「君は君らしく、俺たちと一緒にやっていこうぜ」
「ガンさん、何をするつもりなんですか?」
「俺に体を貸してほしいんだ。」
「オレは友達を傷つけてまで眼魂を集めようなんて望まないよ」
「西木野真姫ちゃん……入学して以来一度も誰かと一緒にいるところ、見た覚えがないんよ」
「さっき作った武器を使うんだ。あれならこの俺の自信作だから通るはずさ!」
『ダイカイガン! オメガブレイク!』
「俺はナツル! 『瀬能ナツル』っていうんだ、よろしく!」
瀬能ナツル……眼魂であると自らを名乗ったその人物……いや、そのぬいぐるみを保護したトシロウ達。
特に何かを語るわけでもなく、とりあえず保護しろと要求してきたナツルは、一週間経った今もトシロウと打ち解けることができずにいた……
「ナツル! サッカーの試合視ようぜ!」
「ああ、希頼む!」
「しょうがないなぁ……一試合だけやで」
わけでもなく。
ガンにしろ、ツナにしろ、二人にも言えることなのだが……
今のところ会った歴史の人物たちは全員がそこらへんの一般人のような趣味や考え方をしているためなのか。
ごくごく自然に気付けばトシロウと親しくなり、三日目には彼ら+希でサッカーを見るまでの仲になっていた。
なにか裏に事情めいたものを抱えているであろうツナや、子供たちの理想そのもののようなヒーローの風格が漂うガンと違い、ナツルの場合はまさしく『サッカー好きの普通の青年』であることも、理由ではあるのだろうが。
ここ一週間はナツル以外の眼魂が合流することもなく、暇さえあればガンとともに何かを創ったり、希と一緒に音ノ木坂まで出向いたりしていた。
幸い眼魔もここ一週間は現れる様子もなく、かりそめの平和をどこか満喫している一同。
しかし、そんなトシロウにはいまだに晴れないことがあった。
真姫のことだ。
ナツルが合流した当日の夜、希とツナから話を聞いたトシロウは深く悩んだ。
希との出会い、ガンとの出会い、ナツルとの出会いで今までよりはるかに必死さが減り、余裕を持つようにもなったトシロウ。
しかし、それは言い換えれば……今まで何にも変えてでも優先していた真姫のことを少しばかり軽く考えてしまったことにもなる……と、彼自身は考えていた。
自分がどうにか実体化さえできれば、もしかしたら、今も立ち止まっている真姫の傷を少しでも軽くできるかもしれない。
ツナに、一年前にすでに死んでいて顔を出しに行くのはまずい。と、いわれながらも真姫を安心させて、前を向かせてやりたい気持ちが押し寄せる。
改めて自身の一番優先すること、守りたいものを、トシロウは深く認識する。
そんな彼は、なぜか自分の体を使って機械の製作ができるガンに、ある日の機械製作中詳しい話を聞きだすことにした。
「ガンさん」
「ん? どうしたんだトシロウ」
「一つ、聴きたいことがあるんです」
「……ああー、なるほど。実体化の方法だな!」
「えっ……ええ? なんでわかったんですか」
「ツナがよく相談してくるんだ。おかげでこうやって俺のほうも色々作ってみたりしたよ!」
ガンが語るには、どうやらツナからあらかじめの相談を数度受け、そのうえで自身が検証など機械製作を通じて行っていたということらしい。
トシロウは感動を覚え、顔を笑みで緩ませる。
相棒が自分のことをそこまで考えてくれていたとは。
彼は彼にしかできないことで、自分の為にできることを続けているのだと。
「それで、ガンさん、方法は、わかりますか?」
「いや、さっぱり」
「なんとー!?」
「いやぁ、さ。機械作ってる時は何にも疑問に思わなかったのに、こうして別のことやろうとすると触れなくなっちまってさぁ」
タハハと、笑いながらガンがトシロウの体を使って手を伸ばした先、工場の建物の外壁だが、見事に手がすり抜けている。
ガンの行動を『見た』トシロウは思考をめぐらし、一つの仮説を立てる。
眼魂の人物が最も執着する、趣味としているものには実体化で触れることができるのではないか……ということ。
