私はただのマサラ人です!   作:若葉ノ茶

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第四十話~現状確認をしようか~

 

 

 

 

 

電撃と雷光が宙を舞い、激突し黒煙を発生させていく。熱が地面や木々を焦がし、雲を突き抜ける大きな閃光が舞い上がる。時折地面が揺れ動き、野生の鳥ポケモンたちが恐怖のあまり逃げていくハイレベルなバトルの数々。

 

それらすべてをラムダは見ていたのだ。

 

 

「ハッ!…これが最強ということか」

 

 

ぞくりと震える身体に鞭打つように、今起きている光景を全て目に刻もうと瞬きを少なくする。

カスミたちは全員こちらの洗脳により、都合のいい駒として働いてくれているため、どんな言動をしたとしても絶対的味方として活躍してくれる。ちゃんとこちらを守ってくれる。

 

あのポケモンマスターの嫁に関しては計算外にも洗脳から解放されてしまったが、それでも熟練のトレーナーやジムリーダー、そしてポケモンマスターの幼馴染でありライバルだと明言するシゲルがいる。それとは対照的に、サトシだけですべてのポケモンに対応し、多数VS1になったとしても差はない状況。これこそが最強であるポケモンマスターの証明なのだと言うかのように、カスミたちに電撃一つで対応しているのだ。しかもピカチュウが劣勢になるか何かが起きればすぐさま懐にあるボールで対応するだろう。つまり、まだまだサトシにはいくつか戦うための手が残されていると言うことだ。そして、セレナのニンフィアによるサポートもあるせいで戦いは均衡していた。

 

圧倒的な数の戦力がこちらにはあると言うのに、やはりポケモンマスターは別格か。

 

 

「くっ…ここでポケモンマスターをこちらの手に収めればカントーとジョウトを全てこちらの物にできるというのに…!」

 

 

 

先程、ある特殊な洗脳をヤマブキシティ内で行ったという連絡を貰っていたため、ラムダはそれに引っかからなかったサトシに戸惑いと苛立ちを持っていたのだ。もしかしたら、あの洗脳の光を見ていなかったからかもしれない。それともやはりポケモンマスターだから洗脳が効かないと言うことなのか…!?

 

 

そう思っていた瞬間、ピカチュウの雷撃がラムダの頬を掠り、後ろの大木を焼け焦がす。ピカチュウとサトシがこちらをじっと見ていることに気づいた。お前さえ倒せばこいつらの洗脳をどうにかできるはずだろ?、と言われているように感じ、冷や汗が流れ出た。

 

このままでは、やられてしまう…!!!!

 

 

「すんません遅れました!!」

 

 

「ぐっ!いや、いいタイミングだ!!」

 

 

背後から飛び出してきたのは黒と黄色がアクセントの帽子をかぶった少年とゾロアーク。そいつはロケット団の洗脳の枢となる少年であった。これでポケモンマスターを洗脳することができると一瞬高揚したラムダであったが、それよりも背後から「ヒビキィィィィィィッッ!!!!!」や『チルゥゥゥゥゥゥッ!!!!!』という鬼をも殺しそうな鋭い殺気を放つ少年とチルタリスが来たことによって計画を瞬時に切り替えた。

ポケモンマスターの嫁が先程洗脳から無理やり解放された件もある。無理やりやることはないだろう。まだ他にやるべきことがあるのだから。

 

そう考え、大きく口を開いた。

 

 

 

「おいポケモンマスター!ここはいったん引いてやる!!だが今度会った時はお前を必ず洗脳し、俺達の部下にさせてこき使ってやるから覚悟しとけよ!!!」

 

「そういうのを負け犬の遠吠えっていうんじゃねーのかよおい」

 

『ピッカ』

 

「サトシの言う通りね」

 

『フィア』

 

 

「う、うるせえ!!よし行くぞ!!」

 

「ウィッス!やるぞゾロアーク!!!」

 

『ガァァ!!!』

 

 

瞬間、ゾロアークの目が光り、大きな闇が広がり始めた。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

町で襲いかかってきた人間やポケモンたちは無理やり倒した。邪魔してくる連中は皆ぶっ潰して、ようやくヒビキの目を覚まさせるために動くことができる。

どこかへ向かって行くヒビキを追って、チルタリスと共に走り出したと言うのに、なんだこの闇は!!またあいつのイリュージョンか!!

