私はただのマサラ人です!   作:若葉ノ茶

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始まり、動きだした。






第三十四話~暗躍とフラグと~

 

 

 

 

 

 

 

部屋の中はやけに静かだ。周りには机と柔らかなソファのみ。机には香りが良い紅茶が置かれていたが、男はそれを口にしない。

 

ただじっと、目の前にいるアポロを見つめているだけだ。

 

 

「世界は…今まさに改変されようとしていることを知っていますか?」

 

 

 

アポロは目の前の男に問いかける。

 

 

 

「この四年もの間、世界のいたるところで亀裂が入りました。数十年もの間に伝説が暴れたのですから仕方ないことでしょう」

 

肩をすくめるアポロが思い出すのは、あのポケモンマスターであるサトシが解決していったトラブルの数々。

伝説であろうとも殴り飛ばすその威力は、どうやら世界を歪ませてしまったのだろうと嘲笑った。

 

 

「亀裂は別世界への道を開き、新たな文化が舞い込もうとしているようですよ。昔々の…数百年前の歴史と似たようにね」

「歴史か」

「ええそうですよ。数百年前、世界は裏側を管理するギラティナと呼ばれるポケモンを自由にさせていた。遺跡によると、そのせいで一度、世界は崩壊しかけたとか」

「その話なら知っている…わたしはそこの出身だからな」

 

「ええ、そうでしょうね。あなたほどの男ならもしかするとギラティナに会っているかもしれない」

 

 

 

皮肉げに言われた言葉を男は静かに流した。否、どうでもいいとばかりに自嘲したのだ。

そして、アポロの目をじっと見て、何が言いたいのか視線で問いかけようとしてくる。

 

 

アポロは目の前に置かれた紅茶を飲み、ゆっくりと話し始める。

 

 

 

「亀裂は世界に新たな混乱を生みます。その混乱に乗じて私たちは動くのですよ」

「何故?」

「世界の改変を、私たちが操りたいからです」

 

 

操りたいと言った言葉に嘘はない。

今行おうとしていることも、トレーナーやポケモン達にとって予想外なこと。

 

新生ロケット団は脳を集めていた。トレーナーや手持ちであるポケモン達の脳。戦うための知識とその才能を奪い取り、手中にしている真っ最中。

 

それはまさに世界が変わろうとする革命だと、アポロは考えていた。

 

 

「私たちはあの憎いポケモンマスターを潰すために動いている。あなたも私たちと同じ被害者なのですから、一緒に協力しませんか?」

 

 

 

目の前の男はアポロの考えが分かったのか、頷いてから口を開く。

 

 

 

「…何をすればいい?」

 

「フーパと呼ばれるポケモンを捕まえてきてください。あのポケモンは様々な伝説を取り出すことのできる興味深いポケモン―――そのフーパの脳を取り出すには…外ではまだ難しいことですから、捕まえるだけでいいですよ」

 

 

アポロが内心で舌打ちをして思い浮かべたのは眼鏡をかけた奇妙な髪型をするアクロマという男。あいつは機械を軽量化することに興味はなかった。

軽量化すればどんな場所にいても脳を取り出すことが可能になるのにやつは拒否した。

 

だから、別の手段を考えているのだが、思ったようにいかない。

それが唯一、アポロの心を苛立たせた。

 

 

 

「フーパは今どこにいる?」

「シロガネ山…あのポケモンマスターがいる聖地です」

 

 

男は顔を歪ませた。それを見たアポロは軽やかに笑う。

 

 

「まともにポケモンマスターにぶつかってもらうつもりはありませんよ。今はまだ準備だけでいいです。合図を送ったらすぐに行動を開始してください」

「…合図とは何だ?」

 

 

ニヤリと笑ったアポロに、男は寒気がしたように錯覚する。

 

 

 

「大きな歯車をぶっ壊すだけの話ですよ」

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・

 

 

 

 

「何なのよもう!」

 

 

オニドリルがギャアギャア喚き、ヒナの背中を食い込ませようとしてくる。その勢いは止まらない。

もしかしたらヒナのことを餌だと思って狙ったのかと思えるほど、口から涎を出して鳴いているのだ。

 

 

『ギャォォォァァァ!!!!』

「くっ…リザードン!」

『っグォォ!!!』

 

 

懐のボールからリザードンが飛び出してきてヒナの身体を優しく掴み、オニドリルの身体に向けて強力な炎を放つ。

 

オニドリルが嫌そうな声を出してヒナを離した。リザードンがヒナを背中に乗せ、奴を睨み付けるが、オニドリルは諦めてないらしい。

 

 

「っ リザードン!かえんほうしゃ!」

『グォォ!!』

 

