力持ちの人魚と祝福の風も神様転生   作:峻天

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セレンさんの容姿は背が高い津名魅さん(天地無用のキャラ)ですよ~


006 セレンから修行の誘い

 

1月30日(月)...午前2時59分から、時計の長い針が“12”を指した。その時、仲人達四人(仲人・翔・アキラ・リイン)に異変が起こる。

 

・・・・・

 

明るい青空で周辺は何もなく、陸上競技場のような場所...フィールドの上に、白紺二色の体操服(女子は紺ブルマ)を着た仲人達四人が立っている。あともう一人、最高神かつ保護者のセレンも居るのだが...

 

 

~仲人 side~

 

「「「「......」」」」

 

僕は唖然としてしまった。寝ていた筈なのに気が付くと別の場所にいて、いつの間にか体操服を着た翔やアキラやリイン...それより問題なのはセレンさん。今はアキラやリインと同じブルマ姿であり、普段着(着物)から一転してインパクトがあったからだ。フィットして体つきがハッキリと見え、スタイル抜群で見惚れてしまうほど格好良い。背が高いからまるでバスケットボールかバレーボールの選手だよ......どうしてこうなった?

 

「皆さん、今晩は。就寝中に行き成りですみませんね......私を見た途端そんなに驚いて、どこか可笑しいでしょうか?」

 

「あ...全然、可笑しくないです。凄く似合ってますよ!」

 

「俺も思います。清楚で落ち着いた感じがあるセレンさんから、想像出来ない事で驚いてしまいました」

 

男性にとって強烈なので、僕と翔は赤面したまま、セレンさんに感想を伝えた。アキラとリインも同感して顔を縦に振る。聞いたセレンさんは照れてしまう。そんな様子を見て、可愛いと思った...でも、口に出さない。

 

「あ、ありがとう。熱くなる感じ...こんなの初めてですね」

 

どうやらセレンさんは、今まで褒められた事がないらしい。そう云えば...初めて会った時、こう訊いてこなかったから印象を伝えるのを忘れてたよ。

 

「あの、セレンさん。此処は夢の中なんですか?」

 

「ええ、此処は私が造った精神世界で夢の中と似ています。その間、外の時間は止まっている状態です」

 

セレンさんは頷いてアキラの質問に肯定し、説明した。仕事で忙しいから時間を止めたらしい。と云う事は、話が長くなるのだろうか?

 

「時間を止めてまでして、私達にどんな用事なのですか?」

 

「体を鍛えると云う私の趣味に付き合って頂こうと思い、皆さんを此処に呼び集めました」

 

セレンさんはファイトな感じで拳を強く握り、メラメラと燃えてリインの質問に答えた。体操服を着ている理由はソレなのね...さっき熱血な体育教師に見えたけど、気のせいかな?

 

「か、変わった趣味っすね...どんな風に鍛えるんですか?」

 

翔は、心底少し引いてしまったものの、敢えてセレンさんに訊ねた。まぁ...意外な趣味だからね。彼女はアウトドア派なのかな?

 

「魔法に関しては、教えてくれる方が居るでしょう。其処で私から教えるのは3つ。武器の有無で武術2種と、生命エネルギーである気を扱う気法です」

 

セレンさんは人差し指・中指・薬指と3本立てて答えた。武術は分かったけど...気法は、もしかするとマンガのドラゴンボールで登場する戦士達が使っていた技かもしれない。

 

「なぁ、仲人。セレンさんが言った気法ってさ...光線を放つかめはめ波とか、空を飛ぶ舞空術とかだよな?」

 

「うん、僕も思ってた。もしそうだったら、厳しい修行を受ける覚悟をしたほうが良いかも」

 

「それは...第737宇宙の北銀河太陽系地球の英雄である孫悟空が多用されている技ですね。いつか...機会があれば、彼と会ってみたいものです」

 

翔との会話を聞いたセレンさんは、素晴らしい功績をもつ孫悟空に感心している様子で応えた。可能性を予想していたから翔と違って驚いていないけどね。しかし、セレンさんの目に留まるなんて...孫悟空は凄いなぁ。

 

・・・・・

 

あくまでもセレンさんのお節介であり、修行の参加は自由なので僕達四人は相談して決める事にした。セレンさんはトラックでジョギング中。一年前、黒柳を誘ったらしいが「俺様は最強のオリ主だぜ。修行は要らねぇよ」と断られている。と云うか...オリ主って、何?

