私はただのマサラ人です!   作:若葉ノ茶

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ごめんなさいこれだけは書きたかったんです…。







第三十三話~変異と改変~

 

 

 

 

ゴースやゴーストたちの治療を終え、彼らに礼を言われつつ、どうやらセレビィを恐れているようで必死に逃げ去っていった暗い部屋。

 

 

 

 

「え、セレビィって異世界から来たの!?」

『ビィ』

『そうだと言ってるぞ』

 

 

ミュウツー翻訳のもと、頷いたセレビィに目を瞬かせる。

異世界と言ってもモンスターボールがない世界。都会という存在は全くなく、豊かな自然の中で人間とポケモンが共存し、まさしくNさんが望んでいた世界から来たそうだ。

 

それに、セレビィの性別がピンク色の身体に似合う女の子だそうで、かなり気が強く何度かミュウツーたちに怒っている様子が見てとれた。

ミュウツーやダークライは暇だから仕方なく付き合っていると言っていたけど――――ポケモンって気楽でいいねと思ったのは内緒にしておこう。

だからミュウ、こっち見てクスクス笑わないでね?

 

 

横で話を聞いていたシルバーが顎に手を当てて、真剣に考えている。

 

 

 

「別の世界というのは本当に存在するものなのか?」

「う、うん。一応はあるみたいだよ…ね、ミュウツー」

『泣き虫サトシの話は止めろ』

『ミュッミュッミュッ!』

『笑うなキサマァァ!!!!』

 

「ヒナ、泣き虫…サトシさんとは一体…」

「前にミュウツーがディアルガたちとの喧嘩に巻き込まれて別世界に行っちゃったことがあってね…そこでいろいろと世界が破滅しそうなお兄ちゃんを見た…というわけ。私も前に一度イッシュ地方にいた時、別世界から来たお兄ちゃんたちを見たことあるから嘘じゃないって分かるよ」

 

 

…ん?あれ、なんで唖然としてるのシルバー?

 

 

 

「お前…本当に一般人じゃなくなったな」

「それどういう意味よ!?」

『フシュゥゥゥ……諦めろ』

「いやシルバーの援護しないでよダークライ!」

 

 

私はただのマサラ人だって何度も言ってるのに、シルバーは悟ったような顔で聞き流すし、ダークライも同じ感じだし。

というか、なんかシルバーとダークライ仲良くなってない?

 

 

 

『ビィィ!』

 

 

―――ちゃんと私の話聞きなさいよ!

 

 

 

 

というかのように、セレビィが私たちの頭を軽く叩いた。ミュウツーは叩かれてやるものかと手で振り払ってたけど、ミュウが援護して何度も力強く叩かれている。

そんな光景に同情しつつ、私は満足げに微笑むセレビィに話しかけた。

 

 

 

「えっと…なんで異世界からセレビィがこっちに来たの?」

『ビィビィ』

『ふむ。どうやらジュプトルが関係しているらしいとのことだ』

「ジュプトル?」

『ビィィ!』

『【私の世界では彼は英雄よ!】…そういう意味で聞いたわけじゃないと思うぞ』

「英雄?」

 

 

シルバーが首を傾ける。

 

 

『レッビィィ』

『【ジュプトルさんは世界を変えたのよ。崩壊していく世界を動かしてくれたの】と言っている』

「えっと…つまり、そのジュプトルのおかげで世界が救われたから英雄ってこと?」

『ビィ!』

「ほう。ジュカインに進化できないレベルで世界を変えた英雄と言うことか。いや、進化できるが進化しようとしなかったのか?だとしたら技構成は一体…」

「シルバー、ジュプトル育成論についてここで考え込むのやめてね」

「……ああそうだな。考えるなら直接会ってからだ」

「それもそれでどうなの?」

『レビ!』

『【ジュプトルさんに会ったら教えてね!】だと』

「ええ分かったわ。でもなんでセレビィはジュプトルを探しにこっちに来てるの?」

 

 

何となく気になっていた。異世界のセレビィがジュプトルを探していると言うこと。英雄と呼ばれているらしいジュプトルに何があったのか、何故セレビィは探しているのか。

 

セレビィは私たちの周りをくるっと回って、話しかけてくる。

 

 

 

『ビィィ』

『【世界に突然穴が開いたの】だと?おい、それは俺たちも知らない話だぞ』

「ん?穴が開いた?それは物理的な穴なのか、それとも何かヤバいものなのか?」

『…詳しく説明してくれ』

 

 

ミュウツーがセレビィを睨みつけた。もちろんダークライもだ。

 

その後説明していくセレビィの話し声は長く、言葉が分かるミュウツーたちは険しい顔で聞いていた。ミュウは相変わらず楽しそうだけれども。

 

