ポケモンというのは多種多様。でもポケモンから見たらその種族のうちのたった一匹でしかない。
【さあやってきましたまいりました!ポケモンパフォーマンス大会の時間だぁぁ!審査員も含めて優勝を狙えるのはどこの誰だ!】
司会進行役の人の叫ぶ声がホール内に轟く。そして、照明が急に消え、三つのライトが点灯された。その場に座っているのは三人の審査員だ。
「元気いっぱいのポケモンたちがいてたのしそうですね」
「いやー好きですねー」
「どんなポケモンに会えるのかわくわくします」
ホール内の様子が変わっていく。それはいろんな意味で魔法のようだと感じる変化だった。
『ブィィ!』
「あ、こらイーブイ!勝手に出てきて悪い子やな!!」
『ブイブイ!』
「しゃあないなぁ…」
机の隅に食べ物が設置されていったせいか、マサキさんの手に持っていたはずのボールからイーブイが飛び出してきた。その様子に呆れたマサキさんが私たちから離れつつ、ホールの中心部分を見ている。もちろん私たちもその様子を見て、驚いていた。
ホールの足場が小さく崩れ、中央が大きく開いてバトルフィールドが展開されていく。壁が一気にバトル用の画面に変わっていく。照明が様々な色に変わり、壮大な音楽が聞こえてくる。ポケモンたちが注目していた。人間たちも注目していた。新しい船の機能を見て、皆が驚いていた。
まるでそのホールすべてがパズルのように、一度崩れてまた再生し、大きなホールがポケモンジムのような彩りへ変化したのだ。
「なにこれ…すごいっ…!」
「これは凄まじいな…さすが聖・アンヌ号といったところか…!」
「ふむ…ポケモンのための休憩どころを隅に用意し、食事や飲み物、木の実を壁際に設置されている。天井もバンギラス程度なら余裕で入るぐらい…か。はかいこうせんぐらいなら受け止めそうだな」
「ふざけんなあほシルバー!また船を沈める気かよ!!?」
「あの時とは違うんだから絶対にやめてよシルバー…あのチルタリスのはかいこうせんは普通とは違うんだからね!」
「……チッ」
「舌打ちすんな!!」
シルバーがやけに不機嫌そうな顔で私とヒビキを見つめている。でもそんな顔をしても私たちは絶対に前言撤回なんてしない。はかいこうせんで船が沈んだあの悲惨な事件を繰り返したくないし、四年も経っているからこそチルタリスの攻撃力は上がっているのだと理解しているからだ。
そんな私たちを見ていたクリスが首を傾けた。
「なんだ?チルタリスのはかいこうせんがどうかしたのか?」
「奴のはかいこうせんはもはや破壊兵器だ」
「文字通りの破壊光線だからね…船が吹っ飛ぶのが目に見えるかもしれない…」
「ほう!ならばそれを受けてたつ!私はシルバーより強いはかいこうせんを覚えてみせるぞ!!」
「やめろ!破壊神は二人もいらねえんだよ!!」
「ねえお願いこれ以上スーパーマサラ人の悲劇を起こさないで!!?」
「おいヒナ。あいつはマサラ人じゃないぞ」
「分かってるわよシルバー!クリスはスーパーマサラ人じゃないけど…違うけど似たようなこと起こさないでよ!!」
大会どころじゃないような怒鳴り合いに発展してしまったが、クリスもシルバーも私たちの考えをちゃんとわかってくれてはいない。そういうところが似た者同士だと思うんだけれども…それを言ったら怒られそうだから言葉を飲み込もう。
ヒナは【のみこむ】を覚えた!――――とかどっかのステータスに出てたらやだなぁ。
【さぁさぁポケモン参加者はホール内の船員に話しかけてくれ!すぐにエントリーを行うからね!!】
そんな言葉を聞いて、私たちが速攻でエントリーするためにどのトレーナーよりも動いたのは仕方ないかもしれない。
・・・・・・・・・・・・
【さー始まったポケモンパフォーマンスバトル!バトル形式は二つ行われる!バトルの勝敗はポケモン同士の勝ち負けとパフォーマンス力!トレーナーの力とポケモンの絆を発揮しなければ優勝は無理だぞぉ!!】
トレーナーとして集まった参加者は20人くらいだろう。少ないとは思うが、この船に集まっているのはかなり優れている人たちだと思うから警戒は怠れはしない。
司会者の男の人がまた叫ぶ。