 

「折角だし、断る理由はないから僕は参加する方で、翔は?」

 

「俺は体育が得意で、これは面白そうだから参加するぜ」

 

翔はスマイルで右腕を回しながら、参加すると答えた。僕の運動能力は翔に及ばないけど、運動は好きだよ。

 

「ははっ、運動好きな翔らしいね...リインは?」

 

「ああ、参加するつもりだ。理由は...そうだな、魔法はいつでも使えるわけではないので、代わりになる手段はあったほうが良い」

 

リインは尤もな事を言い、参加の意を表した。確かに、魔力が無くなれば魔法は使えなくなるからね。アイテムクリエイションも同様だ。

 

「成る程、それは一理あるね。アキラは?」

 

「如何するか迷っていたけど...リインの考えは大事な事だから参加するよ」

 

アキラも参加すると言い、僕達四人は満場一致で修行の参加と決まった。丁度良く全長800mのトラックを一周して此処に戻ってきたセレンさん。なんと汗一つもなく平然としている...さっきチラっと様子を見たけど、速く走ってたよね...凄い体力だ。体力お化けと云うのは失礼か。

 

「皆さん、決まったようですね。返事を聴きましょうか」

 

「はい、全員参加します。理由はリインの言う通り、魔法が使えない状況に陥っても困らないようにしたいからです」

 

「「「よろしくお願いします!」」」

 

僕を代表に翔とアキラとリインは、やる気を見せる真剣な表情でセレンさんにお願いした。将来、管理局の仕事で苦労しないように頑張るぞー!

 

「ふふ...解りました。修行のスケジュールを伝えます」

 

返事を聞いたセレンさんは微笑んで了解し、スケジュールの説明を始める。

修行スケジュールは以下の通り。

1 体操・ストレッチ

2 ジョギング(トラックを1周)

3 拳法(3時間)

4 休憩(10分)

5 男子は剣術・女子は槍術(3時間)

6 休憩(10分)

7 気法(3時間)

8 休憩(10分)

9 補強(大体3時間位、ノルマをクリアするまで)

10 クールダウン

月曜日~金曜日の午前3時(就寝中)に行われる。

土曜日、日曜日、祝日はお休み。

喉は乾くが、空腹にはならない。

外の時間は止まっているので歳をとらない。

修行で積んだ経験は外の現実世界にも反映される。

 

「「......」」

 

「うへぇ...毎回、半日以上もあるのか。平日は1日36時間で時間感覚がおかしくなりそうだぜ...」

 

「翔、そう喚くな。セレンさんにあれほど言ったのだ...今更、止められん。頑張るしかあるまい」

 

想像以上な内容で僕とアキラは顔が引きつってしまい、リインはガックリと肩を落として喚く翔を宥める。毎回3時間位と思っていたんだけど、12時間近くで、長いなぁ...時間を止めてあるからといって其処までやるとは...

 

「それでは、体操とストレッチを始めましょうか」

 

「「「「はい!」」」」

 

僕達四人は気を取り直して、セレンさんに元気良く返事をした。そして、セレンさんを見本にして体操を進めていく。体操の内容は、昨日の朝にやったのと同じ体育祭前のラジオ体操。セレンさんは細かい所まで指摘してくるので、中々厳しかった。油断出来ないな...その所為で、体操に時間が掛かってしまった。慣れていない内には、リラックスする余裕が無いかも...

 

次はストレッチ。内容は主に、ゆっくり筋肉を伸ばして関節部分を動かし易くする事。体操の時と同様、セレンさんを見本に進めていく。偶に、セレンさんに体を押して貰う事があって...多少、きつかった。翔やリインもだが、逆にアキラは平然としていたな...あっ、彼女は水泳部に居たからか。水泳部は運動部の中でも、体の柔軟性を求められるもんね。

 

それからジョギング。僕達四人はセレンさんと一緒に、全長800mのトラックを一周走る。セレンさんがもう一度走った理由は、準備運動くらいは皆と一緒の方が良いとの事。その方が楽しいから良いんだけどね。

 

トラックを一周した後、深呼吸を繰り返して息を整えた。そして、第1科目の拳法修行を始める。僕達は初心者なので、基礎の基礎である歩法から学んだ。今回は、券や蹴りについて教えて貰っていない。リインは格闘経験があるけど、あれは喧嘩みたいなもので初心にかえって一からやり直している。始めは地上戦であるが、いつか気法で舞空術をマスターしたら空中戦について学ぶ予定らしい。未来の僕達は如何なっているのか、想像出来ないよ...

