ラブゴースト!~歴史へ成る少年~   作:次郎鉄拳

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前回のラブゴースト!


「……うん、ちょっと思ってたのとは違うけど、充分及第点かなぁ?」

「なんでさ……廃校を無くそうって、頑張ってる自分たちの看板を応援してやらないんだよ……?」

「最初からうまくいかなくても、見てくれる人は、いるじゃないか」

「――そのためにっ、今日まで頑張ってきたんだから!」

「何だこいつら、声にノイズ混ざりすぎてて何言ってんのか聞こえねぇよ!」

「……まずいよトシロウ。オレの予想が正しければ……!」

「ゴースト、こういう時こそ新しいメカを使うんだ!」

『オメガクラッシュ!』

「……大事な友達には、話してもよいと思うでござるよ?」

「怖くて伝えられないよ……俺がイタリアのマフィアの、ボスだってことなんてさ」





呼吸と伝達!勇者の疾走!

闇の中、猛スピードで移動する蛇の眼魔がいた。

前のゴーストとの戦闘時、イノシシの眼魔とともに強襲し、自身の不利を悟って逃げ出した眼魔だ。

ゴーストの情報を得、それを持ち帰り、自身の創造主である者に捧げ、取り立たててもらう。

そんな計画の下でせっかくイノシシの同胞を見捨ててきたというのに――

 

 

 

「貴様ハ、アノオ方ニ、相応シクナイ」

「hIッ……! ワtu……wArE、sEイヲKaツボuス!」

 

 

 

――今、ソレはゴーストとは別の存在に自身の生命を脅かされている。

その眼魔は鎧武者のような見た目で、その鎧の内側は骸骨。

腕を四本生やし、それぞれの腕に刀を携えるソレは、蛇の眼魔を度重なる斬撃によって追い詰めてゆく。

 

 

 

「斬リ捨テテクレル!」

「tAッ……! タスkETeッ!」

 

 

 

声を出すこともままならぬほど追いつめ続けられる蛇の眼魔。

躱すことも自身の動きより相手の剣戟が速く、叶わない。

相手の図体が大きい、重そうな鎧姿にしては異質なほどに、身軽な動き。

二本の腕に握られた剣が何度も、何度も、何度も煌めく。

その動きは眼魔というソレの存在現象による恩恵なのだろうか。

 

 

――そして、断殺の時は訪れる。

逃げていてもらちが明かないと考えた蛇のほうが動く。

懐に潜りこんで吹き飛ばして余裕を作ろうという魂胆。

それに対応の出来ぬはずがなく、鎧の眼魔はいまだ動かしていなかった残り二本の腕で蛇の動きを押さえつける。

 

 

 

「貴様ノ役目ハ私ガ引キ受ケル」

 

 

 

押さえつけた眼魔の身体を動かし続けていた二本の腕、その手に持つ剣を数度振ることで切り刻む。

手練れの技、迷いのない断ち筋。

綺麗な芸術のような動きだったが、その直後に発する声には――

 

 

 

「私以外ノ誰モ、白蘭様ニハ必要デハ無イノダ……!」

 

 

 

――狂いと、盲信のようなものが混在しているのであった。

つぶやいた鎧姿は、そのまま闇へと消えた。

狙うは、偉大なお方の手を煩わせる、邪魔な戦士。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

μ’sのライブに心を打たれたトシロウは、より一層の励みをもって眼魂たちとともに眼魔を倒し続けていた。

どうやらこの前のノイズ交じりに話す眼魔はレアケースだったようで、この数週間の戦いの中で一度も見ていない。

まるで人間がそのまま眼魔へ成ったかのような感じだったあの眼魔たちは何処となく不気味さが強かったために、それらと戦わなくてもよいというのは、とてもありがたい気がトシロウには感じていた。

 

 

 