【さてさて第一ステージはバトルだ!その後大きなフリーパフォーマンスに移ってもらうよ!!まず第一試合、シルバー対クリス!】
――――その言葉にある悲鳴が響き渡る。
「キタァァァァァッッ!!!!!!!私の時代だッ!!!!!」
「喧しいぞ貴様!」
「うわーあの二人って…ええー…」
「まもるか何かやっておいた方がいい絶対」
「ゾロアークってまもる覚えてたっけ…?」
「覚えられるけど覚えてねーんだよなぁ…この船に技マシンとかあったっけ…」
「覚える時間ないと思うしやめとこう…悲劇が怒らないようにアルセウスにお願いしておけばなんとかなる…と思う」
「…なあヒナ、全知全能の神だとしてもこの状況を何とかしてくれる願いを叶えてくれると思うか?」
「ぜんっぜん思わないね」
私とヒビキはため息をつき、いまだに騒いでいる二人に視線を注いだ。でもクリスもヒビキも早くバトルをしたいのかもうバトルフィールドのトレーナーが立つ位置まで来ていた。
司会進行役がそれを見て叫ぶ。
【このバトルでの勝敗は勝ち負けとパフォーマンス力!さー軍配が上がるのはどちらか!!?試合開始だぁぁ!!】
「行くぞチルタリス。優勝してマスターボールを手にする」
『チルゥゥ!』
「ふざけるな!あれは私の物だ!!プリン、すべてを蹴散らしてみせろ!」
『プゥリ!』
「あれ…プリンだ」
「あいつプリンなんてポケモン持ってたのか…まあ、チルタリスがドラゴンタイプなら、フェアリータイプが混ざってるプリンの方が有利……だよな…?」
「それを覆すのがシルバーですよヒビキくん」
「マジであのチルタリスが難関…っすねヒナさん」
「とりあえず…頑張ろうね」
「……おう」
このカント―地方で手ごわいライバルになるのはシルバーだろう。シルバーのポケモン知識と、その豊富なポケモン道具。シルバーの父がポケモンに関してシルバーに手を貸していること。そしてその知識を活かした育成が私たちにとって難関である。特にあのチルタリスは厄介すぎてつらい。
シルバーから貰ったきのみプランターがとても使いやすくて感謝してるぐらいだ。
おそらくクリスのプリンもそれを感じているのだろう。また育成途中なのがよくわかるし、圧倒的な強者に怯えているが頑張って見栄を張っているのも理解できる。
「前に進めプリン!チャームボイスだ!」
『プゥ…ププリィィィ!』
「コットンガードですべてを弾き返せ!」
『チルゥゥ!』
チャームボイスが大きな音盤となって形作られ、チルタリスに当たりそうになった。だがシルバーが指示した通りに動いたチルタリスが羽毛をさらにふわっふわにさせたことによってすべてを弾き返してしまった。…というか、コットンガードってそういう技だったっけ?また何か新技みたいなのになってないかな!?
『プリィッ!?』
「戸惑うなプリン!そちらが動かないのなら歌って眠らせてしまえ!!」
『プリィィッ!』
「ムーンフォース!」
『チルルゥ!!』
チルタリスの大きなムーンフォースが、歌おうとしていた小さなプリンの身体にぶち当たってしまった。そのせいでプリンは地面にバウンドしながら悲鳴を上げる。
『プリィィィッ!!?』
「プリン!!?」
「ふん…ドラゴンタイプの弱点を考慮したのは良い点だが…まだまだ成長が足りなかったな」
『チルルゥ』
「うわ…えげつな」
「フェアリータイプの技で攻撃するだなんて容赦ねえな…さすがあほシルバー」
私達が絶句するのも無理はない。それほどの屈辱とトラウマを与えようとしているんだ、あのバトルに全力なシルバーは。
気絶し、倒れてしまったプリンを抱きしめたクリスはシルバーを睨みつける。そんな光景はまさに悪党と被害者。どちらがどちらの役割なのかは言わないでおこう。
――――だが
【勝者はぁぁ!!クリスだぁぁぁ!!!】
「…ん!?」
「え…はぁ!?どういうことだよ!!?」
「何故だ!俺はちゃんとバトルに勝ったぞ!!何故負けになってしまうんだ!!?」
『チルルゥ!!!』
【いやーそういわれましてもねー】
シルバーが司会進行役に向かって怒鳴り声を上げる。もちろん私たちもびっくり驚愕な声を上げる。
それでも判定は覆すことはなかった。
むしろ、それで良かったらしい。
