【さあさあやってきましたまいりました!!AブロックとBブロックの準決勝戦ンンンっ!!】
「頑張れよヒナ!シルバーっっ痛ってぇぇっ!!!」
「馬鹿を言うな!シルバーを応援するぐらいならヒナを応援しろ!!!」
「おま…お前いきなり頭殴んな!!!」
歓声が大きく聞こえてくる。ヒビキとクリスの声が聞こえてくる。
ヒナとシルバーはただ前を向き、お互いの顔を見た。これからやるバトルを全力で楽しみ、そして勝ちに行くという気概を二人はちゃんと持っていた。
ふと思い出したかのように、シルバーは声を出して言う。
「ヒナ、俺はチルタリスを選択する」
「え?」
「だからお前は<あいつ>を出せ。俺ははかいこうせんを出しても構わないぐらい全力で行くぞ」
「……うん、分かった。でもはかいこうせんやるんなら一応地下通路が壊れない程度には手加減してよ?」
「その時の状況による」
「はは…そうだね。シルバーとバトルするのって初めてだからいいかな…」
ヒナは笑って懐にあるボールを取り出した。シルバーが全力で戦いたいと望む強者を…相棒を選択したのだ。
チルタリスではかいこうせんを撃ったとしても大丈夫だと分かるそんな相手をシルバーは望んだ。だからヒナもその声に応える。
「いくぞ、チルタリス」
『チルゥ!』
「バトルに出せないでいてごめんね…やるよリザードン!」
『グォォオォォォ!!』
両者のポケモンの―――純白と漆黒の翼が大きく開かれた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「おいあのリザードン…もしかして色違いか?」
「すげえ俺初めて見た!」
「リザードンの色違いって黒色なのね…欲しいわ…!」
「強そうだな…さすがAブロック優勝者ってか?」
観客たちの声が聞こえてくる。その声にヒナとリザードンが顔を歪めた。色違いだからという理由でこちらを見つめる視線と声はどうにも嫌悪しか湧いてこないからだ。もちろんシルバーとチルタリスも色違いという言葉とその観客たちの声には嫌そうな顔を隠そうともしない。不機嫌なまま睨み付けバトルの邪魔をするようならぶっ潰すという雰囲気を醸し出している。
もちろん観客席で聞いているヒビキもそうだ。奴らの声を聞いて文句を言おうと口を開いた…その時だった。
「喧しい!色違いなんてただ色が違うだけだろう!!そんなに欲しいなら自分のポケモンに絵の具かペンキでも塗りたくれ!!」
『チィコ!!』
「いや待て待て絵の具かペンキ塗ったらポケモンに悪影響なんじゃ……」
「ならポケモンではなくトレーナー自身が塗りたくって人間の色違いにでもなればいい!!」
『チコリ!』
「それはそれでどうなんだ?!!」
クリスが周りにいる連中に向かって怒声を上げ、頭上にいるチコリータが葉っぱをぶんぶん揺らして威嚇する。色違いだと騒いでいた観客たちがクリスの声を聞いて居心地悪そうにして静かになる。その姿にヒナとリザードンは思わず笑って、シルバーとチルタリスは鼻を鳴らした。
そして司会進行役の男が満足そうににっこりと笑みを浮かべてマイクを手に取り口を開く。
【それではぁあ準決勝戦を始めさせていただくゥゥウ!!】
「リザードン、ねっぷう!」
『グォォオ!!』
「チルタリス、りゅうのはどう!」
『チルルゥ!!』
炎と波動がぶつかり、激突した。
大きな衝撃波となって炎と波動が消し飛び、白煙を起こさせる。その威力は凄まじく、リザードンとチルタリスを一歩だけ後ろへ退けさせるぐらいだった。
ヒナとシルバーはお互い口を開けて叫ぶ。
「きりさく!」
『グォォ!』
「とっしんだ!」
『チル!』
大きな身体がぶつかり合い、切り裂く。チルタリスはリザードンによって身体を少しだけ切り裂かれ、赤く染まる。そしてリザードンは腹にとっしんを受けて身体が後ろに下がり、両手で衝撃を受けた腹を押さえてにやりと笑う。
どちらも同じくらいのダメージを与え、そして楽しんでいた。
