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月刊戦車道ネット版
戦車道『士魂杯』一回戦 各試合解説
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1.◯千種学園 VS ●虹蛇女子学園
千種学園
戦力:タシュ重戦車×1、トゥラーンIII重戦車×1、トルディI軽戦車×1(フラッグ車)、ズリーニィI突撃砲×1、T-35重戦車×1、九五式装甲軌道車ソキ×1
流派:一弾流
今年に入ってから戦車道を始めたルーキー中のルーキーだが、それにも増して車両編成は独特である。主力を担うのはハンガリー戦車5両、しかも1両は製造中に破壊されたタシュ重戦車を再現したものだ。加えて欠陥戦車T-35に鉄道車両まで持ち込んだこのチームは、隊長の一ノ瀬選手の右足が義足ということもあり、試合前からあらゆる意味で注目を集めていた
虹蛇女子学園
戦力:CTL豆戦車×1(フラッグ車)、ACIセンチネル巡行戦車×4、ACIIIサンダーボルト巡行戦車×4、ACIV巡行戦車×1
流派:島田流
オーストラリアの大地を模した広大な演習場で、普段から島田流の偵察・連携技術を磨いており、索敵能力には定評がある。昨年度は学園艦の演習場にて不発弾の爆発事故を起こしてしまい、全国大会出場を諦めることとなった。今年度は17ポンド砲搭載のACIVを引っさげ、腕利の砲手を乗せて士魂杯へ臨んだ。隊長は“鉄腕戦車長”の異名を持つ毎床選手で、上述の事故によって右腕を失いながらも、CTL戦車に乗り込んで指揮をとる。
フィールドは起伏のある地形で隘路が多く、雑木林をどう利用するかが勝負を分けると思われた。両校は違いに相手の出方を伺いつつ、その裏をかく策を駆使した。
最初は千種学園が2両を撃破して先手を取るが、ACIVの砲手は驚異的な射撃技術を持っており、林の中にいるズリーニィを狙撃して撃破する戦果を上げる。林が守りに使えないと知った千種学園は残る主力を虹蛇側の本体へ突撃させ、林の反対側で囮となっていたCTLへトルディをぶつけるという賭けに出た。千種学園の牽引式デコイに騙された虹蛇側はフラッグ車の護衛を敵の護衛へ向かわせてしまい、CTLはトルディからひたすら逃走することを余儀なくされた。
ACIV砲手の技量はここでも発揮され、他の僚車の大半を失いながらも、超人的な射撃技術で敵隊長車のタシュを撃破し、自軍フラッグ車の救援へ向かった。CTLも巧みな回避運動で逃げ切るかに思えたが、突如飛び出してきたT-35に道を塞がれて衝突、トルディの対戦車ライフルで撃破されてしまった。
両校の隊長はそれぞれ知略を尽くしたが、特筆すべきは彼女たちが二人とも切断障害を持っていることである。この試合は福祉関係者や義肢メーカーなどからも反響を呼んでおり、戦車道に興味を持つ人を増やすことにもなっただろう。
2.◯アガニョーク学院高校 VS ●金字塔高校
アガニョーク学院高校
戦力:BT-7M快速戦車×3(フラッグ車)、SU-85自走砲×3、M3リー中戦車×4
流派:トゥハチェフスキー流(非公式にインターナショナル流を自称)
同じロシア系の強豪・プラウダと縁が深く、戦車道のノウハウを伝授されている。しかし池田流や島田流、さらには蒋式戦車術の経験者も入部させており、格式に囚われない独自路線をモットーとする。夜間戦闘においては強豪をも破る手並みを見せており、“夜の魔女”の名で恐れられてきた。試合には出場しなかったが、他にT-60、T-26軽戦車を保有している。
金字塔高校
戦力:IS-3×1(フラッグ車)、SU-100自走砲×1、M4A4シャーマン中戦車×5、T-34/85×3
流派:西住流