 

『…【世界と世界に穴が開いて道が作り出されたのよ。異世界への道がね。まだどうなってるのか分からないけど、ジュプトルさんはそれを調べるためにこっちに来たわ】といっているが…だからシンオウ地方が騒がしかったのか?』

『ビィ』

「え、シンオウ地方?」

『フシュゥゥゥ…ああ、何故かポケモンたちがパニック状態になっていた』

 

「なるほど。ヒナ、コウキが言っていただろう?あのアルセウス統括のことだ」

「ああ、あれね!!」

 

 

 

シルバーに言われて思い出したのはコウキさんの言葉。

ギラティナがどこかへ行き、アルセウスが反転世界を代わりに管理して、シンオウ地方を統括しているらしいこと。もしかして世界に穴が開いたのがギラティナ失踪の原因だったりするのだろうか?

というか世界に穴が開くってヤバくないのかな?いや、アルセウス達が動き出しているから大丈夫な気もするけど…。

 

 

 

「それで…なんでセレビィがジュプトルを探しに来たの?」

『ビ、ビィィ!レッビィ!』

『………』

『レビレビィ!』

「え、何言ってるのミュウツー?」

 

 

 

突然頬を赤く染めたセレビィが何かを叫んでいる。でもミュウツーは微妙そうな顔で何も言わず、ダークライは呆れている。そしてミュウは笑って…どういうことなの?

 

 

 

「ねえミュウツー、セレビィは何を言ってるの?」

『…いや、ツンデレ口調でジュプトルを心配しているだけ―――ブフォッ!』

『レッビィ!!!!』

「…ああ、今のは分かった。【誰がツンデレよ!!!!】…でしょ?」

『フシュゥゥゥ…ああ、ちゃんと合っているぞ、ヒナ』

 

 

 

小さな頬を膨らませ、顔を赤く染めているセレビィはなんだか恋する乙女のような気がする。たぶんジュプトルが心配で追いかけてきたんだろう。可愛い。

頬を赤くした状態でミュウツーをぶん殴った力は少々恐ろしいけれど、それでも照れ隠しにやったならかわいい。ミュウツーが殴られるだなんていつものことだし。

 

 

 

「…で?」

「え、どうしたのシルバー?」

「結局のところ、マサキさんが頼み込んできた原因である変な声はセレビィ達の仕業でいいのか?」

『なんだそれは』

『ビィ』

『ミュゥゥ?』

 

「あーっと…ここで咽び泣いているような声って聞こえてきたことある?」

『フシュゥゥゥ…今はもう聞こえないな』

『ああ、ゴースやゴーストたちはいなくなったからな。聞こえなくなったぞ』

「……ああ」

 

 

納得したような顔をするシルバー。思わずため息が出るのは仕方ないことだと思うけど。

 

うん。これで決定したね!

やっぱりセレビィ達の仕業だった!というかマサキさんこれ放っておいても大丈夫だったんじゃないのかな!?

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

セレビィ達はそのまま一度シロガネ山にいるお兄ちゃんのもとへ行くと言って飛んで行ってしまった。その姿を見送ってから、ポケモンタワーの出入り口に戻る。

 

そこで見つけたのは見覚えのある後ろ姿。

 

 

 

「…あ!ヒビキ!」

「なんだあの馬鹿。怖くて逃げだしたんじゃないのか」

「こらシルバーそんなこと言わないの!ねえヒビキ、どこへ行ってたの?…ヒビキ?」

 

 

「…………別に、なんでもない」

 

 

 

こちらを決して見ようとせず、顔を俯かせているヒビキの様子がおかしい。シルバーの挑発にも乗らないのおかしいし、いつもの元気な様子でさえないのも変。

 

気のせいだろうか?顔色が信号のように赤と青と行き来してるみたいなんだけど…え、大丈夫なの?

 

 

「どうしたのヒビキ?具合でも悪いの?」

「…清めの塩でも買ってくるか?」

「え、呪われたの!?大丈夫ヒビキ?」

 

 

顔を覗き込もうとしたら避けられる。手を伸ばして肩に触れようとしたら拒まれる。ヒビキがここまで拒絶したのって小さい頃以来なんだけど。本当に何があったの?

 

 

 

「………………悪い。俺、もう行くから」

 

 

「は?」

「え、ちょっと…ヒビキ?!」

 

 

駆け出して行ったヒビキを追いかける私とシルバー。でもヒビキがゾロアークをボールから取り出して、イリュージョンで姿を消されてしまったことで見失ってしまった。

ボールから出た時のゾロアークの表情が、ニヤニヤした悪そうな笑みだったんだけど…何だったの?

