ハンスとナッシェタニアは、ロロニアが本物の六花かどうかを見極めるために、彼女を罠に掛ける話をしていた。ハンスはナッシェタニアがいつ裏切るかが不安だったが、少なくとも今はその様子はない。残念ながらこういう話を頼めるのも、今はナッシェタニアしかいないのだ。
そろそろ、アドレットが奥の部屋から戻ってくるかもしれない。無駄話をしている暇はない。
「――解りました。では、どうにかやってみます」
話し合いが終わり、ナッシェタニアは小屋に戻ろうとしていた。
「ちょっと待つにゃ。姫さんは、誰が怪しいと思ってる」
「え? 今からロロニアさんを罠に掛けるんでしょう?」
「おらは、いつまでも全力で戦えないのは嫌だにゃ。本物の六花を失うのは痛えが、疑わしい奴が二人くらいに絞られたら、どちらも仕留めるべきだと思うだよ」
「あら、あなたらしくないですね」
ナッシェタニアは少し驚いていた。まさか、ハンスがこんなことを言うとは思っていなかったからだ。
「あなたの言い分だと、アドレットさんを殺すことになりませんか? 矛盾しているかもしれませんが、あなたはアドレットさんのことを疑いながらも、信頼していると思っていましたから」
「んにゃ、アドレットは馬鹿だが頭は悪くにゃい。前も言ったと思うが、あの中で敵に回したくないのはチャモとアドレットだべ」
それを聞いたナッシェタニアは、不思議そうにハンスを見つめている。
「……おらは、アドレットが怖えのかもしれねえにゃあ。それと同じくらい、アイツと闘うことを想像すると楽しくて堪らないだよ。どう考えてもチャモの方が強いはずにゃんだが、もし闘って死ぬなら、アイツと全力でやり合いたい。まあ、おらがアイツに負ける訳ないがにゃ」
それを聞いたナッシェタニアは、手を口に当ててくすくす笑った。
「あなたは、意外と友情に熱い方なんですね」
ハンスはナッシェタニアの言うことが的外れな気がして、真意が解らない。
「友情? そういうのはよく解らないにゃ。そもそも、六花は友達じゃにゃあし、仲良しこよししてる暇なんてないべ」
「ふふっ、私は女性なので経験はないですが、拳で語り合う仲でしたっけ? あなたたち二人は、私にはそのように見えるのですよ」
『拳で語り合う』なんて言葉をどこで覚えたのかと思いながら、ハンスはナッシェタニアの言葉を反芻した。
「ハンス、ナッシェタニア、戻ってこい。作戦会議を続けるぞ」
小屋の方から声がした。アドレットが呼んでいる。
「では、戻りましょうか。私はちゃんと罠に掛けるつもりでいますから、ご心配なく」
ナッシェタニアは小屋に戻っていった。少し遅れて、ハンスも歩きだした。
「友情にゃあ……まあ、おらには縁のない言葉だべ」
そう独り言を呟きながら、ハンスは頭をぼりぼり掻いた。
ハンスは職業柄、そういう経験がなかっただけで、意外と友情に熱い奴なんじゃないかと思って書いてみました。イメージと違ってたらごめんなさい!ハンスの楽しいことが好き+ナッシェのいたずら好き、というコンビは相性がいい気がしました。次はおばちゃん(モーラ)メインかなあ。