おそらく、この仮説が正しければ、ナツルはサッカーボールには実体化で触ることができるのではないか。
ガンの説明と動き一つで仮説を立て、実行に移そうと望むその姿。
少年、大地原トシロウは、紛れもない『天才』の一人なのだろう。
だからこそ、もっとも重要な、それとともにもっともシンプルな答えを導けない。
真実は単純明快なものだということに、彼が気付くのはまたあとの話である。
***
「トシロウ! 眼魔が出たよ。急ごう!」
ツナの眼魂がフワフワと浮きながらトシロウ達を迎え、それと同時にトシロウのポケットにある眼魂が震える。
久々に眼魔が出現した合図だ。
ここ最近平和だったせいか、いざ改めて認識を深めたにしても、その合図にビクッとトシロウは飛び退いてしまう。
「眼魔!? ……よぉし、やってやる!」
「おっと! 行くんならいいものがあるからそれを使っていこうぜ!」
「いいもの? ガン、何を作ったの?」
「えっ……作ってたあれが完成したの!? いつの間に!」
「ふっふっふ……ついてこーい!」
ガンの案内で希の家の駐車場まで行くと、そこには先端部がユニコーンのような馬のような見た目をした一台のバイクが鎮座していた。
トシロウ達を案内したガンは誇らしげに紹介を始める。
「そいつはここ最近最高の自信作! ゴースト専用バイク型メカ。名づけて『ゴーストライカー』だ!」
「おお! すごい! カッコいい!」
「最後のほうは希に頼りっぱなしになったが間に合ってよかった!」
「希!? ありがとう希! 今ここにはいないけどありがとう! ガンさん、すっごい嬉しい!」
「へへん。だろう? だろう? さぁ、こいつで行こうぜ!」
「うん! 変身!」
『カイガン! オレ!』
ゴースト・オレタマシイに変身をし、バイクに触れるトシロウ。
今まで誰かのバイクをまじまじと見ることもなかったため、今日この日、初めて自分の感覚でバイクそのものに触れることになる。
「いつの間にこんなところに運んだの?」
「希が触れたから運んでもらったのさ!」
「あとで希にお礼を言わなくちゃね」
「ああ。でもこれさ、バイクだけひとりでに動くって、周りには見られたりはしないよね?」
「大丈夫大丈夫。今まで誰もコイツを見てないっぽいし問題なーい!」
「なんか適当な気がするけどそういうことか。 よっし、やってやるぜ!」
「よーし、出動だ! ゴースト!」
ガンにうなずき返すと、トシロウはバイク--マシンゴーストライカー--にまたがる。
そして、ハンドルやアクセルなどを確認し、一言つぶやく。
「……バイクってどうやって運転するの」
「ポペー!!」
「オレがやるよトシロウ。ちょっと体借りるね?」
「ありがとうツナ!」
『カイガン! ボンゴーレ!』
ゴースト・ボンゴレタマシイにフォームを移したトシロウは、バイクを運転してもらうためにツナと意識を交代する。
さすがに中学生である以上、バイクの運転方法などわかる方が変な話であるのは、まぁ間違いない。
意識交代の方法はガンが機械製作するためによくやるので覚えている。
単に意識を集中して、ツナを『知覚』し、自身が『離れる』イメージをすること。
ぐったりと一度、ゴーストが脱力し、直後顔を起こす。
「よし、いくよ!」
目指すは眼魔のいるであろう場所。
東京……江戸川。
***
「ねぇツナ」
「なんだいトシロウ」
「あれってさ……どう見てもスライムだよね」
「そうだね」
「ありゃあ眼魔そのものっていう黒い姿丸見えで、気持ち悪いっていうのがまたなぁ」
現場に到着したトシロウ達が見たのは、ぶよぶよとした黒い眼魔。
水っぽく視えるその姿は、スライムというよりかは『
人型を保ってはいるものの、その見た目が歩くたびにプルプルと揺れるのは恐怖体験に他ならない。
「よーし! ちゃっちゃと倒すぞ!」
「あっ待ってゴースト!」
『カイガン! オレ!』
『ガンガンセイバー!』
ゴースト・オレタマシイにチェンジしたゴーストはガンガンセイバーを構え、眼魔に突っ込んでいく。
