イナズマイレブン~クロスライジング~   作:shoogel

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黒薔薇 咲夜

「…着いたはいいけど…。ここが奴らのアジト!?」

 

円堂くんがそういうのは無理もない。

ジェットコースター、空飛ぶ絨毯、フリードロップ。

私達を歓迎したのは様々なアトラクション達だった。

 

「すっごいなぁ!!」

 

小暮くんはアトラクションを見渡しながら目を輝かせる。

 

「こんなところにアジトなんかあるのかなぁ…?」

 

私もついついそんな本音が漏れる。

そんな私達に瞳子監督が話す。

 

「…間違いないわ。再度確認してもらったけど奴らのアジトがあるのはこのナニワランドの何処かよ」

 

瞳子監督達がそう確信しているのならそうなのだろう。

私は思わず拳に力が入ってしまう。

 

「…ってもなぁ…」

 

「どう見てもただの遊園地にか見えないでやんすぅ」

 

そんなことを言っている土門くん、栗松くんに夏未さんが声を掛けた。

 

「兎に角手分けして探すわよ。ここでじっとしていても仕方ないわ」

 

「ああ。ん…あれ…吹雪は?」

 

夏未さんの言葉に返事を返した円堂くんだったが

周囲から吹雪くんが居なくなってるのに気付く。

 

「…ああ、兄貴ならそこに居るぜ」

 

アツヤくんが指を指した方に視線を向けると

そこには複数人の女性に囲まれた吹雪くんの姿があった。

 

「怪しいアジトですよねぇ?」

 

「だったらあっちだと思います♡」

 

そう言われて吹雪くんは女性陣に腕を組まれたりして

連れて行かれていった。

 

「あ、あはは…流石吹雪くん。大阪でもモテモテだね…」

 

「まあ兄貴はいつものことさ…って!?」

 

そんなことを言っていたアツヤくんの周りにも気付けば女性陣。

 

「怪しいところ探してるんですよねぇ!?私心当たりあります♡」

 

「あ、ずるーい!私も心当たりありまーす♡」

 

吹雪くんと同じようにアツヤくんも腕を組まれたり大変そうだ。

 

「お、おい!テメェら暑苦しいんだよ!離れ…やがれぇ!」

 

「いやーん♡男らしくて素敵ー♡」

 

…何言っても無駄そうな人達…。

私の予想は当たりアツヤくんも連行されていく。

 

「お、おい染岡ぁ!黙って見てないで助けやがれ!」

 

「アツヤ…その状態で助けを求めるのは嫌がらせか…!?」

 

「んなわけあるか!?う、うおっ!?」

 

「あ、あははアツヤくんも大変だなぁ。」

 

連行されていった吹雪くん、アツヤくんはさておき。

私達は何人かに分かれて捜索を開始した。

 

しばらくの間捜索を行ったが未だ進展なし。

 

「うーん、これと言って怪しいものないね…」

 

私と行動を共にしていた小暮くん、音無ちゃんは

走り回る小暮くんの保護者として音無ちゃんが同行し分かれてしまい

今は黒薔薇くんと2人になっていた。

 

「そうだな…。あとは上空から探してみるとかか?」

 

「上空?」

 

私は黒薔薇くんの言葉に上を見上げる。

そこには大きな観覧車。

確かに上空から探してみるのはありかも知れない。

 

「そう…だね、行こう」

 

私たちはそうして観覧車へと向かった。

 

「足元にご注意ください〜」

 

私達は観覧車へと乗り込む。

 

向かい合うように座る私たち。

観覧車。本来ワクワクするような場所。それはわかっている。

でも、何故か言葉は喉から先へは自分から出ようとしなかった。

 

「天空橋」

 

観覧車は時計の11時くらいのところだろうか。

今まで沈黙だった空間で黒薔薇くんが口を開いた。

 

「雷藤のことか…?」

 

私は図星を突かれ少し苦笑いを浮かべる。

 

