ラブゴースト!~歴史へ成る少年~   作:次郎鉄拳

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前回のラブゴースト!


「スクールアイドルってA-RISEの俗称じゃないの?」

「そのグループの名前は『μ’s』!」

「オマエノクビデ、サッカーシヨウゼェ?」

「なにも感情が湧かないんだよ……!」

「拙者は緋村剣心」

「トシロウ殿は何のために戦うのでござるか?」

「大事な人のためだよ」

『カイガン! 剣心! 不殺の誓い! 抜刀の才!』

「飛天御剣流奥義『九頭竜閃』」

「ボンゴレ十代目を殺せれば、それでいいんだ」

「ビャク……ラン……」


ファーストライブ。二剣とナックル!

闇の中、真白なナニカは眼魂のような何かを三つほどほおり投げる。

投げた先は、赤、紫、緑の色をした、四角い箱の見た目をしたモノ。

眼魂のような何かが箱に当たると同時に、それは薄暗く輝き、者の姿を取りはじめる。

 

 

 

「さぁて……ついでにこれかなぁ?」

 

 

 

続いてそれは、指輪を同じ数だけ箱の下にほおり投げる。

徐々に者の形を取り始めていたそれは歪み、緑に輝く槍を持ったイノシシ、巨大な蛇、紫の光を纏った熊の姿へと変わる。

 

 

 

「……うん、ちょっと思ってたのとは違うけど、充分及第点かなぁ?」

「ナNナリtO、goメイrEイヲ」

「そうだねー。ゴーストを探して、倒してくれるかな。もちろん、一般人も殺しちゃっていいから」

「wAレ、エSaヲ、sHoモUsU……!」

 

 

 

真白の何かから命令を受け、三者三様、眼魔たちはどこぞかへ消える。

それを視認した真白の何かは一言、失敗したなぁ。とつぶやく。

 

 

 

「まぁいっか。あれくらいの敵はどうせ倒せるんだろうし、まずは小手調べにしようかなぁ」

 

 

 

ほくそ笑む声を上げるソレ。

背後の空間から何かの袋を取り出し、丁寧に開けた内側から中身――マシュマロを取り出して口に運んだ。

既に呼び出した三体の眼魔については微塵も関心が残っていないようである。

 

 

 

「……うん、この体になっても味覚はちゃんと働くんだね。よかったよ」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

剣心眼魂が仲間に加わってからまた数日。

トシロウは希に誘われ、緊張の面持ちで音ノ木坂学院へとやってきていた。

今まで校門で見守っているだけだった場所に足を踏み入れるのは未知の体験。

それが高校という、うっすらとしか考えていなかったような空間、それも女子校という不可思議な響きで有るのなら、なおさらに緊張を抱くものだ。

 

 

 

「つっ……ツナ! どうかな? 俺の服装って変じゃないよね!?」

「落ち着こうよトシロウ。君の姿は希にしか見えないんだよ?」

「はっ!? それを失念してた! じゃあ気合い入れて身だしなみ整えた意味が!」

「整えるも何も髪型を少し弄っただけじゃないか……」

 

 

 

初めてのことだらけで少々テンパり気味のトシロウ。

彼は失念しているが、希がトシロウを校内にいれたのはそもそも、『自分以外の誰にも見えないから』という理由もある。

幾ら自分の家族だからとはいえ、ホイホイと女子校内に入校させられるものではない。

その点トシロウはだれにも見えない故に入っても気づかれない。

不法入校ではあるがそれに気付くのは希だけなので、問題もないのだ。

 

 

 

「じゃあ、希は確か生徒会業務で忙しいはずだからオレが案内するよ」

「お、ありがとうツナ。相変わらずシンは希の手伝いをしてるんだっけ」

「シンは生徒会業務が大好きだからねぇ……」

 

 

 

他愛のない話をしながら校内を歩いて往く二人。

そこで、トシロウは一つの違和感を覚えた。

誰もいないのだ。進行方向へ進む人が。

希から音ノ木坂学院に誘われた理由が『μ’sが初ライブをするから』だと聞いていたトシロウは、猛烈に嫌な予感に身を震わせた。

 

 

 

「なぁ、ツナ」

「どうしたの?」

「スクールアイドルって……学校の看板なんだよな」

「そうだね。そういう認識で、間違ってはいないよ」

「じゃあ……なんでさ……」

 

 

 

ツナに導かれ、講堂の中へ入ったトシロウが、その光景を見て悔しむ声を上げる。

 

 

 

