私はただのマサラ人です!   作:若葉ノ茶

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第三十一話~影響力は劣らない~

 

 

 

 

 

 

少々暗く、殺伐としているバトルフィールド。そこにいたのは気合いを入れなおすヒビキと、不敵な笑みを浮かべるマチス。

 

 

 

 

「えーでは!挑戦者ヒビキ対ジムリーダーマチスによるポケモンバトルを開始いたします!使用ポケモンは2体です!」

 

 

 

帽子を深くかぶるヒビキは深呼吸をし、ボールを見つめた。ボールはヒビキが手に持つ前からゆらゆらと揺れていて、『早く出せこの野郎!』と伝えようとしてくる。そんな元気な反応にヒビキは笑った。

勝つということは、このボールの中に入っているポケモンは使うことはできない。でもやる気十分勝つ気満々なポケモンを出さない意味はないのだと、テレビでよく見たサトシから教わったとヒビキは考えていたのだ。

 

 

だからこそ、緊張感がビシビシと伝わるこのバトルフィールドで、ヒビキは勝つことだけじゃなく楽しむことを胸に決める。

 

 

 

 

「行くぞピジョン!!」

『ピジョォォ!!!』

 

 

 

翼を大きく広げ、咆哮を上げるピジョンにマチスは笑った。

 

 

 

「へえ…ピジョンか。でんきタイプには弱いポケモンを出すとは、やけに自信があるようだな?」

「自信なんていくらでも出てくるっすよ!だってこいつの根性信じてますから!」

「ふっ!その根性いつまで続くのか楽しみだぜ!!―――行くぞ、エレブー!!」

『エレェェイ!!』

 

 

エレブーの身体から電撃を放ち、地面を軽く焦がしていく。その様子を見たピジョンは『なめんじゃねえぞゴラァ!』とでも言うかのように通常の個体よりも鋭い目で睨みつけた。

 

気合十分な二体の様子を見た審判は息を吸い、大きな声を上げる。

 

 

「それでは!エレブー対ピジョンの試合を始めます!試合開始!!」

 

 

 

「10まんボルト!」

『エレェイ!』

 

「でんこうせっかで躱しつつ反撃!」

『ピジョォォ!!』

 

 

 

雷撃を回避しつつピジョンがエレブーを嘲笑う。それほどまでにもスピードが段違いで違っていたのだ。10まんボルトでさえギリギリの距離でも躱せるんだぜ、とでも言うかのようにピジョンはバトルを楽しんでいる。もちろんそれはヒビキも同じだ。

 

だが、でんこうせっかの直撃を受けたエレブーはピジョンの挑発を軽く流しつつ、マチスを見た。マチスは誰もが怯える凶悪な笑みを浮かべつつ、小さく頷く。

 

 

「Heyリトルボーイ!お前はでんきタイプの恐ろしさというものを分かっちゃいねえな!」

「へ?」

 

「行くぞエレブー、でんげきは!」

『エレェェェイ!!』

 

 

「ちょっ!?」

『ピ、ピジョォォォ!!!』

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「あっちゃー…バトルで遊んじゃいけないっていうのに…ヒビキの馬鹿」

「ニビジムと同じようにやらかしてるな。さすがは馬鹿だ」

 

 

 

 

ヒビキの焦りようを観戦席から見ていたヒナとシルバーはため息をつく。

ピジョンは戦いに夢中になっていて、ヒビキはそれを楽しんでいる。そういうのはトレーナーによくあることだ。あのサトシでさえ、勝つためにバトルをするのではなく、楽しむためにバトルをすることが多かったのだから。でも、今はそういう時ではない。

バッチを貰うため、勝つために行うバトルなのだから。

 

ニビジムでもゾロアークと遊んでいたヒビキに二人は呆れていたのだ。

 

 

 

「ピジョンはやる気十分といったところだが、慢心があるな」

「スピードも速いし、エレブーがエレキブルに進化していないからとかかな?」

「まあそれもあるだろうが…だが、唯一の違いは遊び過ぎというところだろう」

「遊びすぎ…」

 