「そういえばさ、前に電気使う眼魔と戦ったけど、ガンガンナックルは感電したのにガンガンセイバーは感電しなかったよね」

「ああ、それはな。ガンガンセイバーはゆっくりと改造とかしてたから電気を通さないコーティングとかできたんだ。でもガンガンナックルは割と急ごしらえだったからなぁ」

「なるほど、加工が間に合わないのか」

「そうなんだよ。ガンガンセイバーをもう少し改造したいし、しばらくはガンガンナックルの改造はお預けなんだよなぁ」

「導体であることを利用できる力があればいいんだけどね……」

 

 

 

ただいまのトシロウはゴースト・ヤッタータマシイと成って絶賛ガンガンセイバーの改造中。

ガンと会話をしながら着々と分解、組み立て、差し替えなどを行っていく。

話題はここ数日前に戦った電気を操ってくる眼魔と、それの戦闘の際に使用したガンガンナックルについて。

導体であるガンガンナックルは電気の通りがよく、装着しているゴーストに感電してしまったことだ。

 

 

 

「そういや力で思い出したんだけどさ、トシロウ、今のゴーストに決定的な弱点があるんだよ」

「え? 決定的な弱点……?」

「そうそう。俺はケンダマジックで相手を翻弄するテクニカルな方だろ?」

「うんうん」

「ナツルの奴は火球で遠距離からぶつけていく遠距離型」

「そうだね、剣心は飛天御剣流の高速剣技だ」

「シンも、力を引き出せたとしても魔法による遠距離タイプなんだよ」

 

 

 

突如思い出したようにガンが話し出したのはトシロウの仲間たちの戦闘タイプ。

中距離はガン、近距離は剣心、遠距離はナツルとシンと、思ったよりバランスが取れているメンバー。

いったいこれのどれが致命的な弱点を抱えているのか――

 

 

 

「ツナは……まぁちょっと例外だけどアイツも死ぬ気の炎ってやつを噴出して戦っているだろ?」

「うん、確か戦闘分類はスピードタイプ……あっ」

「そうだ、今のゴーストには致命的にパワーが足りないんだ」

「……これは確かに致命的な弱点だね」

 

 

 

――それは純粋なパワー。

唯一純粋なパワーで戦うのはトシロウ自身である『オレタマシイ』だけ。

しかしそのオレタマシイはほかのどのタマシイと比べても最低の出力を誇る。

つまり、純粋なパワーで勝負できる唯一の力は、ほかの力よりもスペックがはるかに劣るのだ。

ということはすなわち今後これまで以上でのパワー勝負を持ち込まれた場合、さらなる苦戦を強いられることとなる。

 

 

 

「でっでも、その分剣心とツナが速度で押し切ればいいと思うんだ!」

「無理だろ。圧倒的な力で押し切られたら幾ら早くても攻撃威力は軽くなるからはじかれちまう」

「えっ遠距離!」

「弾き飛ばされて距離を詰められたら? 現に前々からナツルの能力使ってる時に投げ飛ばされたりしてるじゃないか」

「……ガンさんは?」

「前に猫の眼魔とハンマー持った眼魔と2対1で戦ったとき」

「……ヤバイ、マジで手詰まりじゃん」

 

 

 

改めて自身の現状を認識したトシロウ。

能力把握だけでは突破できない単純なスペックとはそれほどまでに厄介なのである。

一番手っ取り早いのは、力の強い眼魂を仲間に引き入れること。

しかしそんな都合のいいことはそう簡単に望めない。

眼魂だって意識は持っている。感情があるのだ。

該当する眼魂に出会ったとしても協力を臨めるのかは彼らの気持ち次第。

過去には眼魂を道具としか思っていない守護者もいたようだが、全員に見限られて別の守護者に立場を奪われることがあったというくらい、彼らの意識は無視してはいけない重要さを持っている。

 

 

 

「よし、ひとまず今日の改造はここまでだな。これならアタッチメントを付け終わる日も遠くないぞ」

「オッケー。結構今日はガッツリ改造したね」

「久々の自動メカなんだ、派手にやりたいじゃん?」

「……予定の何倍も大きくなったっていうのは勘弁してよ?」

「……たぶん大丈夫」

 