 

 

「チッ…逃げたか」

「ヒビキ…どうしたのかな?」

「奴のことだ。腹が痛いだのゴーストたちに悪戯されて怖い目に遭っただの何かわけがあるに決まってる」

「…うん。それにしては表現がやけに辛辣だねシルバー」

「そうか?」

 

 

何かあったのは確定だろう。

でも当の本人には逃げられてしまったから聞くことはできない。

 

 

「…旅してたらいつか会えるよね?」

「だろうな。現に俺たちもニビシティで別れたというのにまた会えた。だから必ずどこかで会えるさ」

「ええそうよね」

「その時ははかいこうせんで逃げ道を防いでから直接話をきいてやるがな」

「そういう物理的な行動は控えなさい!」

 

 

ため息をついた私に、シルバーは何も言わず肩をすくめる。そして私が歩き出そうとしていた方向とは違い、真逆の道に身体を向けた。

 

 

「ヒナ、ここでいったん別れよう」

「え?」

「俺はもう一度あのポケモンタワーへ行ってゴーストを捕まえてくる」

「あー…分かった。でも無茶はしないでよ!あとはかいこうせんは駄目だからね!」

「…………ああ」

「その一瞬の間が怖いからやめて!」

「分かってる」

 

 

何度も頷いたシルバーを見てちょっとだけ安堵。やらかさないようにしてほしいから気を付けてほしいな本当に。

 

 

 

「じゃあまたな」

「うん。またねシルバー」

 

 

 

 

ひらひらと手を振るシルバーの後姿に、こちらも手を振って応える。

シルバーはポケモンタワーの中に入っていった。ゴーストを捕まえるために。

 

 

 

 

 

「…さて、バッチ集めに戻りますか!」

 

 

 

あとナゾノクサ育成よね!

 

 

 

そう思いつつ、歩き出した私――――の背中をひっかけるように何かが通ってきた。いや、飛んできた?

 

 

 

「っ?!」

 

 

 

 

真下を見るとシオンタウンが遠ざかるのが見える。帽子を斜めにし、真上を見れば大きなポケモンがいるのが見える。

突風のように吹く風が寒いと感じるのはなんで?なんで私は空を飛んでるの?

 

 

 

 

 

『ギャォォオォォォッッッ!!!!!!』

 

 

 

 

「なっ?!」

 

 

 

 

 

 

なんで私、オニドリルに運ばれてるのよ!!!!????

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「キヒヒヒヒっ」

 

 

 

 

 

部屋の中で気味の悪い笑い声が響いてくる。その声はポケモンの鳴き声のように聞こえてくるが、実はそうじゃない。

 

 

 

 

「もうすぐ…もうすぐで完成だ…ヒヒッ」

 

 

 

 

 

何かを忙しく動かす手は人間の手。目をぎょろりと動かし、目の前にあるソレを見つめている。

 

 

 

 

「あとは、これを作動させるカナメが必要だなぁ…」

 

 

 

 

下卑た笑いを浮かべていた奴は、小さなテレビを見て興奮しだした。

 

 

 

映しだされている映像には、傷つき倒れている少女の姿がそこにあった。

服の上から斬り刻まれたかのような傷跡が酷く残っている少女。火傷や注射器の痕も残っているようでかなり酷い状態だ。

 

 

少女は必死に何かを見て、手を伸ばしていた。歩くことさえできないほどの傷を負っていても、諦めようとしない。

 

そんな少女が手を伸ばす先を見て、奴は笑っていた。

 

 

 

 

「もうすぐ…もうすぐだ ヒィッヒヒヒヒヒッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

伸ばした先には――――ジュプトルの石像があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

突然すぎた。というか、急になんだいきなり。

 

 

 

 

 

「どうもこんにちは」

「はぁ。こんにちは?」

 

 

 

 

こんにちはというか、こんばんはの時間帯じゃねえのか?

 

 

 

 

「あの…何の用でしょうか?」

「いえ実はですね…あなたの脳をいただきたいのですよ」

 

 

 

 

 

「は?―――――ッッッ!!!???」

 

 

 

 

 

ハメられたのはよくわからない形状の物。

 

 

奇妙な音と共に、明滅しだす視界と動かなくなる頭の中。

 

 

 

 

 

「これで、この町の殲滅は終えましたかね?」

 

 

 

 

 

聞こえてきたのは奴の声。

 

 

 

 

「おやおや…あなたは天候を有利に動かすポケモン使いですか。これは良い頭脳が手に入りそうだ」

 

 

 

 

 

ニヤニヤ笑いだす声のあと

 

 

 

 

 

 

―――――何もわからなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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