アンタに何が解るの。
権力者?王族?笑わせないでよ。
アタシはディパンの姫だったけど、アタシの上位には姉さんも、兄さんも、国王陛下もいらした。
権力が描く三角形の頂点は唯一人、国王陛下だわ。
アタシはディパンの姫であったからディパンと嫁いだ国、パルティアしか知らない。
でも姫といえど、上位者の許可がなければ決められない事が殆どで、自分の意思で決定出来る事柄なんてほんの少しだわ。
王族以外の人間が考えている程、自由で権力を思いのままになんて出来る地位では決してなかった。
事実アタシは姉さんと同じ武器、そう剣を持ちたかったけど姉さんはアタシが武器を持つ事を許してくれなかった。
だから許可してくれなければ髪を切ると半分脅しで言った時、いくらなんでも折れてくれると思ったわ。
王族の女性の髪は長いのが当たり前で、短い髪なんてもっての外だったから。
でも姉さんの口から出た言葉は、たった一言。
「勝手に切ればいい。」
アタシは髪を切った。
国王陛下と兄さんはすごく怒って、でも呆れながら許してくれた。しかし肝心の姉さんはアタシの髪が短くなっても剣を持たせてくれなかった。
兄さんが姉さんを説得して、やっと許してもらえたのは「弓なら」が条件だった。
許しが下りた時は嬉しかったけど、落胆した気持があったのも事実。
自分は好きなのを選んで、アタシには何故それを選ばせてはくれないの。
実は姉さんよりアタシの方が才能があって、それに嫉妬して弓にしたんじゃないのとか、恨んだり僻んだりした。
あの頃のアタシは幼くて、事情を知ったのは随分と後だったっけ。
エインフェリアとなる何年前だろう。パルティアに嫁してから後、最初で最後にディパンを訪れのは。
アレス兄さんはもうディパンの国王になっていて、色々な話をして。
姉さんが匿われてそして眠る場所を教えてもらう時、「もう時効だから」と微笑む兄さんにそれ以外の事も教えてもらった。
アンタにとっては「くだらない理由」でしょうよ。
アタシにとっては「とても大切な理由」なのよ。
理解してもらおうなんてこれっぽっちも思ってないわ。
だから放っておいてよ、エルド。