 

・・・・・

 

第2科目の剣術・槍術で、セレンさんからレプリカの西洋直剣を貰った。翔は僕のと同じで、アキラとリインは鍔有りの直刃槍である。槍の全長は使用者の身長とほぼ同じ。内容は、一振りして通常の型に戻ると云う繰り返しの素振りを行った。横斬り・縦斬り・突きの3つを各200本である。竹刀と違うので武器は重く、包丁の初心者に良くある刃の向きが斜めになってしまって思うより難しかった。セレンさんに指摘される事が多かったしね。特に縦斬りは思いっきり剣を振り下ろして地面に付かないように目の前、正面で止めるからキツイ。あぁ...筋肉痛で腕と腰が痛い。

 

アキラとリインが学んでいる槍の方だけど...剣と比べて重心が大きく動かないから、振ってもバランスを崩しにくいと云う面で扱い易いそうだ。但し、狭い場所や剣の間合いに入られると不利。う~ん...どんなものにも、長所と短所があるんだな...

 

・・・・・

 

僕達四人は気を扱う才能が一般人と変わらないので、第3科目の気法では...座禅とも云う瞑想だけだった。何でも体内の気を感じ取れるようにならないと話にならない。明鏡止水の如く、心を静かに励むと効率良いとの事。しかし、戦闘力3か4と気の量は小さいので感じ取るのは難しく、今回は進展なし。本当に出来るのか? と疑ってしまうよ。挫折してしまいそうだけど...始めてばかりだし、根気よく頑張るしかないな...翔とアキラとリインも浮かない顔だが、僕と同じ考えだ。

 

そう云えば、孫悟空が実在していたと云う事は...世界チャンピオンであるミスターサタンの娘のビーデルも居て、彼女は原作通りに短時間で気を感じ取る事が出来たのかな? 時期はいつなのか、分からないけど...

 

・・・・・

 

3回目の休憩が終わり、第4科目の時間になった。補強の課題は何なのか...ドキドキするな~。そんな思いで、翔やアキラやリインもゴクリと唾を飲む。

 

「最後の科目...補強の課題は体力づくりと云う事で、楽しくスペシャルアスレチックを行います」

 

「「「「!?」」」」

 

セレンさんは言い終えると...何も無いトラック全体の表面が金色に光輝く。そして、アスレチックのステージが出現した。あれ? スーパーマリオ、ロックマン、ソニックのステージで見た事があるような仕掛けがある。見た感じ、難しそうでクリアする自信が無くなりそうだ...

 

「おいおい、マジかよ...巨大ハンマーや大型振り子ギロチンまであるぞ」

 

「あ、火の玉が並んで出来た棒が回転してる...あと針山まであるし」

 

「ふむ、あれがアスレチックと云うものか...命懸けだな」

 

「いやいや、リイン。普通のアスレチックに、あんなものは無いから」

 

唖然としている翔とアキラを尻目に、アスレチックを誤解しているリインにツッコミを入れて訂正させる。リインはアスレチックを初めて見るから、勘違いして仕方ない。アスレチックステージを見て思い出したけど...テレビ特別番組の“SASUKE”と比べて...どっちが難しいのかな?

 

「危なさそうな仕掛けは見せかけで危険は無いので、ご安心を...地面の赤いマットに落ちるか、怪我するような仕掛けに触れると中間ポイントからやり直しとなります。頑張って1周して下さい。今の難易度はEASYです」

 

安全対策はしてあると伝え、ルールを説明するセレンさん。EASYねぇ...如何見ても、HARDな気がするんだけど...

 

「せ、セレンさん...このアスレチックに時間の制限はありますか?」

 

翔は恐る恐ると、セレンさんに訊ねる。もし、制限時間が付いたら嫌だよ...不満でストライキを起こしそうだ。

 

「いえ、時間に制限はありません(余裕が出てきたら、付けますが...)」

 

セレンさんは顔を横に振って答えた。それで僕達四人は、安堵の表情を浮かべる。ホッ...慎重に進んで行けるな。アスレチックに、次回があるとしたら......いや、考えるのを止めよう...嫌な予感しかしない。

 

「それでは、ステージに上がって下さい。合図したらスタートです」

 

「「「「はい!」」」」

 

僕達四人は階段を登ってアスレチックのスタート地点へ上がる。トラックを一周するから当然、スタート地点の後ろはゴール地点である。

 

「これで今日の修行は終わりなんだし、気合を入れて行こう!」

 

「「「おうっ!/うんっ!/ああ!」」」

 

僕達四人は手を重ねて気合を入れた後、スタートの位置に着いた。尋常に...

