・・
未だ、第6と第7ステージの中間地点に居る仲人と翔とアキラは...
「ハハハ...流石、リイン。ノーミスでクリアしちまったぜ...」
「そうだね...最後のステージもノーミスでクリアしたら、リインは此処の完全制覇だよ」
第7と第8ステージの中間地点まで無事に到着したリインを見て乾いた笑いをする翔に、苦笑して応えるアキラ。
「このアスレチックをパーフェクトしたら、景品が出るかな?」
「さあ? 出るんだったら、もっと頑張るけどな。それより...」
翔はわざとらしく天然?な仲人に応えた後、険しい表情になって第7ステージの巨大ハンマーを凝視する。
「今回は1基しかねぇから、おかしいと思っていたんだが...まさか、モグラたたきみたいに攻撃して来るなんてな」
「うん。初めて見た時は、ビックリしちゃった...クリアする自信が無くなってしまうくらい」
「僕もアキラと同じ気持ちだよ。セレンさんと巨大ハンマーの挟み撃ちはキツイからね...このアスレチック最大の砦だと思う」
ネガティブな話の末、「はぁ~」と溜め息をつく仲人達三人。第7ステージ第四関門のアレは難しいアクションだが、何度もチャレンジしていく内に自分の周りへの適応力が高まる...はず。
「兎に角...次は誰がやるんだ?」
「セカンドは、僕が行くよ。気が重いけどね」
「仲人。ファイトだー! 頑張ってー!」
仲人は、ガッツポーズで応援するアキラを見て苦笑した後、気を引き締めて右手に魔力弾を形成して何時でも撃てる状態にする。そしてスネークブロックの上に跳び乗り、第7ステージへ突入した。知っていると思うが、仲人と翔とアキラは未だ魔法を同時使用する事が出来ない。
・・・・・
リインの攻略を真似て対処し第一関門から第三関門までノーミスで進めた仲人は、第四関門でセレンの光弾を回避した所を巨大ハンマーの下敷きになって、第7ステージのスタートからやり直しされた。そのあと第四関門で何度もやり直しされるが、諦めずにチャレンジして漸く突破する。そしてセレンの光弾に注意しながら上へ登って第7と第8ステージの中間地点に到着。
「お疲れ。よく頑張ったな...仲人、大丈夫か?」
「はぁっ...はぁっ...大丈夫でも無いかな。このドキドキが止まらないよ」
「そうか...クリアしたばかりの私も同じだ。最後まで来たらやり直ししたくないと、セレンさんの光弾に対してヒヤヒヤするからな」
リインは苦笑して、此処の中間地点にあったタオルで汗まみれな仲人の顔を拭きながら答えた。苦労して最後まで来たのに、当たったらやり直しになるセレンの光弾が恐くなるのは当たり前だ。だからドキドキ・ヒヤヒヤする。
・・・・・
三番目のアキラも、仲人と同じ様に第四関門で何度もやり直しの末...やっと突破する。そしてセレンの光弾に注意しながら上へ登って、この中間地点に到着した。
「お疲れ。よく頑張ったな...アキラ、大丈夫か?」
「お疲れ~アキラ。水だよ......はい」
「はぁっ...はぁっ...ありがとう(クリア出来て良かった...まだドキドキするよ)」
リインは労いながらタオルでアキラの汗を拭き取る。仲人も労いながらアイテムクリエイションで精製したミネラルウォーター入りのペットボトルをアキラに渡した。アキラも今は、クリアしたばかりの仲人やリインと同じドキドキ状態である。彼女は気分が落ち着いた所で、水を飲んだ。
・・・・・
何度もやり直しして第7ステージをクリアした翔も、汗まみれでドキドキした状態。仲人は精製したミネラルウォーター入りのペットボトルを渡し、アキラとリインはタオルを持ち二人で汗を拭いてあげて翔を労った。彼は息を整えた後、ペットボトルを口に含みミネラルウォーターを飲み干す。
「ゴク...ゴク...ングッ、はぁ~。サンキューな...皆」
「ははっ...次のステージで最後だから、頑張ろう」
ニカッと笑ってお礼を言った翔に、仲人そしてアキラとリインは笑顔で応える。仲人達三人は翔を待っている内に、もう疲労が回復しているが、少し休憩する事にした。
ーーギィィィィィ...