「なんでさ……廃校を無くそうって、頑張ってる自分たちの看板を応援してやらないんだよ……?」

 

 

 

そこには、校門などで見慣れている音ノ木坂の生徒の姿がほとんど全く見えず。

いるのはただ、ステージで呆然とする衣装を着た三人の少女たち。

話に聞いていたμ’sの三人しか、その場にいないのだ。

真姫の姿が、ステージになぜか見受けられない……

 

 

 

「ありえねぇよ……こんなことって……」

「トシロウ、なにもすべてが最初からうまくいくなんてことはないよ」

「……そんなことのほうが間違ってるよ! 悲しいじゃないか!」

「でも、間違っていない。君だってそうだよ。最初から、ゴーストとしてうまくやっていけてるのかい?」

「それは……!」

「大丈夫さ。大丈夫。だって――」

 

 

 

ツナの言葉につまるトシロウ。

悲しきかな、まさしくツナの言うことはもっともで、彼も最初からうまく進んでいるわけではない。

だが、それを受け止めるのは、彼には若すぎる。

うつむき、拳を強く握り、身体を震わせ、怒りをこらえる。

その眼には、当事者でもないのにやるせなさを強くにじませていた。

 

 

 

「はぁっ……はぁっ……! まっ、まだライブは!?」

「――だって、最初からうまくいかなくても、見てくれる人は、いるじゃないか」

「……ぁ」

 

 

 

最初からうまくいかないからと言って、それが失敗だとは限らない。

寧ろそれは糧だ。失敗とは成功の母、成功とは失敗の先に見えるもの。

人はいつだって成長を続ける。失敗をしなければ、挫折をしなければ人というのはいつまでも失敗をただの損とみる。

 

 

 

「……やろう!」

「トシロウ、君だってこうして彼女たちを見てる。それは、本当にうまくいかないだけのことなのかな?」

 

 

 

トシロウが講堂を見渡す。

そこには、先ほど走ってきた少女とその友達らしき少女。

 

 

 

「歌おう!」

「君は廃校問題に立ち向かおうとしている彼女たちを応援したいと思った。だからここにいる」

 

 

 

再び見渡す。

三人の少女たちがステージの少女たちに手を振っているのが見える。

 

 

 

「全力で!」

「彼女達も、全力で今を生きているんだ。それは、ただ悲しいことじゃないだろう?」

 

 

 

三度見渡す。

そこには希と、シン。そして金髪の綺麗な少女。

 

 

 

「だって――」

「報われないと思うなら応援すればいい。君のやり方で、君だけの方法で」

 

 

 

講堂の端に真姫を見つける。

どうやら気付かなかったがずっとそこにいたようである。

 

 

 

「――そのためにっ、今日まで頑張ってきたんだから!」

「頑張ってきた……」

「全力で、がむしゃらに。後悔しないためにね」

 

 

 

ステージ上でオレンジ髪の少女――穂乃果が、脇に立つ二人の少女たち――海未とことりを励ます。

二人はその言葉に顔を上げ、三人それぞれ互いに見合わせ、うなずく。

トシロウも、その様子に、自然と首が動く。

まるで、彼女達の決意を、感じるかのように。

 

 

 

「……すごい」

「そうだね。引き込まれそうだ」

「なんでだろうな……」

「彼女たちが全力で取り組んでいるからさ」

 

 

 

流れる歌は始まりの曲。

走り出す少女たちの決意の調べ。

走り続けている少年は自然と涙を流す。

なぜだかわからないが、ステージにいない少女の歌声も、耳に届いている気がする

 

 

ファーストライブが終わる。

いつの間にか聞き入り、見入っていたトシロウは何も言葉を発せない。

まだ拙いダンスと歌だが、それでもトシロウは引き込まれた。

真姫の弾き語りを聞いた時のように、時間を忘れて聴き入ってしまった。

 

 

 

「……トシロウ?」

「あぁ……! すごい……すごい!」

 

 

 

思わず、我を忘れて声を上げ、彼女達に拍手を送る。

それは彼の心からの賛辞。

これからを楽しみに思う、純粋な喜び。

 

 

聞こえないはずのその拍手につられるかのように、講堂にいる全員の拍手が響く。

ステージ上の穂乃果たちは涙をこらえきれず、手で拭っている様子が見える。

トシロウが興奮冷めやらぬまま、余韻に浸っていたところに眼魂が震える。

示す場所は、またもや音ノ木坂学院に近い場所。

 

 

 

