凶魔の群れから離れ、七人は森の中の洞窟に身を潜めていた。モーラの千里眼で辺りを見回してみたが、敵の気配はないようだ。
皆が食事や休憩をする中、フレミーだけが洞窟の入り口の近くに立ち、森の一点を見つめている。
「何やってんだ? そんなとこ突っ立ってたら凶魔に見つかるぞ」
「いや……別に。私もすぐ入るから」
アドレットはその様子に首を傾げた。それから、フレミーの視線の先に目を向けて気付いた。
――犬だ。
「あぁ、お前は犬が好きだからな」
「ええ」
フレミーがしゃがんで手招きをすると、それに気付いた犬がこちらに駆け寄ってきたので、彼女はその頭や首を撫でた。表情からはうかがい知れないが、アドレットには彼女が楽しんでいるようにも見えた。
「この子は野良なのかしら? 親犬が近くにいたりするのかな」
「そうだとしても、俺達は今、捜してやる時間すらも惜しい」
「そうね。残念だけど」
フレミーが残念と言う表情も、じゃれ合っているように見える表情も、相変わらずあまり変化はない。アドレットは、犬を撫でているフレミーを見るだけでは退屈で、適当なことを口走った。
「……フレミー、笑顔もなかなか良いじゃないか」
嘘だ。アドレットはフレミーに出会ってから、一度も彼女の笑顔を見たことがない。今も彼女は心情が読めない表情をしているが、彼には彼女が少し動揺していることは解った。
「何を言っているの?」
「笑顔が良いって言ったんだ。ほらほら、もっと口角を上げて、に〜って」
「変なこと言わないで」
「変ではないぞ。むしろ、愛する人の笑顔が見たい、というのは普通のことだ」
「本当にあなたのことが嫌い。霧幻結界に閉じ込められた時に、爆弾で粉々にしてしまった方が良かったわ」
ロロニアの罵詈雑言も凄いが、フレミーもよくここまで酷いことを言えるな、とアドレットは思った。
「俺はお前を守るためなら、死んでもいいと思っている。だが、お前に殺されるのは嫌だ。なんで自分が守ろうと思っている人に、殺されなきゃならないんだ。こんな馬鹿な話があるか!」
「あまり大きな声を出さないで。そもそも、私はあなたに守ってほしいなんて、一言も言っていないわ」
「いいや、俺はお前を守ると決めたんだ。俺は今、リーダーだからな。リーダーの指示には従ってもらう」
「そんなことまで、あなたに指図されるつもりはないわ。これだけ人がいて、あなたくらいしか信用出来る人がいないって、本当にどうなっているのかしら」
アドレットは、以前にもモーラに似たようなことを言われた気がして苦笑した。
「もし、お前が俺を殺そうとするなら、俺は全力で抵抗する。俺は地上最強の男だからな。地上最強は、勿論六花にも負けるはずがない」
「勝手にすれば?」
そう言いながら、フレミーは名残惜しそうに犬を森へ離した。そして、洞窟の奥へと入っていった。彼女が踵を返した時に見えた顔は、アドレットには少し笑っているように見えた。
やっぱり、フレミーはそう簡単にデレたりしない方が個人的には好きです。ツンツンしてるんやけど、優しさが滲み出てくるっていうのがいいんです。他のキャラやとハンスとモーラが好きなので、またネタが思い付いたら書こうと思います。というか、全然思い付かないのでネタください(笑)
駄文にお付き合いしていただき、ありがとうございました。