 

 

不安なんだけどー! と叫ぶ彼らの和気藹々とした雰囲気の中、突如打ち壊す斬撃の余波がトシロウへ向かって飛んでくる。

空気が震えたことに、これまでの戦闘で危機感を覚えるようになった彼は急いでその場から飛びのく。

飛び退いた先で、急いで先ほどの場所を見ると地面が深くえぐれている。

遠くからの斬撃にしてはとても強烈な威力を持っているらしい。

 

 

 

「いったいなんだ今の……!」

「トシロウ、あそこだ!」

「っ……!? あれは……眼魔か!」

 

 

 

トシロウ達の視線の先にいたのは鎧姿の骸骨。

彼らは、ソレが四本の腕それぞれに携えたその剣で、遠い距離からトシロウ達を狙ったという事実にどこか戦慄を抱く。

今までやり合ってきた眼魔たちとは確実に何かが違う。彼は直感でそう感じた。

 

 

 

「ガンさん……アイツとやり合って……行けそう?」

「よくてほかの眼魂を待つまでの時間稼ぎだろうなぁ……」

「わかった、ぎりぎりまで食いつくよ!」

 

 

 

なぜガンは弱気な意思を見せるのか……それは彼の持つ能力、及び歴史に関係がある。

高田ガンことヤッター眼魂――ヤッターマンは、多くのメカを駆って戦ってきた存在だ。

メカとメカとの戦い、それがヤッターマンと、敵であったドロンボー一味とのやり取り。

数度彼らが直接戦いあうことはあれど、それもあくまで数えるほど。

 

 

それもそのはず。ヤッターマンにしろ、ドロンボーにしろ、ナツルのように地球人以外の力が体に関与したり、剣心のように極度に人間離れした身体能力を保持しているわけではない。

あくまでもヤッターマンの真骨頂は、メカを駆り、メカを通じて行う知識のやり取り、頭脳戦に在るのだ。

しかし、ドロンボー一味との戦いを終え、ヤッターマンの使用してきたメカはほぼ全てがガンの手によって破棄された。

更に新たなメカを作ろうにも、希の家などは普通のマンションのために、地下などにおけるメカの保管場所がないという致命的な弱点を抱えている。

つまり、ヤッタータマシイは……実はオレタマシイ以上に『直接戦闘を得意としない』フォームであるということになる。

そのため、直接戦闘を得意とする面々が到着するまで、耐えるしか方法がないのだ。

 

 

 

「……来るぞ!」

 

 

 

うなるような雄たけびをあげ、鎧骸骨の眼魔が飛び降りてくる。

戦いは既に始まった。ゴーストが決定的な隙を見せれば、間違いなく負ける。

緊迫感が彼らを襲う中、着地した眼魔が動いた。

 

 

 

「貴様ガ……アノ御方ノ障害ィィィ!」

「脚をかけろ!」

「ああ! ケンダマジック!」

 

 

 

眼魔の進行方向に、柵を利用したケンダマジックの糸を張る。

目的はあくまでも時間稼ぎ、自身よりしっかりと力量差を見分けられるガンの判断を尊重することを、ゴーストは選び動いた。

眼魔の脚をひっかけ、ケンダマジックでからめ、しばし動きを阻害し、逃げ続ける。

彼らにとっての裁量と思われる判断。しかし、それは甘い。

 

 

 

「ウォォォォォォ!」

「なっ!? 無理やり糸を引きちぎった!?」

「むちゃくちゃすぎるでしょアイツ!?」

 

 

 

糸が自身の脚に絡まったことに気付いたとたん、眼魔は力任せにその糸を引きちぎった。

電流が流れるように中に鉄線を仕込んであるため、それなりの強度を誇るはずのケンダマジックの糸。

それが容易に引きちぎられるとは、相手はかなりの筋力を持っていると見える。

 