 

 

「くそがッ!チルタリス、はかいこうせん!!」

 

『チルルゥ!!』

 

 

はかいこうせんを放ったチルタリスの姿が見えないほどの暗闇が広がっていたが、聞こえてきた大きな騒音と破壊音によって何かにぶち当たったことに気が付く。ヒビキに当たっていればなお良し。他の連中に当たっていたとしたら、運が悪いと言うだけにしておこう。俺の邪魔をした連中が悪いんだ。

 

だが、見えてきたのは鋭くて大きな雷光であった。

 

 

「なっ?!チルタリス!!!」

 

『チルッ!』

 

 

どうやらイリュージョンが解除されたらしい。見えたのはなぎ倒された大木と少々破壊されている家。そしてチルタリスのはかいこうせんを防御するためだけに使われた10まんボルトがチルタリスに掠った光景が広がっていた。

ただ10まんボルトに掠っただけだというのに、ビリビリと身体に痺れを受けたチルタリスが地面に伏せる。相棒として強く育成し、共に育ってきたチルタリスに対して、ただ掠っただけの電撃にこんなにもダメージを受けるだなんてと呆然としたが、その10まんボルトを放ったポケモンと、そのマスターである人間を見て納得した。

 

むしろまひ状態と重傷になっただけで済んで良かったと思えるほどだろう。そう思い、クラボの実とオボンの実をチルタリスに渡しつつ、話しかけた。

 

 

「…お久しぶりですサトシさん」

 

「ああ、お前は確かロケット団の…」

 

「はい。シルバーです。父上がお世話になっております」

 

「いや、気にすんな。それよりも大丈夫か?そのチルタリスの様子…俺のせいだよな、悪い」

 

「いえ、俺もはかいこうせんを全力で撃ちましたし……それより、あのヒビキの野郎は何処に行ったのか分かりますか?帽子とゴーグルをつけた男なんですが…」

 

 

そう質問すると、サトシさんは隣にいた女性を見てからこちらへ向き、首を横に振った。

 

くっ、やはりあの時のイリュージョンで逃げやがったか。

 

 

 

「あの…ポケモンマスターが何故ここに?やはりあの新生ロケット団とか言う連中を追うためですか?」

 

「ああ。そうだけど。そう言うってことは…お前は大丈夫な方なんだな」

 

「大丈夫な方とは?」

 

「それは―――――――」

 

 

 

 

「―――――お兄ちゃん!」

 

『ガゥゥ!』

 

「あ、ヒナちゃん!」

 

『フィア!』

 

 

サトシさんの声を遮るように聞こえてきた大きな声。上空に大きな影が生まれたため、よく見ればそこにはリザードンの背に乗っているヒナの姿があった。

そんなヒナを笑顔で迎えたのがサトシさんの隣にいた女性であり、サトシさんは少しだけ安堵しているように見えた。

 

 

「良かった…シルバーもいるんだね…」

 

「ああそうだがおい待てその帽子の上にいるポケモンはまさかのルギアか!?どうやって捕まえた!!?」

 

「うわ気づいた!?ごめん私もよく分からないうちにボールの中にいたからわかんない!!」

 

『ギャウ!』

 

「伝説ポケモン捕まえたのか。今日はお祝いだな」

 

『ピッカー!』

 

「ふふっ。じゃあ赤飯炊いておかないとね!」

 

『フィアァ!』

 

「ねえ待って分かんないうちに捕まったって言ってるでしょ!?だから赤飯とかいらないしミニルギアが私のポケモンとは限らないからね!!」

 

『ギャゥゥ!?』

 

「おいそのルギアものすごくショック受けてるぞ」

 

『チル』

 

「うわ傷つけるようなこと言ってごめんなさいルギア!…っというかさっきのあの大きなはかいこうせんってシルバーだったんだよね?そっちこそ何かあったの?」

 