ヒナがピジョンを見た。ピジョンは焦りながらもそのギリギリの電撃を避けるという駆け引きを楽しんでいるように見える。身体にダメージがたまっていく【でんげきは】の余波が来たとしても変わらない。ホーミングされ狙われていたとしても、楽しむのを止めない。むしろヒビキの指示によって、エレブーにそのでんげきはを直接当てるように仕向けているほどだ。

避けきれなかったエレブーは自らのでんげきはに当たってしまい、ダメージが与えられた。

 

楽しみつつ、バトルに勝とうとするその根性はある意味感心するレベルだろうと、ヒナは心底思った。

 

 

「まあ、あれもある意味才能よね」

「俺ならキレて【はかいこうせん】を撃つ場面だがな」

「それもそれで大問題だからやめてよね!!」

 

 

ヒナの大きな叫び声がシルバーに向かって放たれたのと同時に、ピジョンのでんこうせっかとエレブーのでんげきはが衝突し、爆発した。爆炎と共に吹き飛ばされたピジョンとエレブーは左右の壁にぶち当たり、地面に倒れ込む。

両者とも近い位置にいたせいか、与えられたダメージはほぼ同じ。それ故に立ち上がることはなかった。

 

 

 

「え、エレブーとピジョン戦闘不能!よって引き分け!!」

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「ハッハッハ!!」

 

 

 

マチスの笑い声が響き渡るバトルフィールドにて、ヒビキは内心冷や汗をかきながら動くことのないボールを見た。中にいるのは傷つき気絶したピジョン。

他の二体であるマグマラシとゾロアークは元気づけるようにゆらゆらと懐の中で揺れていたが、ヒビキはそれどころではなかった。

 

 

(やっべー…引き分けになったのはグッジョブだけどこの後のこと考えてなかった!!)

 

 

 

 

でんきタイプならマグマラシやゾロアークでも対応できる。でも、どちらもでんきタイプに対しての有力な技はないに等しい。

もはや特攻あるのみだ。そうヒビキは決意し、あるボールを手に取った。

 

 

 

「ええい成せば成る!!行くぞゾロアーク!!」

『グァァァ!!!』

 

「ほう?ゾロアークか…そりゃあなんともRareなポケモンだな!」

「レアと言ってくれてうれしいっすね!でもこいつレア以上の希少価値あるみたいなんで油断大敵っすよ!!」

『グァァァゥ!!』

 

 

 

「そうかそうか!ならこっちはサンダースだ!」

『ギャァァァァ!!』

 

 

どんなに珍しくても、勝つ気で戦おうとするのがマチスのやり方だ。それはヒビキとは少々異なっている。

でも、ヒビキもここまでくれば本気で勝とうという気持ちが強くなる。たとえバトルで楽しんでいようとも、勝たなければ意味がないのだから。

 

 

 

「これより、サンダース対ゾロアークのバトルを開始いたします!試合開始!!」

 

 

 

開戦の合図が放たれた直後、ゾロアークの瞳が怪しく揺らめく。

バトルフィールドの照明はもともと暗い。天井に小さな穴が開いても同じだ。でもそれをより暗く見せ、霧のような白い煙によってフィールド内の状態が分かりにくくなる。

 

これがどういう意味なのか、マチスはよく知っていた。

 

 

 

「Oh!そういう意味での希少価値か…だが、俺やサンダースにソレがばれてもいいのかリトルボーイ!」

『ギャァス!』

 

 

「良いんすよ…それだけじゃないんだから!」

『グァァァ!!』

 

 

 

―――――言った瞬間、だった。

 

 

 

「ッ! 避けろ!!」

『ギャゥゥッ!!』

 

 

 

 

霧の中からものすごい勢いで鉤爪のような何かがサンダースの身体に襲いかかってきた。その鉤爪は幾多もの刃となって切り刻んで行こうとする。

それらを避けようと、先程のピジョンよりもはるかに速いスピードで動くサンダースはまさにどこにも当たらない雷鳴のようだ。

 