「うん…そうだよ。もしこのままアジトが見つからなかったら、お兄ちゃんと会えなかったらって思うと…。情けないよね私…。河川敷での円堂くんの言葉嬉しかった。キャラバンでの言葉も嬉しかった…!でも、でも…!!」

 

私の心は押しつぶされるようなプレッシャーを感じていた。

お兄ちゃんが飛ばされたジェミニとの試合。

私はお兄ちゃんの背中を追いかけているだけだった。

でも、今は違う。

過去のお兄ちゃんと同じ雷門の一員として戦っているのだ。

私の一つのプレーでお兄ちゃんが助からなくなる可能性があるのだ。

 

「私…こわい…。失敗するのが怖くなってしまってるの…」

 

私は本音を黒薔薇くんに零す。

そんな私に帰ってきた言葉。

 

「…俺だって怖いさ」

 

「…え…っ?」

 

予想外の言葉だった。

あの黒薔薇くんが…?それが本当の気持ちだった。

初めて黒薔薇くんと出会った試合、ナイトメア戦。

あの自信満々なプレー。敵ながら惹かれるものがあった。

そして仲間になった黒薔薇くん。

出ている試合で確実に試合のキーマンとなり点を決め指示を出す。

そんな黒薔薇くんが…?

 

観覧車が頂点に登った時、黒薔薇くんが「俺の手を見ろ。」と私に話す。

 

「ふ、震えてる…?」

 

黒薔薇くんの手は震えていたのだ。

フィールドでは強者とも言えるオーラを放つ黒薔薇くんが。

 

「俺、前回の試合怖くて動けなかったんだぜ…?情けないだろう?」

 

「前回の試合…?」

 

黒薔薇くんが話した前回の試合。

その言葉が指すのは真・帝国学園戦のことだった。

 

「…でも!あの試合、相手からボールを取ったり…」

 

「そうそれだけだ」

 

確かに言われてみれば、黒薔薇くんの割には前線に上がるのが少なかったような。

 

「俺さ鬼道の気持ち多少わかるのさ。普段は口に出さないけどな」

 

「黒薔薇くん…」

 

「俺たちナイトメアは毎日死ぬ程の試合を行なわされた。俺らの1日は試合で始まり試合で終わるような日々だ。試合で結果を残せない選手は飯も食えない。試合で結果を出せない奴は眠ることも許されない。ましてや相手は神のアクアで強化された強化選手。俺の仲間達も何十人も病院送りになったものさ」

 

「…っ、ひどい…!」

 

想像するだけで、絶望するような日々。

それをナイトメア…、黒薔薇くん達は過ごしていたのだ。

 

「あの時の支配されていた時の恐怖があの時蘇ってしまったんだ…。…情けないだろう?」

 

「情けなくなんてないよっ!!」

 

私の本心からの叫びだった。私は溢れ出る涙を抑える。

 

「そんなの…っ、そんなのっ!あんまりだよ…っ…」

 

「天空橋…ありがとう…」

 

黒薔薇くんは私にハンカチを差し出す。

私はそれを手に取り涙を拭う。

 

「天空橋、お前はこんな俺のことを情けなくないと言ってくれた。…怖さっていうのはそんな簡単には無くならない。多分俺や天空橋、これからもそう思う時があるかも知れない。だから俺と約束してくれ」

 

私は黒薔薇くんの目を見つめる。

 

「心の中で俺らは1人じゃないって唱えるんだ。俺も頑張るからさ…っ!」

 

私は自分の胸に手を当て目を閉じる。

浮かぶのはお兄ちゃん、黒薔薇くん、雷門イレブンのみんな。

 

スーッと何かが軽くなるような感覚。

黒薔薇くんの言葉という鍵が私の錠前を外してくれたような感覚。

 

私の心を押しつぶしていたものはなくなり

心にあたたかいものが流れてくる。

 

「そうだね…私達は1人じゃない…っ!」

 

私が笑顔で黒薔薇くんに答えを返す。

観覧車も下に到着のタイミングだ。

 

私達は同時に観覧車から降りた。

 

「天空橋行くか」

 

「うん!探そうっ!」

 

私達は再びナニワランドの捜索を開始したのだった。

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