「はかいこうせん!!」
『チゥゥゥウ!!!』
「かえんほうしゃ!」
『グォォオオオ!!!』
白い閃光と赤い火炎が激突し、爆発する。その威力は地響きを伴い、ポケモンバトルに適した環境を整えた地下通路に小さな影響を与えるぐらいだ。爆発による熱風が周りに発生し、黒煙を発生させる。だがそれらを消し飛ばすかのようにチルタリスとリザードンがお互いの身体をぶつけあう。
大きな身体から発せられる雰囲気に呑まれ、一種の緊張感があたりに包まれた。赤い色が飛び交い、2体の咆哮が空気をビリビリと揺らす。
だが、トレーナーはその空気に怯えることはない。か弱いポケモンたちが悲鳴をあげようとも、集中力は途切れない。
「フレアドライブ!!」
『グォォオオオオッッ!!!』
「ドラゴンダイブ!!」
『チルルゥゥゥウッッ!!!』
リザードンの身体が赤く燃え上がり、チルタリスの身体が青く燃え上がる。
二つの炎がぶつかり、そしてリザードンとチルタリスはお互いの攻撃によって吹っ飛ばされた。地面をバウンドしてもリザードンとチルタリスはゆっくりと立ち上がる。その身体にダメージを受けていても、傷だらけになってしまってもゆっくりと起き上がった。
だが、何かに気づいたシルバーが小さくため息をついて手を上げ、口を開いた。
「俺の負けだ」
『チル…』
シルバーが言った瞬間、チルタリスは地面に倒れ、目をまわしていた。一度は立ち上がったチルタリスだったが、それは気合いを入れていただけのこと。実際は戦闘不能な状態だったということだとシルバーは悟り、早々に試合放棄を決めていたのだ。
最初から最後まで緊張感のある戦いだったためか、周りは静寂に包まれていた。口を開かなかった誰もがその興奮を静かにかみしめている。
「ヒナがシルバーに勝ったぞぉぉ!!」
『チィコォオオ!!』
クリスが一度大きく手を上げて叫び、それをきっかけにして歓声が沸き上がったのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「チルタリス、よく頑張ったな」
『チルゥ』
「リザードン、頑張ってくれてありがとう」
『グォォ』
チルタリスは負けたことに関して少々悔しそうに顔を歪めていたが、すぐに気合いを入れてシルバーを見て頷く。そしてシルバーも頷き、チルタリスをボールの中へ入れたのだった。ヒナも同じく礼を言ってからリザードンをボールに入れる。
リザードンが勝ったことに対してヒナの周りに一度観衆がやって来る。あわよくば、色違いのリザードンに触れるかもしれないという考えを持った連中や、純粋に応援したいというトレーナー達がいた。だが、とっしんの勢いで突撃してきたクリスとヒビキによって吹っ飛ばされる。そしてその喜びの声とテンションが上がっている彼女たちによって人々は冷静になり、苦笑しながら居心地悪そうにゆっくりとヒナから離れていったのだった。
「よく頑張ったなヒナ!ざまあみろだシルバー!!」
「…その台詞はお前が俺に勝った時に言ったらどうだ負け犬」
「貴様っ!」
「ああはいはい喧嘩はやめろって!!」
「とりあえずここにいても邪魔になるから離れようよ!」
「いやその前にヒナお前もう次が決勝だろ!!頑張れよ!!」
「そうだヒナ。私やシルバーを負かしたんだからそのまま優勝しとけ!!」
「手加減なんてするなよ。俺みたいにな」
「お前はちったぁ手加減ってもんを知れよアホシルバー!!」
「アホはアホだからな!もっと言ってやれヒビキ!」
「馬鹿共が」
「「誰が馬鹿だ!!」」
「ハハ…まあうん、頑張るよ」
賑やかに言い合いし始めるヒビキ達を見ながらも、ヒナは司会進行役の男によって呼び出され、バトルフィールドへ戻っていったのだった。
もちろん、ポケモンを回復させてからだが。
【さあさあ次はァァいよいよ決勝戦だぁぁあっっ!!!】
―――――――そろそろ終わりはやって来る。