私はただのマサラ人です!   作:若葉ノ茶

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大会でのプロローグ


第二十七話~開始までもう少し~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある事情にて、聖・アンヌ号に乗っていた少年は項垂れていた。

 

 

(厄日だ…)

 

 

何故こうなったんだろうか。ナナカマド博士に勉強になるからカントー地方に行ってみろと言われたときから厄日は続いていたのだろうか。それとも船のある大会に興味本意で出たからだろうか。少年は考える。

 

 

 

目の前の異様な状況を見つめ続けながらも。

 

 

 

 

「ゼニガメ部隊は船前方を、ヒトカゲ部隊は船後方!フシギダネ部隊は俺についてこい!」

 

「「「「「イエッサー隊長!!」」」」」

 

 

 

 

 

「いいか、目標は全員を捕まえることだ!それぞれ作戦通りに行動を進めろ!」

 

「「「「「「うおおおおおーー!!」」」」」」

 

 

 

 

ここは何だ。何処かの軍か何かか?

赤い髪の少年がアリゲイツを後ろに従えつつ、列になって並ぶトレーナーとポケモンの士気を高めていた。

 

少年は遠い目で彼らを見ていた。ボーッと見ていたせいだろうか、赤い髪の少年がこちらに振り向き、俺の存在に気づく。そして、その赤い瞳でじっと見つめてきた。

 

その目に萎縮し、大会での相棒になるマニューラを壁にしながら少年を見る。

 

 

『マニュゥ……』

「マニューラ、顔下げないで!」

『マニュゥゥ…』

 

 

マニューラが呆れたような顔をしているが無視。全然隠れきれてないけど大丈夫。

でも赤い髪の少年は引いている俺に容赦なく近づいてきた。

 

 

「おい貴様、そのマニューラはなんだ?」

「え」

「技は何を覚えているのか聞いている」

「え、あ…えっと、ちょうはつ、ねこだまし、こごえるかぜ、みやぶるだけど…?」

「なら貴様はイリュージョン対策用に俺と一緒についてこい」

「は?」

 

 

 

 

言われた言葉が理解できていない。何故、一緒に行かなければいけないのだろうか。でも周りは赤い髪の少年についていけとばかりの圧力とプレッシャーをかけてくる。様々なトレーナーから向けられる視線がまるでバトルしているときの好戦的なものが含まれた。何だここはバトルフィールドか?

 

 

いや、それよりも聞かなければいけない話が出来た。

 

 

 

 

「な、なぁ…【みやぶる】はゴーストタイプとかに対してノーマル技なんかを通りやすくするようなものだぞ?イリュージョンって…えっと、ゾロアやゾロアークの特性だろ?いくらなんでもみやぶることなんて出来ないはずじゃ…」

「それはゾロアークが通常のイリュージョンをしていたらの話だ」

「え?」

 

「奴のゾロアークは、通常の幻影よりもはるかに高難易度のイリュージョンを行う。別のポケモンに見せかけるのではない…バトルフィールドごとすべてを変えてしまう力を持っているんだ」

「…え?」

 

 

 

 

――――すまん。奴って誰だ?

 

 

 

 

そう聞けるような状況ではない。ナナカマド博士から教えられたことがある。イリュージョンとは人間やポケモンたちの視界を奪い取り、頭ごとその現実を塗り替える特性を持つのだと。だがその高等なイリュージョンを使うポケモンは少ない。というか、貴重種にもなり得る存在だろう。

人間やポケモンたちの現実を塗り替えるという力は、あまりにも無謀なことだからだ。

だからこそ、通常のイリュージョンではゾロアやゾロアーク自身の姿を別のポケモンに見せかける。それぐらいしか、イリュージョンとしての力は成功しないから。

 

 

 

赤い髪の少年が言うゾロアークは、そんな通常のイリュージョンではないと言うこと。そして貴重種たるゾロアークになるかもしれないと言うこと。

少年は唾をごくりと飲み込んだ。

 

 

 

「…本当に、みやぶるは効果ある…のか?」

「ある。奴のゾロアークのイリュージョンはあまりにも力強いからこそ、少し叩けばすぐに使えなくなるんだ。最強である幻想だからこそ、不意をつかれれば弱い。まあ貴様のみやぶるは言わば…ゾロアークにとって見ればねこだましと同じだろうな」

「そ、そっか…」

 

 

 

ちょっとだけ、興味をもった。例外でしかない力強いゾロアークのイリュージョンを見れるだけじゃなく、直接その特性を回避できるかもしれないのだから。

 

 

 

「そうだ、貴様の名前は?」

「え、今更?」

 

 

 

少年は苦笑しながら赤い髪の少年――――シルバーを見て、口を開いた。

 

 

 

 

 

