しばらく続きを書かないといったな!それはこの話で最後だ!
「…ここが、ポケモンタワー?」
私達が来た場所はシオンタウンと言われる小さな町より外れにある高いタワー。
塔のように大きな建物は、薄暗くて不気味な雰囲気を醸し出しているみたいな感じ。リザードンとチルタリスに乗って一気に来たからまだ昼間だというのに、夕暮れのようにも見えてしまう。
「…なあ、マジでここに入るのか?」
「入るに決まってるでしょ。何がいるのか分からないけど…マサキさんの頼みはちゃんと聞かなきゃ」
「嫌ならさっさとシオンタウンに戻れ」
「うるせえ戻るかよ阿呆シルバー!!ほら、さっさと行くぞ!!」
「あ、ちょっと待ってヒビキ!」
ずんずん先を行こうとするヒビキ。扉さえ豪快に開けて、小走りのような状態で中に入っていく。
全く、もう少し慎重に行くっていう気持ちはないのかな?というか、ポケモンタワーはポケモン達のお墓なんだから騒いだら駄目だって…ああもう。
「シルバー。ヒビキを止めに行くよ!」
「…仕方ないな」
呆れたような顔でシルバーが歩き出してるけど…シルバーがヒビキを挑発したからああなったんだからね!!
「はぁぁ…」
前途多難とはこの事かもしれない。とにかく、ヒビキとシルバーが何かやらかさないうちに行かなきゃ。
・・・・・・・・・
ポケモンタワーの中に入ると、そこにあったのは並ばれたお墓と広い廊下。そして階段だった。お墓に手を合わせて泣いているトレーナー。花を添えてお墓に何かを喋りかけているトレーナー。たくさんの人たちが集まっていた。
でも、ヒビキは何処?あのちょっとの時間でどっかに行っちゃったのかな?
「おや、参拝客かい?」
「あ、ええと…はい」
話しかけてきたのは優しげな顔で笑いかけてくるおばさん。足元には鳴き声をあげず、静かに付き添っているカラカラの姿がいた。
「ん?もしかしてゴースかゴーストでも捕まえに来たのかい!それなら先に奥の間で手を合わせてから行きなさい。変なものに憑かれたくなかったらね」
「わ、分かりました」
捕まえに来たわけじゃないんだけど…でも、似たようなものかもしれないし、迷惑になるようなことをするかもしれないから必要かな。
そう思っていたら、横で話を聞いていたシルバーがおばさんに話しかける。
「手を合わせるだけでいいのでしょうか?」
「もちろんだよ。でも、心を込めてだね」
「そうですか、ありがとうございます…行くぞヒナ」
「あ、うん。あの、ありがとうございました!」
「いやいや、気にしなくていいんだよ。気を付けて行ってくるんだね」
「はい」
優しいおばさんに礼をして、廊下から先にある部屋に進む。扉を開けると、大きなステンドグラスが飾られていた。その手前には礼拝堂のような、立派な聖餐卓が置かれ。扉から聖餐卓までの間に椅子が綺麗に並ばれていた。
この聖餐卓で手を合わせれば良いのだろう。それも、これから何が起きるのか分からないから迷惑をかけてしまうかもしれないからすいません!と心を込めて。
「……」
横をちらりと見れば、シルバーが真剣に手を合わせていた。もちろん私も手を合わせて、謝罪込みで心を込めよう。
「…さあ、あの馬鹿を探しに行くか」
「うんそうだね」
先に突っ走ったヒビキを見つけて…それから変な悲鳴が聞こえると言う場所まで向かうとしよう。
・・・・・・・
―――向かおうと思ってたんだけどなぁ。
『ヒナ!久しぶりだな!』
「あーうん。久しぶり」
『フシュゥゥゥ…旅に出て少し頼もしくなったようだな』
「そう…かな?」
『ミュゥゥ!』
現在、階段の天辺にある大きくて暗い部屋の奥に私とシルバーがいる。ヒビキを探し回っていたというのに見つからず、何故か目の前にいるのはミュウツーとミュウとダークライという異色のトリオ。
というか何でダークライここにいるの?
あと、シルバーの視線がとてつもなく痛いです。
「四年前と同じような状況だな…おいヒナ」
「ゴメン後で説明します」
「全部だぞ分かってるだろうな?」
「ハイ」
たぶん説教込みで話されそうな予感がする。リザードン達が励ますようにボールを揺らしてくれているけど、うん…大丈夫、ダイジョーブ。
「…ねえ、何で皆ここにいるの?」
『ああ。セレビィがジュプトル探しで溜まった鬱憤を晴らすために、悪戯し放題で皆を困らせていたゴースやゴースト達をぶっ飛ばしている真っ最中だ』
「どういうこと!!?」
『ミュッ!』
ミュウがあれを見て!と、指を指したのは部屋の一番奥。
黒いもやが霧のようにかかっていて見えにくいんだけど…え、待って…
「ねえシルバー。私の目は腐ってないよね?」
「ああ、正常だ」
「…ダークライ、あれって全部ゴースやゴーストなの?」
『…そうだ』
「ミュウツーは馬鹿かな?」
『おいどういう意味だヒナ!』
「うるさいミュウツーちょっと黙って」
『ッ! ヒナ!!』
「あーあー聞こえなーい!っというかあの状況作ったのってセレビィだけ!?」
『ミュゥゥ』
『レッビィィィィ!!!!』
セレビィは何故か身体の色がピンク色。そして技を駆使して無双している。逃げようとするゴースやゴースト達が技をまともに食らって、倒れ行く。
そして出来上がったのは黒いもやのような大きな山
なんだか可哀想な光景をみた気がする。
――あとこれ、マサキさんの言ってた悩み事ってセレビィのせいで出来たんじゃないのかな?