 

 

「近寄るのだけは避けよう! ガンガンセイバーだ!」

「ガンモードしかないなこれは!」

 

 

 

ゴーストはガンガンセイバーを呼び出し、ガンモードへ変形、そのまま眼魔に向かって数度発砲をする。

発砲した弾は見事眼魔に当たる。

しかし、明らかに真正面から弾が当たったはずなのに、眼魔の何かがおかしい。

 

 

 

「なんだ!? 銃弾は確かに当たったように見えたのに!」

「というか変だぞ。ガンガンセイバーの銃撃は実弾を使わない分衝撃が強く通るように制作したはずだ、相手がいかに堅かろうと衝撃が内部に来ててもおかしくないのに……!」

「ソレハ私ガ、貴様ノ攻撃ヲ通サナイ理由ニハナリエナイゾ」

「!? いつの間に!?」

 

 

 

目の前にいたはずの眼魔が気付けば後ろのほうで剣を構えている姿に衝撃を隠せないゴースト。

相手の行動が読めず、今までの眼魔と違う策を弄した行動を取り始めていることに恐怖を覚える。

飛び上がり、ガンガンセイバーの目玉をドライバーにかざし、エネルギーをチャージする。

 

 

 

「喰らいやがれ!」

 

 

 

増幅圧縮されたエネルギー弾――オメガシュートが眼魔に向かい撃ち出される。

多少の銃撃で効かないのであればより高出力の銃撃を撃ち込めばいい、それが故の判断だが――

 

 

 

「甘イナ」

「なっ!? 貫通した!」

 

 

 

それは眼魔をすり抜け、地面に当たり爆発を起こす。

ふと先ほどまで眼魔を撃った弾の方向へ目を向けると、多少地面に変化が見えていることがうかがえる。

つまりだ、今までの銃撃全ても同じくすり抜けであったということがわかる。

ということは、相対する眼魔は――

 

 

 

「実体がないってことか!?」

「気付クノガ遅イナ。ソレト、ソノ予測ハ、ホトンドハズレダ」

「上っ!? ウグァ!」

 

 

 

――肉体を持たない……と思われた。

しかし、ゴーストは眼魔によって殴り飛ばされ、地面にたたきつけられる。

それはつまり、肉体……実体を持つこと。

眼魔の言う通り、ゴーストの予測は外れた。

 

 

いや、外れてはいるが、同時に、当たっているのだ。

それをゴーストは『感じ取った』。

なぜだか確証はないが、『そんな気がする』のだ。

 

 

 

「ガンさん……アイツ、確かに実体がないよ」

「いやいやいや、だけどアイツさっきから……!」

「いや、俺には『わかる』んだ。アイツは、自分に実体を持たせられる。でも、なくすこともできる。自由自在なんだ」

「おいおい……それって何でもありじゃねぇか」

「そうだね……どうやら大気に干渉してそうしてるみたいだから……それさえどうにかできれば!」

 

 

 

敵の原理がわかったところでどうにかする術を今の彼らは持ち合わせていない。

残念な話ではあるが、彼らが時間を稼ぐための手は万策尽き始めている。

相手には実体がないのに、物理の攻撃を通してひるませようというのがなかなかに無謀な話。

実体と化している瞬間を狙えばいいと思うだろうが、敵は剣の動きに慣れ切っている。

反対にこちらは肉弾戦等を元来得意としていない。

なかなかにハードだと、ゴーストが冷や汗をかき始めた時――

 

 

 

「……アノ御方ガ呼ンデイル。仕方ガナイ、ソノ命、暫シ預ケテオイテヤル」

「……えっ?」

 

 

 

くるり。と眼魔は背を向け、その場から跳び、消えた。

唐突な退却に肝を抜かれたゴーストたちはその場にへたり込み、変身を解除する。

直後安堵の息を吐き、そのうえでこれからどういう戦い方をすればよいかと、トシロウは頭を悩ませることになる。

そんな彼らの下に、一匹の犬がやってきた。

 