 

勢いよく出てきた炎に半分もの翼が燃やされるが、オニドリルは怒りでリザードン達の方へ突っ込もうとする。

 

それを見たヒナが笑った。

 

 

「えんまく!」

『グォォゥ!!』

 

 

勢いよく放たれた黒煙に顔を突っ込ませたオニドリル。そんな奴から猛スピードで離れていったヒナのリュックサックはボロボロになっていたのだった。

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 

 

 

――これは仕方ないことだろうとヒナは決意する。

 

 

 

 

「ヤマブキシティに行こう」

 

『グォォ』

『ピチュゥゥ…』

『ナゾォ?』

 

 

リュックサックがボロボロになってしまったから、ここから近いヤマブキシティになら何かあるだろうとの判断だ。

 

もちろん、旅に出るトレーナーが多いこの世界では、どんな町にもリュックサックを売る店は多い。

マサラタウンのような田舎であっても、町の人間に事情を説明すれば譲ってくれるくらい、必要不可欠なものとなっているからだ。

 

 

 

旅の必需品は全てなくなっていないけど、傷薬が数個消えていることにヒナは気づき、それだけで良かったと安堵した。

 

 

「これは裁縫道具が必要になるかなぁ」

『グォォ?』

「もしも山道とかで破けたとしても一時的になら大丈夫になるかなって思ってさ」

『ピチュゥゥ!!』

「うん。今度はちゃんと買うよ」

『グォォ』

『ナゾ!』

 

 

 

リュックサックに入っていた物を、何故か入っていた風呂敷に並べていった。

 

 

 

 

「バッチや図鑑がなくなったら大変なことになってたよね…はぁ」

『グォォ…』

『ピチュピチュ』

『ナッゾォ!』

 

 

 

 

もしも、バッチや図鑑がなくなったとしても、申請すれば問題はない。でも手続きが面倒だからやりたくない。

 

 

そう思いながら、ヒナは中身をもう一度確認していく。

 

 

 

「えっと、傷薬は2個、毒消しと麻痺直しは5個…図鑑とバッチはオッケー…あと、」

『グォォ』

 

 

リザードンに手渡された服に笑顔で受けとる。

 

 

「うんありがとうリザードン。服と下着と…えっと、モンスターボール――ん?」

 

 

 

 

 

何かいる。

 

 

並べてあったモンスターボールは何も入っていないものばかりだ。

 

なのに、1つだけ、何故かゆらゆら揺れている。

 

 

 

 

「…んん?」

『ナゾォ?』

 

 

 

ヒナとナゾノクサが同時に首を傾けた。

 

 

 

 

いつの間にボールにポケモンが入っていたのか…捕まえた覚えはないのに何でだろうか。

 

 

 

「開けてみようか…」

『グォォ』

『ピ、ピチュ』

『ナゾ』

 

 

 

 

 

ゆらゆら揺れているボールを小さく投げる。

 

 

 

開かれたボールから出てきたのは――――

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

 

 

今はここにいないヒナにヒビキ。元気にしているか?

あ、シルバーはどうでもいい。

 

 

 

私はいつものように、元気に怯えているぞ。

 

 

ん?何で怯えているのかだって?

 

 

だって目の前で伝説と呼ばれるポケモン達を、師匠であるサトシさんが拳だけで地に伏せさせているのだから。

 

 

 

「んで?夜中、急に来て騒いだあげく、ゴローニャのいわなだれ連発によって野生のポケモンが半分埋まったことに対しての謝罪は?」

 

『ビィィ…』

『フシュゥゥ…すまなかった』

『ミュゥ』

 

 

『…ふん』

 

 

 

ああ、これは死ぬな。

 

 

 

「ミュウツーてめえは反省してないってことでいいんだな?俺のポケモンによる阿鼻叫喚行きで良いんだな?あ゛ぁ?」

 

 

『っ! す、すまなかった』

 

 

 

ああ、さすがに師匠のポケモン達による連続攻撃な【阿鼻叫喚】行きはミュウツーであろうとも辛いか。

まあ、私もあれは伝説でも死ぬようなものだって分かってるから素直に謝って良かったと思うけど…。

 

でも夜中に起こされたことに関しての八つ当たりはミュウツーで決定したも同じだな。

 

師匠って意外と横暴だから。

 

 

 

 

「ふふ。サトシってば楽しそうね」

「…そう見えますか?」

 

 

「ええ。だって私はサトシの妻だもの」

 

 

 

セレナさんは左手の薬指にある指輪を撫でて、幸せそうに笑った。

 

 

 

 

 






問題、モンスターボールには何が入っているかな?




答え、ポケモン




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