「「「「!?」」」」
第8ステージ右側の100m奥まで続く高さ34mの壁に、横一列で並ぶように付いた黄土色の直径30mある巨大歯車から金属の擦り音が響く。3個の巨大歯車は回転しながら、その表面にT字型の巨大ゼンマイがせり出す。そして、3つの巨大ゼンマイが横一列に並ぶ形となった。その色も黄土色。
巨大ゼンマイの図は《■==■==■》《■==■==■》《■==■==■》
■は一辺4m立方体の足場。真ん中は回転軸である。
==はゼンマイの柄と呼び、互いの■足場を繋ぐ道。厚さと幅は2mで距離は9m。
「前回は観覧車みたいなものだったけど、今回はゼンマイみたいなものか...それに、回転も速い。30秒で一回転かな?」
「んー。前回と違って、歯車の足場から降りる所が二番目の下にあるぞ。歯車乗りは2回で良いから、楽じゃね?」
「何も無ければ...な。私は絶対に怪しいと思うぞ」
「皆ー! 何時の間にか、出てきた立て札を読んでみようよ」
中間地点の中心にある立て札の前に立つアキラは、会話中の仲人達三人を呼ぶ。そして、彼等は立て札の前に集まった。因みに、その立て札はゼンマイ型の足場が歯車の表面からせり出す際、下から生える様に出てきた。
その立て札に、こう書いてあった。
『注意! ゴールへ向かう前に3つある回転軸の足場を全て通って下さい。条件を満たさずにゼンマイ型の足場から降りた場合、即やり直しとなります』
立て札を読んだリインは矢張りと云う顔をし、仲人と翔とアキラは落胆した。
「ますますサーカスだな...こりゃ」
「セレンさんは僕達に曲芸を仕込ませて、サーカスを開いたりして」
「あはは...まさか。それは否定出来ないかも」
「皆。サーカスとは何なのだ? あれの事か?」
翔は頭を掻きながら呟き、アキラは冗談を言った仲人に苦笑して応える。その後、三人でリインにサーカスとは何かを教えた。
「芸をして、観る人を楽しませる...か。はやてや守護騎士達に、これを見せたら何と言われるんだろうな?」
「魔法と別に、凄いと褒めて貰えると思うよ。きっと」
「ま、それは置いといて...あれの攻略は、前のステージと同じ様に一人でやった方が良いか?」
リインとアキラの会話の後、翔は話を戻して皆に意見を求めた。
「そうだね。回転する足場で行ったり来たりするから、二人以上だと邪魔になると思うし」
「私も、仲人に同意見かな」
「私もだ。前のステージで分かった事があるんだが...一人だと、セレンさんは誰を狙っているのか...見分けが無くて楽だった」
仲人達四人は相談の結果...一人で攻略する事になって、前のステージと同じ順番と決まった。そしてファーストのリインは、跳び渡る位置へ移動して自分の前で回転しているゼンマイ型の足場を眺める。
「(進む順番は...最初の足場に跳び移ったら、直ぐに道を走って回転軸の足場へ移動。それから...)」
リインは頭の中でシミュレーションしてゼンマイ型の足場を進むルートの構想が浮かんだ後、下からこっちに近付く様に上がって来るゼンマイ端の足場に視線を向けながら、ブラッディダガーを2本形成して両手に持つ。足場と足場の間の距離が1m位に縮まったら、リインは助走をつけて一番目のゼンマイ端の足場へ跳び移った。
・・・・・
右側の壁に3つで横一列に並んだ巨大歯車の表面に突き出たゼンマイ型の足場を通って進む、最後の第8ステージ。一番目の歯車と三番目の歯車は反時計回りで、二番目の歯車は時計回り。回転速度は前回と比べて2倍速く、3つの回転軸の足場を全て通ると云う条件を満たさなければならない。前回と同様、足場に滑り止めが敷いてあるので、まだマシだが...