 

 

「……この犬、俺のことが視えてるのか?」

「視えてるも何も、僕は眼魂の一つだよ?」

「うぉあ!? 喋ったぁ!」

「見たところ戦闘は終わってるようだね、遅れてごめん。僕はジョナサン・ジョースター――君に力を貸す者だよ」

「え!? ジョナサン・ジョースターってあの吸血鬼討伐伝説の人かよ! マジでいたんだぁ……ただの作り話だって思ってた!」

「ガンさんが知ってる人なのか、ならたぶん本物だな!」

 

 

 

その犬は自らをジョナサン・ジョースターと名乗り、トシロウ達の拠点――希の家に連れていくように求める。

眼魂の一人ならば話は早い。トシロウはまた、それが本物であると『確信した』。

故に先ほど現れた鎧骸骨の眼魔との戦いを説明するため、直後やってきたツナたちと希の家に戻るのであった。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

闇の中、白き異形は鎧骸骨の眼魔と向き合い、怒りをあらわにしていた。

対する鎧骸骨はどこ吹く風。

暖簾に腕押し、糠に釘、豆腐に鎹――つまり、白き異形の言葉は全く通じておらず、届いていない。

 

 

 

「ねぇ幻ちゃん、なんで彼に手を出したんだい?」

「私ハ、タダ貴方様ノ御手ヲ煩ワセル必要ガ無イト、考エマシテ」

「ふぅん……勝手なことしないでくれないかな?」

「……」

「……そ、『ボクの為に』なることはやるけど、『ボクの命令を』受けることはしないんだ……」

 

 

 

白き異形の言葉が止まったことを『話が終わった』と捉えた鎧骸骨はそのまま一礼して闇を去った。

ソレが去るのを確認した異形は、闇の中からいらだたしげに袋を取り出し、乱暴に封を開ける。

 

 

 

「ほんっと……ずっと器が小さいよね。ああ、ムカつくなぁ」

 

 

 

袋の中身を乱雑につかみ、一度に口へと運ぶ。

手から零れ落ちたマシュマロを気にも留めることがなく食べ続け、気付けば中身がなくなったと確認したソレ。

異形は空の袋を投げ捨て、手を握り開き怒りを治めるように歩き出した。

しかし薄っぺらな忠誠を誓う鎧骸骨――幻騎士眼魔を心の中で罵るのだけは、やめられない。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

幻騎士眼魔が去り、ジョナサン・ジョースターをつれ、希の家で作戦会議を行うトシロウ達。

議題はまず、幻騎士眼魔について。

鎧骸骨姿の存在がどういうものなのか、そしてトシロウの直感で感じとった鎧骸骨の戦闘方法を掲示する。

 

 

 

「――と、いうのが俺たちの戦った相手なんだ」

「なるほど……実体と非実体の使い分けか……」

 

 

 

内容を聞いて考え込み始めるナツル。

残念だが彼の頭脳も発想も、ごくごく普遍的高校生徒レベルで収まるもの。

彼が考えつくものはことごとくが既にトシロウによって考えられていたもので、役には立たなかった。

そんな中、幻騎士という存在を一人だけ知っているような反応を示すものがいた。

――ツナだ。

 

 

 

「……それは有幻覚だよ」

「ゆうげんかく?」

「幻覚の一種……いや、通常では起こりうることのない『質量を持った幻覚』だね」

「……起こりえない?」

 

 

 

トシロウの疑問にツナがうなずくように、上下に動く。

通常では起こりうることがない……それはつまり何らかの方法をもって起こりうるということ。

そしてツナは、その有幻覚の起こる方法を知っているということになる。

 

 

 

「ツナ、お前さんさぁ、そろそろ自分の素性位話してもいいと思うんだよなぁ?」

「ツナがどんな歴史を持っているのかって聞いたことないっけそういえば……」

「すげぇんだよなツナ。俺たち全員についてそれなりに詳しい知識持ってるんだよ!」

 