敵について何も情報がないというのに突っ込んでいく彼を、ツナは制止するがそれもお構いなく。
のろのろと動くそれに、ゴーストは上段斬りを勢いよく叩き込んでいくが……
「うぇっ!? ブニってなった! キッモ!」
「まずい! ゴースト、避けろ!」
「えっ……グオッ!?」
「ゴースト!」
そのゲル状の体故に、ガンガンセイバーの一撃はクッションのように阻まれる。
武器から通じるぐにょんとした感触に恐怖したのか、ゴーストはガンガンセイバーを手放し、両手をこすり始める。
その隙を見逃すような眼魔ではない。
プルプルと柔らかそうな見た目に反した力強いアッパーでゴーストを打ち上げ、反対側の腕で横薙ぎにたたきつけるよう、彼を殴りつける。
ゴーストは江戸川の向こう岸に飛ばされ、塀に激突。
何かがぶつかる音で付近の住民たちはこぞって逃走した。
「大丈夫!?」
「あいつ……ガンガンセイバーが効かない!」
「よし、俺を使えゴースト!」
「わかった。行くよ、ガンさん!」
『カイガン! ヤッター!』
「アイツに電撃を流し込めば行けるはずだ!」
「わかった! ケンダマジック!」
ゴースト・ヤッタータマシイにフォームを切り替え、腰のけん玉を取り外し、眼魔へ振るう。
狙いは玉と持ち手を結ぶ糸で相手をとらえること。
人型であるのならば、その試みは成功する……はずだった。
「うっそ!?」
「あいつは物理攻撃を通さないみたいだな!」
「どうやって戦えばいいんだぁ!」
糸が絡まるように巻き付く寸前に、眼魔はべちゃりと、地面につぶれる。
それはすなわち物理攻撃に強い耐性を持つこと。
自由自在に自身の姿の大きさ太さなどを弄ることができる相手に、どのような攻撃なら通せるのか。
悩むゴーストの顔に、不意に何かが飛びついた。
ナツルだ。
「お困りのようなら俺が力を貸すけど?」
「ナツルが……? てかいつの間に一緒にいたのさ!」
「そんなことはまぁいいじゃないか。殴れないって聞いたから、俺の力ならなんとかなる」
「この展開どこかで見たような……いや、まぁいい。力を貸してくれるならそれに越したことはない!」
呆れつつもゴーストはナツル……が宿るぬいぐるみをゴーストドライバーにかざす。
直後、眼魂は輝き、上部が青く、白と黒の入り混じった眼魂へ変化を遂げる。
ゴーストはヤッター眼魂を取り外し、ナツルの眼魂をベルトへはめ込む。
『アーイ!』
直後、見た目がまんま男子高校生の制服のようなパーカーがベルトから飛び出す。
それとともにヤッタータマシイの衣装で有る白いツナギは霧散する。
『バッチリミナー! バッチリミナー!』
ゴーストはベルトのレバーを引き、戻す。
すると、音声とともに変化が起きる。
『カイガン! けんぷファー!』
上空に浮かんでいた男子高校生風味のパーカーが突如霧散。
『受け取る、臓物!』
直後その場に生成されたのは女子制服を模したパーカー。
それがゴーストにかぶさり、彼は異様な感覚を覚える。
『性別、トランス!』
頭部のフードが青く染まり、ゴーストの全身がどことなく一回り程細くなる。
腰部にスカートのような黒色の衣装が付くことで、変身を終える。
ゴースト・けんぷファータマシイ……と、名付けるものだ。
「ねぇ、ナツル」
「慣れろ。俺も慣れたよ、久々だけど」
「……女になるって体感するとは思わなかった」
そう、見た目だけではない。
どうやらゴースト自身も女性になってしまったようで、声が少しばかり高くなっている。
気味がよろしくない。と体を震わせ、彼……いや、『彼女』は、早く終わらせようと臨むことにした。
「で! ナツル、俺はこの姿で何ができるの!」
「炎が撃てる!」
「……炎?」
「ああ、炎、フレイム。正しい名称は『
「詠唱とか!」
「要らない! 手をあいつに向かってかざせ!」
声の指示に従い、眼魔に向かって右の掌をかざすと、円形の小さな火の玉が生成される。
しかし撃ち方がわからない。
どうやってどのようにしてどういう風に撃てばいいのか……