また、ゾロアークが竜巻を発生させてもそれは変わらない。

 

 

 

「くっそ…ゾロアーク!あくのはどう!!」

『ガァァ!!!』

 

 

「Okさせないぜ!サンダース、かげぶんしん!」

『ギャァァゥ!!!』

 

 

 

数十ものサンダースの影が現れ、紫色に輝く波動をすべて避ける。それに舌打ちしたヒビキがゾロアークを見て笑った。

ゾロアークも同じように笑い、サンダースを睨む。

 

 

「ゾロアーク、幻影攻撃!」

『ガァァ!』

 

 

ゾロアークの姿が揺らめいて消える。まるで空気に溶け込んだ霧のように、白く濃く見えなくなる。マチスがサンダースに電撃を指示するが、手ごたえは何もない。

 

途端に巻き起こったのは白い霧から発生した棘付きのイバラがサンダースに向かって巻きつく光景。棘がサンダースの身体に食い込み、肉を引きちぎろうとする。その痛みにサンダースは惑わされた。

 

 

『ギャァァァッ!!!』

「Oh サンダース!ワイルドボルトで回避だ!」

 

 

身体中に電気を纏い、イバラごと破壊していくサンダースだったが、イバラがすべて破壊されることはない。幻影により、イバラがサンダースの周りを囲っていく。ワイルドボルトの効力が消えても、イバラはなおも増殖する。その光景はまさに、サンダースにとって強固な檻となっていた。

 

ダメージは幻影によりゼロも同然だが、惑わされている最中はそれに気づくことはない。むしろダメージを深く負っているのだと【錯覚】する。

 

 

 

「これがイリュージョンの力ってわけか…excellent!」

『ギャゥゥ!』

 

 

 

「それだけじゃないっすよ!行くぞゾロアーク!」

『グァァァ!!』

 

 

 

薄く霧が立ち込め、イバラで満ちていたバトルフィールド内の様子が一変する。白煙はぶわりと消え去り、イバラは陽炎のごとく消えていく。そうして残ったのは小さく灯した照明と天井に開いた穴のみ。

 

何をするのだろうか。マチスは心を躍らせた。

 

 

 

「警戒しろサンダース!」

『ギャァァス!!』

 

 

「警戒なんてしても無駄っすよ!これは四年も前からずっと食らってたあいつの技!戦闘不能になっても立ち上がりめげないゾロアークの力だ!!」

『グァァァ!!!』

 

 

「what?どういう意味だ!?」

 

 

 

マチスが警戒し、サンダースのかげぶんしんをそのまま維持させている。だがヒビキとゾロアークの勢いは止まらない。

大きく口を開けているゾロアークから、何か光を吸収するように動きだし――――光の波動で打ち抜いた。

 

 

「はかいこうせん!!!」

『グァァァァ!!!!』

 

 

 

見えたのは閃光。一瞬でフィールド内を爆発させ、何もかもを吹き飛ばす力に変える。それは【かげぶんしん】でもって回避率を上げていても変わらず、すべての対象を攻撃していったのだ。

平たいフィールド内がでこぼこのものに変わっていく。地形が少しだけ変形する。

 

そんな攻撃でも、シルバーのチルタリスよりは攻撃力が不足していると、ヒビキとゾロアークは分かっていた。

だが、建物を破壊するほどの力がなくても、ポケモンを倒すぐらいはできる。

 

 

 

「へっ!俺たちの力思い知ったか!」

『ガァァァ!!』

 

 

 

 

「ふっ…そうだなリトルボーイ。お前たちの力にサンダースと俺が及ばなかったと言うわけだな」

 

 

 

サングラスをかけなおしたマチスを見た審判は、高らかに判定の声を上げた。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

山道かと思えるほどでこぼこしているバトルフィールド。それらすべては焼き焦げていて、黒煙でさえ発生させている。チカチカと動いていたはずの照明はものの見事にぶっ壊れ、唯一の明かりとなっているのは天井に開いた穴のみ。