 

 

パッキーの言葉を皮切りにツナに対する疑問と評価が次々と飛び出る。

その多くは彼の知識についての感嘆、およびトシロウの相棒としての一面について。

本題からずれ始めた議論会に、一人苦笑した希が手を叩くことで場を収めた。

 

 

 

「ツナ君について話すのは別にええんやけど、今はなすのってその眼魔についてだと思うんよ」

「あっ……」

「今の話で分かったのは、有幻覚を使うってことと、剣がすごいってことやね」

「ああ、剣の腕もやばかったけど、やっぱり一番手ごわいのは幻覚だと思う」

 

 

 

眼魔の能力で最も脅威なのはその幻覚による欺きであると結論付け、トシロウ達は対策を話し合う。

剣術だけであるならば、剣心によって相手どれる。

しかし剣心も人の子。実体非実体を使い分ける幻覚を見分けるような眼はもっていない。

いや、眼を持たずとも、それを封じる、破ることさえできればよいのだが……

 

 

 

「もしかしたら、僕の力が役に立つと思うんだ」

「……ジョナサン・ジョースター。といえば仙道の秘術、『波紋法』が代表的だね」

「そう、呼吸法から練り上げる仙道の一つ、波紋。生命エネルギーの活性化を用いているこれは、太陽光と同じ働きを持っていて、さらには電気に似た性質が――」

「電気!? つまり導体に通るってことか!?」

 

 

 

波紋のエネルギーは、正確には電気とは性質が異なるが、細かく詳しい話をしたとしてもそれを会得していないトシロウ達には理解しづらいこと。

あくまでも慣れ親しんだ電気というエネルギーに『似た』と説明することで、彼らにイメージを沸かせようというジョナサンからの心遣いなのだ。

その説明に最も食いついたのはガン。

電気と似た性質を持つということは回路を作ることでエネルギー出力の増加、自身の制作したメカとの融合を図ろうというのだ。

 

 

 

「あっああ、できないことはないと思う。波紋エネルギーは水や鉄に流したり、磁気効果を与えたり、熱の発生といろいろできることがあるからね」

「ほんとか!? 俄然燃えてきたぜ……!」

「……そういえばなんだけど、そもそも俺ってゴースト……幽霊じゃん? 生命エネルギーって使えるの?」

「それがなんだけどね、なぜか使えそうなんだよトシロウ。僕にも理由はわからないけどね、君に生命エネルギーが流れているのが『感じる』んだ」

 

 

 

波紋法はあくまでも生命エネルギーを体内で増幅、活性化させ、それを表に出すもの。

生きる者なら、だれでも持っている生命エネルギーを、眼魂となったジョナサンは『感じる』ことができる。

彼とともに戦ううえで、それは『必須』だから。生命エネルギーなくして、彼のもつ波紋の技術を扱うことはできない。

そんな彼が『有る』というのだ。トシロウには間違いなく生命エネルギーが存在するのだろう。

 

 

 

「生命活性か……」

「トシロウ、何か思いついたのかい?」

「うん、眼魔ってさ、たぶん波紋法に弱いと思うんだよね。なんとなくだけど」

「ああ、そうだね。吸血鬼と同じく、眼魔という存在も波紋には弱く、強い波紋を流せば消滅できるよ」

 

 

 

ジョナサンの説明を受け、ガタリと突如立ち上がったトシロウ。

ジョナサン――犬をドライバーの前にかざし、それを眼魂の形へ変える。

流れるような動きに驚く一同。

当のトシロウは、笑顔でこう言い放った。

 

 

 

「勝ち方思いついた。確かにジョナサンの力が超役に立つ!」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「――ついたね。トシロウ」

「ああ、ジョナサン――力、借ります!」

「ああ――それと、僕のことはジョジョって呼んでほしい。みんなそう呼んでくれてたんだ、ジョナサン・ジョースターという英雄じゃない頃、ただの学生をしていた僕のことをね」