「プリンが小さな体を使ってチャームボイスを放ったあの可愛さはとても愛らしいですね!チルタリスの強い攻撃も見事でしたが一瞬で終わってしまったのが残念です」
「いやー好きですねー」
「プリンが負けてしまったのは大きな判定になるが…それでもちゃんとパフォーマンスとしての力を見せていた。むしろあの巨大なチルタリスに挑もうとする小さなプリンの姿がまるで劇団か何かに見えてしまったよ!イッツワンダフル!!」
――――そう、これはパフォーマンスバトルなのだ。
バトルの勝敗だけでは勝ち負けは決まらない。ポケモンのパフォーマンスで勝負が決まるような大会。ポケモンをどう美しく…あるいは格好良く、知的に、素晴らしく見せるのかがカギとなるバトルだ。それを怠り、ただバトルだけに専念してしまったシルバーは負けてしまうのは仕方ないことだといえる。
「勝った…のか?私は、あのシルバーに…勝ったのか!!?」
『プゥリ…?』
「よくやったぞプリン!あのチルタリスに勝ってやったぞ!!!」
『プゥゥゥ!!』
「くっ…」
『チルル……』
「…ああ、分かっているさチルタリス」
『チル』
悔しそうな顔をしているシルバーが、座り込んでプリンと抱き合っているクリスに手を伸ばした。
「なんだいきなり…」
『プゥリ?』
「いや、こういう勝負もあるものだと勉強になった…それだけは礼を言う」
『チルルゥ!』
「……ハッ。次は余裕で勝ってみせるからな!」
『プゥリ!』
クリスが立ち上がり、真正面からシルバーを見つめる。そして二人が手を握り締め、このバトルは終わった。良い感じで終わって良かったと思えた。
「はかいこうせんがなくてよかったな」
「まあね…いい勝負だったよ二人とも!」
「次はこうはいかない。必ず勝ってみせる」
『チル!』
「そうはいくか!!」
『プリィ!』
「喧嘩すんッぐっぉっ!?――おいクリス!!プリンにはたく指示すんな!!」
「ほらほら喧嘩しないの!!まったく…いつ仲良くなるんだか」
「「だれがなるかっ!!」」
「はぁ…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『さてさて次の勝負はヒビキ対ヒナだよ!バトルフィールドにカモンっ!】
「よし!バトルだね」
「おう!次は俺の新しいポケモンで決めてやる!!」
「…新しいポケモン?」
バトルフィールドに向かって、トレーナーの位置にそれぞれ立っている私は首を傾けてヒビキを見た。ヒビキの手に持っているのは、真新しそうなモンスターボール。そのボールがガタガタと揺れて、そして一気にフィールド内に現れた。
「行くぞピジョン!!」
『ピジョォォオォオ!!!!!!』
「……ん?あれ?」
「どうしたヒナ!はやくポケモンを出せ!!」
「え、うん…いくよピチュー!」
『ピッチュ!…ピチュ!?』
『ピジョォ!!』
『ピチュピチュ!!』
『ピッジョォォォ!!!!』
「え、やっぱりピチューも知ってるの!?」
「…ん?なんだ?どうかしたかヒナ?」
「えっとね…うーん…これはやっぱり…」
なんか見たことのあるピジョンがいる。急かされたためすぐにモンスターボールを投げてピチューを出す。だがピチューも目の前にいてこちらを睨みつけているピジョンに何故か驚いていた。私も先ほど驚いていた。というか、絶対に会ったことがあるはず。
―――――見たことある顔だけど、お兄ちゃんのポケモンじゃないピジョン。
私は確信した。
「あの鋭い目つき…そしてピチューも見たことあるような顔………もしかしてトキワの森にいたポッポ!?」
『ピッチュゥ!!!』
「なんだよ知り合いか?じゃあなおさら頑張って勝とうぜピジョン!」
『ピジョォォォオ!!!!』
ピジョンはうるせえ絶対に勝ってやらぁ!というような勢いで両腕の翼を広げて私たちを威嚇し、咆哮をあげたのだった。
小さなポケモン会話文
『ピッチュ!…ピチュ!?』
―――よしやるよ!……っていつぞやの目つきの悪いポッポ!?
『ピジョォ!!』
―――畜生変わってねえなァてめえ俺ァポッポじゃねえピジョンだ!!
『ピチュピチュ!!』
―――君、ヒビキのポケモンになったんだね!!
『ピッジョォォォ!!!!』
―――俺と同じように強さを求めて旅に出てるからなァ!!!!
まあこんな感じ