 

 

 

――――さて、これはどういう事態なのだろうか。

 

 

 

「ねえヒビキ。なんでゾロアークがはかいこうせん覚えてるの?」

「攻撃食らってるうちに覚えたんだ」

「フンッ…俺のチルタリスよりは劣っているがな」

「お前のチルタリスはいろんな意味で領域外なんだよ!!!」

 

 

 

ヒビキとシルバーが喧嘩しそうなので止めつつ、マチスさんを見た。マチスさんは普通に豪快に笑っている。バトルフィールドが半分破壊されたとしても気にしてないのかな。

 

 

「次はリトルガールの番だぜ?わかってるな」

「はい…わかってます」

 

 

これは再戦だ。だから全力で行かなければいけない。でもあの時とは違ってリザードンもピチューも強くなった。だから大丈夫なはず。

 

―――ああ、そうだ。

 

 

「ナゾノクサ!」

『ナッゾ!…ナゾ?』

 

「ねえヒビキにシルバー。ちょっとナゾノクサ預かっててくれないかな?」

「ああ」

「んーまあいいけど」

 

 

ボールから元気よく飛び出したナゾノクサをヒビキが抱き上げる。シルバーは何故かナゾノクサの草部分を観察しているけど…あんまりナゾノクサの不安になるようなことさせないでよ?

 

 

 

『ナゾォ…』

 

 

バトルに出れないと理解したようで、落ち込んだ顔をしているナゾノクサ。その頭を撫でつつ、私は安心させるように笑いかけた。

 

 

 

「私たちのバトルを見て、ナゾノクサに勉強してほしいんだ。だからヒビキ達と一緒に見ていて。そしていっぱい学んでね!ナゾノクサにはこれから活躍してもらわなくちゃいけないんだから!」

『ナゾ…ナッゾォ!!』

 

 

「ほう…ポケモンにバトルを見させて学ばせる…か。それもある意味ポケモンの為になることか?」

「はいはいシルバー、そんなとこで考え事すんな。お前は俺と一緒に観戦席な」

「フンッ言われないでもわかっている」

『ナゾォ』

 

 

 

少々不安だけど、まあバトルが始まれば喧嘩はしないよね?

 

 

―――そう考えながら、バトルフィールドに立った。

 

 

「使用ポケモンは二対二!交換はありです!それでは、挑戦者ヒナとジムリーダーマチスによるバトルを開始いたします!」

 

 

「Hey!俺の最初のポケモンはこのライチュウだぜリトルガール!!」

『ライライッチュゥゥ!!!』

 

 

 

 

ライチュウが出てきた瞬間、ものすごい勢いでボールがぐらぐら揺れ始める。リザードンもピチューも再戦したい思いは同じなんだ。ちゃんとバトルで勝ちたい思いは一緒なんだ。

 

その思いを糧に、このバトルに挑もう。

 

 

 

「行くわよ、ピチュー!!」

『ピィッチュ!!』

 

 

「あの時と同じポケモンで挑むその心意気…気に入ったぜリトルガール!」

『ラァァァァイ!!』

 

 

二人と二体が同時に睨み合う。ライチュウは尻尾をバシバシと地面に当てて、衝撃を与えている。その尻尾の威力は地面をさらに焦がし、放電しそうなほどの強さだ。ピチューは足を何度も踏みしめ、ほっぺに溜めている電気を無駄に放出しないよう心掛けている。

 

はやく、早く始めろ!そんな声が聞こえてきそうだ。

 

 

「そ、それでは…試合開始!!」

 

 

 

とたんに鳴り響いたのは雷鳴。指示をしていないのに両者は攻撃し合う。

そして黒煙と炎。電撃と電撃がぶつかり合い、爆発を引き起こしたのが見て分かった。

 

 

 

「ピチュー!アイアンテール!」

『ピィッチュ!』

 

 

「ライチュウ、メガトンパンチだ!」

『ライライ!!』

 

 

淡く光り輝く尻尾の先と、炎に揺れ動く拳が激突する。両者ともその攻撃の余波で二歩ほど後ろに吹っ飛んでしまったが、それでも戦闘意欲は高いままだ。

 

だからこそ、このままで良いとは思わない!