「……トシロウ!」

「ああ、μ’sのライブ……また、聴きたいからな!」

「その意気だ、行こう!」

 

 

 

トシロウ達は講堂を去り、眼魔を倒すために走る。

また少女たちの歌を聴くために。

今度は、μ’sが九人そろったときのライブを見るために。

それは、彼の戦いに新たな理由が加わった瞬間でもある。

 

 

 

「――がんばれ、男の子」

「どうしたの希?」

「ううん、なんでもあらへんよ。えりち、声かけに行かんでええの?」

「それもそうね、ねぎらってあげましょう」

 

 

 

駆けだす少年をただ一人見守る希。

その指に挟みこまれていたのは、正位置の『愚者』のアルカナ。

彼女はそのカードを見ながら、顔に微笑を湛えた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

獲物を探して歩き回る一体の眼魔。

ゴミ箱が素体なのか、大きい体躯のその姿は、名付けるなれば『多喰らい(グラトニー)』。

その視界に映るものを拾っては食べ、拾っては食べる。

生き物であろうと、無機物であろうと、生ごみであろうとお構いなし。

下級眼魔共通である『姿を隠さない癖』のおかげか、幸いその姿を恐れた人々も多く、それの周りには誰もいない。

 

 

 

「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」

 

 

 

自然と視界に入るものもなく、食べてきたすべてがどうも満足できない。

そんな不満足、欲求の不完全燃焼により眼魔が叫びを上げる。

大気が震える最中、走ってきたトシロウが、眼魔の視界に入った。

 

 

 

「なんかグロテスクな見た目をしてるなぁ、あいつ」

「悠長に言ってる暇はなさそうだね、来るよ!」

「任せろ!」

 

 

 

視界に入ったそれを喰らうために走り出す眼魔。

応戦するためにトシロウはゴーストドライバーを呼び出し、ボンゴレ眼魂をセットする。

眼魔の突進を、身体をマタドールの様に翻すことで避け、その隙とともにドライバーのレバーを往復する。

 

 

『カイガン! ボンゴーレ!』

 

 

ゴースト・ボンゴレタマシイに変身を終え、展開したボンゴレグローブで殴りつける。

パワーアップしたボンゴレタマシイの一撃でならば多喰らい一体程度余裕で対処が可能だ。

所詮は下級の眼魔、対した強さではない。 

 

 

「おらっ! そりゃっ! ドラドラドラドラドラドラ!」

 

 

 

ワンツーで拳を入れ、怯んだところを蹴りで追撃。

そのままゴーストは悶える眼魔に、両拳のラッシュを打ち込みビートダウンを行う。

ゴーストに有利な一方的攻撃。

元々鈍重な多喰らいの眼魔では、高速戦闘タイプであるゴースト・ボンゴレタマシイが有利。

それに加え眼魔の素質が下級であるということも、現在の戦闘状況に関係をしている。

 

 

 

「よぉっし! とどめ、行くぜ!」

 

 

 

レバーを往復し、オメガドライブ――死ぬ気のゼロ地点突破を発動する。

炎を消した右手で眼魔の頭部を掴み、左手の炎進力によって勢いをつけ、眼魔を地面にたたきつける。

悶える眼魔は掴まれた頭部から凍り、直後全身までその氷の手が回った。

 

 

『ボンゴーレ! オメガドライブ!』

 

 

氷が眼魔の全身を覆ったことを確認したゴーストは右拳でそれを殴りつけ、粉砕する。

同時、素体となったであろうボロボロのごみ箱が、眼魔から飛び出した。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

変身を解除したトシロウは、一息つくとともにぼやく。

 

 

 

「ふぅ、今回も大概あっけない気がするなぁ」

「最近トシロウが成長しているだけのような気もするけどね」

「だとしても……かな。なーんか嫌な予感がするんだ」

 

 

 

手ごたえのなさすぎる戦闘によって、どこか嫌な予感を感じ始めるトシロウ。

嵐の前の静けさとはよくいったもので、頭を掻く彼の顔は戦闘に勝った後とは思えぬような愁いを帯びている。

そんなとき、大気が揺れ、ツナが声を上げる。

 

 

 

「――くるよ! トシロウ!」

「言った直後かよ!」

 

 

 

ツナの警告に合わせ、再びゴーストドライバーを起動し、ゴースト・オレタマシイへ変身する。

それと同時に飛び出してきたのは巨大な蛇のような眼魔と、イノシシのような槍を構えた眼魔。

それぞれが同時に、ゴーストへ向かって攻撃を繰り出してゆく。

 