「――うん、わかったジョジョ!」

 

 

 

闇夜の廃工場、開けた土地でトシロウが仁王立ちで眼魔を待つ。

あの後、ツナによって眼魔の素性が明かされ、ソレが過去ツナとその仲間たちを苦しめた幻術使いの剣士だと発覚。

仲間を連れては利用をされてしまうのではないかと懸念したトシロウによって、キーパーソンのジョナサン――ジョジョ、そして親友であり相棒であるツナ。

以上三人だけが眼魔を待ち受けることにし、希を利用されないようにする防衛として残り全員が徹底守備に就く。

 

 

 

「見ツケタゾ、ゴースト」

「お出ましか、待ちくたびれたぞ幻騎士!」

「ホウ、ソレヲ話シタノハ、ボンゴレ十代目カ――ダガマァ関係ハナイ。ソレモ貴様ガ死ネバ忘レルコトダ」

「お断りさ。昼間のようにはいかないからな!――変身!」

 

 

 

ドライバーを顕現。ジョジョの眼魂をセットする。

音声とともにドライバーから全体的に青色基調の衣装が飛び出す。

それを確認したトシロウはトリガーを往復させる。

 

 

『カイガン! ジョースター!』

 

 

衣装がトシロウ――ゴーストに被さると、肩部分に茶色の布装飾、腕に茶色の穴抜きグローブが嵌められる。

そして、パーカー部分が背中部分に伸びて小さいバッグのような形になる。

衣装の装飾が展開され、顔の面にハートマークのようなものが描かれる。

 

 

『伝達! 高潔! 真摯のドライブ!』

 

 

ゴースト・ジョースタータマシイへの変身を終えると同時に、ドライバーからガンガンナックルが飛び出し、ゴーストの腕に装備される。

数度両拳を打ち鳴らし、右足を引き、左腕を前に、右拳を顔の横に構える。

戦闘の構え。幻騎士眼魔は近接戦闘を挑むゴーストをあざ笑いながら剣を構える。

 

 

 

「さぁて……刻み燃やすぜ、生命(いのち)のビート!」

「私ニ接近戦ヲ挑ムトハナァ……!」

「ゴースト、もともと僕の力を使うために必要なのは呼吸。今の君では長時間波紋を使うことができないから、使う場合は気を付けて!」

「ああ――だけど、そんな時間は取らないさ!」

 

 

 

そんな時間は取らない――つまり、さっさと倒して勝負を終わらせてやるということ。

言葉の裏にある挑発を敏感に察知した幻騎士眼魔は、自身を侮るゴーストに怒りをあらわにする。

骸骨の眼が光ると同時に幻騎士眼魔の姿は霧散、最初から幻術を用いて倒してやるという意志の表れか。

 

 

だが、幻騎士は優れた剣士でもあった男。自身の幻術に対する驕りが強くあったからこその、この選択だが。

本当に戦いを即刻に終わらせようとするなら純粋な剣技でゴーストと武器を交えるべきだった。

幻騎士の『術』への対策は練られていたが『技』には行き当たりばったり精神のゴーストたちならば、純粋な剣技のみで圧倒できたのだ。

しかし、今の幻騎士は眼魔という怨念集合体に等しいもの。知性はあれど、敬愛する者の命令を受けないなどと一部致命的な理性が欠けている。

 

 

だからこそか。波紋法というのは良くも悪くも裏の世界においては高度の知名を誇るもの。

『生きている方』の彼ならばわかるはずの、波紋の恐ろしさに気付けない。

――それが幻騎士眼魔の最初で最後の致命的ミス。

予測的中。勝機は来たれり。

 

 

 

「幻術で来るとか予想通りでしょうがないな!」

「コォォォォ――ゴースト!」

「ガンガンナックルは導体! 波紋を流して……!」

 

 