 

 

 

「ピチューてんしのキッス!」

『ピィッチュ!!』

 

 

『ラァイ…ッチュゥ』

 

 

混乱したライチュウが目をくるくる回しながら地面に倒れる。気絶したわけではないので、これでライチュウが戦闘不能になるわけではない。でも、これでいい。

 

 

 

「ほう!やるなリトルガール!」

 

 

 

マチスさんは不敵に笑い、懐から二つのボールを取り出した。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「ニビジムと同じ戦略で戦うつもりか?」

『ナッゾォ?』

 

 

 

シルバーが首を傾けるのと同時に、ナゾノクサも身体を小さく傾ける。その意味合いは似ているようで違うもの。シルバーにとってヒナの戦略はどうなるのか、バトルでどう有利に行動するのかを見てみたいのに対し、ナゾノクサは『なんであいつたおれてるですか?』と、技の解釈がよくわからずにいる。

 

ヒビキは両腕を頭の後ろで組み、笑った。

 

 

「混乱させたとしてもポケモンを交代されたら終わりだと思うぜ?ほら、現にマチスさんがライチュウからマルマインに代えて戦ってるし」

 

 

観戦席から見えてきたのはライチュウの代わりにマルマインが出てくる光景。マルマインはその巨体を生かし、転がりつつピチューにぶつかろうとする。

ピチューはマルマインの攻撃を何度か避け、地面が盛り上がっている部分にわざと衝突させていた。そして小さく笑ったのだ。

 

 

 

「交代…まさか、それを読んでいたのか?」

「どういう意味だ?」

「…それはヒナが教えてくれるはずだ」

 

 

 

シルバーが顎に手を当てて、バトルをすべて見逃さないようにじっと見つめる。騒ぎもせず、何も言おうとしなくなったシルバーに呆れたような顔をしたヒビキだが、こちらもヒナのバトルの行方が気になるのか観戦に集中する。

 

『ナッゾォォ』

 

 

唯一、ナゾノクサだけはヒナとピチューを応援するかのように、頭の上に生えている草をゆらゆらと揺らしてバトルを見ていたのだった。

 

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

「ピチューいい?一点集中よ!」

『ピィッチュ!』

 

 

ピチューはでこぼこのフィールドを利用してでんこうせっかで駆け巡る。その素早さは以前戦った時とはわけが違う。そう、マチスは実感していた。

次第に姿が見えなくなり、一つの線になりつつあるピチューの激しい動き。それに翻弄されるマルマインを落ち着かせつつ、声を荒げる。

 

 

 

「Goマルマイン!エレキボールだ!!」

『マァルゥゥゥ!!!』

 

 

「地面利用して防いでから急接近!!」

『ピチュ!』

 

 

凹凸の激しい地面を利用して放たれたエレキボールを躱す。そしてでんこうせっかのスピードのまま、マルマインの顔面へ接近していった。

 

目を見開き驚愕をあらわにするマルマイン。その目の前に向けてピチューは放つ。

 

 

「どくどく!!」

 

 

紫色の液体がマルマインに降りかかった。それは地面を少々溶かし、マルマインに激臭と鈍痛を引き起こすもの。時々マルマインの身体から嫌な臭いがしてくることによって、【もうどく】になったのだと思い知った。マチスは舌打ちを鳴らす。

 

 

「特攻だけじゃなくなったということかリトルガール!」

「そうですね!バトルの仕方は十人十色ですから!―――というわけでボルテッカー!!」

『ピィッチュ!』

 

『マァルゥゥゥ…!!』

「マルマイン!」

 

ボルテッカーによってマルマインは数センチだけ後退し、深い傷を負った。しかも毒状態のせいで体力は減る一方。その容赦ない攻撃の仕方にマチスはただ、感心する。

 

 