 

「3...2...1...スタート!」

 

セレンさんの合図が響き、全長800mのアスレチック攻略が始まった。

 

~side out~

 

 

セレンのアスレチックは1ステージ100mで8つまで、中間ポイントはステージとステージの間で7つある。難易度はEASYなので仕掛けのスピードはそんなに速くない。スーパーマリオ、ロックマン、ソニックのステージと似ている所はあるが、そのゲームは存在しない。実在するかは不明だ。

 

第1ステージは、直線コース。穴や仕掛けは無く一辺1m立方体ブロックで積まれたピラミッドを越えるだけ。簡単で単純だが、高さ1mブロックをよじ登るので体力が要る。進路を阻むブロック10段のピラミッドは3つ。仲人達はゆっくり進んで突破し、難なくクリアした。

 

「よっしゃー! 最初のステージクリア」

 

「ふっ、余裕だ」

 

「登り降りは大変だったけど、簡単だったね」

 

「まぁ、最初のステージだからね。どんどん進もう」

 

第2ステージは、大きく左へ曲がっている。特徴はジャンプ・走り幅跳び・懸垂梯子渡りで穴越え。他に細い平均台もある。地面に落ちないように進むステージだ。仲人達は慎重に進んで誰一人落下なくクリアした。

 

「ふぅ~平均台はヒヤヒヤしたぜ...」

 

「懸垂しながらの移動は、中々キツイな...」

 

「皆、一人も落ちなくて良かったね」

 

「そうだね...次のステージは楽そうだよ」

 

第3ステージは、2ステージに続いて大きく左へ曲がっている。特徴は上下、左右、前後と動くリフトが多い。タイミングよく跳び移って進むステージだ。仲人達は一人ずつリフトに跳び乗り、慎重に進んでクリアした。一人も落下者は出ていない。

 

「何だか、マリオになった気分だぜ」

 

「5番目と6番目のリフトの間は助走つけて跳ばないと届かなかったな」

 

「セレンさんは大丈夫と言ってた...でも、進むのが怖い...」

 

「うん、これからが正念場だね(確かに...ハンマーの音は迫力がある)」

 

第4ステージは直線コース。途中に直径2m高さ5mの巨大ハンマーや全長3mの三日月型振り子ギロチンが何基か設置されている。3ステージと同じタイミング良く進むのだが、轟音が響いて迫力がある。見せかけで危険はないものの、勇気が要るわけだ。最後の難関は5基連続で並び、1・3・5→2・4→1・3・5→2・4と交互に振り下ろす巨大ハンマー。難易度EASYであって仕掛けはそんなに速くなく、仲人達は当たらずに突破出来た。

 

「見た目のわりには、大した事ねぇな」

 

「セレンさんはEASYと言ったのだ。それで当然だろう」

 

「これで半分だね」

 

「次は細かく避けないと当たるから気を付けて行こう」

 

第5ステージは、4ステージに続いて直線コース。多くのファイアバーが回転していて、通路や壁に針山が出たり引っ込んだりしている。リインを除いて仲人達は最後の難関、水平に回転するファイアバー4本の3段プロペラ(計12本)で何回も当たってしまい、5ステージ最初からやり直しされる。その内、慣れてきてやっとクリア出来た。

 

因みにミス判定が出た時は、プレイヤーの足元に漆黒の穴が現れて中へ引きずり込まれる。そして攻略中のステージ最初(中間ポイント)に放り出されてやり直し。それはゲームキューブの“ゼルダの伝説 風のタクト”で登場する敵のフロアマスター(プレイヤーにやり直しさせる嫌な敵)に近い。

 

「皆、お疲れ。良く頑張ったな」

 

「ふぃ~、やっとクリア出来た...ハシゴの所にあるファイアバーが嫌なのに何回もやり直されるとイライラするぜ」

 

「リインは反射神経が凄いね...」

 

「うん、本当にね...流石、実戦経験者」

 

第6ステージは、大きく左へ曲がっている。特徴は出たり消えたりする空中ブロックがあり、跳び移って広い穴や高い壁を越えていくステージだ。毎回パターンは同じなので、仲人達は空中ブロックの出る順番をしっかり覚えて3ステージのように一人ずつ跳び移って進んだ。そして無事にクリア。

 

出たり消えたりするブロックは、ゲームの“ロックマンシリーズ”で登場するステージの仕掛け。それが難しいプレイヤーは、飛行のラッシュジェットでズル出来るが...このアスレチックでは、修行にならないから論外だ。