火の玉の熱さもあり、困惑し困り果てるゴーストに、いつの間にか近づいてきた眼魔が迫る。
「ウアァァァァァァ!?」
「ブシュラァァァァァ!」
「ナイスだゴースト! クリーンヒット!」
迫る眼魔の見た目がやたらと黒々して気持ちが悪くなったのか、叫び声を上げながら火の玉が生成された手を、掌底の要領で眼魔の腹部に叩き込む。
不意を突かれた一撃であることと、火という熱のダメージを叩き込まれた眼魔はよろけ、下がり、ふらふらとなる。
「ゴースト、集中だ! 彼女も言ってた! 集中力さえあればなんでもできるって!」
「あの子って誰!? ああもう、わかった!……集中して……そこだ!」
「ァァァァァァァァァ!」
声のアドバイスに従い、再度右の手を眼魔にかざし、先ほどよりも二回り大き目な火の玉を生成。
放ったそれは眼魔の移動速度で躱せるわけもなく直撃。
水分が蒸発する際の水蒸気と、素体が素体故か生ごみの焼却臭が漂い、ゴーストは鼻に当たる仮面の部分を抑える。
「クッサ! すっごい臭い!」
「我慢だ我慢! 決めるぞ! オメガドライブだ!」
「おっ、おう!」
『ダイカイガン! けんぷファー!』
音声とともに大きな火球がベルトを中心にして生成される。
先ほどまでの火の玉とは比べ物にならないほど大きい火球は当然熱量もすさまじく、目の前に立っているゴーストも、やけどをしてしまいそうな熱さを感じている。
「よーし! その火球を上に蹴り上げてからあいつにむかってボレーシュートだ!」
「こっ、こうだ!」
『オメガドライブ!』
蹴りはなった火球はふらふらとよろめく眼魔に見事ヒット。
爆散とともに水の中に素体で有ろうナニカが落ちた。
火球に触れた足が焼けるように痛く、ゴーストは仮面の下で顔をゆがめる。
変身を解除し、確認すると軽く足がただれていることに気付く。
「うへぇ……数日寝れば勝手に治るけど……ちょっと痛そうだなぁ」
「お疲れ様。帰ってサッカーでも見ようぜ」
「そうだねー……ん? なんか、変」
どっと疲れた表情のまま帰ろうと、マシンゴーストライカーまで歩いていこうとしたその時、トシロウは自身の体の不調に気付く。
原因はすぐにわかった。
身体に在るはずのモノがなく、ないはずのモノがある。
さらに言えばどこか自分の髪が長く感じる。
そう。女性の体なのだ。
「ねぇナツル……」
「……ゴメン、言ってなかった」
「うぉっ! 本当にお前トシロウ!? すっごい可愛いじゃん!」
「俺は! 男なのぉ!」
眼魂三人にやいのやいの騒がれる中、トシロウはただ、嘆きの言葉を空に叫ぶのであった……
***
結局夜まで我慢しても女性になったまま戻れないので、ツナたちに説明釈明をまかせる前提で希の家に帰ってきたトシロウ。
ただいま。と、眼魂全員で家の中に声をかけ、リビングまで行くと、希が頭を抱えて突っ伏していた。
「希……何してるの?」
「んー……ん? どちら様……?」
「俺。トシロウだよ。ちょっとナツルのせいでこんな体だけど」
「ああ……おかえりぃ」
どう見ても元気のない様子である希に心配を抱き、何があったかを問いかけるトシロウ。
彼女の返事は涙であり、その涙とともに彼女は……こう訴えてきた。
「音ノ木坂が……なくなってしまうんよ……!」
・ゴースト・けんぷファータマシイ
『ツァウバー』と呼ばれる特殊な能力を用いて戦うフォーム。
火の玉や火球を利用して戦うため、熱に弱い敵には優位に立ちやすい。
瀬能ナツルという人物が、人格意識として存在している。
・マシンゴーストライカー
ゴースト専用バイク。
廃棄バイクをヤッタータマシイの力で改造、最後はガンの指示を受けながら希が完成させた。
ゴーストが制作したからか常人には視認も触れることもできないという謎仕様。
しかし希がパーツの後付けや、運搬をできたことから、そういうものが視える人物には触れられるようである。
後日遠隔操作が追加され、ひとりでにバイクがゴーストの下へ来るようになった。
次回【限界突破!絆のバーナー!】