TALES OF THE ABYSS外伝ーセレニィー 作:(╹◡╹)
民家でご馳走を振る舞われ空腹を満たした面々は、機嫌よくエンゲーブの村を散策する。
今夜の宿を探そうという名目なのだが、ルークとセレニィは観光に夢中となっている。
ティアも普段の張り詰めた空気は和らいでおり、ルークと険悪な雰囲気になることもない。
「でも、なんか貧乏くせぇとこだなぁ。小屋に毛が生えたような建物ばっかだし…」
「そうなんですか? お… 私からすればどれも立派なお家に思えますけど」
「こんなのを立派なんて言ったらウチ見たら腰抜かすぞ? 案内してやるから楽しみにしてろ」
時折ルークが危うい発言をするも、セレニィの無邪気な発言が巧みにフォローしている。
といっても彼女にそうした認識はなく、どれも本当に立派なものだと思っているのだが。
集合住宅というわけでなく全てが一軒家で、どの家にも小さいながら畑や庭がついている。
娯楽が少なさそうなのは難点だが、最悪でも食べるに困らなさそうな点はいかにも魅力的だ。
それを差し引いても、ファンタジーっぽい世界を巡るのは興味が尽きないし楽しいものだ。
渓谷を下る時はどうなるかと思ったが、一息ついたことで世界を楽しむ余裕も出てきた。
ルークにしてもニコニコ楽しげに話を聞く彼女は自慢のしがいもあり、機嫌も上向いていく。
「ま、こういう第一次産業ってのが俺らの生活を支えてくれてることに理解は示すけどな」
「おおー! 流石ルークさん、物知りですねー」
「へへん、まぁな! 勉強はそんなに好きじゃねぇけど、これくらいはな」
これまでの屋敷の中での生活では、剣術の師匠くらいにしか褒められたことがない。
何かにつけ明るく持ち上げてくれるセレニィの言葉はルークの耳に心地よかった。
一方、セレニィにしても裏表のないルークとの会話は自身がそうでないため好ましく感じる。
……まぁ、セレニィのやってることは「
「ここが宿屋のようね… けど、閉まってるみたい。留守にしているのかしら?」
「うーん… いないんじゃ仕方ありませんね。勝手に入るのもなんですし」
「オメーさっき勝手に人の家に入ってったじゃん… まぁ、そんなら探検続行しようぜ」
しれっと今更ながらに常識を語るセレニィを、軽く小突きながらからかうルーク。
「うぐっ! さ、さっきのあれは空腹が生んだ気の迷いというか…」
「フフッ… 今度から気を付けてね? ルークもあまりセレニィを苛めないの」
「わーってるよ。ちょっとからかっただけだろ? 別に怒っちゃいねーって」
やいのやいのと仲良く談笑しながら村の広場へと通り掛かる。
流石は農村の広場だけあって、所狭しと野菜や果物に乳製品やらが並んでいる。
一通り物珍しげに眺めたところで屋台にたくさん並んだリンゴが目に留まる。
「おおー。美味しそうなリンゴがありますよ」
「お、確かに… って、さっきあんだけ食ってまだ入るのかよ?」
「はい。食後のデザートは別腹なんですよ… 多分」
さっき一皿をペロリと平らげても足りず、ティアに餌付けまでされていたというのに。
それを思い出し、呆れ混じりに指摘してみるも当の本人は何処吹く風という具合だ。
確かに渓谷での運動量は並ではなかったが、あの体格で自分顔負けの胃袋とは恐れ入る。
そんなことを考えているルークを置いて、彼女はてくてくとリンゴ屋台へと近づいていく。
「ティアさんもいかがですか? リンゴ」
「そうね。じゃあ、いただこうかしら」
「わかりました。それではおじさん、リンゴ2つお願いします」
「って、俺を除け者にすんじゃねー! 俺にも1つよこせ!」
「クスクス… すみません、おじさん。やっぱり3つでお願いします」
セレニィはそんなルークの様子に微笑むと、彼の分も含めて注文をし直すことにした。
ルークは彼女の笑顔を見て考える。コロコロと変わる表情がよく似合っていると。
ティアは綺麗だが表情に乏しく、彼にとっては仏頂面や澄まし顔ばかりのイメージだ。
とはいえ、イメージがそれらに固定されているのは彼の発言にも原因があるのだが。
「(セレニィはナタリアやティアと違って、いかにもな女の子って感じだなー)」
本人が聞いたらショックを受けそうなことを考えつつ、彼女の買い物の様子を眺めるのだった。
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