 

 

「うおぉっ!」

「Tiッ……! ニgeラレTaンダナa!」

「ワrE……NaンジnOSiヲ、ショmoUス……!」

「何だこいつら、声にノイズ混ざりすぎてて何言ってんのか聞こえねぇよ!」

 

 

 

ゴーストはその攻撃を翻し、翻しと立ち回り、受け流す。

そして、再び槍を持った眼魔が突っ込み、躱した先で蛇のしなる一撃を受け止める。

二人の言葉は靄がかかるかのようにノイズが鳴り、上手く聞き取れないが要するに『お前を倒す』と言っているようだ。

殺意だけはひしひしと感じたゴーストは攻撃の合間を塗り、剣心眼魂を装填、レバーを往復させる。

 

 

『カイガン! 剣心! 不殺の誓い! 抜刀の才!』

 

 

飛天御剣流はもともと一対多を想定した殺人剣術。

剣心タマシイの現状最高速を誇る攻撃速度も相まって、一対二という変則戦闘状態においては、ゴースト側の戦力的にベストな選択である。

どちらから先に対処していくべきか、悩むゴーストへ剣心が助言を授ける。

 

 

 

「トシロウ殿、現状においてはまず、突進が厄介であるイノシシのほうを、倒すべきであると思うでござる」

「なるほどな、あいつの突進は痛そうだもんなぁ……!」

「OレnOtoッシNwO、トメrUナンtE、MuboウナンダNAァ!」

 

 

 

走ってくるイノシシ。その槍には次第に緑色の光が集まり始める。

バチバチと雷を鳴らすがごとく光を強め、それはゴーストへ向かってさらに勢いを付けた突進を繰り出す。

ゴーストはそれを、真半身に回転することで避け、ガンガンセイバーを呼び出し、イノシシの背後を取って斬りつける。

これは遠心力を利用し、相手の背後から攻撃を行う飛天御剣流の技『龍巻閃』。

突進の勢いを利用されつつ躱され、そのまま背後を撃たれたことで、イノシシは思わず倒れこむ。

 

 

 

「ワrE、ナnジnOIノChIヲ、sHoモウSuゥゥ!」

「気持ち悪い声を上げられても困る!」

 

 

 

飛んでくる蛇に対し、ゴーストはガンガンセイバーで地面に衝撃を加える。

土砂が浮き、それとともに浮かせた衝撃が蛇を襲い、その身体がゴーストに当たる直前で悶える。

同じくこれも飛天御剣流、『土龍閃』である。

悶える眼魔に向かって突進の突きを繰り出し、蛇の身体を大きく吹き飛ばす。

 

 

 

「そういや、ガンガンセイバーの改造も終わってたな、いっちょ行くか!」

 

 

 

ガンガンセイバーの片刃を取り外し、ナギナタモード使用時に伸ばす部分を、折りたたんだまま握る。

それはまさしく二刀流の形である。

数度重さを確認するように振るうと、剣心が感嘆の声を上げる。

 

 

 

「ほう、こちらのほうが軽くて振るいやすいでござるな」

「お、剣心はこっちのほうが気に入った感じかな?」

「左様でござるな。さぁ、早めに決めるでござるよ」

「おう、ダイカイガン決めるぜ!」

 

 

 

元々抜刀術に近い動きのほうが得意な剣心にとっては、二刀流モードのほうがしっくりと装備に馴染めるらしい。

剣心の声に合わせ、ゴーストは右手に持つ刀の目玉をドライバーにかざし、イノシシのほうへと駆け出す。

龍巻閃を撃ち込まれた衝撃から立ち直ったイノシシはいまだに隙だらけ。

倒すための一撃を決めるならば、今だ。

 

 

『オメガスラッシュ!』

 

 

一度イノシシの身体に当身を行い、身体をのけぞらした直後、右の刃を抜刀術のように振りぬく。

瞬間、鞘に見立て逆手に構えた左の刀も、追従するように敵の身体を切り裂く。

その後、左手の刀を敵に突き刺し、右の刀のトリガーを押し込みながら、上段から勢いを付けて叩き斬る。

流れるような連続の斬撃に、とても頑強そうに見えたイノシシの眼魔は、あっさりと消滅した。

 

 

 

「Oォ……wAレ、nanジノyUウmoUヲ、タタeル!」

「なんだこいつ……おなじ眼魔がやられたっていうのになんか喜んでやがる……」

「少々、わからないものでござるな……」

 

 

 