カメラ(第三者)視点を、3つ並ぶ巨大歯車の正面を見る方向に向けます。
リインは直ぐに左へ走ってゼンマイ端の足場を横断し、柄と呼ばれる道(端の足場と段差は1m)に跳び降りる。その道が垂直へ傾く前に、左へ走って回転軸の足場へ向かう。途中で下から飛んで来たセレンの光弾を迎撃した後、回転軸の足場に乗ったら、常に足場の上にいるように移動しながら、さっき通った柄の道が左で再び水平に傾くのを待つ。柄の道が反時計周りに残り135°回転し水平に傾いたら、回転軸の足場から跳び降りて左へ走ってゼンマイ端の足場へ向かう。また来たセレンの光弾を迎撃した後、ゼンマイ端の足場に乗る。その足場が歯車の外周を270°以上回転して、二番目のゼンマイ端の足場との距離が1m位に縮まったら、助走をつけて跳び移った。
ゼンマイ端の足場が歯車の外周を時計回りに180°回転した後、リインは右へ走って柄の道に跳び降りる。途中で飛来したセレンの光弾を迎撃した後、柄の道を右へ走って回転軸の足場に乗る。通った柄の道が残り135°回転して再び水平に傾いたら、右へ走ってゼンマイ端の足場まで移動する。また飛来したセレンの光弾を迎撃した後、ゼンマイ端の足場に乗る。その足場が歯車の外周を残り135°回転して、三番目のゼンマイ端の足場との距離が1m位に縮まったら、助走をつけて跳び移った。
リインは直ぐ左へ走り一番目のゼンマイ型の足場と同じ流れで、回転軸の足場を通ってゼンマイ端の足場に戻る。その足場が歯車の外周を反時計回りに135°回転して、二番目のゼンマイ端の足場との距離が1m位に縮まったら、助走をつけて跳び移った。
ゼンマイ端の足場が歯車の外周を時計回りに270°回転して、下に降りる足場との距離が1m位に縮まったら、リインは助走をつけて跳び移る。その直後、飛来したセレンの光弾をサイドステップで躱した後、階段を下りる。曲がって、また飛来したセレンの光弾をバックステップで躱しながら左へ真っ直ぐ進んでゴールした。因みに、その道は右だけの壁と丸い屋根があって中間地点に居る仲人達三人はリインの様子を確認する事が出来ない。
「ふぅ...(今回は落とし穴が1つも無かったな...杞憂だったか)」
・・・・・
場所を変えて、第7と第8ステージの中間地点。
「お~、リインは無事に完全制覇出来たか。...しかし、ゴール前の道は屋根が邪魔で中は如何なっているのか、分からねぇな」
「あれは道にある落とし穴の位置を僕達に、ばらさない為の処置だろうね」
「セレンさんは、抜け目がないね...」
屋根や壁が邪魔で、落とし穴などの障害物が無い事を知らない仲人達三人。
「次は僕の番だから、行ってくる」
「おう。当たるか落ちてミスするなよ~」
「頑張ってね」
仲人は“前のステージもそうだけど、後で自分の番になるから他人事じゃないよ”と心の中で翔とアキラにツッコミを入れた後、右手に魔力弾を1つ形成しゼンマイ型の足場へ跳び移る位置に着いた。
「(前のステージと比べて勇気が要るな...これ)」
一段と冷や汗を流して躊躇い、ゼンマイ端の足場を何度も見送る仲人。要する勇気は、大縄跳びの中に入るのと同じだろうか? それ以上、バンジージャンプ並みかもしれない。
何分か、時間が経って...仲人は勇気を振り絞って、助走をつけゼンマイ端の足場へ跳び移った。
・・・・・
必死な仲人はリインと同じルートで3つの回転軸の足場を通り、二番目のゼンマイ型の足場経由で下に降りる。ゴール前の真っ直ぐな道で落とし穴を警戒しながら歩いて進む。より時間が掛かってしまい、セレンの光弾の回避回数がリインより多かったが、無事にゴールした。
「お疲れ。仲人、かなり慎重だったな」
「はぁ~。落とし穴が一つも無かったなんて...気を張り詰めて損した~」
リインは、杞憂で溜息をつき項垂れる仲人を見て苦笑した。
「こうなったら...いっそ、念話で翔やアキラに教えようかな」
「落ち着け。そんな事をしたら、セレンさんはゴール前の道に落とし穴を造るかもしれないぞ」
リインは、苛立っている仲人を宥める。余計に難易度が上がる可能性があるから、リインは元よりコースの情報を教える気は無い。
その後...アキラと翔の第8ステージ攻略も、仲人と同じで弾避けを沢山する羽目になってしまう。ゴールした後、落とし穴が一つも無いと知った時は悔しい気持ちであった。
四人全員揃った仲人達は、第8ステージのゴールからハシゴで下に降りてフィールドに居るセレンの元へ向かう。ステージ上に誰も居なくなった途端、フィールド周りのステージは全て消えていき、何も無いトラックに変わった。更に、空は青から橙色の夕日に染まっていく。
つづく...