「僕はコウキ。フタバタウンから来たトレーナーだよ」

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「ええっと…現状を軽くまとめると…つまり、私たち赤チームは逃げる方で、青チームには無線が与えられている。見つかったら青チーム全員がその情報を共有して、逃げられない状況になった時点で捕まる…ってこと」

『ナゾナゾ』

「まあそうなるなぁ…」

『グァァァ』

 

 

ヒナたち赤チームの皆はそれぞれ自由勝手に動き回りかくれんぼのような感覚でいくトレーナー、ヒナたちと一致団結して戦おうと言っているトレーナーの二つに分かれて行動している。

 

これが吉と出るか凶と出るかはまだ分からないため、誰もが不安になっていた。不安と言うより、勝つかどうかは分からず、負けても仕方ないかもと思っているのが大半だろう。

 

だが、ヒナとヒビキは違っていたようだ。彼女たちは何かを考えて、そして小さく相談事をしていた。

 

 

 

「シルバーだったらどんなことをすると思う?」

「破天荒なこと」

「なら、ルールぎりぎりのこと狙って捕まえに来そうよね…こっちもそれぐらいのことした方がいいのかな…」

「じゃあシルバーが予想できないグレーゾーンな。ちょっと聞いてくる。すいませーん!!」

 

 

 

え、何言ってるの君たち?グレーゾーン?これただの鬼ごっこだよね?

 

 

そんな一般人の視線を気にしないヒナとヒビキは困惑するスタッフから話を聞き取り、また相談し始めた。その声に注意して聞き取っているのは周りにいる赤チームの全員。

 

 

 

「鬼ごっこというより、群れバトルだと思った方がやりやすいかもしれないわね…」

「シルバーなら青チームの全員をまとめて利用してくる可能性も高いからな。群れと言うより組織バトルって感じだと思うぜ」

「ええそうね。あのシルバーならやりかねないわね…」

 

 

 

ちょっと待って。君たちの言ってるシルバーってトレーナーどんだけ凄いの?もしかして相手である青チームって統率がとれたチームになってるの?赤チームはまとまりがないからかなり不安になるんだけど。

 

 

胸のうちでぐるぐると渦巻く不穏の影。このまま逃げるだけでいいとは思えなくなる彼女らの言葉。気軽に参加できる大会だからやったというのが大半だった。負けても思い出に残るからいいかなと楽観的に思っていた。

 

――――でも、どうやら青チームは俺たちを瞬殺しに来るらしい。

 

一時間くらい逃げて遊べるのなら良い方だろう。だが、すぐに負けるというのはいくら楽観的に考えているトレーナーであっても嫌だった。プライドが犠牲になるようなことはしたくない。だから、負けたくない。

 

 

「な、なぁ…君たち、俺も何かできることはないかな?」

「あ、僕も!どうせなら勝ちたい」

「そうそう。負けるより勝った方が気持ちいいし、自慢にもなるし」

「私もやるわ!」

「よっしゃ!ここにいる赤チームだけでも勝とうぜ!」

 

「え?あの…」

「うわマジっすか!あざーっす!!」

「ちょっと、ヒビキ!」

「いいじゃねえかヒナ!戦う人数が多い方が有利になれるだろ!」

「ま、まあ…そうだけど…」

 

 

 

ヒナがちらりと周りにいるトレーナーたちを見つめる。ヒナは彼らがシルバーの犠牲にならないか心配になっていたのだが、周りにいるヒビキ以外のトレーナーたちはそうは思わない。

 

普通に人見知りしているのかと納得し、勝負するための作戦を立て始めた。

 

 

 

「本当に大丈夫なのかな…」

「大丈夫だって!あ、そうだヒナ…お前はこの作戦に参加しなくて良いからな!」

「え?」

『ナゾォ?』

 

 

どういうことなのだろうか。ヒナは首を傾けた。でも

ヒビキは変わらず、不敵の笑みを浮かべながらヒナを見つめた。

 

 

 

 

「俺たちがお前の囮になるってことだ!」

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

時間は進む。大会の始まりが近づき、それぞれが身構え始めた。

 

 

【さあさあ!大会参加者の準備はいいかなー!?】

 

 

 

聞こえてくるのはアナウンスで鳴り響く大きな声。その声を聞いた参加者たちがそれぞれ緊張し、合図を待つ。

一人は大きく鳴り響く鼓動を押さえながら、一人は抑えきれない闘争心をかきたてながら。そしてもう一人は、冷静に状況を把握しながら。

 

 

 

始まりの合図が鳴り響く。

 

 

 

 

 

【さあ聖・アンヌ号の鬼ごっこ大会の開始だぁぁぁ!!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「テレポート!!!」」」」

『『『『ッッ――――!!!!』』』』

 

 

 

 

 

――――アナウンスが鳴り響いたと同時に、大きな慟哭が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

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