同胞であるはずのイノシシが倒されたというのに、なぜか蛇の眼魔が何やら踊るように喜びをあらわにしだす。

気味が悪いものを見るゴーストたちをよそに、イノシシの攻撃を見ていたツナがぶつぶつと、小声で何かをつぶやきはじめる。

 

 

 

「まさかさっきのは雷の炎……? 槍を持っているということは……じゃあこいつはまさか……!」

「ツナ、どうしたんだ?」

「……まずいよトシロウ。オレの予想が正しければ……!」

 

 

 

ゴーストが、ツナのした予想とは何だ。と問おうとしたとき、蛇の眼魔は猛スピードで逃走する。

先ほどから何度か行われる意味不明の行動にすっかりペースを持っていかれたゴーストはそれをみすみす、逃してしまう。

なんという体たらく。

逃してしまう不手際、不始末にうなだれるゴースト。

しかし、気を抜くにはまだ早かった。

 

 

 

「ウoォォォo!」

「なっ、今度は熊!?」

「やっぱりこいつら! ミルフィオーレ!?」

 

 

 

現れたのは紫の光をその足と手にまとっている、熊のような無手の眼魔。

ゴーストは、つかみかかってくるのを避け、ほぼ同時のタイミングに片手の刀で切りつけることを臨む。

しかし、そこは熊の眼魔も伊達ではない。

巨躯にしては素早すぎる手の動きでその刀を掴み、ゴーストもろとも投げようとした。

 

 

 

「ちょっ、ヤバイヤバイヤバイ!」

「ゴースト、アイツの得意技は投げだ! むやみに近づくと投げ飛ばされるよ!」

「それはやばいな!」

 

 

 

ガンガンセイバーの片側を手放し、接近戦を行う剣心タマシイから、完全遠距離を得意とするけんぷファータマシイにフォームを変える。

ヤッタータマシイでも戦えないことはないが、ケンダマジックを投げ飛ばされてはたまったものではない。

クルセイダースタマシイでは、今の三連戦という精神状態で使うことが悪条件なのだ。

 

 

『受け取る、臓物! 性別、トランス!』

 

 

久々の女性化の感覚。慣れられるものではないが、つべこべと駄々をこねている暇はない。

小さな火球を生成し、バックステップを行いながら二発ほど眼魔に打ち込んでいく。

しかしそんな火球は痒みにもならないのか、気にせずに突進をしてくる眼魔。

急いで飛び退くが、一コンマ遅かったため、見事眼魔に足を引っ掴まれ、二度振り回された後投げ飛ばされる。

 

 

 

「あいつ……結構早いな……」

「火球生成が間に合わないってあの動きされちゃあ……」

「火球を蹴っ飛ばして威力を増強できればとは思ったけど……」

「マジ勘弁してください……!」

 

 

 

投げ飛ばされた先で隠れつつ体勢を立て直そうとするゴースト。

けんぷファータマシイの特色である完全遠距離も、巨躯からは想像できないような素早さで走ってこられればどうしようもない。

彼らは木々と草葉をかき分けて自分たちを探してくる眼魔をやり過ごしながら頭を抱える。

 

 

 

「ゴースト、こういう時こそ新しいメカを使うんだ!」

「ガンさん! ……新しいメカって?」

「一緒に作っただろ、拳に着けるやつ!」

「ああ、そういえば作ってた!」

 

 

 

それはガンガンセイバーを作ってすぐのこと。

刀、銃などのほか、拳を使う眼魂がツナ以外に来た時の為にと、色々試行錯誤をして作っていた拳型武装を彼らは制作していた。

ガンのアドバイスに従い、ゴーストはオレタマシイへ変更、その武器を呼び出す。

 

 

 

「来い! ガンガンナックル!」

「Guォォoォォ!」

 

 

 

ベルトから飛び出してきたガントレット武装――ガンガンナックル。

握るためのグリップと、手を通すための通し穴へ自身の腕を入れ、持ち心地を確認する。

その時、声に反応した眼魔が飛びだし、投げて来ようとその手を突き出した。

 

 

 

「真正面から拳を入れてやれ!」

「ああ!」

 

 

 

突き出された手に合わせるように、ガンガンナックルを前に出す。

眼魔の手ではつかみきれない幅の武器に手を妨害され困惑する眼魔。

会話ができるほどに相応の知性があるとはいっても、そこはあくまでも物質から生成された中級~下級でしかない眼魔。

頭が回るほどに思考がよいとはお世辞にも語ることはできない。

 

 

 

