私はただのマサラ人です!   作:若葉ノ茶

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ホウエン地方は平和なものである。







ユウキ君とアチャモたん

 

 

 

 

 

映像の中に映されているのは、純白のシーツを頭にかぶり、小さな幽霊ごっこをするアチャモたんの姿。でもそのシーツからふわふわで温かそうなお腹が見えているし、パーフェクトな魅力が隠れきれていない。

 

 

 

 

それが良い!

 

 

 

 

 

「はぁぁ…アチャモたん今日もきゃわゆい」

 

『チャモォ?』

 

「ああ!その小首傾けた姿もいい!そのまま止まって!写真撮ってネットに投稿するから!」

『アチャァ!!』

「ふぉぉ。アチャモたん今日も輝いてるよ!!!」

『チャッモォ!』

 

 

 

―――ふふん。私ってばかわいいでしょ?ネットにいっぱい見せて皆に私の素晴らしさを教えてあげなさい!

 

まるでそう言われているかのようだ。この小悪魔め!でもそれがアチャモたんの魅力なんだから断然いい!

 

 

「アチャモたん。目線お願いしまーす!」

『チャモ』

 

 

小首を四十五度傾け、目をキラキラさせながら羽をぶわりと膨らませる。さすが相棒!俺の心にグサッっと来るね!

 

そんな可愛らしいアチャモたんの魅力のせいで、カメラの連射が止まらなくなった。むしろ撮った写真すべてパソコンに送ってネットに俺のアチャモたんの素晴らしさを全部投稿してやろう!だからたくさん写真撮る!!見てろよネット住人ども!

 

 

 

『チャモォ!』

 

 

 

アチャモたんってば、くるりと一回転してウインクしたぁぁぁぁぁ!!!

 

 

 

 

 

「ふぉおぉぉ!その顔可愛いよアチャモたん!天使か君は!?」

 

 

 

あああああああああアチャモたん!小悪魔なんて言ってごめんね!君は天使だよ!!そのドヤ顔もかわいくて天使だ!!むしろ女神さま!!!

 

 

 

 

―――――ドタドタドタドタッッ

 

 

 

「あ、くそ…来やがった」

 

 

 

大きな足音のせいで良い気分が台無しだ。

 

 

ここで籠城したとしても、奴は己の手持ちを使って部屋の中に入ってくるだろう。アチャモたんが怪我しないように奴が来ることを想定し、鍵は開けっ放しだけれど、なるべく来てほしくはない。

でも来やがった。ドアを盛大に開けて俺のテンション急降下させやがった。

 

 

 

「ユウキくん!いい加減にするかも!」

 

「うるせーよハルカさん」

 

 

 

肩を怒らせ、ぷんぷんしているのは近所に住んでるハルカさん。

カチューシャのような大きなリボンを頭に着け、頬を膨らませているハルカさんは一般人から見れば10人が10人、可愛いと思える容姿をしているらしい。

 

16歳という若さなのに胸がかなり大きいし、スタイル良いし、性格も人懐っこくて明るい。それに誰もが憧れるプロのコーディネーターだから、たくさんのファンがつくのは仕方ないことだろう。

 

 

まあ俺はアチャモたんがいればそれだけでテンション上がるから全然魅力に感じないがな。

というか年上は論外なので俺の心に響かない。アチャモたんのようになってから出直せ。

 

 

 

 

「というわけで俺の聖域から出て行ってくれない?」

「何が聖域よ!自宅の部屋に引き籠っているだけでしょう!?」

「引き籠ってない!アチャモたんがバトル嫌いだからバトルできないように匿ってるだけだ!」

「それが引き籠ってるっていうのよ!」

 

 

『チャモォ』

「ふわぁ!アチャモたんその顔良いね!」

「こら!私の話聞きなさい!!」

 

 

 

ハルカさんうるせー!

 

アチャモたんが珍しく呆れたような顔でこっち見てるんだから写真一枚ぐらい撮らせろよ!