「何だ、見ていたのか?」

 

「ちょっといろいろとあって飛んでいた時に急に見えたからね…だから何かあったのかと思って気になって…」

 

「いろいろあったってどういうことだ?そのルギアが関わってるのか?」

 

 

サトシさんがヒナの言葉に食いかかる。それに乾いた笑みを浮かべたヒナがリザードンと顔を見合わせた。リザードンはクラボの実とオボンの実を食べているチルタリスの横に立ち、先程まで広げていた翼をしまいながらも困った顔をしている。何を言えばいいのか分からないようだ。

 

 

「……ねえ、話が長くなるようなら落ち着いた場所で話さない?ポケモンたちも傷ついてることだし…ね?」

 

『フィア』

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

 

「おい、今なんて言った?」

 

『ピィカッチュ?』

 

 

ヒナ達が向かった先はヤマブキシティのポケモンセンターだったのだが、その様子はおかしかった。

こちらを見る目は排他的であり、妙な威圧感が存在していた。通常のポケモンセンターの中はリラックスできるようにと常に音楽が流れているはずだったのだが、今ここに居るポケモンセンターは無音。

優しく出迎えてくれるはずのジョーイとラッキーは真顔で、その中にいるトレーナーたちもこちらを観察しているような顔でじっと見つめていた。

 

そんな中、サトシとピカチュウは額に小さな青筋を浮かべながらも口を開く。どうやら相当怒っているらしく、ピカチュウの赤い頬から電気がバチバチと放たれ、それを見たヒナがミニルギアを抱きしめながらもそっと後ろへ後退した。

 

 

「もう一度聞くぞ。今、何て言ったんだ?」

 

『ピィカ』

 

「お帰りくださいと言いました。あのお方の邪魔をすると言うのなら、私たちは容赦しません」

 

『ラッキー』

 

「ほぉぉ?それはそれは面白えな。この俺に対して、宣戦布告をするということか」

 

『ピィカッチュ』

 

「お帰りください。ここはポケモンを回復させる場所。ですがあなたたちのようなトレーナーと、そのポケモンを回復する意味はありません。ですので、何を言われようとも…何をされようとも私たちはあなた達を助ける意味はありませんよ」

 

『ラッキー』

 

 

 

こちらが邪魔をすれば必ず攻撃を仕掛けてやると言う意気込みを感じた。ポケモンセンターにいる全員が、公共機関としてのトレーナーが使用できるはずのもの全てを利用するなと言っているのだ。シルバーはそれに眉をひそめて舌打ちをし、ヒナはミニルギアに何かされないようギュッと胸に抱きしめた。

物理的に目を覚まさせようと思っていたサトシだったが、ポケモンセンターには何体かの重傷ポケモンが必ずいるはずだと思い直し、セレナの手を掴み建物内から出ることに決めた。無理やり連中の洗脳を解くことならできると思うが、それによってポケモンセンターの中にいる重傷のポケモンに何かあってはまずいだろう。

 

 

 

「…とにかく、話せる場所を探そう」

 

『ピッカ』

 

「それなら、このヤマブキシティはまずいと思います。先ほどヒビキの奴が新生ロケット団の奴らと一緒に何かをしているのを見ましたから」

 

「え、どういうことなの!?ヒビキが…新生ロケット団と一緒って…」

 

「あの野郎は裏切ったんだ。新生ロケット団と仲良くして……チッ!!」

 

「いや、そのヒビキも…おそらく洗脳されてるんだろう」

 

「洗脳って…もしかして私がさっき記憶を失ってたあれのこと?」

 

「ああそうだセレナ。お前も洗脳にかかって新生ロケット団の奴らと仲間になってたんだ」

 

 

その言葉にヒナとシルバーが愕然とし、やがて何か納得できたような表情になる。

 

 

 

「じゃあ…あのカガリって子も…」

 

「は?おいヒナ今なんて――――――――」

 

 

 

 

――――瞬間、大きな閃光が襲いかかってきた。

 

 

 

 

 

 

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