アドレットが七人目だと確信しているモーラは、チャモにハンスを足止めするよう指示を出し、森の中へと消えていった。ハンスは、ここでチャモと戦うことを諦め、その場に寝転がった。
「はぁ……解ったにゃ。おらはここから動かねえ」
「ふんっ、大人しくしていればいいんだよ」
しばらくして何かを思い付いたのか、ハンスは飛び起きた。チャモは思わず身構える。
「……にゃあ、神殿に入るのは構わにゃいか?」
「何を言ってるの? 怪しいことしたら、ぶっ殺すよ」
チャモは猫じゃらしを揺らしながら、ハンスを訝しげな目で睨んでいる。少しでも怪しい動きをすれば、ハンスは自らを危険に晒すことになるだろう。
「おめえも、ここで突っ立ってるだけじゃ暇だべ?」
「それはそうだけど……」
昨日、モーラの指示を拒否したように、チャモはじっとしているのが苦痛のようだ。どうにか興味を引ければ、説得出来るかもしれないとハンスは思った。
「よし! じゃあ、おらに協力してくれだよ。おらはここから外には一歩も出にゃいし、少しでも怪しい動きをしたら、攻撃しても構わねえ」
「協力って、チャモは何をすればいいの?」
ハンスはチャモの表情から、警戒が和らいだことを感じた。協力してくれるかまでは解らないが、とにかく、じっとしているだけはしたくないようだ。
「確か、おめえのペットは、地面の中を調べることが出来るんだったにゃ? 神殿の中にある、台座の下を調べてくれにゃいか?」
「そこに何があるって言うのさ」
「おらも、何があるかまではよく解んねえだ。ただ、何かあるかもしれねえとしか言えないにゃ。このとおり、頼むにゃ!」
ハンスは手を合わせて、チャモに頭を下げた。
「そこまで言うなら解ったよ……」
ハンスの説得に折れたチャモは、従魔に指示を出し、神殿の中にある台座の下を調べさせた。
しばらくすると、従魔が戻ってきた。チャモは従魔の口元に耳を当て、意思疏通をしているようだ。
「何かあっただか?」
「台座の下に、全く同じものがあるみたいなんだけど……それってどういうこと?」
ハンスの勘が的中した。これだけ強力な結界なら、不測の事態に備えて何かはあると考えていた。彼はそこに、七人目に繋がる手掛かりがあることを願った。
「本当かにゃ! チャモよくやった、掘るぞ」
「えっ……え? 意味が解らないよ」
「いいから、おめえも手伝うにゃ!」
「はーい……」
ハンスは台座の下の床を外し、チャモの従魔と共に地面を掘り続けると、彼女が言ったとおり、中から同じ台座や宝剣が出てきた。
「……まさか、予備があったとはにゃあ。ん? これはにゃんだべ?」
台座や宝剣はおそらく同じものではあるが、ひとつだけ違うものがある。
「だから、上にあるものと同じでしょ?」
「それはそうにゃんだが、なんでこれだけ2枚あるんだにゃ?」
ハンスが見つけたのは、2枚の石板だ。それをチャモが覗き込む。
「こっちはたぶん、既に破壊されたものと同じみたいだね。こっちは……何か書いてる」
もう1枚の石板に書いていることをチャモが読むと、ハンスは急に立ち上がった。チャモもさすがに気付いたようだ。
「おい、チャモ! 七人目が解ったぞ」
「どうせ、それもアドレットだよ」
「確かめにゃいと解らねえだ。おらは見てないからにゃ。おめえもここまで言ったら、おらを足止めしておく理由はねえよにゃ? 早く行かにゃいと、アドレットが殺される。行くにゃ!」
ハンスはすぐに神殿を出て、森に向かって走り出した。チャモはもう、ハンスを止める気もなくなっていた。
「もう! ちょっと待ってよ……」
チャモは2枚の石板を懐に仕舞い込み、ハンスの後を追いかけた。
チャモの拘束をハンスが解く過程がちょっと緩いかもしれないですが、少なくとも1巻の時点のチャモが、大人しく見張りするとも思わないので、これくらいでもいいと思ってますが…どうでしょうか。
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