エジプトを海外提携先とする金字塔高校は、昨年度から戦車道に参入。キャリアは短いが砂漠戦では成果を上げており、装備車両の性能は本大会随一と言って良い。考古学に力を入れており、戦車クルーも古代の戦いから戦術を学んでいる。今回は新戦力として、戦車道の規定上最強クラスの戦車とされるIS-3を投入、隊長車として運用した。しかしスペック表には載らない欠点を露呈してしまうことに。
戦車の質を見ると圧倒的に金字塔高校が有利と思われた。加えて一回戦は昼間の試合のため、アガニョークに有利な点は指揮官と乗員の練度だけだった。
試合開始後、金字塔高校は隊長車 兼 フラッグ車のIS-3を前方に押し立てて突撃、アガニョーク前衛のBT-7Mを追い散らした。その先で待ち受けていたSU-85がIS-3へ砲火を集中するも、その装甲の前にことごとく弾き返されてしまう。この戦いでアガニョークは2両を失いながら撤退、試合の流れは金字塔へ傾いたかに見えた。
しかしロシア戦車をよく知るアガニョーク側は、試合前から金字塔高校の弱点を解析していた。それは金字塔高校の隊長及びそのクルーが皆長身だということ。内部容積が極度に圧迫されたIS-3の車内ではスムーズな動作ができず、砲弾の発射速度などに悪影響が出たのだ。そのためアガニョーク側は最小限の犠牲で退避できた。
そしてアガニョークのM3中戦車は本隊から離れ、小高い崖の上に陣取っていた。本隊が撤退しながらその崖の下へ金字塔高校をおびき寄せると、M3中戦車の75mm砲(構造上俯角を取りやすい)が眼下の敵へ一斉に火を噴く。さすがのIS-3も上面装甲を狙われてはなすすべもなく、被撃破判定が出た。
金字塔高校は戦車の高性能を活かせなかったことに悔しさを滲ませたが、アガニョーク学院高校は「まあ、こんなもの」と冷めたコメントを残した。
3.◯バッカニア水産高校 VS ●ボルテ・チノ高校
バッカニア水産高校
戦力:クロムウェル巡行戦車MK.V×6(フラッグ車)、MK.VIIテトラーク軽戦車×1、MK.VIIテトラーク軽戦車ICS×3
流派:フラー流
イギリスの軍事評論家の理論から生まれたフラー流戦車道に基づき、機動力の高い車両で構成されている。三年前に全国大会へ出場を試みたが、ティーガー乗りにクロムウェル巡行戦車を貶されて怒った隊員が暴力事件を起こしてしまい、出場禁止処分を受けた。海賊と称される荒々しい戦い方で有名だが、怒らせない限りは礼儀正しいと評判である。また、試合には参加しなかったが水陸両用型の試験車両・テトラークDDも保有している。
ボルテ・チノ高校
戦力:T-34/85×3、BT-7快速戦車×4、BT-5快速戦車×3(フラッグ車)
流派:なし
モンゴルの伝統を受け継ぐ学校であり、馬術や格闘技において優秀な成績を収めている。戦車道においてもモンゴル文化の色が濃く出ており、遊牧民の騎馬戦術を戦車に置き換え、独自の機動戦術を用いる。さらに使用する戦車にはチューンナップが施されており、最高速度のみならず、足回りの耐久力も高くなっている。試合前には応援団の曲馬や馬頭琴などのパフォーマンスで会場を沸かせた。
フィールドは平原で、両校ともに高速戦闘を得意とするため、接敵後は凄まじい機動戦が繰り広げられた。地形に起伏が少ないことを確認したボルテ・チノ高校は、試合開始直前にBT戦車の履帯を外し、装輪状態で戦闘を開始。BT戦車が突撃して撹乱しているところへ、後からT-34が参戦して砲火を浴びせる作戦に出た。この最初の戦いでボルテ・チノはBT-5を2両、バッカニアはクロムウェル3両とテトラークを失う。
しかしバッカニア側はここで巻き返しを図り、煙幕を展開して逃走。ボルテ・チノは追撃するが、テトラークICSに煙幕弾を撃ち込まれ、視界を奪われたところへ再び突撃される。この後バッカニアは戦車の高速性と煙幕による一撃離脱戦法を繰り返し、ボルテ・チノの戦力を削っていく。ボルテ・チノはフラッグ車を逃走させて反撃を試みるも、バッカニア隊長車(フラッグ車)に後方から狙撃され、勝負は決した。バッカニア側も撃つのが一瞬でも遅れていれば、自分たちがT-34に撃破されていたというきわどい勝利だった。