 

「壁や穴を越えるまで、気を抜けなかったぜ...」

 

「ああ、モタモタしていると足場が消えて落ちるからな」

 

「次のステージ、足場が無いよ。4と5ステージの仕掛けはあるけど...」

 

「何か、嫌な予感がする。あれは恐らく...」

 

第7ステージは、6ステージに続いて大きく左へ曲がっている。特徴は一辺50㎝立方体を3×15で組まれたスネークブロックに乗って、巨大ハンマーや大型振り子ギロチンやファイアバー(動きが少し速い)を避けながら進むステージだ。スネークブロックは普通のリフトと違い、上下左右とクネクネ動く。しかも、前は伸び後ろは縮むので動きに合わせて自分も移動しないと落ちてしまう。つまり、20m高い所にある奥の中間ポイントに辿り着くまで休む暇がないのだ。仲人達は何回かやり直しされたものの、6ステージのように毎回パターンは同じなので再チャレンジする度に覚えていき、最終的に難なくクリアした。

 

スネークブロックは、ゲームの“スーパーマリオシリーズ”で登場するステージの仕掛け。慣れていない内には、忙しい対応でパニックになる事が多い。

 

「ふぃ~やっとクリア出来た...最後の所でブロックのリフトは階段状になって上がるだけだったから、ホッとしたぜ」

 

「途中でブロックのリフトが垂直に上がってしまい、届かなくなって落ちた。正直、焦ったぞ」

 

「私の場合はブロックのリフトに気を取られてしまって、火の玉の棒に当たっちゃった」

 

「ははっ...僕も同じで気付かず、振り子ギロチンに轢かれたよ。翔だって巨大ハンマーにやられたし」

 

「あの時、ペチャンコにされた翔を見て、冷や汗をかいだぞ...私は御免だ」

 

「うるせー。俺は屈辱的で思い出したくねぇよ......それより、最後のステージは、サーカスみたいだ...チクタクチクタクと鳴ってるし」

 

第8...ファイナルステージは、直線コース。奥まで続く右側の壁に直径30mの巨大な歯車が3つ横一列並ぶように付いてあって1番目と3番目の歯車は反時計回り、2番目の歯車は時計回りで1分に1回転している。歯車の外周面に付いた横八角柱足場(1歯車につき4個)の側面に乗って、渡り進むサーカスなステージだ。観覧車のゴンドラと違って足場も回るので、常に上にいるように移動しないと落ちてしまう。なお、足場に滑り止めが付いているので傾いても滑らない。仲人達は高い所の恐怖に負けず慎重に進んで1番目と2番目の歯車を抜け、3番目の歯車の足場が一番下に降りたらトラック内側の方の足場に跳び移って西へ曲がり、直線の通路を駆け抜けてゴールした。

 

「ふふ...皆さん、ゴールおめでとう!」

 

ゴール地点に立つセレンは笑顔で拍手しながら、ゴールした仲人達を賞賛する。これでスペシャルアスレチックは終了。攻略に掛かった時間は計っていないが...大体、2時間くらい。アスレチック制覇のノルマを達成したので、3時間にならなくても補強の修行は終わりだ。

 

 

~仲人 side~

 

セレンさんに付いて行って、階段でステージからフィールドに降りた後...

 

「仲人、翔、アキラ。仕掛けを抜けてゴール間近だからといって気を抜いちゃダメですよ。此処まで来て、やり直しは笑えませんからね」

 

今はセレンさんに注意されてます...はい。ゴールの前に落とし穴があり、彼女の情けで作動させなかったとの事。リインは気付いていて避けたので説教から逃れた。うぅ...分かっていたなら、教えてくれても良かったのに...

 

「貴方達は将来、管理局で働かれるのなら家に帰るまで油断しない事。四月から通う学校にも例外ではありません。解りましたか?」

 

「「「はいっ!」」」

 

「ふふっ、よろしい」

 

僕達三人は力強く返事したら、セレンさんは微笑んで説教終了。説教時間は大体、5分くらいか。思い返せば...修行中、セレンさんは厳しかったなぁ。上達する為に、それで当たり前なんだけどね。

 

「ひでぇよ...リイン。何で黙っていたんだ?」

 

「すまないな...お前達を想っての事だ。これで良い勉強になっただろう?」

 

「うぐっ、確かに...(正論で、言い返せねぇや...)」

 

ゲンナリとした翔は、リインに問い詰めた。彼女は謝って尤もな事を言うと、翔は口ごもる。うん、良い勉強になったよ...本当に。

 