『フシュゥゥゥ…見よ、ゴースとゴーストがゴミのようだ!』
「無理して言わなくていいからねダークライ」
「…ピンク色のセレビィか。色違いの伝説は初めて見るが、なかなか能力も高そうだな。色違いとは個体値が高いポケモンが多いのか?」
「落ち着いてシルバー。そしてそのモンスターボールを離すのよ」
『怒りで力が勝っているんだろう。普段の奴なら俺よりも弱いな』
「黙ってミュウツー」
『ヒナ!?』
『ミュミュゥゥ!』
『っ! 貴様笑うな!!』
何だろう収拾がつかないや。というかツッコミが足りない。
ああもう、ヒビキ何処にいるのよ!!
・・・・・・
気がついたらここにいた。
いや、【何か】に引っ張られてから、ここへ来てしまったんだ。
「小部屋?」
目の前にあるのは小さな机と窓のみ。横を見ても壁しかない。まるで誰もいない部屋かと思えるほど、閑散としている。
周りを見て気づいた。
明かりから避けるように影となった場所にいる、一人の女の子――というか、幼馴染み。
何であいつ白い服着てんだ?白い服というか、小綺麗なワンピース?
「なあヒナ。もしかして俺を驚かすつもりだったか?その手はくわねえぞ!」
「……」
「ところでシルバーはどうしたんだ?もしかしてあいつ、お化けが怖くて逃げたのか?」
「……」
「…ヒナ?」
何も喋らず、こちらをじっと見ているヒナが異様に気味が悪い。じっとこちらを見つめて、人形のように動かない。
――あれ?
「ヒナ、髪が長い…?」
「あら、やぁぁっと気づいたの?」
ようやく出した声はヒナと同じ。そして見た目もそっくり。
でも別人だ。
ヒナの髪の毛は肩までしかないというのに、目の前にいる女は腰まで伸ばしたロングヘアー。
まだヒナのリザードンが【ヒトカゲ】だった頃にしていた髪型にそっくりなんだ。髪型が違わなければ分からないほど、そのままの姿をしているんだ。
「…誰だ。ヒナの親戚か?」
「あいつのことなんてどうでもいいでしょう。あんなのと親戚なんて気持ち悪い」
蔑んだように笑う女。
その笑みを見て警戒心がぐんっと上がった。
ヒナを馬鹿にしている目が気にくわない。ヒナそっくりの姿でその笑みをしていることが気にくわない。
「てめえ、何で俺をここに連れてきた」
「一応の警告と、面白い話をするためかしらね?」
「はあ?」
女は影のあった場所から抜けて、白いワンピースをひらひらと舞わせながら俺のもとへ近づく。
「それは駄目」
「っ…」
懐からゾロアークの入っているボールを取り出そうとしたのに、女が俺の腕を押さえて笑った。
くそ、こいつ力が強い…!
「これから面白い革命が起きるわ。あなた達に誤解されて巻き込まれたくないから、私達は関与してないってこと、ちゃぁーんと、伝えてね?」
「あなた達って誰だ。伝えるって…ヒナにか?」
「さあ、それはあなたが決めることよ」
うふふっ、と妖艶に笑う女。
片腕はボールを取り出そうとした手を押さえ、もう片方は、俺の頬を優しく撫でる。
ヒナと同じ顔で変な表情をしているからか、何故か顔が熱いと感じた。
「おい頬を撫でんなってか、近い!!!!」
鼻がぶつかり合うぐらい接近した奴から必死に抵抗しているのに、女は面白そうに笑うだけ。
懐のボールがガタガタ揺れているのが伝わるけどどうしようもない。
女の息が肌に伝わった。くそっ…本当に近い、近すぎるだろ!!
「もう一つ、世界は交わろうとしている」
「はぁ?」
世界が交わるって何だよ!意味わかんねえよ!ってか近い!!!
「ふふっ」
「っ」
女は笑った。
でも、変な表情ではない。妖艶に笑うわけでもない。
まるでヒナ自身だと一瞬錯覚してしまうほどの微笑み。
あいつは、ヒナのように純粋に笑ったんだ。
「んなっ…っっっ!!!??」
ヒナそっくりの顔がさらに近づいて、睫毛がはっきりと見える位置にいることに気づいた。
柔らかくて暖かく――唇が何かに当たっているのに、気づいた。
ガタガタと揺れていたはずのボールが、唖然としたかのように、動きを止めた。
「ちゃぁーんと、伝えてね?」
小首を傾け、窓から外へ抜け出したヒナそっくりの女を追えなかった。
何も、出来なかった。
「あんにゃろ…っ」
何でキスしやがったんだ、ふざけんな…!!!