戦車が平原を縦横無尽に駆け回る姿は観客を大いに沸かせ、両校の腕前に惜しみない拍手が送られた。
4.●メフテル女学院 VS ◯大洗女子学園
メフテル女学院
戦力:IV号戦車G型×3、M24チャーフィー軽戦車×3、M4A3E8シャーマン・イージーエイト中戦車×3(フラッグ車)、シャーマン・ファイアフライ中戦車×1
流派:グデーリアン流
総じて情に厚く社交的な生徒が多いが、試合になると威圧的なトルコ軍楽による応援を受け、人が変わったかのように勇ましく戦う。甘党が多いことで有名で、戦車道の隊長は代々トルコ菓子の『バクラヴァ』のあだ名で呼ばれる。以前からルノーR35で野試合に出ていたが、毎年少しずつ装備を強化し、今年度はバランスのとれた戦車隊を編成できるまでになった。
大洗女子学園
戦力:IV号戦車H型×1、M3リー中戦車×1、八九式中戦車甲型×1(フラッグ車)、III号突撃砲F型×1、ヘッツァー駆逐戦車×1、ルノーB1bis重戦車×1、ポルシェティーガー×1、三式中戦車チヌ×1
流派:新派西住流
第63回全国大会で大番狂わせの優勝を成し遂げ、その後の『大洗紛争』にも勝利した“奇跡の新興校”。新車両の導入はまだ成されておらず、相変わらず雑多な戦車で構成されているが、メンバーの練度と隊長の采配にはさらに磨きがかかっている。この『士魂杯』が開かれるきっかけを作った学校であり、参加が切望されていた。一方で、昨年度のプラウダ戦で披露した『あんこう踊り』を希望する声も多く、対応に困っている模様。
フィールドは都市近郊の高台の多い地形で、市街地も交戦区域に含まれていた。大洗側が三式中戦車を偵察へ向かわせた後、メフテルのシャーマン二両が前衛として攻撃を仕掛けてきた。メフテル側は軽く砲火をかわしただけで後退。大洗はこれを追撃して一両を撃破するも、囮作戦であると判断して深追いはしなかった。しかし突如、近くの高台の上からチャーフィー小隊が急斜面を強引に駆け下り、煙幕を展開しつつ前方へ立ちふさがった。サスペンション強化などの改造を施し、走破性能を高めていたからこそできた芸当である。
このとき、偵察に派遣していた三式中戦車が敵本隊を発見し、位置を通報。メフテルのIV号小隊とフラッグ車は大洗の背後を取ろうとしていたのである。西住選手は咄嗟の大胆さを発揮し、装甲の厚いB1bisとポルシェティーガーを先頭に押し立て、煙幕の中へ突撃。重戦車の重量を以ってチャーフィーを跳ね飛ばし、多少の損傷を受けながらも強行突破に成功する。そのまま市街地へ向かおうとするも、市街戦における大洗の強さはメフテルも知っていた。メフテル側は虎の子のファイアフライを戦車壕へ入れて偽装し、市街地へのルートへ17ポンド砲を向けさせていたのだ。最初の狙撃でフラッグ車の横にいたポルシェティーガーを撃破し、そこへ三式中戦車を片付けたメフテル本隊、そしてシャーマン、チャーフィーの生き残りも合流する。
しかし油断の出たファイアフライは砲撃後の陣地転換を行わなかったため位置を特定され、IV号戦車からカウンタースナイプを受けて撃破されてしまう。メフテルは負けじと大洗フラッグ車を狙い、盾となったB1bisを撃破する。だが相手を市街地へ入れさせまいと焦った結果、大洗副隊長車が側面へ回り込むのを許してしまい、フラッグ車を撃破された。
試合前、メフテル側は大洗へ、自分たちが勝ったら『あんこう踊り』を見せるようにと要求していたが、実現されなかった(逆に自分たちがベリーダンスを披露し、大いに盛り上がったという噂もある)。踊りはさておき、大洗の熟練度は昨年にも増して向上している。ただし、卒業した角谷選手の穴はまだ大きいようにも見えた。
需要あるか分かりませんが、こういう設定も書いてみました。
Aブロックを書いたところで力尽きたので、決号やドナウの戦ったBブロックはまた次に。
もしかしたらいずれかの試合を小説として書くかもしれません。