 

 

 

「もう!私の後輩なら外で活躍したらどうなの!」

「嫌だ!俺はここで一番を目指すんだ!!!」

「パソコンでアチャモたん日記を投稿してるだけでしょう!?」

 

「日記じゃない!アチャモたんの魅力を全世界に投稿しているだけだ!!」

「そういうのはコーディネーターとしてプロ活躍してから言いなさい!!」

 

 

コーディネーターになりたいという思いはあった。でもそれはポケモンの魅力そのものを最大限に引き出せる場だからこそ思えた夢なだけ。

夢とは淡く消え去る小さな願いのことだと俺は考えている。それに頑固コーディネーターになりたいって言っても、今は自宅からでもコーディネーターもどきのことはできるし。

ハルカさんに頭を叩かれたけど、俺は諦めないぞ!

 

だって―――。

 

 

「アチャモたんはバトル嫌いなんだから仕方ないだろ!!!」

 

 

そう、アチャモたんは【バトルが大っ嫌いなアチャモ】なのである。走った勢いで頑丈な本棚を壊しちゃうぐらい【やんちゃな性格】なのに、何故かポケモンバトルが苦手。いや、苦手というより大っ嫌い。

そういう厄介な部分があるポケモンを、俺はオダマキ博士からいただくことに成功した。

 

 

 

だから俺は外に出る意味はない。それでオッケー。

 

 

 

「ユウキくんが外に出たくないだけでしょう?嘘つかない方がいいかも!」

「う、嘘なんてついてないし…」

「はいダウト!!!」

 

 

 

ハルカさんが俺の頭を拳でぐりぐり抉ろうとしてくるんだけど、でも俺は諦めないから!

 

 

「アチャモたんの魅力がここから世界に広まるなら俺はこれでもいい!自宅で夢を掴んでやるんだから!!」

『チャモォ?』

「あああアチャモたんマジアチャモたん!!俺の嫁になってぇぇ!!!!」

『チャッモォ?』

「ふぉぉおぉぉ!!!!」

 

 

 

アチャモたん可愛い!マジ俺の嫁可愛い!!

俺の顔を覗き込もうとして上目遣いをする仕草がアチャモたんに似合ってる!可愛い!もう可愛いの代名詞はアチャモたんで決まりだ!

 

 

 

「ああもう…楽に夢を掴めるならそれでいいかも…でも、あなたの夢がただのトレーナーならの話よ!コーディネーターになりたい夢なら私が先輩として全部教えて上げなきゃなんだから家から出なきゃ絶対駄目!!」

「楽に夢を掴めるならそれでいいっていったじゃんか!!」

「トレーナーだったらの話よ!」

「じゃあ俺トレーナーになる!!」

 

 

「ふざけたこと言わないで!あなたはコーディネーターとしての才能があるのに……自宅からコーディネーターになるなんてことは絶対にできないわ!!それにバトル嫌いに関してもトレーナーの腕次第で克服することは可能よ!だから外に出なさい!」

 

 

 

 

大きな胸を揺らし、それを強調するかのように胸を張ったハルカさんがにっこりと笑う。

 

 

 

…けど、それってただ俺を外に出したいだけの話なんじゃないかな!!!?

 

 

 

 

「俺はここから外には一歩も出ないからな!自宅でアチャモたんと過ごしていくんだ!」

 

「…そう?」

 

 

 

ボールを掴んだハルカさんが、笑った。

 

 

 

 

「こういう時は…そうね。サトシのように お は な し しなきゃよね?」

 

 

 

 

ああああ俺の肩掴むなよ!

アチャモたんとここで天国築くんだから俺はここで過ごしたいんだ!!バシャーモ出して脅かすな!ポケモンマスターの名前出すな!!!

 

 

 

 

「俺は旅になんて出ないぞ!!ここでアチャモたんと一緒に過ごすんだぁぁあ!!!!」

 

 

「そういう生意気発言はマサト達のように旅に出てから言う言葉かも!!」

『バッシャァァ!!!』

 

 

 

『チャモォ』

 

 

 

 

アチャモたんの可愛い声が聞こえたというのに、ハルカさんのせいで台無しだ!!!

 

 

 

 

 

 

 

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