「あの、セレンさん。今度の補強で、水泳はありますか?」

 

「ええ、ありますよ。アキラは泳ぐのが好きなのですね」

 

「はい。大好きです! 生前、水泳部に入っていましたから」

 

「水泳か...(生まれてから今まで、泳いだ事は無いな。守護騎士達も...)」

 

修行に水泳があると知ったアキラは、喜んでセレンさんに答えた。アキラの水泳部に入った理由は、泳ぐのが好きだからかな? その二人の会話を聞いたリインは、浮かない顔をして呟く。

 

「リイン。そんな顔して如何したの?」

 

「そのな...家事と同様、機会が無いから泳ぎ方を知らないのだ」

 

訊いてみると、リインは俯いて答えた。泳いだ事が無いのか...でも、リインは運動神経が良いから泳ぎ方を教えれば、直ぐ身に着くと思うな~。

 

「泳ぎ方を教えてやるから、そう落ち込むなって。詳しい事は水泳部に入っていたアキラに訊けば良いさ」

 

「うん、六月から学校で水泳授業があるから、その前に泳ぎ方を覚えるのが望ましいよ」

 

「ありがとう。これで、皆の前で恥をかかずに済みそうだ」

 

「...ねぇ、皆。何の話をしているの?」

 

翔と励まし、リインは笑顔になってお礼を言った。彼女は自尊心が高いから、不様な姿を見せたくないんだろうね......ん~、雲の王国建造計画で練習用のプールも造らないと間に合いそうにないな。それを優先しよう。後でアキラが話に加わり、事情を説明すると“任せて”と快諾してくれた。良かったねリイン。アキラは良い先生になると断言出来るよ。

 

僕と翔は生前の小学生の頃、スイミングスクールに通った事がある。あそこの進級試験は厳しくて、一級を狙えなかった。しかし、水泳部のエースと呼ばれたアキラなら...余裕だろうな~。因みに翔は僕より、三級先を行った。

 

僕達四人は会話をしている間に、セレンさんはトラックにあるアスレチックのステージを消した。絶えずに鳴り響いた巨大ハンマー等の仕掛けの音も消え、静寂が訪れる。更に、真上にある太陽が傾いて、空が橙色の夕日に染まって行く。秋みたいに、切なさを感じるな...

 

「皆さん。修行の最後にクールダウンを行います」

 

僕達四人はセレンさんと一緒に、直線トラックを折り返し200mで軽くジョギングする。西を向いている時は、沈む太陽が眩しいや...綺麗だけど。

 

・・・・・

 

ジョギングの後、フィールド北真ん中で...

 

「ふふ...修行を頑張ったご褒美に、マッサージで気持ち良くしてあげます」

 

「「えっ?/は?」」

 

「マッサージ?」

 

「局部を揉んだり押したりする事で、筋肉をほぐす療法の一つだよ。受ける方は力を抜いてリラックスすれば、気持ち良いんだ」

 

セレンさんは微笑んで、殴る準備みたいにボキボキと指を鳴らしながら言った。僕と翔は呆けている中、アキラはリインにマッサージの意味を説明する。マッサージかぁ...しかし、セレンさん...微笑みながら、そのアクションは止めて欲しい。殴られると勘違いして怖いから...本当に。

 

その後、アキラ→リイン→僕→翔の順で、セレンさんにマッサージして貰った。彼女はプロ並みの腕前で、思わず声が出てしまう程、凄く気持ち良かったな。だから、翔やアキラやリインも大変満足の様子...修行後の楽しみになったよ~。

 

クールダウンが終わると...西の太陽が完全に沈み、夜になった。やがて近くに白い光の柱が出現する。その中に入ると外の現実世界に戻れるらしい。疲れたのか、マッサージが効いたのか、突然眠くなってきた。欠伸しそうだけど、人の前なので我慢する。

 

「皆さん、今日はお疲れ様でした。また明日会いましょう」

 

「「「「はい。ありがとうございました!」」」」

 

僕達四人はセレンさんとお互い笑顔で別れの挨拶をした後、光の柱の中に入る。すると浮遊感が出始め強烈な眠気が襲いかかり、意識を手放した。

 

~side out~

 

 

今日、2006年1月30日は平日の始まりである月曜日。休日の内にテンションが冷めて起床時に“あ~面倒だな”と思ってしまう人が多い。逆に、新しい生活が始まったばかりの仲人達はワクワクと云う感じであった。

 

 

つづく...

 

 

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