「一発もらってきやがれ!」

 

 

 

ゴーストは勢いよく、眼魔の脇腹部分を蹴り飛ばす。

相手の怯み、のけぞり、手が下に降りた瞬間を見計らい、ボクシングのラッシュの要領で懐に潜りこみ、連打を行う。

次々と襲い来る衝撃にうまく反応できず、成すがまま攻撃をされる眼魔。

そのままソレは、フィニッシュとして使われた右のアッパーで大きくかち上げられる。

 

 

『ダイカイガン!』

 

 

右拳の側面に描かれた目玉のマークをドライバーにかざし、ダイカイガンの起動をする。

落ちてくる眼魔に向かい、左手の方のナックルをいきおいよく投擲。

そのまま空いた左手でドライバー側のダイカイガンを起動する。

 

 

『ダイカイガン! オレ! オメガドライブ!』

『オメガクラッシュ!』

 

 

全身、そして拳にエネルギーを集め、数度ぐるぐると右腕を回す。

落ちてくる敵の思い切り振り回した遠心力で威力を増した拳をぶつけると同時に、グリップ部分にあるトリガーを押し込み、エネルギーを解放。

数倍、数十倍にも膨れ上がった一撃により、眼魔は爆散、消滅した。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「いやぁ……一時はどうなるかとか思った……」

「へっへーん! 俺のメカに外れはなぁーい!」

「助かったよガン。まさか掴みが怖けりゃ掴ませなければいいとか……」

「あの手は掴みに本来向いてねぇなって思ったのさ。伊達にドロンボーのメカと戦ってないんだぜ」

 

 

 

女性化した体に慣れないトシロウを交え、和気藹々と反省会を開く一同。

しかし一人だけ浮かない雰囲気を醸す者がいる――ツナだ。

先ほどやり合った眼魔たちに何か心当たりがあるのか、それとも――

 

 

 

「ツナ殿、お一つ伺いたく」

「ああ、緋村さん……なんですか?」

「ツナ殿は先ほど眼魔等を見て――『みるふぃおーれ』と述べておられたでござるな」

「……ええ」

「ここだけの話でお聞きしたい、よもや、眼魔の発生に心当たりでもあるのでござるか?」

 

 

 

――『彼ら』の裏にいる『統括する者』に気付いているのであろうか。

剣心の小声の質問にツナは答えない。

いや、答えられないのだ。

 

 

 

「……なるほど、今は黙秘したいと?」

「ゴメンなさい」

「拙者としては別に確証がないならば構わないでござる。しかし――」

「ツナー! 剣心ー!」

「――今行くでござるよトシロウ殿! ……大事な友達には、話してもよいと思うでござるよ?」

 

 

 

剣心が先にトシロウの下へ向かう。

一人残されたツナは、ただその光景を見て、剣心の言葉を内心で反復するとともに、ぽつりとつぶやいた。

その声色は、恐ろしく低く、悲壮が漂っていた。

 

 

 

「怖くて伝えられないよ……俺がイタリアのマフィアの、ボスだってことなんてさ」

 




・ガンガンセイバー
二刀流モードこと、取り外した部分の独立運用加工が実装。
戦いが過激化していくためにそろそろアタッチメントか新武装でも開発していこうかとガンは考えている。
主にこの形態は剣心タマシイが使用する。


・ガンガンナックル
ガンガンセイバーの加工作業とほぼ同率に行っていた新武装制作。
ゴーストは投擲に使用したが、ダイカイガンのエネルギーを利用することでロケットパンチとしても運用可能。
ガンガンセイバーは初期制作とだけあって刃に特殊な加工を施したために絶縁体状態であるが、こちらは完全なメカの為に導体である。


・剣心眼魂
刻まれた歴史は、日本江戸幕末時代過ぎた文明開花直後の明治にてある男の日本政府クーデター作戦をその身で阻止したとされる剣豪の功績。
このクーデターを起こされていた場合、日本の形は今と大きく変わっていたかもしれないために、重要な歴史として眼魂に残っている。
緋村剣心本人の歴史について調べても、実は計10年にも満たない情報しか得ることができず、人斬り『川上彦斎』と同一人物としても扱われていることも多いために誤情報が多い。


・ボンゴレ眼魂
マフィアのボスとして君臨しているor君臨していたらしい。
ツナ自身はあくまでも人格のため、おそらくボンゴレと呼ばれるイタリアマフィアの歴代ボスの歴史を保有していると見る。




次回【呼吸と伝達!勇者の疾走!】
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