 

ジョジョの声がゴーストを呼ぶと同時に、彼の身体に電流が走るが如き輝きがまとわりつく。

声にこたえるようにガンガンナックルへ波紋を伝達させ、ガンガンナックルのダイカイガンを起動。

地面に波紋エネルギーを爆発的に増幅させたオメガクラッシュを叩き込む。

地面にたたきつけきれなかった余剰のエネルギーは波紋の生命エネルギーを纏い、衝撃として勢いよく大気中に広がっていく。

 

 

 

「グァァァ! ナゼダ!? 私ノ幻術ガ発動シナイダト!?」

「波紋の力は生命活性とともに伝達能力! 大気中に分散させた余剰エネルギーにさらにおかわりで波紋を流し込んだのさ!」

「グゥゥゥゥ! 貴様ァァァァ!」

 

 

 

火花を上げながら幻騎士眼魔が姿を現す。

波紋を流し込まれたことによりなのか、ソレの鎧はところどころ焼け焦げ、溶けていることがうかがえる。

自慢の幻術がむちゃくちゃなような行動で打ち破られ、その影響で体がうまく動かない幻騎士眼魔は再度怒りをあらわ。

そんな眼魔をよそに、ゴーストはドライバーの眼魂をボンゴレに変更。

ソレに向き直り、トリガーを再度往復させ、ボンゴレタマシイになるとともに、またトリガーを往復する。

 

 

『ダイカイガン! ボンゴーレ! オメガドライブ!』

 

 

左手を後ろに構え、炎を噴出。

脚を動かして身体の位置を、バランスを固定させる。

身体の固定を終えると空いている右腕を幻騎士眼魔のほうへ伸ばして、腰をかがめる。

 

 

 

「アンタの魂、浄化してやる。安らかに眠れよ?」

「私ノ魂ハァァァ! 白蘭様ト共ニアリィィィィ!」

「X――BURNER!」

 

 

 

右手から剛の炎が放たれる。幻騎士眼魔は抵抗もできず、炎へ包みこまれる。

炎がやんだその時、眼魔の姿は消え失せており、夜の静寂が広がっていた。

 

 

 

「――ハァァ……! っ疲れたあぁぁ!」

「お疲れ様トシロウ」

「呼吸が……! くるしい……」

「慣れないうちはそうなっちゃうと思うね。これから頑張っていこうよ」

「うん……改めてよろしく、ジョジョ」

「ああ、君の勇気、しかと受け止めたよ。改めてよろしく!」

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「まったく……幻ちゃんは先走ってあっさりやられちゃったのかぁ」

「――――。」

「ん? 彼はボクが呼んだって思ってるの? そんなわけないじゃん、あんな器の小さい子」

「――――。」

「ああ、もういいの? 嬉しいなぁ。ボンゴレ十代目をこの手で……アハハハハ!」

 





・ゴースト・ジョースタータマシイ
仙道における秘術『波紋法』を用いて戦う、分類的に肉弾戦特化フォーム。
実は筋力も現状ゴースト全フォーム中最高クラス。
必殺技は波紋エネルギーを物理直接攻撃によって敵に叩き込む【サンライトイエローオーバードライブ】。
内包された人格はジョースター家における初代波紋習得者とされる『ジョナサン・ジョースター』である。


・幻騎士眼魔
怨念集合の果てに生まれた一体の眼魔。
その人格は優れた四刀流の使い手であり、幻術師でもあった男――『幻騎士』である。
トシロウに味方するある存在を『ボンゴレ十代目』と呼称し、『白蘭』という存在を崇拝している様子が確認された。


・ゴースト・ボンゴレタマシイ
死ぬ気の炎には実は浄化作用があり、クルセイダースタマシイの行使する魔法や、火、純水などと同じ効力を持っている。
本来これも生者――生きているものにしか、個人では持ち得ることのない生命エネルギーの一種である。


次回【圧倒、ゴーストの殲滅。】
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