六花の勇者 短編集   作:雨冠

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続いて、失敗しない男(モーラに一回殺されてるけど)、ハンスが友情について考える話です。時系列的には4巻。少なくとも全力で戦えてた、1巻のハンスとアドレットVSチャモの時が好きです。


敵か友か

 ハンスとナッシェタニアは、ロロニアが本物の六花かどうかを見極めるために、彼女を罠に掛ける話をしていた。ハンスはナッシェタニアがいつ裏切るかが不安だったが、少なくとも今はその様子はない。残念ながらこういう話を頼めるのも、今はナッシェタニアしかいないのだ。

 そろそろ、アドレットが奥の部屋から戻ってくるかもしれない。無駄話をしている暇はない。

「――解りました。では、どうにかやってみます」

 話し合いが終わり、ナッシェタニアは小屋に戻ろうとしていた。

「ちょっと待つにゃ。姫さんは、誰が怪しいと思ってる」

「え? 今からロロニアさんを罠に掛けるんでしょう?」

「おらは、いつまでも全力で戦えないのは嫌だにゃ。本物の六花を失うのは痛えが、疑わしい奴が二人くらいに絞られたら、どちらも仕留めるべきだと思うだよ」

「あら、あなたらしくないですね」

 ナッシェタニアは少し驚いていた。まさか、ハンスがこんなことを言うとは思っていなかったからだ。

「あなたの言い分だと、アドレットさんを殺すことになりませんか? 矛盾しているかもしれませんが、あなたはアドレットさんのことを疑いながらも、信頼していると思っていましたから」

「んにゃ、アドレットは馬鹿だが頭は悪くにゃい。前も言ったと思うが、あの中で敵に回したくないのはチャモとアドレットだべ」

 それを聞いたナッシェタニアは、不思議そうにハンスを見つめている。

「……おらは、アドレットが怖えのかもしれねえにゃあ。それと同じくらい、アイツと闘うことを想像すると楽しくて堪らないだよ。どう考えてもチャモの方が強いはずにゃんだが、もし闘って死ぬなら、アイツと全力でやり合いたい。まあ、おらがアイツに負ける訳ないがにゃ」

 それを聞いたナッシェタニアは、手を口に当ててくすくす笑った。

「あなたは、意外と友情に熱い方なんですね」

 ハンスはナッシェタニアの言うことが的外れな気がして、真意が解らない。

「友情? そういうのはよく解らないにゃ。そもそも、六花は友達じゃにゃあし、仲良しこよししてる暇なんてないべ」

「ふふっ、私は女性なので経験はないですが、拳で語り合う仲でしたっけ? あなたたち二人は、私にはそのように見えるのですよ」

 『拳で語り合う』なんて言葉をどこで覚えたのかと思いながら、ハンスはナッシェタニアの言葉を反芻した。

「ハンス、ナッシェタニア、戻ってこい。作戦会議を続けるぞ」

 小屋の方から声がした。アドレットが呼んでいる。

「では、戻りましょうか。私はちゃんと罠に掛けるつもりでいますから、ご心配なく」

 ナッシェタニアは小屋に戻っていった。少し遅れて、ハンスも歩きだした。

「友情にゃあ……まあ、おらには縁のない言葉だべ」

 そう独り言を呟きながら、ハンスは頭をぼりぼり掻いた。




ハンスは職業柄、そういう経験がなかっただけで、意外と友情に熱い奴なんじゃないかと思って書いてみました。イメージと違ってたらごめんなさい!ハンスの楽しいことが好き+ナッシェのいたずら好き、というコンビは相性がいい気がしました。次はおばちゃん(モーラ)メインかなあ。
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