「これで最後よ!ピチューもう一度ボルテッカー!」

『ピチュ!』

 

「おっとそうはさせねえ!マルマインだいばくはつだ!」

『マァルゥゥゥゥゥ!!!』

 

「ちょっ!ピチュー攻撃解除してそのままジャンプ!!」

『ピ、ピチュッ!!!』

 

 

 

先ほどのゾロアークのはかいこうせんに似た大きな爆発と閃光が巻き起こされた。バトルフィールド内で激しい雷鳴が鳴り響き、発生した黒煙から吹っ飛ばされるかのようにピチューが宙を飛ぶ。

そのまま地面を数回バウンドし、仰向けに倒れるピチュー。ヒナは急いでピチューのもとへ駆け寄り、状態を見た。

 

ピチューは目を回し、身体のあちこちに焦げ目を残しつつ気絶していた。もちろんマルマインも同じだった。

 

 

 

「ピチュー、マルマインともに戦闘不能!」

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

――――自爆覚悟で【だいばくはつ】やるかな普通!?

 

 

 

そう叫びたい気持ちをこらえて、ピチューの入ったボールを撫でた。でもピチューからの反応はない。それは相当ダメージを負っているという証拠だろう。

 

 

「本当は…ピチューとリザードンの両方ともライチュウと戦わせたかっただけなんだけどね…」

 

 

交代させたのはライチュウとのバトルを皆でやるためのこと。でも、予想外なことが起きたためピチューは倒れてしまった。だからこれで最後の一手だ。

 

 

 

「行くよリザードン!あなたの本気を見せてみて!」

『グォォォォッッ!!!』

 

 

大きな地響きとともに漆黒の塊がボールから出現する。そして天井に向かって放つのはリザードンの気合十分な炎だ。そしてこちらを見つめ、しっかりと頷いた。

 

うんごめんね、最近バトルに全然出せてなかったもんね…。

 

 

「ハッハ!あのヒトカゲが進化したのか!」

『ライッチュゥ!!』

 

 

すでにライチュウをボールから出していたマチスさんは豪快に笑っていた。もちろんライチュウも同じように笑っている。

その表情は、決して私たちを油断しているわけじゃない。警戒はされているけど、楽しんでいるようにも思えた。

 

 

「それでは!ライチュウ対リザードンの試合を開始いたします!…試合開始!」

 

 

 

「かえんほうしゃ!」

「でんげきは!」

 

 

炎と雷撃が衝突し、四散した。やっぱりライチュウは強い。リザードンの炎と互角に見えて、ライチュウは本気を出していないのが手に取るように分かる。

 

 

「リザードン!ほのおのうずで閉じ込めちゃって!」

『グォォォ!!』

 

「でんこうせっかで避けろ!」

『ライッチュ!』

 

 

回避なんて絶対にさせない!!

 

 

「多重ほのおのうず!!」

『グォォォオォ!!!』

 

 

いくつもの炎の竜巻が地面を抉りつつ、ライチュウのもとへ接近する。大きくて強い炎の竜巻をでんこうせっかでよけきれなかったライチュウが、竜巻の中に閉じ込められた。

煙や焦げ臭いにおいが発生するけど、バトルフィールドではそんなのお構いなしでしょ?

 

 

「本気を見せてもらったぜリトルガール!だがそれでも俺たちを舐めるな!ライチュウ、ほうでんだ!!!」

『ライッチュゥゥゥ!!!』

 

 

耳をつんざくような大きな雷鳴が鳴り響く。目の前で明滅したかと思いきや、竜巻をすべて吹き飛ばすほどの衝撃ある雷撃を繰り出していった。

流れ弾のように、小さな電気をリザードンが浴びてしまうほどの勢いあるもの。まるでライチュウ自身が雷そのもののように見えてしまった。

 

竜巻から無事に解放されたライチュウは、拳を打ち鳴らし来いよというかのように挑発する。その表情は嘲りなど一切ない、純粋な闘争心だった。

 

 

「…うん。やっぱりすごいね…ね、リザードン」

『グォォォ!』

 

 

本当ならここから【えんまく】で防ぎつつ、細かく攻撃していく方がダメージが当たり、勝つ可能性が高いかもしれない。

でも、それは試合に勝ってバトルに負けたも同じようなもの。

 

本気でぶつかってくるなら、私たちもぶつかってみたい。そう思ってしまった。

 

 

「一撃に全てを込めようリザードン!」

『グォォォッ!』

 

「リトルガールがその気なら、俺たちも本気で挑まなくちゃだなライチュウ!」

『ライライッチュ!』

 

 

 

私のリザードンとマチスさんのライチュウが激突しようとしている。ピリピリとした空気に胸が切り裂かれるように痛い。早くなる鼓動が熱く、血の流れを直に感じ取れているようだ。

 

負けない。負けたくない。そんな気持ちがぶつかり合う――――。

 

 

 

「かえんほうしゃ!!」

 

「かみなり!!」

 

 

 

重々しい地響きがバトルフィールド内で炸裂した。黒い煙だけじゃない。本気で放った雷と炎が衝突し、竜が天に登るがごとく辛うじて残っていた天井を突き破り大きな噴火を巻き起こす。壁を破壊させ、暴風を起こし、何もかもを消滅させようとする技同士の衝突。

なんだか災害のようだと感じるけど、ここでバトルが中断させられたらたまったもんじゃないほどの威力だ。

 

 

もはや立つことも難しい状況の中、吹き飛ばされないように注意しながら踏ん張り、フィールド内の状況を見た。

 

 

 

 

 

 

『グォォォォォォッッ!!!』

 

 

 

 

――――激しい暴風が吹き荒れる中でリザードンが拳を突き上げ、勝利への咆哮と炎を空に放った。

 

 

 

それだけでもう、充分伝わった。あの時の思いが報われたのだと、私たちは笑いあった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

ヒナの持っていたバッチを新しいものと交換する。再戦する約束は果たされ、見事勝利したからこそ与えられた名誉だった。

 

 

 

「マチスさん。本当にありがとうございました!」

「いや、こっちの台詞だぜリトルガール。それとバッチの交換に協力してくれてThank you」

「い、いえ!こちらこそ新しいバッチをありがとうございます!それと本当にごめんなさい!!」

 

 

 

思わずマチスに頭を下げるヒナに比べ、ヒビキは複雑そうな顔でそれを見ていた。

 

 

 

「おいヒビキ。ヒナは何故バッチを手にしていたというのに再挑戦したんだ?」

『ナゾナゾ?』

「さ、さぁー…」

「…おいヒビキ。貴様何か知っているんじゃないのか?」

『ナゾ!?』

「俺に聞かないでくれよ頼むから!」

「どういう意味だそれは?何かやましいことでもあるのか?」

『ナッゾォ!』

「あーあー!!!うるせえ!!」

「貴様の方が喧しい!!!」

『ナゾォ』

 

 

 

「ああもう!ちょっとあんたたち止めなさい!!」

「リトルガール」

「へ?」

 

 

相変わらず喧嘩する彼らを止めようと動くヒナに向かって、マチスが話しかけた。

 

その顔はバトル前とは違い、【穴ぼこだらけ】になり崩壊しきったクチバジムのようにとても清々しいものだった。

 

 

 

 

「これからどのジムにchallengeする気だ?」

 

「挑戦…ですか」

 

 

 

視線を斜め上に向け、考え事をするヒナ。だが、すぐに考えは決まったのか、にっこりと笑って答えてくれた。

 

 

 

 

「ジム挑戦の前に行かなきゃいけないところがあるんで、そこ行ってから考えます!」

 

 

 

 

 

 

 






バッチ取得数
ヒナ、3つ
ヒビキ、3つ
シルバー、3つ
全員、【ニビジム、ハナダジム、クチバジム】に勝利!



○●○●○●



さあこの話を読んだあなた!

次にタロー日記に出てきたクチバジムのお話をご覧くださいませ!




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